Archive for the ‘四国の動物園’ Category

※とべ動物園では、餌やり体験・ガイド、動物との記念撮影から紙芝居(!)まで、さまざまな催しが行なわれています。これらについての詳細は、同園サイトのイベント情報をご覧ください。

動物園には、さまざまな動物たちが飼育展示されています。その多くは「野生動物」であり、かれら本来の生活や習性を反映した飼育環境を整え、展示として来園者にも伝えようとすることは、動物園の役割の根幹とも言えるでしょう。

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とべ動物園では、現在、クロサイのメスのクーが、今年で4歳になる息子のライ(2011/2/18生まれ)と一緒に展示されています。時には、母子での力比べめいた一コマも。一方でオスのストームは一頭だけでの飼育展示です。クロサイは単独性が強く、野生でもしばしば一頭だけで生活します。そこで、組み合わせとしては現状のようになっています。

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ストームはクーが大のお気に入りで、寝部屋(こちらも一般公開されています)でも柵越しに干し草を示して、クーの気を惹くようにする行動が見られたりしたのですが(2009/11/17撮影)。おそらく、こうして意識しつつも、常に同居しているわけではない、という状況も、クロサイとしてのかれらには、よい刺激になっているのではないかと思われます。前回ご紹介した、当園でのアフリカ・サバンナの「通景」といったものと比べれば、一見、ごくオーソドックスな飼育展示施設ですが、ここにも動物たちの「社会性」への配慮が込められているのです。

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「本拠」となるメインの展示場から、タワーのある飛び地へと空中散歩を見せてくれるのは、今年19歳になるスマトラオランウータンのオス・ディディ。オランウータンはスマトラ島・ボルネオ島の熱帯林で単独で生活しますが、「最大の樹上生動物」としても知られています。この空中散歩の設備は、そんな出自のディディの飼育下生活に、高木の森の樹冠の構造と機能を付加しようというものです。ロープの高さは地上11m、移動距離は20m、タワー本体の天辺は15mに及びます。東南アジアの熱帯林は、日本の気候風土とは異質で、植栽等での再現は困難です。そこで、人工物による施設で、そんな熱帯林の構造の抽出が目指されています。ここには「オランウータンにとって必要な環境要素(ミニマムな生息環境)とは何か」という問いがあります。空中散歩は、2008年のタワー建設からの継続の中で、ディディにとっても、かなり習慣化した行動となっています。あくまでもディディの自由に任されているため、時にはどうしても渡らないこともありますが。
なお、以前には、空中散歩の誘因として高カロリーで嗜好性の高い餌をタワー側に着けるといったことも行なわれましたが、オランウータンは1日にわずかリンゴ2個程度の過剰給餌でも肥満してしまうような生理を持つため、現在は食事コントロールが行なわれています。たとえば、肥満につながりやすい炭水化物を控え、蛋白質等は高野豆腐(乾物のままで食べます)で補うといった、現場的な工夫も積み重ねられています(※)。動物園での食事は、野生そのままというわけにはいきませんが、代替品目の選定には、動物たちの本性への配慮が欠かせないのです。

※詳しくは、オランウータンの屋内展示場の壁面に研究成果をまとめたポスターが貼られています。

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お帰りは、こちら。

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ケージ状の空中通路から来園者を観察する様子なのは、オスのチンパンジーのロイ。この通路は本来、写真左手に写る「チンパンジーの森」(2014/10/26新設)への移動のためのものです。

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このチンパンジーの森も、人工物を活用しつつ、床面積200㎡(20×10m)・高さは手前9m・奥13mの広がりの中に、さまざまな遊具や、石器を使ってナッツを割れる装置など、チンパンジーの生活を豊かにし、その知能や運動能力を引き出して展示効果につなげる設備が満ちています。チンパンジーたちが新施設に馴染み、来園者にさらなる魅力を披露してくれるまでには、もうしばらくの馴化期間が必要なようですが。

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とべ動物園のチンパンジーは、オス1・メス3で構成されています。新施設に馴れることと並行して、かれら自身による社会関係の調整も進んでいます。時には小競り合いが見られたりもしますが、飼育員はそんなかれらの「手のかかる」ところをも飼育の張り合いとして包み込みつつ、個体ごとの性格や互いの関係を見極め、新しい「チンパンジー一族の森」の実現に向けて、かれらの日々を見守っているところです。単独生活者のオランウータンにはオランウータンの、社会性の豊かなチンパンジーにはチンパンジーなりの環境がつくられていくのです。

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マントヒヒの群れ。かれらの社会では、おとなオスそれぞれが、お気に入りのメスたちを周囲に集めることが知られています。担当飼育員お手製の「相関図」を見ながら、個体の識別や互いの関係性の観察を試してみるのもよいでしょう。

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6歳のメス・イブナは、先天性の脳の障害で目が見えません。しかし、群れには受け入れられており、現在はオスのボンズと「頼り頼られ」の関係です。

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コンクリートの施設の中にも、かじり木など、かれらの欲求を満たす工夫がなされています。

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動物たちの日々や種としての特性などをわかりやすく伝え、来園者の観察や理解のきっかけをつくるのも、飼育担当者の大切な役割です。わたしたちの側からも問いかけていくなら、コミュニケーションは益々深まっていくことでしょう。

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今年(2015年)の元旦、飼育担当者(Tさん)は「今日1/1は11(ヒヒ)の日」と思い定め、この一年間、さまざまなかたちで、とべ動物園のマントヒヒの魅力を伝える「ヒヒ祭り」を推進することを表明しています。

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Tさんは、独特の達者な描画の才にも恵まれています。彼は第5日曜日を定例として(※)、通算43回、園内各所に現われる「自転車紙芝居屋さん」も行なっています。その際も、紙芝居の後に、彼の特製のイラストなども活かしたZOOトークが聞けます。

※次回は、5/28・13:30~を予定しています。詳しくは園内に告知が出ます。

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睦み合う三頭のアフリカゾウ。一番の子ゾウは、鼻を使って水を呑む練習中のようです。そして、よく見れば、隣の運動場にも、ひときわ大きな、もう一頭。

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とべ動物園は現在、国内で唯一、アフリカゾウの「家族」に逢える動物園として知られています。
この写真の、おとなメスはリカ。彼女が当園開園の年(1988年)に、オスのアフとともに来園したのが、とべ動物園のアフリカゾウの歴史の始まりでした。現在、リカと一緒にいるのは、リカの最初の子どもの媛(ひめ、メス・2006/11/9生まれ)と、媛の妹・砥愛(とあ、2013/6/1生まれ)です。
ゾウの社会では、年かさのメスがリーダーとなって、複数のメスが群れを成しています。多くの場合、群れのメンバーのメスは、リーダーのメスの血縁です。群れのメスたちは、メンバーの出産には励ますように寄り添い、生まれてきた子どもたちは、母親のみならず「おばさん」・「お姉さん」といった存在にも育まれることになります。

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砥愛は、リカそして媛の様々な行動に倣いながら、ゾウとしての体の使い方や、ゾウ同士の付き合い方などを体得している最中です。媛もまた、砥愛に対して鼻で引き寄せるといった世話めいた行動をしたり、手加減しながら妹と遊んだりといった経験の積み重ねの中で、そしてまた、リカの実際の子育てを見知りながら、将来、母親として子育てに臨む際のシミュレーションをしているのだと言ってよいでしょう。

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まさに親しく絡む、リカと媛。しかし、このありさまは、ただ自然に生じてきたものではありません。過去2回の流産を経て、ようやく媛を出産したリカでしたが、はじめて接する赤ちゃんということもあってか、授乳もままならず、媛への攻撃的行動も見られたために、一時はリカと分離して飼育員による人工哺育が行なわれました(国内初の成功例となります)。そこから柵越しでの関係づくり等を経て、リカと媛が再度の同居の実現に漕ぎ着けたことが、当園でのその後の「家族づくり」と、その維持・発展の基盤となりました。

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さきほども写真に写っており、リカとの来園の経緯もご紹介した、オスのアフです。媛は、隣の運動場にいるアフとも、かなり頻繁に交わっている様子です。

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リカにはリカの、母親として、あるいは群れのリーダーとしての判断があるようで、時には媛とアフを引き離すこともあります。

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実際、こんな場面も見られたりはするのですが。
既に記したように、ゾウの群れのおとな個体はメスのみです。オスもまた、生まれ落ちた群れで育ちますが、やがて、母親のいる群れを離れ、一人前のオスとして成熟を迎えるとともに、別の然るべきメスの群れを見つけます。しかし、その群れに入ってしまうのではなく、群れの周囲で行動しながら、群れの中のメスに発情が見られると、ぐっと接近して交尾を試みる、という生き方を続けていきます(※)。それがゾウたちなりの、持って生まれた距離感ということになります。ひとまとまりの母子3頭と、お互いに存在を意識し、時には交わりつつも独立して生きるオスゾウ。とべ動物園は、まさに「ミニマムなゾウ社会」の再現に成功しているのです。

