Archive for 3月, 2015

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モルモットは、アニマルランド・ふれあい広場の人気の的(夏季7~9月は暑さのため閉鎖します)。家族そろっての憩いの定番とも言えるでしょう。

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動物もまた、憩います。ひとときの陽だまりを楽しむ様子のトカラヤギのマレーは、推定17歳のメスです。前篇で御紹介したジャガーのハル同様、この動物種の寿命としてはまぎれもない高齢者ですが、メニューや与え方をカスタマイズされた食事や、運動不足で伸びすぎてしまう蹄の定期的な手入れなど、さまざまな飼育的ケアの中で、のんびりと暮らすことができています。

さわったりできることで、ぬくもりや手ざわりなどの実感を与えてくれる、ふれあい動物たちですが、マレーのような事例を知り、あらためて目を向けることで、わたしたちは、さらに深く、いのちを感じ、学べるように思います。

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園内に記念展示がなされている(※)グラントシマウマのランは、アニマルランドの前身・高知市立動物園の時代から、通算9回の出産を行なってきたベテランでした。昨年(2014/10/15)、32歳の生涯を閉じましたが、国内最高齢の個体でした。けれども、ランの場合には高齢化による蹄の伸びすぎは、あまり問題にならなかったと言います。なぜでしょうか?

※2015/3/17現在。

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その秘密は、シマウマの運動場に敷き詰められた玉砂利にあります。これによって、効率的に蹄をすり減らすことが出来ます。広々としたサバンナでの活動に適応したシマウマの蹄。アニマルランドの玉砂利は、限られた空間の中でも、動物たちの快適な暮らしのための必要条件を整えていこうという工夫なのです。

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動物福祉の観点から、飼育下の動物たちの心身ともに健康な暮らしを実現するために、さまざまな手立てをこうじることを「環境エンリッチメント」と言います。アニマルランドでも、あちこちで環境エンリッチメントの実例と出逢うことが出来ます。

わたしたちと同じヒト科のチンパンジーは、とりわけて豊かな感情や知性を持つ存在です。「人工アリ塚」は、そんなかれらが、与えられた枝から葉を食べ、棒として利用することで、中に仕込まれたジュースを飲めるようにした装置です。その名の通り、野生のチンパンジーが棒を使って、塚の中のシロアリなどを釣り、食べてしまう行動の再現を狙っています。熱心に取り組むのは、メスのローラ(手前)とオスのヤマト。

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さらに、飼育員用の扉に向かうローラ。

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ここにも、こんな装置があります。枝の先を噛み潰しブラシ状にすることで、ジュースを染み込みやすくしているのが分かりますね。チンパンジーは道具を使うだけでなく、自ら道具をつくることも出来るのです。

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群れのバランスの関係で、現在、別の展示場で暮らすコータ。ヤマトの父親に当たります。多摩動物公園で生まれたコータは、同園での子ども時代に、人工アリ塚の使い方を学んでいます。アニマルランドのチンパンジーたちは、コータの行動を見習うことで、その技術を獲得していきました。

ここで御紹介したような行動を見ると「チンパンジーは賢いな」と実感できるでしょう。しかし、それはかれらが人間の真似をしているというのにとどまらず、わたしたちが「似た存在=進化の隣人」であるということです。だからこそ、人工アリ塚のような装置は、興味深い展示であるとともに、チンパンジーたちのための優れた環境エンリッチメントともなっているのです。

 

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最長老のタロー。今年で推定52歳となります。国内最高齢のチンパンジーは、今年で推定65歳を迎える、神戸市立王子動物園のジョニーですが、タローは、オスとしてはジョニーに次いで国内第2位の個体です。かれは、人工アリ塚のような複雑な操作は、あまり好まないようです。しかし、福祉の観点からは、それぞれの個体が自由に振る舞えれば、それでよいのだと考えられます。悠然と過ごすかれに年輪を感じるとともに、かれらチンパンジーが、はりめぐらされたロープや鉄骨などを、どのように利用するかも観察してみてください。わたしたちヒトは森を離れ、サバンナで直立二足歩行をすることで、いまのありようへと歩み出しましたが、チンパンジーは森にとどまり、いまだ樹上性を保っています。「近さ・遠さ」の両方を具体的に知ることが、真に動物たちと「出逢う」ことだと言えるでしょう。

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シーマは、マントヒヒのオスです。ごらんのようにアルビノ個体ですが、かれの展示場でも、穴を開けたパイプに固形飼料などを入れて、取り出しに工夫させるとともに、採食時間を引き延ばして退屈を防ぐ仕掛けがあります。動物種ごとに考案されるフィーダー(給餌器)は、代表的な環境エンリッチメントのひとつです。ここでは、床にまかれた細かい餌にも注目です。マントヒヒは、細くて器用な指先で、これらの餌を拾います。この方面の能力では、チンパンジーも、わたしたちヒトもかなわないでしょう。そこに、マントヒヒという動物の進化の方向性があります(※)。

※野生では、植物の根を掘ったり、細かな種を摘まんだりして採食しています。

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広々としたケージに、オスのワカとメスのよねこが同居するニホンツキノワグマの展示場。ここでも、採食に関する環境エンリッチメントが行われています。

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いったん、動物を収容した展示場。飼育員が、あちこちに餌を隠します(※)。クマ類は鋭い嗅覚を持つとともに、高い運動能力や、思いがけないほどの器用さも持っています。隠された餌を嗅ぎ当て、ブイを転用したフィーダーの中の餌も、巧みに振るって取り出します。すぐ目の前での食事は、展示としても大迫力です。

※展示場の床に敷き詰められた杉皮も、餌を隠すのに役立っています。

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高みでくつろぐ姿もまた、クマたちの自然な日常です。和やかな気持ちとともに、かれらが木登りも得意とすること、その意味で、三次元的に活用できる大ケージが、クマの飼育施設として理に適っていることも御一考いただければ、さいわいです。

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前篇で触れたように、現在は観覧に供するを中止しているバードハウス。しかし、そこでも鳥たちの日々は続いています。色鮮やかなショウジョウトキは南アメリカ北部原産。当園での繁殖は、一時の10年あまりのブランク等を経て、2012年から本格化しましたが、その背景には、実際にかれらの巣を模して枝を組んでみて、巣材の必要量を割り出し、供給するといった飼育員の研究・実践がありました。今年も6月頃のバードハウスは、ペアになったショウジョウトキたちの繁殖活動で華やぐことでしょう。

※写真に写り込んでいるのは、ショウジョウトキたちが枝を組んで巣をつくる助けとするための巣台です。巣台なしの、まったくの自然巣を組み上げるペアもいます。

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これはバックヤードで飼育されているショウジョウトキの幼鳥です。親と羽色が違いますね。ショウジョウトキの羽色は、食べもの(当園ではオキアミ)に含まれる色素に由来しています。地味な色の幼鳥も、せっせと採食し、色鮮やかな成鳥となっていきます。

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こちらにも、同じような生理を持つ鳥たちがいます。立ち上がり、首を曲げているのは、ヨーロッパフラミンゴの幼鳥(昨年生まれの個体)です。写真左の成鳥と比べると、くちばしや足などが色づいていないのが分かります。フラミンゴも食べものの色素で体を染め上げていくのです。

しかし、幼鳥のすぐ手前の個体にも注目してください。同じようにくちばしが色づいていませんが、幼鳥よりもだいぶ大きく、足だけは色鮮やかです。これは幼鳥の親に当たると思われます。フラミンゴの子どもは、自分で食事ができるようになる前、両親から口移しで栄養をもらいます。それは、両親の消化管の一部(そのう)からの分泌物で、「フラミンゴミルク」と呼ばれます。フラミンゴミルクは豊富な蛋白質などのほかに、体を色づかせるのに必要な色素も含んでいます。つまり、熱心に子育てに励む親は、結果として自分の体のための色素に不足を来たし、足などを例外としつつも、すっかり色あせてしまうのです。この個体、父親でしょうか、母親でしょうかね。

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そして、フラミンゴたち(※)にも、飼育員による繁殖補助がなされています。土を盛り上げた巣の上の卵……これは石膏でつくった「擬卵」です。フラミンゴは繁殖期になるとペアを組みますが、いつの間にか出来ている(実は飼育員が仕立てている)、見知らぬ巣や卵を見ると、俄然、繁殖意欲を駆られるようで、時には偽卵を排除してまで、自前の産卵に臨みます。野生のフラミンゴも、大群を成しつつもペアごとで営巣・産卵・育雛を行なうので、このような「競争心理」を引き出すことは自然なことであり、やはり、環境エンリッチメントとしての価値も担っていると言えるでしょう。

※アニマルランドでは、ヨーロッパフラミンゴのほか、ベニイロフラミンゴ・コフラミンゴを混合展示しています。

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こちらはバックヤードのひとこま。リンゴジュースと豆乳にパウダーフードを加えた餌を与えられているのは、シロビタイムジオウムの雛です。アニマルランドは、既に国内の動物園・水族館では初めて、シロビタイムジオウムの自然繁殖に成功しており、前篇でも御紹介した「繁殖賞」を得ていますが、今回は2羽の雛で、これも国内初の人工保育を試みています。雛たちは相前後して孵化しており、この時点で18日目と19日目でした(2015/3/16撮影)。体重の増加も順調です。そして、足の指(※)を御覧ください。4本ある指(小指はありません)が2本ずつに分かれて向き合うように変化しつつあります。

※正確には、第一趾(親指に相当)・第二趾というように数えます。

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こちらが園内で展示されている成鳥のシロビタイムジオウムです。2:2の指の配置が、枝や餌などをしっかり掴むのに適していることが分かるでしょう。成長中の雛も、進化がつくりあげた、そのような形質を着々と獲得しつつあるのです。

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さらに、バックヤードで進行中の鳥類保育。手前にいるのは、当園初の人工保育で成熟しつつあるカラスバトです。この個体は高知県産ではありませんが、カラスバトは高知県の離島にもわずかに生息しています。そこでアニマルランドでは、カラスバトの「域外保全(※)」に貢献することも視野に入れて、飼育技術の向上に努めています。奥にいるのは、去年生まれのアオバト。ハト同士で採食行動などを見習わせるための、いわば「先生役」です。

※生息地の外で、種の保存に努めること。前篇の小型サンショウウオの事例も御参照ください。

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キュウシュウムササビのモマ(※)は、普段はバックヤードにいますが、ふれあいイベントなどに出ることもあります。3歳のオスで、幼い頃に保護され、人の手で育てられました。人馴れしたかれならではのかたちで、わたしたちに「ムササビという動物」を教える役割を担っています。

※土佐弁では、ムササビとモモンガを一括りに「モマ」と呼ぶそうです(キュウシュウムササビは、九州・四国に分布します)。

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屋内展示施設・アニマルギャラリーにも、キュウシュウムササビがいます。姿を見せるのは稀ですが、時には根気よく「レア体験」を狙ってみてもよいかもしれません。

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ムササビの傍ら。囲い込まれたホンシュウモモンガの住みかです。図鑑では実感しにくい、ムササビとの大きさのちがいなども、一目で分かります(根気よく、が鍵ですね)。

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こちらも、アニマルギャラリー内の地元産動物。八色(やいろ)にとどまらない羽色の豊かさのヤイロチョウは、高知県や四万十町の鳥に指定されています。毎年五月ごろに南方から西日本に飛来しますが、はじめて営巣が確認されたのは四万十川流域でした。「森の妖精」という呼び名にふさわしく、しばしば声はすれども姿は見えず……動物園展示は当園のみです。この個体はピッタと呼ばれており、8歳以上であるのは確かです。それがヤイロチョウにとっては、どのくらいの年配に当たるのか、そんなことも含め、ピッタがわたしたちに教えてくれる貴重な情報は尽きないものと思われます。

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再び、動物園ならではの異国の動物たち。マダガスカル原産のワオキツネザル。メスのワッキーの赤ちゃんは、3/14に生まれたばかりです。しっかりと母親のおなかにつかまり、この時点(2015/3/16)では性別も不詳でした。それでも、モール細工のような尾を含め、ひと通りは親のミニチュアになっていますね。近在の皆様は、折々の成長を楽しみに通われればと思います。

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2012/8/11に当園で生まれ、母親個体の母乳不足を飼育員による哺乳サポートで乗り越えながら育ってきたメスのナルコ(鳴子)も、いまや、オスのシンと仲睦まじい姿を見せてくれています。

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そんなアリクイたちの食事はこちら。長く粘り気のある舌でアリを舐めとって食べることに特化し、口を大きく開けることが出来ないかれらのために、動物園では特製の流動食を与えています。その配合も、動物たちの様子を観察しながら、弛みない飼育の営みの中で改良され続けています。

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最後は、アフリカタテガミヤマアラシの一家です。マサキ(オス)は2014/7/6生まれ。時には親孝行の(?)毛づくろいも見せてくれます。まだ両親とは見分けがつきますが、齧歯類の成長は早いものです。是非、マサキの「少年時代」をお見逃しなく。
そんなマサキに心惹かれたなら、開催中(4/5・日曜まで)のイベント「わんぱーくこうちまつり」がお勧めです。チューリップの展示等が行われていますが、4/5には、イベント広場で「アニマルランドクイズ大会」も開かれます(※)。実際の動物園で動物たちとの時間を堪能し、「クイズ王」を目指してみてはいかがですか。

※雨天の場合、クイズ・ラリーに変更。その他、まつりの詳細は、こちらを御覧ください。

 

 

参考資料

中村滝男(2001)『ヤイロチョウ』ポプラ社

久川智恵美、岡本宏昭、吉澤未来、山崎由希、吉川貴臣、山本將充 (2015)「わんぱーくこうちアニマルランドの環境エンリッチメント」動物園大学5 in 高知・ポスター発表。

わんぱーくこうちアニマルランド/吉川飼育係のコアリクイ子育て奮闘記「いつか脱走するのかな?

 

 

わんぱーくこうちアニマルランド

動物たちを身近に感じる都市型動物園

公式サイト

〒780-8010 高知市桟橋通6-9-1

Tel:088-832-0189

飼育動物 97種511点(平成26年3月末)

開園時間

9:00~17:00

休園日

水曜日(祝日の場合翌日)・12/28~1/1

アクセス

とさでん交通(路面電車)・はりまや橋経由桟橋方面行き 桟橋通5丁目下車、徒歩で約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

 

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わんぱーくこうちアニマルランドは、前身となる高知市立動物園(高知城・敷地内)が、「わんぱーくこうち」の一角に移転することで開園されました(1993/4/2)。「わんぱーくこうち」は、アニマルランドのほか、観覧車や遊具で遊べるプレイランドなどの7つの施設が池を囲んで配されています。この写真では、右側にアニマルランドのバードハウスが見えます(※)。

※バードハウスは、アニマルランドのメインの敷地とは道を挟んだ飛び地にあり、鳥たちが自由に飛ぶ中に来園者が歩み入る構造です。残念ながら、現在は展示動物への鳥インフルエンザ予防対策として公開を見合わせています。