※生まれた群れを離れた若者のオスゾウは、一時的に年かさのオスなどと行動をともにすることもあるのが知られています。

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リカ・アフの来園以来の飼育担当者・Sさん。ゾウたちにとっても、ある意味では「群れの一員」として認知されているのではないかと思われます。

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ゾウたちと同じ場に立つ「直接飼育」の形態を採っていますが、まもなく2歳の砥愛でもこれだけの体格です。Sさんの長年の経験や細心の注意に基づいた所作・間の取り方の精彩を感じます。

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同じ場に立てることで、さまざまなトレーニング(健康チェックや治療措置等の基盤になります)の可能性も広がります。砥愛がトレーニングを受けていると媛も参加してきます。彼女たちにとっては「遊び」の楽しさもあるのでしょう。

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これもまた、媛へのトレーニングのひとつです(2011/2/19撮影)。ゾウならぬ人であり飼育員である以上、すべての場面において、ゾウたちが気を許せる相手であるとともに、そのゾウたちの健やかさを守るという意味での「管理者」でなければなりません。そんな営みが、日々、わたしたちの目の前にあります。

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アフへのおやつ。時には、来園者と動物たちの間での、こんなやりとりも演出されます。

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アフの寝室だけは収容後~閉園までのひとときに公開されているので、わたしたちは、おとなオスの迫力をさらに実感することができます。

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以前には、こんな光景も(2011/2/19撮影)。アフが子どもたちに鼻を差し伸べています。左は当時の媛、中央が、媛の弟で砥愛の兄にあたる砥夢(とむ、2009/3/17生まれ)です。
媛と砥夢の誕生が比較的近接しているのは(ゾウの妊娠期間は約22ヶ月です)、リカに自分自身による育児(自然哺育)の機会を設けるとともに、その傍らに媛を立ち会わせることで、彼女にもゾウの出産や育児を学ばせる企図があってのことでした。結果としては、砥夢の誕生も、媛を含めての「ゾウの群れ」の創建の推進力になったと言えるでしょう。
砥夢は2012/11/26に東京の多摩動物公園に向けて搬出され、現在は同園で暮らしています(※)。既に述べてきたように、オスゾウの独立はゾウの社会の常です。いまはまだ成長途上ながら、いずれは彼も成熟したオスとして繁殖に関わることが祈念されています。

※詳しくは、こちらをご覧ください。

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こちらは、リカ・砥夢・アフでの場面です(2010/12/17撮影)。群れのメンバーとしての子どもたちを一番大切にしている様子のリカですが、こんな姿からは、アフを含めてのすべてがあっての「とべ動物園ゾウ・ファミリー」なのだということが納得されます。

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こうして積み重ねられてきた飼育の営みに対して、このたび、とべ動物園は、日本動物園水族館協会(JAZA)が、希少動物の繁殖に特に功績のあった動物園や水族館に贈る「古賀賞」を初めて受賞することが決まりました。とべ動物園自体が、この達成をひとつの「新たな出発」として、アフリカゾウの飼育へのさらなる貢献を期待されています。見極められたミニマムから、さまざまな可能性がふくらみます。そして、当園の功績は他園の発展をも促すことでしょう。専門性の高い賞ながら、わたしたち一般来園者も、「生きた野生動物を飼育展示する場」としての動物園の意義や役割について、認識を深めるきっかけにできたらと思います。

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とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーの歩みについては、園内にも細やかな掲示があるので、目の前のゾウたちと見比べながら、ご参照いただければと思います。

※この掲示は、とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーを応援する有志の会「かぐや媛」の皆さんによるものです。
なお、下掲の拙著もご一読いただければ光栄です。
森由民(2011)「ひめちゃんとふたりのおかあさん」フレーベル館。

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アフリカゾウの運動場に隣接する展望レストラン「東雲」です。ここからもゾウたちの姿を望むことが出来ます。腹ごしらえなり、一服なりにお勧めしたいところです。

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遠いアフリカからやってきて、わたしたちに生き生きとした姿を見せ、いのちのつながりをかたちにしてくれているゾウたち。一方、こちらはまさに地元というべき動物です。ノマウマ(野間馬)は、現在の今治市付近を中心に飼育されてきた、明治以降の品種改良を受けていない、数少ない「日本在来馬」のひとつです。小柄で頑健なため、山道も厭わぬ荷駄として重用されてきました。機械化の中、かれらの実用性は薄れましたが、日本人と伝統的な家畜の共同生活の歴史の証として、とべ動物園でも飼育展示されています。現在、繁殖制限のため、オスのアラシ(先の写真)だけはアジアスイギュウ横で別に飼育されていますが、メス3頭ともども、緩やかな時間を感じさせてくれます。

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もう一ヶ所だけ。ヘビをはじめ、ワニ・カメ・トカゲなどを展示するスネークハウスです。大きなゾウガメになった気分も楽しめます。

※来園者のご了解を得て、掲載しています。

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ぷりぷりした印象のニホントカゲ。隣には、スリムなニホンカナヘビの幼体も展示されています。

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こちらが成体のニホンカナヘビ。トカゲとは一味違うクールな相貌です。

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シマヘビ・アオダイショウなど、よく馴らされて、ふれあいイベントなどに登場する個体もいます。

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そして、こんな掲示にも、ふと足を止めてみてはいかがでしょうか。動物園の動物たちは、わたしたちの目の前にいて、普段は得難い体験をさせてくれます。しかし、かれらから受け取るべき最大のメッセージは、かれら自身が生きていて、それぞれに大切な時間を刻んでいるということでしょう。動物たちには、いわば、それぞれの「時計」があり、本性に見合った環境の中で、健やかに暮らすことが望まれます。動物園は、限られた条件の中でも、動物たちから身体的・社会的に充実した行動を引き出し、願わくば、かれらの心をも満たしたいと工夫を積み重ねています。動物園を利用し、観覧するわたしたちにも、そんな営みを分かち合える可能性は開かれているのです。

愛媛県立とべ動物園
大人も子どもも楽しみながら学べる、自然生態を意識した動物園。
公式サイト
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
電話 089-962-6000
飼育動物 約170種823点(平成27年3月31日現在)
開園時間
9時から17時(入園は16時30分まで)
15:30分からは餌を与えるため、ご覧になれない動物がございます。
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開園)
年末年始:12月29日から1月1日
詳しくはこちらをご覧ください。
アクセス
伊予鉄バス・砥部線(千舟町経由・えひめこどもの城行き)
松山市駅(3番のりば)~とべ動物園前
その他、こちらをご覧ください。

※とべ動物園では、餌やり体験・ガイド、動物との記念撮影から紙芝居(!)まで、さまざまな催しが行なわれています。これらについての詳細は、同園サイトのイベント情報をご覧ください。

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さまざまな動物たちの足跡の連係がゲートへと導く、とべ動物園。中でもひときわ大きな足跡に導かれたケージが展示されています。
とべ動物園は、松山市内の城跡に1948年に創設された道後動物園を母体としています。このケージは、1987年、現在の、とべ動物園に移転するに際し、2頭のアジアゾウの引っ越しに使われたものです。

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これが、道後動物園から引っ越してきたオスゾウの太郎です。太郎は2013年に亡くなりましたが、それまでの25年間、担当飼育員の工夫したタイヤで遊んだりしつつ、悠々とした日々を送っていました。

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こちらはアジアゾウ舎の屋内に設けられた、ハナ子の記念展示です。ハナ子は太郎のパートナーでしたが、2006年に亡くなりました。
現在、アジアゾウ舎は空の状態になっていますが、やがては新しい動物を迎えることになるでしょう。このように、去っていった動物たちを偲びつつ、次の夢をかなえるため、前へ進むことが、動物園らしい「いのちのリレー」と言えるでしょう。

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こちらは、1999年に生まれ、当園で人工哺育により育ったメスのホッキョクグマ・ピースです(※)。ぬいぐるみのような赤ん坊時代から、その愛くるしさで人気を集めてきましたが、御覧のようにおとなになった現在も、ホッキョクグマ舎前には、ピース・ファンの姿が数多く見受けられます。ここにも、穏やかに続く、いのちへのまなざしがあるのです。

※ピースの誕生・生い立ちについては、こちらを御覧ください。

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“隔てを忘れて、もっと身近に”。道後動物園から、広い敷地のとべ動物園へ移ることで可能となったひとつが、本格的な「無柵放養」式の展示法です。来園者と動物たちの間にモート(堀)を設けることで柵なし(無柵)の放し飼い(放養)を行ない、より自然な情景で観察できます。たとえ、それがライオンでも。

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さらに、技術の進歩は、頑丈なアクリルガラスによりさらなる「近さ」をもつくり出しました。