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動物園、それはなによりも人と他の動物たちの得難い出逢いの場です。アニマルランドの、アムールトラ・ライオン・ジャガーの展示場には、窓越しにかれらと向き合える、特設のボックスがあります。

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アムールトラのオス・ウリは時に水遊びも披露。

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ジャガーのハルは5/25で20歳と、かれらの寿命(15~20年程度)としては高齢個体ですが、そのシャープさは衰えていません。

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ちょっとユーモラスな、ライオンのオス・絆(2011/7/15・秋吉台自然動物公園生まれ=同年・アニマルランド来園)。いまや、たてがみも立派な若獅子ぶりで、メスのサンと同居していますが、ほんの二年前には、まだ赤ちゃんと言いたくなるような様子でした。

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その頃の写真やエピソードは、ライオン舎に掲示された、このマンガ(「岡ちゃん日記」)で。「岡ちゃん日記」は飼育スタッフの一人が作成し、当園の定期機関誌『アニマルランドニュース』に連載されており、刷り出された作品も園内各所で楽しめます(※)。
※アニマルランドニュースはバックナンバーを含め、こちらからお読みいただけます(PDF形式)。わたしも、この1月に発行されたNo.78と、ただいま編集中のNo.79の2回にわたって、「アニマルランドの歩き方」というエッセイを寄稿させていただきました。本ブログと重なるところもありますが、あわせてお読みいただければ、さいわいです。

 

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こちらが、リアル「岡ちゃん」(※)。園の事務所では、時に貴重な制作現場も目撃できます。

※後ろに写っているのはサーバルキャットです。トラ・ライオン・ジャガーといった大型ネコ類もよいけれど、正門ゲートからすぐのかれらも是非、御一覧を。

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アニマルランドで出逢える、迫力満点の異国の動物たちを巡ってきました。

しかし、当園は地元・高知に根差し、四国の独自の自然環境を意識した園づくりをすることを柱のひとつとしています。足を止めて、まなざしを向ければ、しっかりとした存在感のホンドタヌキ。後ろに写り込むオブジェも和風です。

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柵を挟んで交錯するのは、四国産ニホンカモシカ。メスのササ(手前)、オスのコウ。現在、この二頭は繁殖を期待されています。野生のニホンカモシカは、ふだん単独生活を送り、繁殖期にめぐりあうことになります。そこで動物園でも、このようなかたちで「出逢い」を演出しているのです(タイミングを見て、同居させます)。

かつては四国の広い範囲に分布していたと考えられるニホンカモシカですが、いまは高知・徳島県境を中心とする地域にのみ生き残っています。その分布域内でも分散傾向を見せており、オスメスの「出逢い」の減少から、繁殖が心配されています。アニマルランドでは、この希少なカモシカたちを飼育繁殖して守るとともに、展示を通して、その存在価値を伝え続けています。当園から搬出された個体を基に、とくしま動物園・広島市安佐動物公園・上野動物園で、四国産ニホンカモシカが飼育展示されています。本州産と比べると見た目も小柄で、遺伝的にも四国での独自の進化が窺われます。

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屋内展示施設「アニマルギャラリー」。こちらでも、アニマルランドが誇る、地元産動物種の保全の成果に出逢うことが出来ます。

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水場、そして落ち葉が降り積もり、シダが繁る岸辺。それは、ある動物の生息環境のミニマムな再現となっています。

 

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朽ちかけたイヌタデの茎の狭間にいるのは、オオイタサンショウウオのオスです。そして、岸辺側の落ち葉に潜むのは、同じくメス。成体のオオイタサンショウウオは、普段、このメスのように陸上で暮らしています。しかし、繁殖期が近づくと、まずオスが水中に入り、続いて、メスたちも移動してきます。メスが産卵すると(卵嚢と呼ばれる、いくつもの卵が寒天質に包まれたかたまりを産みます)、オスはその卵嚢に抱き着いて授精します。メスがイヌタデの茎を好んで産卵するので、オスは御覧のような待ち伏せを行なっているのです。

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これがオオイタサンショウウオの幼生です(※)。えらがあるのが分かりますね。アニマルランドのオオイタサンショウウオ飼育では、主にバックヤードで本格的な繁殖に取り組んでいますが、この展示内で産卵が見られることもあるとのことです。
※2015/2/25孵化。アニマルランドでは、5年連続での成功となります。

 

その名の通り、オオイタサンショウウオは九州産の小型サンショウウオです。しかし、高知県西部にぽつんと野生の生息地があります。アニマルランドのスタッフは、この生息地を調査し、放っておけば、貴重な四国産オオイタサンショウウオが生息地ごと絶滅してしまうと判断しました。そのため、現地(生息地)の保全(域内保全)に協力するとともに(※)、飼育下での保全(「域外保全」と呼ばれます)にも努め、2011年、動物園・水族館としては、はじめて繁殖に成功しました(※※)。この成果に対して、日本動物園水族館協会から繁殖賞が与えられています。

※高知市の外になりますが、市当局からも理解が得られました。現地では、人工池をつくるなど、生息環境の整備が進められています。

※※今年、バックヤードでは、2011年生まれの個体も産卵し、飼育下3世が生まれようとしています。このように飼育下では4年程度で性成熟するらしい、というのも、今後に向けての貴重な知見となります。

 

四国産オオイタサンショウウオが、どのようにして現在の分布に至ったかは、よく分かっていません。数十万年の昔、九州と地続きだった時代に移入したものの名残でしょうか。さきほどの四国産ニホンカモシカもそうですが、四国とその外の動物相の対比は、わたしたちに生きものと日本列島の歴史の深みを教えてくれます。

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アニマルランドでは、飼育技術を向上し、良質の展示を維持するため、そして、飼育下ならではの観察を行なうために、バックヤードでも何種類もの小型サンショウウオを飼育しています。その中にも、四国という場所の特異性とつながった種が見られます。

イシヅチサンショウウオは、かつては、本州(関西)や九州の一部に分布するオオダイガハラサンショウウオと同種とされていましたが、近年の研究により、新たに別種と認定されました。他地域との隔たりが、長い時間の中で種の分化にまで至った例と考えられます。

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シコクハコネサンショウウオも、本州に広く分布するハコネサンショウウオと同種との、従来の判断が、最近になって改められました。

アニマルランドでは、オオイタサンショウウオでの経験を活かし、これらのサンショウウオたちの飼育繁殖技術をも確立しようと努めています(※)。その過程で得られる知見は、野生ではなかなか観察できない生態の解明にもつながり、結果として、生息地での野生個体の「域内保全」にも貢献すると考えられます。

わたしたち一般来園者は、普段、バックヤードを覗くことはありませんが、それらを含めての動物園の飼育の営みは、展示に反映され、また、印刷物やサイトなどでも情報が発信されます。専門的研究と、一般向けの知識の普及や意識の啓発、それこそは動物園(水族館)が「生きた動物を飼育展示する」意義の中核を成していると言えるでしょう。

以上のようなことを頭の隅に置きながら、あらためてアニマルギャラリーの「ミニマムなオオイタサンショウウオ展示」を観覧していただければと思います。

 

※高知県には、オオイタサンショウウオを含め、5種の小型サンショウウオの生息が確認されています。このうち、オオイタサンショウウオとカスミサンショウウオは、既に述べたような止水性(たまり水で繁殖する)ですが、イシヅチサンショウウオやシコクハコネサンショウウオ、そして、コガタブチサンショウウオは流水性(水流の中に入り込んで繁殖する)です。流水性のサンショウウオは、止水性に比べ、野生での繁殖行動の観察の難しさも増し、飼育下での環境整備(ミニマムな再現)の必要要素を見極めるのにも困難が伴います。コガタブチサンショウウオについては、岐阜県の世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふでの実践例も御覧ください(アクア・トトぎふは、同種で繁殖賞を受賞しています)。

コガタブチサンショウウオも、最近の研究で、ブチサンショウウオから独立種となりました。
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アニマルギャラリーでは、世界最大級の両生類として知られるオオサンショウウオも展示しています。土曜日の15:30からのエサの時間では、魚まるごと、ぱくりといった姿が見られることもあります。この個体は、広島県産ですが、実は、このオオサンショウウオについても、最近、アニマルランドも関わってのスペシャル・ニュースがありました。

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今年(2015/2/4)、アニマルランドのスタッフを含む調査チームが、高知県北西部の川で、オオサンショウウオの幼生16個体を発見しました。内15個体が、現在、アニマルランドのバックヤードで一時保護されています。これまでも、四国の川で成体のオオサンショウウオが見つかることはありましたが、人の手で移されたのだろうという見方が強く、実際、一部ではそのような証拠も挙がっていました。今回の発見で、オオサンショウウオが四国で繁殖していることが確かめられたと考えられます。果たして、オオサンショウウオは四国でも人の手によらない分布をしてきたのでしょうか。それもまた、一時保護されている幼生たちの遺伝的研究などを通して、解明されることが期待されています。

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アニマルランドの飼育スタッフが、高知県の川で捕獲した野生のオオサンショウウオに、マイクロチップを埋め込んでいます。こうして、個体識別をした上で再放流し、かれらの行動を継続観察することも、四国のオオサンショウウオの謎を探究する手立てです。

 

ニホンカモシカ、サンショウウオ、……「地域に根差し、その社会や環境とも連携する動物園」、それが、わんぱーくこうちアニマルランドの重要な顔のひとつです。

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園内「カモシカ村」に隣接する「いきもの情報室」。ここでも、アニマルランドのスタッフ自身のフィールドワーク(現地調査)を含む、高知県の生きものと環境に関する、新鮮で貴重な情報に触れることが出来ます。

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「無料動物園」の気楽さ。ちょっとゲートを出て、わんぱーく内のレストラン「わんぱく」で小休止。マッサマン・カレーは、ココナツミルクを使った、マイルドな口当たりのタイ風カレーです。

 

後篇では、あらためて、日頃の気忙しさを離れて憩えるアニマルランドの魅力、さらには飼育動物たちの心身の健康の維持のために、スタッフが弛まず続けている営みなどを御紹介していきます。

 

参考資料

吉川貴臣、渡部孝(2015)「四国初・高知県におけるオオサンショウウオ自然繁殖を確認」動物園大学5 in 高知・ポスター発表。

※高知新聞に連載され、園内各所にも掲示されている「いきものウォッチ・県内」の記事も参考にさせていただきました。

 

わんぱーくこうちアニマルランド

動物たちを身近に感じる都市型動物園

公式サイト

〒780-8010 高知市桟橋通6-9-1

Tel:088-832-0189

飼育動物 97種511点(平成26年3月末)

開園時間

9:00~17:00

休園日

水曜日(祝日の場合翌日)・12/28~1/1

アクセス

とさでん交通(路面電車)・はりまや橋経由桟橋方面行き 桟橋通5丁目下車、徒歩で約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

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国営海の中道海浜公園のなかにある「動物の森」。 園内の一角は、一面の菜の花 (2015/2/28撮影)。

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標高・約16mにある、一番の高所「展望の丘」 (一枚目の写真奥)からは、博多湾・玄界灘が望めます(展望台の黄色い旗は海抜7m以上の高台を示します)。

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丘の麓には水鳥の池。コブハクチョウの、ちょっと意外な(?)脚の畳み方。

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池のほとりにはレストハウス。動物着ぐるみ体験のコーナー(無料)があります。

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さらに売店では、オリジナル缶バッジや、自由にメッセージが書き込める吹き出し付の絵葉書。これらオリジナル・グッズの詰め合わせセットもあります。

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そして、このパネル。園内展示を支える理念のひとつ「環境エンリッチメント」の解説です。ひとことでいうなら「飼育下の動物たちの暮らしを豊かにする」ということですが、動物の森では、それぞれに本来の生息地に適応し、独自の生態や社会性を持つ動物たちのために、そして、そんなかれらを来園者に実感してもらうために、飼育環境を少しでも本来の生息地に近づけるべく努めています。そんなことを念頭に置きながら、園内散策に出発しましょう。

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まさに目の前の水辺で群れるフラミンゴ。全部で3種類が飼育展示されています。このような列を成した姿は、夕刻近くに、よく見られます。羽の一部を処理しているので、飛んで行ってしまうことはありませんが、吹きつける風に向かってはばたくさまも観察できます(2010/9/23撮影)。

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そして、こちらのゴム・チューブの輪。水面に撒いた固形飼料が広がって、岸辺に流れ寄ってしまわないようにしています。画面奥に注目。カラスたちです。出来る限り、ケージなどで囲い込まない展示を行なっている園内ですが、それゆえにカラスを代表として、餌などを狙ってくる存在もあります。この輪は、そんなカラス対策です。フラミンゴたちは、独特のカーブのくちばしを活かしながら、水面の餌を巧みに食べますが、体の重いカラスは、このチューブには留まれません。なにげない輪にも、フラミンゴへの飼育的配慮が込められているのです。

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こちらも水に囲まれたフサオマキザルの島。多くの霊長類は水に入ることを好みません。その習性を活かし、ここでもオープンエアの飼育展示が可能となっています。

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手渡しの給餌は、やはりカラスなどに奪われることを防ぐため。そして、群れで暮らすかれらの個体ごとの食事量を調節する目的もあります。

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この箱もカラス避けで、中に餌を入れます。

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「南米のチンパンジー」ともいわれるフサオマキザルの知能や器用さなら、蓋付の箱に入った餌を取り出すのはたやすいこと。しかし、カラスには「手」が出せません。

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こちらの「福引」式の仕掛けも固形飼料が仕込めます。手間や時間をかけての食事は、野生での採食のあり方に通じるとともに、動物たちの飼育下での退屈を防ぎ、かれらの能力を生き生きと展示することにもなります。

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張りめぐらされたロープが、南アメリカの森に適応したかれらの姿を引き出します。

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メスのミヅキは、2014/11/9に出産しました。群れの個体それぞれの写真付き紹介パネルもありますので、お目当てを決めて探してみるのも楽しいでしょう。

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親離れしはじめた子どもたちは、一番活発な時期です。こうして運動能力を高めつつ、群れでの社会性も身に着けていくのです。

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こちらはクロクモザルの展示場。

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しっかりと巻きつけることのできる尾、いわば「第五の手」を活かして、アクロバティックな動きもお手のもの。

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わたしたち同様、自由度の高い肩関節を持つので、このような「枝渡り」もできます。さきほど御紹介したフサオマキザルのロープの渡り方と比べてみてください。

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時には立ちあがることも。こんな動きからも、体幹や足などの構造が見て取れます。

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かれらも群れで暮らすため、社会的にもアクティヴさを持っています。

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ボリビアリスザルの島には、来園者が島に入り込み、フェンス一枚でリスザルたちと出逢える「ビューシェルター」があります。

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安全を確信しているのでしょう。ほんのすぐそこで寛ぐ姿も観察できます。

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水に入ることはなくても、飲んだり戯れたりは、よくあることです。木立ちの中のリスザルに、アマゾンの熱帯雨林が偲ばれます。