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岩山を模した観察舎の二階からは、すぐ足もとにライオンを見ることもできます。

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もうひとつの無柵放養式展示方法。捕食者(ライオン)と被食者(草食動物)の間にモートを挟むことで、両者が共存するアフリカのサバンナの景観を再現しています(パノラマ展示)。

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こちらは、草食動物たちのゾーンからの眺めです。

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大型のウシ科動物・エランドを、我がもの顔で先導する(?)モモイロペリカン。独特の風貌のサバンナの掃除屋・アフリカハゲコウもラインナップに加わっています。

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とべ動物園では、今年(2015年)2/12、8年ぶりにライオンが繁殖しました。生まれたのはオス1・メス2の計3頭。オスの子は、出産直後にうまく母親の腹の下に潜り込めず、人工哺育となりました。詳しい経緯は、こちらを御覧ください。
来園者投票により、オスは柑太郎(かんたろう)、メスは、さくらとリリ花と名づけられました。柑太郎については園内散歩や来園者との記念撮影なども行なわれました(ともに終了しています)。

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こちらは、ヒョウ舎。来園者の頭上にケージが張り出したオーバーハングは、獲物を樹上に引き上げて食べたり、その場でくつろいだりする野生のヒョウの習性を引き出す仕掛けです。

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一見、漆黒のクロヒョウですが、明るい日ざしの中では、ヒョウ柄の存在が見て取れます。

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こちらも美しい斑点模様と、耳の後ろの白い虎耳斑が印象的なサーバルキャット。野生でも、草原や川辺の繁みなどを好んで生息しています。

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かたや、アジアを中心に熱帯から寒帯まで、広く分布するトラ。こちらも無柵放養式の展示方法です。ダイ(手前)とオウガ(奥)は2009年に生まれたオス2頭です。

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屋内展示場。眼前に迫るトラたちからは、独特の体臭までも嗅ぐことができます。ケージにはケージの迫力があるのです。

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アイスブルーの瞳が印象的なホワイトタイガーは、ベンガルトラの白色個体で別種ではありません)。

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こちらは、カナダ南部から中南米に生息するピューマです。「アメリカライオン」とも呼ばれますが、ライオンがヒョウの仲間(ヒョウ属)であるのに対し、ピューマは比較的小型のネコ属です(ネコ属の最大種)。

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そして、南北アメリカ大陸を通じて、最大のネコ科動物であるジャガー。体格の上でもヒョウに勝りますが、模様もちがいます。よく見比べてみてください。ヒョウ(アフリカストリート)とジャガー・ピューマ(アメリカストリート)は、アフリカサバンナを挟んで、両側に位置しています。

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こちらもアメリカストリート。南アメリカ産のアメリカバクです。

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丸太かじりに余念がないオスのムーンはやや小柄。バクたちの日常に変化をつけようと、園内の伐採木などを積極的に利用して「遊具」としています。ムーンは、一度気に入るとずっとその遊具に取り組む傾向があるそうです。

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顔が白く、なにやら迫力があるのは、メスのユメ。気ままで、飼育員が枝葉を与えると、まずはユメが食べ、ムーンはお相伴にあずかるという構図だとか。それでも、ムーンはユメの姿が見えないと落ち着かないそうです。
こんな2頭の間にも子どもが出来て欲しいと担当飼育員は彼らの様子を見ながら、あれこれ研究し、環境改善に努めています。

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バクは、サイやウマと同様に「奇蹄類」と呼ばれ、体の重心が足の中指にかかっています(ウマの蹄は中指1本です)。しかし、原始的な特徴を遺すとされるバクでは、前足は4本指です(重心の位置は変わりません)。サイは前後肢とも3本指なので、見比べてみるとよいでしょう。

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こちらも南アメリカの動物たち。カピバラのワカメ(メス)は、とくしま動物園から来園し、この春に公開を開始したばかりです。

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ヤブイヌは、南アメリカのジャングルで暮らしています。名前の通り、ヤブなどをすりぬけやすく進化した、胴長・短足のユーモラスな体型をしています。

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霊長類の集合展示「モンキータウン」のクロクモザルも、アマゾン川流域の熱帯雨林に住みます。筋肉の発達した尾は、第五の手のように機能し、ものをつかんだり、巻きつけて体を支えたりできます。

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さて、わたしたちにとってはバクと言えば、白黒の色分けの体、アジア産のマレーバクの方が親しみがあると言えるでしょう。

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オスのダン(手前)とメスのロコのペアです。二頭の体調管理のため血中ホルモンの状態などを見極めながら、同居を繰り返しています。これからの季節、飼育員としては、さらに積極的なペアリングを試みたいと願っています。

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マレーバクの展示場近くにあるベンチ。バクはアメリカ産もアジア産も生後数ヶ月は「ウリ坊」です。こんな模様がちょこちょこと走り回る様子を夢見てみましょう。

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オオサイチョウも繁殖の可能性を考えて、ケージの周りへの立ち入りを制限しています(2015/4/14取材)。

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繁殖の際、サイチョウのメスは樹洞に閉じこもり、巣の入口を土や糞で塗り固めて、そのすきまからくちばしでオスの給餌を受け、ヒナを育てます。これからの展開を見守りましょう。

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空を飛ばずとも、ペンギンは鳥です。ウォーターストリートでは、まさに頭上の水中を「飛ぶ」フンボルトペンギンたちの姿を観察できます。

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2015/1/1に孵化し、元旦にちなんで元(ガン)ちゃんと名づけられた人工育雛個体です。ペンギンプールの裏手で、オウサマペンギンのメス・ピーチと暮らしています。ピーチは四国でただ一羽しかいないオウサマペンギンです。

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とべ動物園の鳥類と言えば、2種類のヒクイドリの比較観察も可能です。

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パプアヒクイドリは「ヒトニクダレヒクイドリ」とも呼ばれます。これに対して、単にヒクイドリと呼ばれる種は、別名がオオヒクイドリまたはフタニクダレヒクイドリと言います。どちらがどちらか、もうわかりますね。他のちがいもいろいろ見つけてみましょう。詳しい解説は、こちらから読むことができます。

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鳥の展示が続きますが、こちらは「バードパーク」。水鳥たちの目線に立ったショウウィンドウのほか、鳥たちが気ままに飛んだり歩いたりする中に歩み入ることもできるフライングケージです。

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付属している資料室でクイズに挑戦したり、アマガエルなどの身近な小動物を観察することもできます。

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ふれあい広場などのあるリトルワールドの一角にも、鳥たちの暮らす大きなケージが。保護鳥獣舎です。とべ動物園は愛媛県からの委託で傷ついた野生個体を受け入れ、治療・給餌の後にリリースしています。しかし、怪我の程度が重い場合は、そのまま動物園で暮らす個体もいます。たとえば、治療の過程で翼を切断しなければならなかったウミネコなどです。かれらの姿から、わたしたちが野生動物たちと、思いがけないほど身近に暮らしていることを思い起こしてみてはいかがでしょうか。

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リトルワールド内の「こども動物センター」。

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見るのが楽しい解説や貴重な標本のほか、オオコノハズクなどの若干の生体展示も見られます。

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タヌキの毛皮の手ざわりを実感したりウサギの頭骨や歯の構造を学習できます。

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そんな知識があれば、目の前の動物たちに対するまなざしや想いも、一層深まることでしょう。小さなお子さんたちには、大人がわかりやすく語っていただいたらと思います。

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大人気の人だかり。コツメカワウソは東南アジアを中心に分布する小型種で、家族で群れを構成し、動きも活発なことから、各地の園館で飼育され親しまれています。

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カワウソは、水中生活に適応したイタチ類です。

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このような展示装置で、かれらの水中活動もじっくりと観察することができます。

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とべ動物園とカワウソには、歴史的に大きな関わりがあります。「こども動物センター」にも、大きなカワウソの像が設置されています。とべ動物園の紋章もカワウソです。これらのカワウソ、実はニホンカワウソです。とべ動物園の前身・道後動物園では、1956~1969年の間、6頭のニホンカワウソが飼育されていました。しかし残念ながら、この日本唯一の試みは、この時点で途絶え、その後2012年には、環境省からニホンカワウソの絶滅宣言が出されました。しかし、愛媛県は1964年からニホンカワウソを「豊かな自然の象徴」として県獣に指定しています。現在、とべ動物園で、生きたニホンカワウソと出逢うことはできませんが、コツメカワウソをはじめ、さまざまな動物たちの生き生きとした姿の向こうに、わたしたちがなくしてしまったものや大切にしなければならないものを、さまざまに考えてみることは出来るはずなのです。

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水中派のカワウソに対して、ニッポンアナグマは、地中性を強めたイタチ類です。

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「同じ穴の貉(むじな)」として、アナグマと混同されるタヌキ(イヌ科)ですが、実は穴掘りはさほど得意ではなく、木のぼりもそれほどうまくありません。アナグマやキツネの巣穴を借りることも多いのです。

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ロバやヒトコブラクダは、人が飼い馴らし、生活の中に取り込んできた家畜です。ロバのオス・ショウくん(手前)はメスのコボちゃんが大好きですが、コボちゃんはショウくんを嫌っているとか……ままなりませんね。

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楽しい解説パネルで、ヒトコブラクダ・ブービー(オス)のいろいろな「秘密」を学ぶことができます。

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ブービーのハズバンダリー・トレーニングの様子です。こうして一定の動作と報酬(ちょっとしたおやつなど)を結びつけ、動物と飼育員の間で「約束」を成立させることで、健診・治療・採血などが可能になっていきます。

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ターゲット棒のほか、掌に条件づけることもしています。

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アジアスイギュウの未来(みく)のトレーニングも順調です。体重計に乗ったり採血などもできるようになれば、とのことです。
ラクダやスイギュウは家畜ですが、動物園でのトレーニングは、単に「飼い馴らす」ということではありません。

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動物園は、動物たちをより自然に近い状態で見ていただけるように展示していますが、約束事をつくり、展示動物の心身の健康を守ることで、本来の姿をより生き生きと引き出すこと、それも動物園の使命です。次回は、そんなことを考えながら、とべ動物園のさらなる魅力を探究してみたいと思います。

愛媛県立とべ動物園
大人も子どもも楽しみながら学べる、自然生態を意識した動物園。
公式サイト
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
電話 089-962-6000
飼育動物 約170種823点(平成27年3月31日現在)
開園時間
9時から17時(入園は16時30分まで)
15:30分からは餌を与えるため、ご覧になれない動物がございます。
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開園)
年末年始:12月29日から1月1日
詳しくはこちらをご覧ください。
アクセス
伊予鉄バス・砥部線(千舟町経由・えひめこどもの城行き)
松山市駅(3番のりば)~とべ動物園前
その他、こちらを御覧ください。

※本稿は、2015/3/13~14の取材をメインに、2012/2および2014/10の取材内容を加味して構成しています。時系列を明示した方がよいと思われる写真には、適宜、日付を記しました。

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動物たちそれぞれの本来の生息地での生き生きとした動きや暮らしの再現を目指した、のいち動物公園。起伏に富んだ園内は、行先を隠して期待を高める曲折や植栽が、「動物たちの生息地に入り込んでいく」という感覚を増してくれます。

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鳥インフルエンザ対策で昨年末(2014/12/19)からバックヤードに収容されていた水鳥たちも、オスが繁殖期の羽色の鮮やかさを示すオシドリをはじめ、3/9にすべて展示に復帰しました。

 

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園内の島池(水濠で囲まれた島タイプの展示場)で暮らすワオキツネザルたちも、日向ぼっこ・樹上活動・マーキング……さまざまな姿を見せてくれています。

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同じく、島池展示のシロテテナガザルの一家。ニコは2013/9/30生まれのメス。テナガザルは「核家族」というべき構成で暮らしますが、ニコは既に、父親のニタや母親のチャコから離れて、活発に動く姿を見せてくれます。チャコのおっぱいを完全に卒業するのは、まだしばらく先のようですが。

 

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広々とした、チンパンジーの運動場も、四季折々に魅力的なすがたを見せます。そんな眺めに馴染む櫓は、数年前に間伐材でつくられましたが、日本の自然そのものだけでは足りない「チンパンジーにふさわしい環境(アフリカ熱帯林的な高所の広がり)」を補う役割を担っています。

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じゃれあうふたり。オスのダイヤとメスのサクラは、2009/4/18生まれの二卵性の「ふたご」です。チンパンジーのふたごは珍しいようで、ましてや、ふたごを母親自身が育てた記録は、野生を含めて、きわめて稀です。日本では、ダイヤとサクラの事例が、唯一のものとなっています。

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母親と親しい、別のメス(いわば、近所のおばさん)をはじめ、チンパンジー・コミュニティ全体が、ダイヤやサクラを可愛がり、サンゴの負担軽減になったことが、ふたごの健やかな成長を支えました。幼児期には、おとなに対して、まさにやりたい放題。しかし、子どもたちが群れを活気づけ、おとなたちに、よい影響を与えていることも見逃せません。チンパンジーにとっての「社会」の大切さを、あらためて認識させられます。

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そんな子どもたちも着々と成長しています。中にジュースを仕込んだ「人工アリ塚」。野生のチンパンジーがアリ塚に枝を突っ込み、たかってくるシロアリを舐め取って食べる「道具使用」の再現です。サクラは尖端を噛みつぶしてジュースが浸み込みやすくした枝を使う技術も、かなり上達しています(※)。

※おしなべて、サクラの方がダイヤよりも根気強いようです。

 

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同じく枝を使って餌を取り出す「ヤムヤムキャッチャー」(※)。この写真のような「二刀流」は、群れの第一位オス・ロビンと、メスのジュディだけの特技とのことです。個体ごとの個性のちがいばかりでなく、誰が優先してアリ塚やヤムヤムキャッチャーを使うかなど、注意して観察すれば、チンパンジー同士の社会関係も見えてきます。

※園内で行われる、各動物の「お食事タイム」については、こちらを御覧ください。

 

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一方で、飼育員と一緒に、短時間の公開タイムを過ごすのは、メスのミルキー。2013/7/14生まれです。難産だったため、人が介助してとりあげ、母親のチェルシーとは離して、人の手で育てることになりました。詳しくは、こちらを御覧ください。

このような出産経過が影響したものと思われますが、ミルキーには発達の遅れが認められます(※)。運動能力等、少しでも「自分でできること」が増えるように、リハビリを続けています。からだだけでなく、心のケアも大切です。他のチンパンジーたちと、どんな関係を結べる可能性があるか、ケージ越しに「お見合い」させたりもしています。個体によっては、ミルキーをグルーミングする者もいます。

※脳性麻痺による障碍(軽度の右片麻痺)。詳しくは、こちらを御覧ください。ミルキーへの対応は、チンパンジーやヒトの乳幼児の発達に関する研究者、リハビリテーションの専門家などの協力の下に進められています。

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ミルキーの将来は、平均的なチンパンジーとはちがうものになるかもしれません。しかし、運動能力をはじめ、情緒的な面も含めて、ミルキーはミルキーなりに育っていこうとしています。障碍があっても「健やか」であること。わたしたちも、そんなミルキーの将来を見守っていければと思います。ミルキーに関する、貴重な実践や記録は、他のチンパンジーのためにも役立てられていくでしょう。

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こちらも、動物たちの健康な暮らしを目指しての飼育の取り組みです。バックヤードでの、ブチハイエナのトレーニング風景(※)。指示された行動や姿勢をちゃんと出来たら、ちょっとした「御褒美(肉片)」がもらえる。そんな約束事が、動物と飼育員の間で固まりつつあります。背中やお尻を預けるのも信頼の証と言えるでしょう。

※詳しくは、こちらを御覧ください。

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こうして、バックヤードを含めての細やかな飼育的配慮に支えられ、のいち動物公園のハイエナたちは、すこぶる健康です。オスのブッチーとメスのエナの間には二度の繁殖があり、2012/10/2生まれのオス「とーふ」、2013/8/25生まれの二人娘ダイズ・アズキの総計3頭の子どもが生まれました。ブチハイエナは母親を核とする群れをつくりますが、のいち動物公園では、そのようなブチハイエナの群れの形成を再現したと言ってよいでしょう(※)。娘たちは3/2に、大分県のアフリカンサファリに移動し、現在は親子3頭での暮らしですが、これからもかれらのペースを大切にしながら、のいち動物公園のブチハイエナ・ファミリーの歴史は積み重ねられていくでしょう。

※詳しくは、こちらから「飼育日記」を御覧ください。

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ハイエナロッジのカプセルは、ハイエナたちと同じ目線での観察が可能です。

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ふと気づけば、わたしたちも観察されている……

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この写真の対比で分かるように、サバンナの生活者ながら、登ったりくぐったりも好きなハイエナの性質を見極め、施設を改良するといった努力も続けられています。

 

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セネガルショウノガンは、ブチハイエナの展示施設のすぐ近くにいます。ノガンと名づけられていますが、むしろ、ツルの仲間と近縁と考えられています。のいち動物公園のセネガルショウノガンたちは、足環の色と個体識別プレートを見比べれば、それぞれの個体の性格のちがいなども知ることができます。かれらが時折放つ甲高い鳴き声は、存在感も十分です。

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のいち動物公園ではフンボルトペンギンとジェンツーペンギンの2種類のペンギンが飼育されています。南極周辺に分布するジェンツーペンギンは、温度管理された屋内展示場で暮らしています。2007年に飼育が開始され、2011年以降、毎年繁殖が見られて、合計4羽のヒナが育ちました。他の水族館等に移動した個体もいます。