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「ふれあい動物舎」では、また別のかたちで動物たち(モルモット)との間近さを体験できます(※)。

※来園者の御了解を得て掲載しています。

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ゆるやかな時間を過ごすポニーたち。4/4(土)~5/6(水)の土日祝日には、別途設けられた円周状の会場で、かれらと乗馬体験を楽しむこともできます(※)。

※各種イベントには有料のもの・期間限定のものもあります。詳しくは園のサイトや園内情報で御確認ください。

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今年の干支のヒツジ。4/25(土)~5/6(水)の土日祝日には「毛刈りイベント」が行なわれます。ウマ・ヒツジなどの家畜は、わたしたち人間が生活をともにするべく改良を繰り返し、つくりあげてきたものです。ヒツジの毛は定期的に刈ってやらないと伸びすぎてしまいます。野生動物に対しては、適切な距離を保って、かれら本来の生活環境ともどもに守っていくことが必要です。一方で、より積極的に交わり、ふれあい、そして世話もしていかなければならない家畜のありようにも関心を向けていたいと思います。

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指定された餌を購入することで、餌やり体験も楽しめます。

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ヤギの運動場につくられた櫓構造。ヤギは元々、高いところを好み、岩山などでもダイナミックに活動できる能力を持っています。ここにも、飼育動物の生活を少しでも豊かにしようという、動物福祉の観点からの環境エンリッチメントが行なわれているのです。

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こちらは、南アメリカ産の齧歯類2種(カピバラ・マーラ)の暮らす中に、わたしたちが歩み入ることができるエリアです。
世界の齧歯類の最大種であるカピバラは、半水生ゆえに目・鼻・耳が一列に並んだ配置になっています。カバと同様、水に身を潜めながら、視覚・嗅覚・聴覚で、あたりの様子をモニターできるのです。成熟したオスの証である鼻づらの盛り上がり(モリージョ)が目立つのは、オスのケージ(当年5歳)です(※)。
一方でマーラは、草原に適応してウサギや小鹿を思わせる容姿に進化しました。
3/28(土)~5/6(水)の土日祝日には、カピバラ・リスザルの餌やりに、来園者も参加できます。いつも以上に親しく観察すれば、ケージを見つけるのも、あっという間?

※このエリアにも個体識別プレートが備わっています。

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個体識別と言えば、ラマだって、見わけられます。昼下がり、おしなべて寛ぐラマたち。その中でひとり、干し草の残りなど食べているのは、顔の模様が個性的なハニー(メス)です。

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マナヅルとなると、見わけることは難しいかもしれませんが……。向かって右側のケージにいるのは、つがいの2羽です。

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そして、左側は、かれらつがいの子どもで、オスメスのきょうだいです。親から子へ、動物園のいのちをつなぐ繁殖の営みが、そこにあります。

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そんないのちの連なりは、ここにも。カピバラに隣接するアカカンガルーのエリア。一枚目の写真の奥では、母親の育児嚢(ふくろ)から、かなり育った子どもの肢が覗いています。かたや、寛ぐ別のメスの育児嚢に収まった子は、毛も生えそろわぬ尻尾を見せています。こちらは、独り立ちにはまだしばらくかかりそうです。

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通り抜けのできるカンガルー・エリアの片方のゲート脇には、カンガルーの育児嚢の中での子供の成長を順繰りに見ることができる解説装置が設けられています。

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こちらはイエウサギ。家畜と捉えることができ、動物の森の飼育個体も、一部が交代で、ふれあい動物舎(前掲)に出ています。しかし、かれらは元々はヨーロッパ系のアナウサギ(野生動物)を飼いならしたものです。

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かれらが放し飼いにされた、この運動場では、穴掘り行動や、後ろ足が前に着き、前足2本は前後に並ぶという独特の足運びでの走りなど、当園のコンセプトにふさわしい自然な習性の数々が観察できます。穴は、そのままにしておくとウサギが脱走してしまうので、ウサギを寝部屋に収容した後に、飼育員が埋め戻しています。

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こちらも、動物たちの自然な暮らしを支える飼育の営みが見て取れる構図。オグロプレーリードッグは、自分たちで掘った巣穴で暮らしています。しかし、そんな野生的な生活が出来るのも、日々の整備に余念がない飼育員の働きがあってこそです。動物園は、もっぱら「野生を展示する場」。だからこそ、そんなありようの基盤となる、行き届いた施設や入念な飼育管理が必要なのです。

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広々とした園内を一番満喫しているかとも思われるエジプトガン。園内随所で出逢えます。かれらとわたしたちが、ともに和める世界。それは人の手で支えていかなければならないものでもあります。動物の森の日常は、それを教えてくれているように思えます。

 

次回は、3/25(水)の掲載予定です。

 
海の中道海浜公園・動物の森
人と自然がふれあう動物園
公式サイト
〒811-0321 福岡市東区大字西戸崎18-25
Tel:092-603-1111(海の中道海浜公園管理センター)
飼育動植物 約50種500点
開館時間
3/1~10/31 9:30~17:30
11/1~2月末 9:30~17:00
※プール営業日は、9:00~18:30(季節によって変更することがあります)
休館日
12/31・1/1・2月の第1月曜日とその翌日
自然災害(台風・大雨・地震・津波等)によりお客様の安全な利用が確保できない場合は臨時休園します。

アクセス
JR香椎線・海ノ中道駅下車すぐの海の中道駅口ゲートから動物の森東口まで、徒歩で約20分(※)。詳しくは、こちらを御覧ください。

園内移動用のパークトレインやレンタサイクルもあります。

 

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両生類といえば、まずはカエルが思い浮かぶかと思います。アクア・トトぎふでも、たとえば、山間部に住むモリアオガエルが飼育展示されています。吸盤の発達した足は、野生での樹上生活、そして水槽の内壁にも、この通り。

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カエルは、尾を持たない両生類「無尾類」ですが、両生類には尾の発達したものも多数存在します。さきほど、モリアオガエルと水槽内で同居していたアカハライモリも、そんな「有尾類」のひとつです(※)。こちらの写真は、もうひとつ別の水槽で撮影したものですが、水草を後ろ足で挟む独特の姿を見せているのは、メスの個体です。アカハライモリは、こうやって水草に卵を産みつけるのです。

 

※現生の両生類には、他に「無足(アシナシイモリ)類」がいます。

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アクア・トトぎふの水槽内では、オスがメスに求愛する様子も観察されています。

アクア・トトぎふほかの観察の中で確認されている段取りとしては、まず、オスがメスの肩のあたりに後ろ足を載せて、尾を振ります。メスが受け入れの反応を示すと、オスはメスを先導するように移動しながら、精包(精子の詰まったカプセルのようなもの)を排出します。後からついてきたメスは精包を取り込み、メスの体内で受精が行なわれた後、さきほどのような産卵に至ります。

これらの行動のディテールは地域によって異なることが知られ、外観の地域差などとともに、日本産のアカハライモリのさらなる分類・系統づけに関する議論が重ねられています。アクア・トトぎふの二つの水槽での岐阜・愛知県産の個体の観察と、積極的な対外報告も、そのような議論に貢献する貴重なデータとなっていくでしょう。

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世界最大級の両生類であるオオサンショウウオも、清流近くの生きもののひとつとして展示されています。

オオサンショウウオは日本の固有種であり、その分布も中部・西南日本の一部に限られています。また、河川の改修工事(コンクリートの護岸)などによる生息環境の破壊・喪失もあり、国の特別天然記念物に指定されているとともに、その保全にも多くの取り組みがなされています。