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ハシビロコウのオス「ささ」。まだ若いかれの瞳は黄色ですが、年齢とともに青く変わっていくはずです。

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「ささ」は、タンザニアから来た野生個体ですが、体重測定などのトレーニングが行なわれています。それらの営みが、結果として「心身ともに健康な野生本来の姿」の展示につながることは、先に御紹介したブチハイエナの例などからも分かるでしょう。

 

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園の性格を象徴する場のひとつ、アフリカサバンナの大展示場。アミメキリンと接近遭遇。

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こちらでは、アミメキリンをはじめ、複数の動物たちが混合展示されています。キリンのメス・ジャネットが興味深げ(?)に覗き込むのは、2014/10/24生まれのグラントシマウマのメス・モミジです。マイペースに成長中。母親のベティーにとっては二度目の出産で、子育てにも余裕が見られます。

 

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こちらはジャネットが2014/12/24に生んだオスのイブキ。ジャネットに授乳行動が見られないため、飼育スタッフによる哺乳が行なわれていますが、母親をはじめとするキリンたち(※)やシマウマとの日々の中で、かれなりの社会性を身に着け、一人前のキリンとなっていくことが願われています。

 

※イブキ母子が、別のメス・フーピー(チンパンジー同様、いわば「近所のおばさん」?)と一緒に展示されている姿も観察できます。

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のいち動物公園ならではの、緑豊かな展示場で過ごす、メスのレッサーパンダ・カイ。もう一枚の写真の飼育員は一見、餌の竹を切っているように見えますが、この竹は当園のレッサーパンダには、あまり好まれていないそうです。むしろ、運動場の周囲から竹が覆いかぶさったりして、動物が外に出てしまわないように、という処置です。動物たちの気ままな暮らしは、こうした細やかな配慮に支えられています。

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屋内展示場でも、別の一頭が食事中。この個体も名前はカイですが、オスです。ここでも、木登りなどが得意なレッサーパンダの活動を引き出す設備が組み上げられていますね。メスのカイは当園生まれ。市川市動植物園から「婿入り」したカイとの間に「のいち三世誕生」が期待されています。

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ジャングル・ミュージアムは、屋内展示の強みを、フルに活かした施設です。たとえば、豊かな水量のアマゾンの浸水林の再現展示。

 

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この施設にも、期待のカップルがいます。筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支えながら、東南アジアの樹上で活動する大型のジャコウネコ・ビントロングです。黒いのは、メスのケチャップ。白っぽいのが、オスのソルト。それぞれ気ままにまどろんだりしていることも多いのですが、交尾行動も確認されています。

 

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人工スコールの時間に行けば、煙るような雨の中の、黒いもこもこと白っぽいもこもこも見られます。

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ビントロングの展示エリア付近では、高みで繁殖する文鳥の姿も見られます(デジタルカメラのズーム機能などが威力を発揮する場面でしょう)。幼鳥たちは、親と同じくっきりした容姿を目指して成長中です。

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雲のような柄が特徴的なウンピョウ(雲豹)のオス・リュウ。日本一の子だくさんペアとして知られ、日本各地の園館に子どもたちが旅立っている、マレーグマのタオチイ(メス)・ワンピイ(オス)。かれらも熱帯アジアの森で暮らす動物たちです(※)。

※ウンピョウの分布域は、標高2500mに及ぶ山地にまで広がっています。

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こちらも、霧立ちこめるジャングルタイム。カピバラのビビ(メス)とグー(オス)。かれらは、南米アマゾンを代表する、世界最大のげっ歯類です。

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さらには、このふたり……いえ、実は「ふたり」ではありません。フタユビナマケモノのペア、アミーゴ(オス・手前)とキュウ(メス)。そして、キュウのふところには……

 

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2014/7/27に生まれた赤ちゃんは、コマちゃんと名づけられています。親たちの食事の時間が観察の狙い目でしょう(園内掲示等で御確認願います)。

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終日(ひねもす)のたり……というわけでもなく、動き出せば、飛ぶように泳ぎ、時には華やかなジャンプなども披露するカリフォルニアアシカですが、うち揃っての日向ぼっこも、見る者を和ませます。

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エイトは2014/6/28生まれのオスです。泳ぐのが大好きな活発な子として成長中。体の大きさだけでも、他の個体と見分けられますが、最近は、バックヤードでの人工哺育から群れ入りを果たした、1歳年上の兄・タイチ(2013/6/24)と戯れる場面も多いとのこと。

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のいち動物公園を代表する「水もの」といえば、かれらを忘れることは出来ません。水槽内を軽快によぎっていくのはツメナシカワウソ。単独生活を送る種なので、オス・メス・その仔のそれぞれが、交代に展示されています。

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ソラは2012年生まれのオス。ちょうど、この日(2015/3/14)で、3歳となりました。ツメナシカワウソ独特の、大きな鼻鏡がユーモラスです。

※カワウソ類の分類には、鼻鏡の形態も大きな要素として用いられます。

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ワカサギを与える給餌解説「お食事タイム」。

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当園では、3種類のカワウソを並列に展示しています。見た目だけでなく、習性などもそれぞれです。食事の様子は、そんなちがいを観察する好機。小型種のコツメカワウソは、カワウソ類の中でも特に手先(前足)が器用であるとされています。

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のんびり寛ぐユーラシアカワウソは、アカネとアザミの姉妹。2013/6/3に、福島県の「アクアマリンふくしま」で生まれた四姉妹のうちの2頭です。そして、ユーラシアカワウソと言えば……

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こちらは「どうぶつ科学館」内のニホンカワウソの解説展示です。高知県は、かつては、多くのニホンカワウソが生息する土地でした。ニホンカワウソは、2012/8に環境省から絶滅種に指定されましたが、現存の種ではユーラシアカワウソに一番近縁だと考えられています。当園では、カワウソが暮らしていた、かつての環境や、それを自らの手で損ねてしまった現在のわたしたちのありようへの認識を深めるべく、各種のカワウソたちを飼育展示しているのです。動物園は「いのちの記憶」を保つ場所でもあります。

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高知県と動物園の魅力を伝える人。動物ものまね芸の江戸家小猫さんは、このたび、高知県観光特使に就任し、3/14には動物公園内で委嘱状交付式が行われました。小猫さんと高知県の御縁は、いろいろありますが、過去にもライヴを行なう等してきた、のいち動物公園こそが一番のゆかりの場所という小猫さん自身の御意向での式典でした(※)。高知県の鳥・ヤイロチョウの、文字通りレアな鳴きまねの披露などもあり、楽しく希望に満ちたひとときとなりました。ゴールデンウィークの5/5にも、園内で小猫さんのイベントが行われるということです。

※来園者の御了承を得て、掲載しています。

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さらにはまた、「四国を伝える」とも言えるのが、こども動物園の野間馬たち。明治以降、品種改良を目的に欧米系の品種との交配が進められ、日本在来の品種(在来馬)のほとんどは、その血統を絶やしてしまいました。愛媛県今治市 (野間地区)で農耕などに使われてきた野間馬は、現在残っているとされる日本在来馬8品種のひとつで、最も小型です。その体格と頑健さから、ミカン畑でも活躍していたとのことです。近代化の意義とともに、それに先立って積み重ねられてきた人と動物の歴史もまた、目を向ける価値があると思います。野間馬たちとの出逢い・ふれあいは、そんな機会となってくれるでしょう。

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最後に、こちらです。夜行性動物たちを集めた屋内施設。昼夜を逆転した闇にもまた、いきづくいのちがあります。

 

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エジプトルーセットオオコウモリのつぶらな瞳。当園では、総数300頭に及ぶという群れと出逢うことが出来ます。普段は、こうして、もっぱらひっそりと過ごしていますが、給餌時間に立ち会えれば、床に置かれた餌のトレイを巡って、まさに乱舞というべきさまも観察できます。

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キンカジューは、中南米の森に住む、アライグマ科の動物です。眠っているかと思えば、わたしたちが観察されていることも。かれらは、ジャングルミュージアムのビントロング同様、筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支え、樹上活動を行ないます。かれらの「時計」に合わせて、しばし待てば、そんな姿も披露してくれるかもしれません。

 

広々とした園内と、それぞれの動物たち本来の生息環境を意識した展示づくり。初夏へと向かうこれからは、緑といのちに満ちた、のいち動物公園での散策に最適の季節なのです。

 

 

参考資料

黒田弘行(1988)『群れで生きるブチハイエナ』農文協。

また、2015/3/15に、のいち動物公園で行われた「動物園大学5 in 高知 ずーぜよ」における、同園スタッフやボランティアの皆様のポスター発表、多々良成紀・園長およびチンパンジー飼育担当者・山田信宏さんの講演に、多くを学ばせていただきました。記して、心よりの感謝の意を表します。

 

 

高知県立のいち動物公園

人も動物もいきいきと、動物たちの自然の姿を可能な限り再現した動物園

公式サイト

〒781-5233 高知県香南市野市町大谷738

Tel:0887-56-3500

飼育動物 106種1047点(H.26/9末現在)

開園時間

9:30~17:00(入園は16:00まで)

休園日

毎週月曜(祝日の場合はその翌日)

年末年始(12/27~1/1)

アクセス

高知自動車道 南国ICより車で20分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

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モルモットは、アニマルランド・ふれあい広場の人気の的(夏季7~9月は暑さのため閉鎖します)。家族そろっての憩いの定番とも言えるでしょう。

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動物もまた、憩います。ひとときの陽だまりを楽しむ様子のトカラヤギのマレーは、推定17歳のメスです。前篇で御紹介したジャガーのハル同様、この動物種の寿命としてはまぎれもない高齢者ですが、メニューや与え方をカスタマイズされた食事や、運動不足で伸びすぎてしまう蹄の定期的な手入れなど、さまざまな飼育的ケアの中で、のんびりと暮らすことができています。

さわったりできることで、ぬくもりや手ざわりなどの実感を与えてくれる、ふれあい動物たちですが、マレーのような事例を知り、あらためて目を向けることで、わたしたちは、さらに深く、いのちを感じ、学べるように思います。

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園内に記念展示がなされている(※)グラントシマウマのランは、アニマルランドの前身・高知市立動物園の時代から、通算9回の出産を行なってきたベテランでした。昨年(2014/10/15)、32歳の生涯を閉じましたが、国内最高齢の個体でした。けれども、ランの場合には高齢化による蹄の伸びすぎは、あまり問題にならなかったと言います。なぜでしょうか?

※2015/3/17現在。

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その秘密は、シマウマの運動場に敷き詰められた玉砂利にあります。これによって、効率的に蹄をすり減らすことが出来ます。広々としたサバンナでの活動に適応したシマウマの蹄。アニマルランドの玉砂利は、限られた空間の中でも、動物たちの快適な暮らしのための必要条件を整えていこうという工夫なのです。

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動物福祉の観点から、飼育下の動物たちの心身ともに健康な暮らしを実現するために、さまざまな手立てをこうじることを「環境エンリッチメント」と言います。アニマルランドでも、あちこちで環境エンリッチメントの実例と出逢うことが出来ます。

わたしたちと同じヒト科のチンパンジーは、とりわけて豊かな感情や知性を持つ存在です。「人工アリ塚」は、そんなかれらが、与えられた枝から葉を食べ、棒として利用することで、中に仕込まれたジュースを飲めるようにした装置です。その名の通り、野生のチンパンジーが棒を使って、塚の中のシロアリなどを釣り、食べてしまう行動の再現を狙っています。熱心に取り組むのは、メスのローラ(手前)とオスのヤマト。

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さらに、飼育員用の扉に向かうローラ。

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ここにも、こんな装置があります。枝の先を噛み潰しブラシ状にすることで、ジュースを染み込みやすくしているのが分かりますね。チンパンジーは道具を使うだけでなく、自ら道具をつくることも出来るのです。

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群れのバランスの関係で、現在、別の展示場で暮らすコータ。ヤマトの父親に当たります。多摩動物公園で生まれたコータは、同園での子ども時代に、人工アリ塚の使い方を学んでいます。アニマルランドのチンパンジーたちは、コータの行動を見習うことで、その技術を獲得していきました。

ここで御紹介したような行動を見ると「チンパンジーは賢いな」と実感できるでしょう。しかし、それはかれらが人間の真似をしているというのにとどまらず、わたしたちが「似た存在=進化の隣人」であるということです。だからこそ、人工アリ塚のような装置は、興味深い展示であるとともに、チンパンジーたちのための優れた環境エンリッチメントともなっているのです。

 

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最長老のタロー。今年で推定52歳となります。国内最高齢のチンパンジーは、今年で推定65歳を迎える、神戸市立王子動物園のジョニーですが、タローは、オスとしてはジョニーに次いで国内第2位の個体です。かれは、人工アリ塚のような複雑な操作は、あまり好まないようです。しかし、福祉の観点からは、それぞれの個体が自由に振る舞えれば、それでよいのだと考えられます。悠然と過ごすかれに年輪を感じるとともに、かれらチンパンジーが、はりめぐらされたロープや鉄骨などを、どのように利用するかも観察してみてください。わたしたちヒトは森を離れ、サバンナで直立二足歩行をすることで、いまのありようへと歩み出しましたが、チンパンジーは森にとどまり、いまだ樹上性を保っています。「近さ・遠さ」の両方を具体的に知ることが、真に動物たちと「出逢う」ことだと言えるでしょう。

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シーマは、マントヒヒのオスです。ごらんのようにアルビノ個体ですが、かれの展示場でも、穴を開けたパイプに固形飼料などを入れて、取り出しに工夫させるとともに、採食時間を引き延ばして退屈を防ぐ仕掛けがあります。動物種ごとに考案されるフィーダー(給餌器)は、代表的な環境エンリッチメントのひとつです。ここでは、床にまかれた細かい餌にも注目です。マントヒヒは、細くて器用な指先で、これらの餌を拾います。この方面の能力では、チンパンジーも、わたしたちヒトもかなわないでしょう。そこに、マントヒヒという動物の進化の方向性があります(※)。

※野生では、植物の根を掘ったり、細かな種を摘まんだりして採食しています。

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広々としたケージに、オスのワカとメスのよねこが同居するニホンツキノワグマの展示場。ここでも、採食に関する環境エンリッチメントが行われています。

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いったん、動物を収容した展示場。飼育員が、あちこちに餌を隠します(※)。クマ類は鋭い嗅覚を持つとともに、高い運動能力や、思いがけないほどの器用さも持っています。隠された餌を嗅ぎ当て、ブイを転用したフィーダーの中の餌も、巧みに振るって取り出します。すぐ目の前での食事は、展示としても大迫力です。

※展示場の床に敷き詰められた杉皮も、餌を隠すのに役立っています。

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高みでくつろぐ姿もまた、クマたちの自然な日常です。和やかな気持ちとともに、かれらが木登りも得意とすること、その意味で、三次元的に活用できる大ケージが、クマの飼育施設として理に適っていることも御一考いただければ、さいわいです。

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前篇で触れたように、現在は観覧に供するを中止しているバードハウス。しかし、そこでも鳥たちの日々は続いています。色鮮やかなショウジョウトキは南アメリカ北部原産。当園での繁殖は、一時の10年あまりのブランク等を経て、2012年から本格化しましたが、その背景には、実際にかれらの巣を模して枝を組んでみて、巣材の必要量を割り出し、供給するといった飼育員の研究・実践がありました。今年も6月頃のバードハウスは、ペアになったショウジョウトキたちの繁殖活動で華やぐことでしょう。

※写真に写り込んでいるのは、ショウジョウトキたちが枝を組んで巣をつくる助けとするための巣台です。巣台なしの、まったくの自然巣を組み上げるペアもいます。

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これはバックヤードで飼育されているショウジョウトキの幼鳥です。親と羽色が違いますね。ショウジョウトキの羽色は、食べもの(当園ではオキアミ)に含まれる色素に由来しています。地味な色の幼鳥も、せっせと採食し、色鮮やかな成鳥となっていきます。

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こちらにも、同じような生理を持つ鳥たちがいます。立ち上がり、首を曲げているのは、ヨーロッパフラミンゴの幼鳥(昨年生まれの個体)です。写真左の成鳥と比べると、くちばしや足などが色づいていないのが分かります。フラミンゴも食べものの色素で体を染め上げていくのです。

しかし、幼鳥のすぐ手前の個体にも注目してください。同じようにくちばしが色づいていませんが、幼鳥よりもだいぶ大きく、足だけは色鮮やかです。これは幼鳥の親に当たると思われます。フラミンゴの子どもは、自分で食事ができるようになる前、両親から口移しで栄養をもらいます。それは、両親の消化管の一部(そのう)からの分泌物で、「フラミンゴミルク」と呼ばれます。フラミンゴミルクは豊富な蛋白質などのほかに、体を色づかせるのに必要な色素も含んでいます。つまり、熱心に子育てに励む親は、結果として自分の体のための色素に不足を来たし、足などを例外としつつも、すっかり色あせてしまうのです。この個体、父親でしょうか、母親でしょうかね。

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そして、フラミンゴたち(※)にも、飼育員による繁殖補助がなされています。土を盛り上げた巣の上の卵……これは石膏でつくった「擬卵」です。フラミンゴは繁殖期になるとペアを組みますが、いつの間にか出来ている(実は飼育員が仕立てている)、見知らぬ巣や卵を見ると、俄然、繁殖意欲を駆られるようで、時には偽卵を排除してまで、自前の産卵に臨みます。野生のフラミンゴも、大群を成しつつもペアごとで営巣・産卵・育雛を行なうので、このような「競争心理」を引き出すことは自然なことであり、やはり、環境エンリッチメントとしての価値も担っていると言えるでしょう。