しかし、「日本のサンショウウオ」と言うとき、そこにはオオサンショウウオのほかにも、多くの小型サンショウウオが含まれます。それらのほとんども日本固有種で、個々の種の分布範囲はかなり限られています。

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各地の動物園・水族館でも、地元産の小型サンショウウオの飼育展示が試みられています。

札幌市円山動物園では、2011年春に新設された「は虫類・両生類館」の一角で、エゾサンショウウオの小柄ながらも独特のつややかな姿が観察できます。

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こちらの2点は、いしかわ動物園(石川県)。石川県の水辺の環境を上流から河口にわたって再現した「郷土の水辺」の展示の一環として、ホクリクサンショウウオ・アベサンショウウオが展示されています。アベサンショウウオは、園の周辺の里山にも生息しますが、繁殖等に適した環境は限られます。いしかわ動物園は、ホクリクサンショウウオ(2001年)・アベサンショウウオ(2011年)の、国内の動物園・水族館初の飼育下繁殖に成功し、日本動物園水族館協会(日動水)より繁殖賞を受賞しました。

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地元・岐阜の淡水生物を重視するアクア・トトぎふでも、多くの小型サンショウウオの飼育や展示が試みられています。これはクロサンショウウオ。全長20cm弱まで成長することもある比較的大型の種で、山麓部から2000m級の高山まで生息しています。

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こちらは、ヒダサンショウウオとコガタブチサンショウウオ。同所的に生息していることもあるので、同じ水槽で展示されています。日本にはオオサンショウウオ科・サンショウウオ科を合わせたサンショウウオ類が29種類生息するとされますが、岐阜県では、そのうち7種が確認されています。アクア・トトぎふでは、オオサンショウウオと、後出のカスミサンショウウオを含め4種の小型サンショウウオを常設展示しています。

しかし、これらが当館のサンショウウオ飼育のすべてではありません。さらに大きな飼育の営みの広がりがあり、わたしたちの目に触れる展示を支える基盤となっています。動物園・水族館は「種明かし」されてこそ、さらに楽しめ、深く学べる場であると思います。ここでも、アクア・トトぎふの御厚意をうけて、少しばかり、バックヤード見学をさせていただきましょう。

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いきなりながら、暗幕で包まれた装置。開ければ、中には、こんなものが。小型サンショウウオを入れた飼育ケースです。

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さきほどと同一仕様の、別のケースを開けていただきました。コガタブチサンショウウオです。手前の木切れの下に、奥に写り込んだ一群が潜んでいました。コガタブチサンショウウオの成体(おとな)は、森の落ち葉の下や腐葉土の中で暮らしていますが、繁殖期になると、地下を流れる水(伏流水)に入り込んでいきます。オスとメスは伏流水の中で出逢います。つまり、かれらにとっては、暗い水の中こそが繁殖の場なのです。

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さきほどの暗幕の中には、さらに暗幕の掛けられる場所があり、そこに設けられた小水槽は、サンショウウオのいる飼育ケースとパイプでつながれています。このパイプには適量の水流がつくられています。この小水槽が繁殖の場であり、装置全体は、暗がりの中で伏流水を遡るという環境条件の再現となっています。コガタブチサンショウウオでは、取材時(2015/2/12)、パイプの連結は外されていましたが、さきほどの写真の、密閉したままの飼育ケースにはハコネサンショウウオが飼育されており、こちらではパイプの連結を見学することが出来ました。アクア・トトぎふでは、既に、このシステムでのコガタブチサンショウウオの繁殖に成功しています(※)。そして、さらに深くまで伏流水の中に入り込んで繁殖するというハコネサンショウウオについても、同様の手法を試しているところなのです。

 

※2012年、繁殖賞受賞。2014年には、同じ日動水から「コガタブチサンショウウオにおける飼育繁殖の試み」に対する技術研究表彰も受けています。

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これは館内展示として流されているビデオのひとこまです。暗い繁殖の場で、コガタブチサンショウウオのオスがメスの産んだ卵のう(卵の詰まった袋状の構造)に抱きついています。地下で行なわれる野生の繁殖行動の詳細を観察することは、きわめて困難ですが、飼育下で環境条件を再現することで、このような貴重な行動記録が得られるのです。

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こちらは昨年(2013年)5月に産みつけられた卵から孵った、コガタブチサンショウウオたちです。

アクア・トトぎふのバックヤードの、コガタブチサンショウウオの繁殖装置を、展示を観賞するようなまなざしで見るなら、予備知識なしでは「生息地の再現」と理解することは難しいでしょう。しかし、解説を受けたり、いささかの学びをするなら、もっぱら人工物の組み合わせでつくられた飼育装置が、見事に、サンショウウオにとって必要な生息環境の条件をピックアップし、組み込んでいることが分かるでしょう。

一般市民としての来園者を意識するなら、外見の再現を重んじた「生息地のミニチュア」の展示効果・伝える力は無視できません。そういう展示に触れることで、人はあたかも実際の生息地を訪れたように想いを抱くこともあるのです。しかし同時に、見た目とは別に、異国や、わたしたちの日常空間とは隔てられた場に生きる動物たちにとって必要な飼育条件を問い詰め、ミニマムな構造・機能の必要をクリアすることは、「生きた(野生)動物を飼育展示する」動物園・水族館において、不可欠の飼育の営みと言えるでしょう。

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常に低温に保たれたインキュベーター。この中には、ハクバサンショウウオの飼育ケースが収められています。岐阜県でも、飛騨市・高山市など県北部で生息が確認されていますが、アクア・トトぎふの外気温(特に夏場)では適切な飼育は難しいと考えられ、御覧のような対処が行なわれています(※)。どんな環境条件を整えることで、かれらの生育・生存・繁殖等を保証できるか。ここにも「ミニマム」を把握する探究があります。

 

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こちらは、2014/6生まれの、ハクバサンショウウオの幼体です。スタッフの想いと手に支えられて、ゆっくりと育っていきます。

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衣装ケースの中はコオロギ、棚の上の瓶はショウジョウバエです。サンショウウオばかりでなく、カエル類などの餌にもなります。

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前篇で御紹介したカワネズミ(No.4)。この種としては高齢と思われながらも、マイペースな健やかさが印象的ですが、他に4頭のカワネズミがバックヤードで飼育されています。ペアリング(繁殖)も試みられています。かれらについても、飼育下ならではの貴重なデータが積み上げられていくことでしょう。

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再び、小型サンショウウオ。こちらは屋外の施設です。ハクバサンショウウオなどとは対照的に、ここの外気温や四季の変化に適応できる種については、まずは自然条件そのものの助けを得ながらの飼育が行なわれます。そこから、さらに環境条件のピックアップへと、飼育のステップは進んでいくのです。

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クロサンショウウオの卵のうは、アケビのようなかたちをしています(※)。

 

※当館は、クロサンショウウオについても2009年に繁殖賞を受賞しています。

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ここまでの飼育種は、どれも岐阜県内に生息するものでしたが、こちらはツシマサンショウウオ。そして、いしかわ動物園の事例を御紹介したアベサンショウウオも飼育されています。これらと、岐阜県在来種との比較対照からも、貴重な知見が得られ、アクア・トトぎふのみならず、他園館や研究機関等との交流も含めて、それぞれの種の保全、ひいては日本全体でのサンショウウオをはじめとする生物多様性の認識も深まっていくと思われます。

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最後は、こちらです。看板にある通り、カスミサンショウウオの屋外飼育が行なわれています。かれらは、コガタブチサンショウウオ等とはちがって浅い池や水たまりなどで繁殖するので(止水性)、このような環境が生息・繁殖に適しています。