※アニマルランドでは、ヨーロッパフラミンゴのほか、ベニイロフラミンゴ・コフラミンゴを混合展示しています。

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こちらはバックヤードのひとこま。リンゴジュースと豆乳にパウダーフードを加えた餌を与えられているのは、シロビタイムジオウムの雛です。アニマルランドは、既に国内の動物園・水族館では初めて、シロビタイムジオウムの自然繁殖に成功しており、前篇でも御紹介した「繁殖賞」を得ていますが、今回は2羽の雛で、これも国内初の人工保育を試みています。雛たちは相前後して孵化しており、この時点で18日目と19日目でした(2015/3/16撮影)。体重の増加も順調です。そして、足の指(※)を御覧ください。4本ある指(小指はありません)が2本ずつに分かれて向き合うように変化しつつあります。

※正確には、第一趾(親指に相当)・第二趾というように数えます。

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こちらが園内で展示されている成鳥のシロビタイムジオウムです。2:2の指の配置が、枝や餌などをしっかり掴むのに適していることが分かるでしょう。成長中の雛も、進化がつくりあげた、そのような形質を着々と獲得しつつあるのです。

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さらに、バックヤードで進行中の鳥類保育。手前にいるのは、当園初の人工保育で成熟しつつあるカラスバトです。この個体は高知県産ではありませんが、カラスバトは高知県の離島にもわずかに生息しています。そこでアニマルランドでは、カラスバトの「域外保全(※)」に貢献することも視野に入れて、飼育技術の向上に努めています。奥にいるのは、去年生まれのアオバト。ハト同士で採食行動などを見習わせるための、いわば「先生役」です。

※生息地の外で、種の保存に努めること。前篇の小型サンショウウオの事例も御参照ください。

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キュウシュウムササビのモマ(※)は、普段はバックヤードにいますが、ふれあいイベントなどに出ることもあります。3歳のオスで、幼い頃に保護され、人の手で育てられました。人馴れしたかれならではのかたちで、わたしたちに「ムササビという動物」を教える役割を担っています。

※土佐弁では、ムササビとモモンガを一括りに「モマ」と呼ぶそうです(キュウシュウムササビは、九州・四国に分布します)。

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屋内展示施設・アニマルギャラリーにも、キュウシュウムササビがいます。姿を見せるのは稀ですが、時には根気よく「レア体験」を狙ってみてもよいかもしれません。

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ムササビの傍ら。囲い込まれたホンシュウモモンガの住みかです。図鑑では実感しにくい、ムササビとの大きさのちがいなども、一目で分かります(根気よく、が鍵ですね)。

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こちらも、アニマルギャラリー内の地元産動物。八色(やいろ)にとどまらない羽色の豊かさのヤイロチョウは、高知県や四万十町の鳥に指定されています。毎年五月ごろに南方から西日本に飛来しますが、はじめて営巣が確認されたのは四万十川流域でした。「森の妖精」という呼び名にふさわしく、しばしば声はすれども姿は見えず……動物園展示は当園のみです。この個体はピッタと呼ばれており、8歳以上であるのは確かです。それがヤイロチョウにとっては、どのくらいの年配に当たるのか、そんなことも含め、ピッタがわたしたちに教えてくれる貴重な情報は尽きないものと思われます。

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再び、動物園ならではの異国の動物たち。マダガスカル原産のワオキツネザル。メスのワッキーの赤ちゃんは、3/14に生まれたばかりです。しっかりと母親のおなかにつかまり、この時点(2015/3/16)では性別も不詳でした。それでも、モール細工のような尾を含め、ひと通りは親のミニチュアになっていますね。近在の皆様は、折々の成長を楽しみに通われればと思います。

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2012/8/11に当園で生まれ、母親個体の母乳不足を飼育員による哺乳サポートで乗り越えながら育ってきたメスのナルコ(鳴子)も、いまや、オスのシンと仲睦まじい姿を見せてくれています。

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そんなアリクイたちの食事はこちら。長く粘り気のある舌でアリを舐めとって食べることに特化し、口を大きく開けることが出来ないかれらのために、動物園では特製の流動食を与えています。その配合も、動物たちの様子を観察しながら、弛みない飼育の営みの中で改良され続けています。

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最後は、アフリカタテガミヤマアラシの一家です。マサキ(オス)は2014/7/6生まれ。時には親孝行の(?)毛づくろいも見せてくれます。まだ両親とは見分けがつきますが、齧歯類の成長は早いものです。是非、マサキの「少年時代」をお見逃しなく。
そんなマサキに心惹かれたなら、開催中(4/5・日曜まで)のイベント「わんぱーくこうちまつり」がお勧めです。チューリップの展示等が行われていますが、4/5には、イベント広場で「アニマルランドクイズ大会」も開かれます(※)。実際の動物園で動物たちとの時間を堪能し、「クイズ王」を目指してみてはいかがですか。

※雨天の場合、クイズ・ラリーに変更。その他、まつりの詳細は、こちらを御覧ください。

 

 

参考資料

中村滝男(2001)『ヤイロチョウ』ポプラ社

久川智恵美、岡本宏昭、吉澤未来、山崎由希、吉川貴臣、山本將充 (2015)「わんぱーくこうちアニマルランドの環境エンリッチメント」動物園大学5 in 高知・ポスター発表。

わんぱーくこうちアニマルランド/吉川飼育係のコアリクイ子育て奮闘記「いつか脱走するのかな?

 

 

わんぱーくこうちアニマルランド

動物たちを身近に感じる都市型動物園

公式サイト

〒780-8010 高知市桟橋通6-9-1

Tel:088-832-0189

飼育動物 97種511点(平成26年3月末)

開園時間

9:00~17:00

休園日

水曜日(祝日の場合翌日)・12/28~1/1

アクセス

とさでん交通(路面電車)・はりまや橋経由桟橋方面行き 桟橋通5丁目下車、徒歩で約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

 

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わんぱーくこうちアニマルランドは、前身となる高知市立動物園(高知城・敷地内)が、「わんぱーくこうち」の一角に移転することで開園されました(1993/4/2)。「わんぱーくこうち」は、アニマルランドのほか、観覧車や遊具で遊べるプレイランドなどの7つの施設が池を囲んで配されています。この写真では、右側にアニマルランドのバードハウスが見えます(※)。

※バードハウスは、アニマルランドのメインの敷地とは道を挟んだ飛び地にあり、鳥たちが自由に飛ぶ中に来園者が歩み入る構造です。残念ながら、現在は展示動物への鳥インフルエンザ予防対策として公開を見合わせています。

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動物園、それはなによりも人と他の動物たちの得難い出逢いの場です。アニマルランドの、アムールトラ・ライオン・ジャガーの展示場には、窓越しにかれらと向き合える、特設のボックスがあります。

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アムールトラのオス・ウリは時に水遊びも披露。

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ジャガーのハルは5/25で20歳と、かれらの寿命(15~20年程度)としては高齢個体ですが、そのシャープさは衰えていません。

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ちょっとユーモラスな、ライオンのオス・絆(2011/7/15・秋吉台自然動物公園生まれ=同年・アニマルランド来園)。いまや、たてがみも立派な若獅子ぶりで、メスのサンと同居していますが、ほんの二年前には、まだ赤ちゃんと言いたくなるような様子でした。

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その頃の写真やエピソードは、ライオン舎に掲示された、このマンガ(「岡ちゃん日記」)で。「岡ちゃん日記」は飼育スタッフの一人が作成し、当園の定期機関誌『アニマルランドニュース』に連載されており、刷り出された作品も園内各所で楽しめます(※)。
※アニマルランドニュースはバックナンバーを含め、こちらからお読みいただけます(PDF形式)。わたしも、この1月に発行されたNo.78と、ただいま編集中のNo.79の2回にわたって、「アニマルランドの歩き方」というエッセイを寄稿させていただきました。本ブログと重なるところもありますが、あわせてお読みいただければ、さいわいです。

 

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こちらが、リアル「岡ちゃん」(※)。園の事務所では、時に貴重な制作現場も目撃できます。

※後ろに写っているのはサーバルキャットです。トラ・ライオン・ジャガーといった大型ネコ類もよいけれど、正門ゲートからすぐのかれらも是非、御一覧を。

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アニマルランドで出逢える、迫力満点の異国の動物たちを巡ってきました。

しかし、当園は地元・高知に根差し、四国の独自の自然環境を意識した園づくりをすることを柱のひとつとしています。足を止めて、まなざしを向ければ、しっかりとした存在感のホンドタヌキ。後ろに写り込むオブジェも和風です。

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柵を挟んで交錯するのは、四国産ニホンカモシカ。メスのササ(手前)、オスのコウ。現在、この二頭は繁殖を期待されています。野生のニホンカモシカは、ふだん単独生活を送り、繁殖期にめぐりあうことになります。そこで動物園でも、このようなかたちで「出逢い」を演出しているのです(タイミングを見て、同居させます)。

かつては四国の広い範囲に分布していたと考えられるニホンカモシカですが、いまは高知・徳島県境を中心とする地域にのみ生き残っています。その分布域内でも分散傾向を見せており、オスメスの「出逢い」の減少から、繁殖が心配されています。アニマルランドでは、この希少なカモシカたちを飼育繁殖して守るとともに、展示を通して、その存在価値を伝え続けています。当園から搬出された個体を基に、とくしま動物園・広島市安佐動物公園・上野動物園で、四国産ニホンカモシカが飼育展示されています。本州産と比べると見た目も小柄で、遺伝的にも四国での独自の進化が窺われます。

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屋内展示施設「アニマルギャラリー」。こちらでも、アニマルランドが誇る、地元産動物種の保全の成果に出逢うことが出来ます。

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水場、そして落ち葉が降り積もり、シダが繁る岸辺。それは、ある動物の生息環境のミニマムな再現となっています。

 

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朽ちかけたイヌタデの茎の狭間にいるのは、オオイタサンショウウオのオスです。そして、岸辺側の落ち葉に潜むのは、同じくメス。成体のオオイタサンショウウオは、普段、このメスのように陸上で暮らしています。しかし、繁殖期が近づくと、まずオスが水中に入り、続いて、メスたちも移動してきます。メスが産卵すると(卵嚢と呼ばれる、いくつもの卵が寒天質に包まれたかたまりを産みます)、オスはその卵嚢に抱き着いて授精します。メスがイヌタデの茎を好んで産卵するので、オスは御覧のような待ち伏せを行なっているのです。

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これがオオイタサンショウウオの幼生です(※)。えらがあるのが分かりますね。アニマルランドのオオイタサンショウウオ飼育では、主にバックヤードで本格的な繁殖に取り組んでいますが、この展示内で産卵が見られることもあるとのことです。
※2015/2/25孵化。アニマルランドでは、5年連続での成功となります。

 

その名の通り、オオイタサンショウウオは九州産の小型サンショウウオです。しかし、高知県西部にぽつんと野生の生息地があります。アニマルランドのスタッフは、この生息地を調査し、放っておけば、貴重な四国産オオイタサンショウウオが生息地ごと絶滅してしまうと判断しました。そのため、現地(生息地)の保全(域内保全)に協力するとともに(※)、飼育下での保全(「域外保全」と呼ばれます)にも努め、2011年、動物園・水族館としては、はじめて繁殖に成功しました(※※)。この成果に対して、日本動物園水族館協会から繁殖賞が与えられています。

※高知市の外になりますが、市当局からも理解が得られました。現地では、人工池をつくるなど、生息環境の整備が進められています。

※※今年、バックヤードでは、2011年生まれの個体も産卵し、飼育下3世が生まれようとしています。このように飼育下では4年程度で性成熟するらしい、というのも、今後に向けての貴重な知見となります。

 

四国産オオイタサンショウウオが、どのようにして現在の分布に至ったかは、よく分かっていません。数十万年の昔、九州と地続きだった時代に移入したものの名残でしょうか。さきほどの四国産ニホンカモシカもそうですが、四国とその外の動物相の対比は、わたしたちに生きものと日本列島の歴史の深みを教えてくれます。

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アニマルランドでは、飼育技術を向上し、良質の展示を維持するため、そして、飼育下ならではの観察を行なうために、バックヤードでも何種類もの小型サンショウウオを飼育しています。その中にも、四国という場所の特異性とつながった種が見られます。

イシヅチサンショウウオは、かつては、本州(関西)や九州の一部に分布するオオダイガハラサンショウウオと同種とされていましたが、近年の研究により、新たに別種と認定されました。他地域との隔たりが、長い時間の中で種の分化にまで至った例と考えられます。

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シコクハコネサンショウウオも、本州に広く分布するハコネサンショウウオと同種との、従来の判断が、最近になって改められました。

アニマルランドでは、オオイタサンショウウオでの経験を活かし、これらのサンショウウオたちの飼育繁殖技術をも確立しようと努めています(※)。その過程で得られる知見は、野生ではなかなか観察できない生態の解明にもつながり、結果として、生息地での野生個体の「域内保全」にも貢献すると考えられます。

わたしたち一般来園者は、普段、バックヤードを覗くことはありませんが、それらを含めての動物園の飼育の営みは、展示に反映され、また、印刷物やサイトなどでも情報が発信されます。専門的研究と、一般向けの知識の普及や意識の啓発、それこそは動物園(水族館)が「生きた動物を飼育展示する」意義の中核を成していると言えるでしょう。

以上のようなことを頭の隅に置きながら、あらためてアニマルギャラリーの「ミニマムなオオイタサンショウウオ展示」を観覧していただければと思います。

 

※高知県には、オオイタサンショウウオを含め、5種の小型サンショウウオの生息が確認されています。このうち、オオイタサンショウウオとカスミサンショウウオは、既に述べたような止水性(たまり水で繁殖する)ですが、イシヅチサンショウウオやシコクハコネサンショウウオ、そして、コガタブチサンショウウオは流水性(水流の中に入り込んで繁殖する)です。流水性のサンショウウオは、止水性に比べ、野生での繁殖行動の観察の難しさも増し、飼育下での環境整備(ミニマムな再現)の必要要素を見極めるのにも困難が伴います。コガタブチサンショウウオについては、岐阜県の世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふでの実践例も御覧ください(アクア・トトぎふは、同種で繁殖賞を受賞しています)。

コガタブチサンショウウオも、最近の研究で、ブチサンショウウオから独立種となりました。
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アニマルギャラリーでは、世界最大級の両生類として知られるオオサンショウウオも展示しています。土曜日の15:30からのエサの時間では、魚まるごと、ぱくりといった姿が見られることもあります。この個体は、広島県産ですが、実は、このオオサンショウウオについても、最近、アニマルランドも関わってのスペシャル・ニュースがありました。

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今年(2015/2/4)、アニマルランドのスタッフを含む調査チームが、高知県北西部の川で、オオサンショウウオの幼生16個体を発見しました。内15個体が、現在、アニマルランドのバックヤードで一時保護されています。これまでも、四国の川で成体のオオサンショウウオが見つかることはありましたが、人の手で移されたのだろうという見方が強く、実際、一部ではそのような証拠も挙がっていました。今回の発見で、オオサンショウウオが四国で繁殖していることが確かめられたと考えられます。果たして、オオサンショウウオは四国でも人の手によらない分布をしてきたのでしょうか。それもまた、一時保護されている幼生たちの遺伝的研究などを通して、解明されることが期待されています。

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アニマルランドの飼育スタッフが、高知県の川で捕獲した野生のオオサンショウウオに、マイクロチップを埋め込んでいます。こうして、個体識別をした上で再放流し、かれらの行動を継続観察することも、四国のオオサンショウウオの謎を探究する手立てです。

 

ニホンカモシカ、サンショウウオ、……「地域に根差し、その社会や環境とも連携する動物園」、それが、わんぱーくこうちアニマルランドの重要な顔のひとつです。

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園内「カモシカ村」に隣接する「いきもの情報室」。ここでも、アニマルランドのスタッフ自身のフィールドワーク(現地調査)を含む、高知県の生きものと環境に関する、新鮮で貴重な情報に触れることが出来ます。

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「無料動物園」の気楽さ。ちょっとゲートを出て、わんぱーく内のレストラン「わんぱく」で小休止。マッサマン・カレーは、ココナツミルクを使った、マイルドな口当たりのタイ風カレーです。

 

後篇では、あらためて、日頃の気忙しさを離れて憩えるアニマルランドの魅力、さらには飼育動物たちの心身の健康の維持のために、スタッフが弛まず続けている営みなどを御紹介していきます。

 

参考資料

吉川貴臣、渡部孝(2015)「四国初・高知県におけるオオサンショウウオ自然繁殖を確認」動物園大学5 in 高知・ポスター発表。

※高知新聞に連載され、園内各所にも掲示されている「いきものウォッチ・県内」の記事も参考にさせていただきました。

 

わんぱーくこうちアニマルランド

動物たちを身近に感じる都市型動物園

公式サイト

〒780-8010 高知市桟橋通6-9-1

Tel:088-832-0189

飼育動物 97種511点(平成26年3月末)

開園時間

9:00~17:00

休園日

水曜日(祝日の場合翌日)・12/28~1/1

アクセス

とさでん交通(路面電車)・はりまや橋経由桟橋方面行き 桟橋通5丁目下車、徒歩で約10分。

その他、こちらを御覧ください。