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よしずが掛けられた水中には卵のうも確認できます。

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カスミサンショウウオは岐阜市内にも生息しています。しかし、確認されているのは、わずかに一地点のみ。産卵場所に至っては、付近の排水溝の中です。明らかに、人間活動の圧迫で、かれらの生存はぎりぎりの状況にあると言えるでしょう。現在、カスミサンショウウオは、岐阜市の条例で貴重野生動植物種に指定されています。アクア・トトぎふは、岐阜高校自然科学部生物班や岐阜市役所などともに、貴重な卵のうの一部を採集し、こうして管理飼育を続けています(※)。このような営みには、いわゆる「生息域外保全」としての種の保存のみならず、簡単ながらこれまでも御紹介してきたような、飼育下ならではの知見の蓄積が期待されます。それは、野生の環境の的確な保全にも、必ずや反映されていくことでしょう。

飼育員の掌の上の、小さなサンショウウオには、日本の自然の豊かさや、ほかならぬわたしたちも含めての、この国の歴史が秘められています。現状は、さまざまな危うさも孕んでいますが、水族館の水槽や、バックヤードの飼育池での日々から、大きな力が湧き出ていく、そんな望みを感じるのです。

 

次回は、3/11(水)掲載予定です。

 

この活動には、岐阜大学も参画しています。

前篇で御紹介した参考資料『ぎふの淡水生物をまもる 増補改訂版』には、岐阜県山県市の高富中学校生物部によるヒダサンショウウオの調査など、他にもいくつもの貴重な活動のレポートが収録されています。

 

参考資料(前篇以外)

田上正隆・堀江俊介・堀江真子(2012)「コガタブチサンショウウオにおける飼育下繁殖の試み」『動物園水族館雑誌』53(3):70-75

TAGAMI, M., HORIE,C., KAWAI,T., SAKABE,A. and SHIMADA,T. (2015) The Mating Behavior of Cynops pyrrhogaster  from Gifu and Aichi Prefectures,Central Japan,in Captivity. Current Herpetology 34(1):12-18.

 

世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ

河川環境を学び、生きものたちと出逢いふれあう水族館

公式サイト

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

Tel:0586-89-8200

飼育動植物 約260種28500点

開館時間

平日 9:30~17:00(最終入館は16:00)

土日祝日 9:30~18:00(最終入館は17:00)

休館日
年中無休

臨時休館等の最新情報について詳しくは、こちらを御覧ください。

アクセス

東海北陸自動車道・川島パーキングエリア(及びハイウエイオアシス)から高速道路を降りずに入館可能。

その他、こちらを御覧ください。

 

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家族おそろいで何を覗いていらっしゃるのでしょう?ヒントは窓のイラスト。

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世界最大級のリクガメ・アルダブラゾウガメです。メスのチョコは、三頭いるゾウガメの中で一番小さく、甲羅の長さは約50cmです。他の個体と見比べてみてください。

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こちらは、おなじみのカピバラ。かれらも齧歯類としては最大種です。

アクア・トトぎふの、いわばウェルカム展示2点。かれらとは、餌やり・ふれあい体験もできます(※)。

 

※その他、イベント・体験学習のスケジュールは、こちらをごらんください(有料のものや事前予約制のものもあります)。

 

さて、それではいよいよ、本格的に館内へと入っていきましょう。

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来館者は、まず、エレベーターで4階に導かれます。ここから階を下っていくのですが、展示の構成自体も、川の上流から下流・河口へと向かうようになっています。モデルとなっているのは地元・長良川。日本三大清流に数えられ、木曽三川(長良川・木曽川・揖斐川)のひとつです。写真はスタート地点。実際に澄んだ水に触れることが出来ます。

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展示されているのは動物だけではありません。豊富な植栽が、奥山に佇む想いを深めてくれます。写真中央下に写り込んでいるように、植栽も含めた解説プレートも備えられています。

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岩の狭間でマイペースな時間を過ごすのは、ナガレヒキガエル。中部地方・近畿地方の山間部の渓流に住んでいます。アクア・トトぎふでは、2009年に飼育下繁殖に成功しました(※)。ゼリー層に包まれて紐状に連なった卵(卵紐)が孵化し、無数のオタマジャクシ(幼生)が変態・上陸するまでの様子は、当時、展示として一般公開されたとのことです。

 

※国内の動物園・水族館初の飼育下繁殖として、日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞しました。

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アズマヒキガエルはナガレヒキガエルと同所的に暮らしていることもあります(当館でも同じ展示場を共有しています)。アクア・トトぎふでは、こちらも繁殖させています。

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ほとばしる滝。その滝壺に泳ぐのはアマゴです。イワナよりも、やや下流ながらも山の川魚として知られるかれらですが……

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さらなる長良川の魅力を求めて、緩やかなスロープを下っていきます。

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この展示。実は、さきほどのアマゴの展示の水中深くとなっています。そして、展示に二つの顔があるだけではなく、アマゴそのものが、もうひとつの名前と姿を持っています。それは「サツキマス」です。アマゴは、その一生を川で過ごしますが(河川残留型)、一方で川の上流で孵化した後、川を下りながら成長していく個体もいます(回遊型)。この回遊型に与えられた名前がサツキマスです。かれらはやがて海に至り、そこで川に残ったアマゴの二倍ほどにまで大きくなると、再び、川を遡って産卵します。時まさにサツキの花が咲くころです。アマゴ(サツキマス)はサケの仲間で、このような回遊はサケの仲間では広く見られる習性です。川と海を結ぶかれらは、アクア・トトぎふを代表するにふさわしい魚のひとつと言えるでしょう。

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岐阜県の渓流では、こんな動物も暮らしています。食虫哺乳類のカワネズミです。ネズミと名づけられていますが、むしろモグラなどと近縁です(※)。No.4と呼ばれる展示個体はオスで、当館で飼育されるようになった時に6ヶ月齢程度と推定されました。それから、およそ2年4ヶ月が経ちました。カワネズミの平均寿命は3年とも言われますが、No.4はまだ元気な様子です(※※)。

 

こちらで動画を御覧いただけます。巧みなダイブで水中の魚を捕らえるさまも記録されています。
※※担当飼育員によるブログ記事も御覧ください。また、本文末尾に参考資料として挙げた『ぎふの淡水生物をまもる 増補改訂版』にも、飼育担当者による報告があります。

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コツメカワウソは、東南アジアの川で活動する小型のカワウソです。かつて、日本各地の人里近い川(中流~下流)にはニホンカワウソが生息していました。1979年の高知県での事例以降、目撃報告はなく、2012年に環境省によって絶滅種の指定がなされました。かれらの減少・絶滅の要因には、毛皮のための乱獲や生息環境そのものの変化などが考えられますが、いずれにしろ人間活動の影響を被ったのは確かです。

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毎日の「フィーディングウォッチ&ポイントガイド」の中でコツメカワウソが見せてくれる「水に適応したハンターとしてのイタチ類」の姿に、日本の河川環境と一体となって生きたニホンカワウソを思ってみるべきでしょう。それは、さきほど紹介したカワネズミをはじめ、いまもわたしたちと生活を関わらせている動物たちの存在に目を向け、未来・将来へのわたしたちの責任を問い直すことにもつながると思われます。

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ここにも、川のさまがわりの中で脅かされている生きものがいます。タナゴの仲間のイタセンパラです(※)。岐阜県下では一度は絶滅視されていましたが、2005年に木曽川でアクア・トトぎふのスタッフによって再発見され、当館をはじめ、野生・飼育下での保全が進められています。タナゴの仲間は二枚貝に産卵する習性があります。イタセンパラは、川の中流~下流の入り江や水たまりに住み、そこに住む貝と関わりながら繁殖してきました。岐阜では、そんな場所を「ワンド」と呼びます。河川工事などを含む、人の生活の変化がワンドをめぐる生きものたちのつながりを切り離してきた経緯があります。濃尾平野の自然のシンボルフィッシュともいうべきイタセンパラの泳ぐ水に、わたしたちの現在が映し出されています。

 

※国の天然記念物・国内希少野生動植物種に指定されています。

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豊かな川の恵みで潤う田んぼ。その土手には、ぷりぷりとしたヒガシニホントカゲや、ほっそりとしたプロポーションのニホンカナヘビが暮らしています。ひとつの水槽の中で展示されるかれらをよく見比べてみましょう。

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コイ・ナマズ・ニホンウナギ……みんなで観察。

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豊かな水は、和紙づくりの伝統も支えてきました。引き出しのあちこちに収められた和紙製品。顔パックだってあるのです。

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トビハゼは河口付近の干潟に住みます。空気中では、主に皮膚呼吸。胸鰭の付け根には筋肉が発達しています。また、腹鰭は、なかば吸盤状になっています。

 

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長良川を下り終えても、まだやっと3階フロアを歩き終わっただけです。今度は、日本国内の他地域、そして世界の河川へと旅が続きます。北海道・釧路湿原近辺。体長1.5mに及ぶ日本最大の淡水魚イトウはサケ科、すなわち日本における北方系の魚類の代表のひとつです。

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一方で、岡山県東部を流れる吉井川からは、ドジョウ科のアユモドキ。広くはコイの仲間ということになります。日本の淡水魚類は、かつて大陸と地続きになった時に移入してきました。北方系の魚類がアジア北部から、いまの東北日本を中心に広がっていったのに対し、コイ類などは、中国大陸などの東アジアから西南日本に分布を広げていったのです。

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シニボティア・ロブスタは中国に住むアユモドキの仲間です。日本ではアユモドキは1種ですが、中国から東南アジアにかけての約40種の同類たちは、先ほども記した「日本列島の地史」の生きた証となっています。

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チベット高原からインドシナ半島を流れ、南シナ海に注ぐメコン川。その河口付近にある「日本人博士の探検小屋」という設定の展示は、ここまでに見てきた、日本とアジアの淡水生物の比較というコンセプトと結びついています。

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そんなメコン川の展示を代表するのが、メコンオオナマズ。その生態にはまだまだ謎が多く、今後の探究が期待されているとのことです。

顎の下に目を凝らすと……

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「鯰の髭」発見です。ほんの1~2cmですが。

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こちら、ナマズはナマズでもサカサナマズ。アジアの河川のエリアを過ぎて、アフリカ・コンゴ川の展示で出逢うことが出来ます。泳ぐときも逆さまのまま。この不思議な習性は、水面付近の小動物を捕食するためとも考えられています。しかし、水底では腹を下にするとのことで、水槽の側壁にも腹をつけるようにしているのが観察できました。

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デンキナマズは、表皮の細胞で450Vにもなる電気を起こして、小魚を捕らえます。普段から微弱電流で周囲の様子を探知してもいます(視力は弱く、明暗が分かる程度とされます)。自分の卵や稚魚を口の中で育てる習性も知られています(※)。

 

※以下で御紹介する、タンガニーカ湖のシクリッド類の習性についても、お読みください。

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タンガニーカ湖はコンゴ川の水系を遡ったところにある、世界指折りの巨大湖です。そこに暮らす魚類の大部分は、シクリッドと呼ばれる仲間です。

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シクリッド類では、親が仔稚魚を長期(時に数ヶ月)にわたって保護することが知られています。黒い横帯のキフォティラピア・フロントーサの場合、メスが直径8mmほどもある卵から生まれた稚魚を、時には数十尾も口内で保育します(※)。他にも、貝殻などに産卵し、そこを隠れ家とする稚魚を、親が見守り続けるといった種もいます。

 

※額の出っ張った、この個体は成熟したオスです。

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さて、そんなアフリカから大西洋を隔てた南アメリカのアマゾン川流域。そこは世界一ともいえる淡水魚の宝庫です。タイガーショベルノーズキャットは、体長1m前後に及ぶナマズの仲間です。

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デンキウナギは、アフリカのデンキナマズを遥かに上回る、800V近くの発電の記録を誇ります。ウシやウマなどの大型動物も気絶させると言われ、生物のつくる電圧としては最高記録となっています。

 

昨年(2014年)、開館10周年を迎えたアクア・トトぎふは、今年4/12まで、記念特別企画「神秘の大河・グレイトアマゾン」を開催しています。その大詰めは企画展「赤い清流・第二弾!アマゾンのシンボル カラシン展」です(※)。

 

こちらも御覧ください。

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身近なカラシン類には、熱帯魚のネオンテトラなども含まれますが、やはり、インパクトがあるのはピラニアでしょう。ピラニアとは総称なのですが、このピラニア・ナッテリー(Pygocentrus nattereri)は代表種のひとつです。今回の企画展のために現地を訪ねた飼育スタッフ自身による、楽しいエッセイも見どころです。ピラニアは、実は臆病者……

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しかし、やはり、この歯並びは……

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キロダスは、立ち泳ぎをするカラシンの仲間です。この習性は、水底の餌をついばむことから来ています。

まさに色とりどりのカラシン類は、実は既に触れたシクリッド類とともに、太平洋を挟んでアフリカ・南アメリカ双方に分布しています(※)。これは、長い地球の歴史の中で大陸が移動し、結合・分裂してきたことの証となっています。

 

※南アメリカのシクリッド類には、たとえば、エンゼルフィッシュがいます。

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最後に、体長2cmに満たない、このカエルを御紹介します。「かわいい」という感想は否めないのですが、その名もバンゾリーニヤドクガエルです。中南米に約180種いるヤドクガエル類には猛毒のものもおり、その中では本種の毒はあまり強くないとのことです。また、かれらの毒は餌となるダニやアリからつくられるので飼育下では無毒化するとも言われます。しかし、このポップともいえる外観はかれらを襲う捕食者に警戒を発する機能を担っていると考えられます。この小さな生きものにも、捕食・被食をはじめとするいのちのつながりあいがあり、進化の歴史が秘められているのです。

 

岐阜と世界の河川環境を体感できるアクア・トトぎふ。急ぎ足ながらも、そこでの学びの旅を楽しんできました。後篇では、あらためて、当館に息づくちいさないのちたちの大きな力を見つめてみたいと思います。

 

参考資料

楠田哲士・編(2014)『ぎふの淡水生物をまもる 増補改訂版』(こちらからのリンクでPDFが閲覧できます)

堀由紀子ほか執筆・編集(2013)『世界淡水魚園水族館”アクア・トトぎふ”ガイドブック 改訂版』江ノ島マリンコーポレーション

堀江真子・田上正隆・堀江俊介・池谷幸樹(2011)「飼育下におけるナガレヒキガエルとアズマヒキガエルの繁殖」『両生類誌』22:1-7

 

世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ

河川環境を学び、生きものたちと出逢いふれあう水族館

公式サイト

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

Tel:0586-89-8200

飼育動植物 約260種28500点

開館時間

平日 9:30~17:00(最終入館は16:00)

土日祝日 9:30~18:00(最終入館は17:00)

休館日
年中無休

臨時休館等の最新情報について詳しくは、こちらを御覧ください。

アクセス

東海北陸自動車道・川島パーキングエリア(及びハイウエイオアシス)から高速道路を降りずに入館可能。

その他、こちらを御覧ください。