Archive for 4月, 2015

※「黒猩々」とは、中国語でチンパンジーのことです。

※※かみね動物園では、ふれあい・餌やり・ガイドなど、定例・スペシャルのさまざまなイベントが行われています。これらの実施時間等については、同園のサイトや園内掲示などを御参照ください。

 

かみね動物園のキャッチフレーズは「太平洋が見える動物園」。園内の見晴らしのよいところに立つと、それがことば通りのものだと実感できます。

しかし、日立の海は、それ以上に特別な性格を持っています。
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きりりと翼を広げるウミウ。岐阜県・長良川などで有名な「鵜飼」に使われるのは、このウミウです。日立市十王町にある「鵜の岬」は、この鵜飼のためのウミウの捕獲を日本で唯一許可されている場所です(※)。日立で捕獲されたウミウが、全国十ヶ所以上の鵜飼の地に送られているのです。

※ウミウは、しばしば越冬のために南下し、暖かくなると繁殖地へと北上する渡りをします。日立の沿岸は、このような渡りをするウミウの休憩地となっているため、春と秋の二回にわたって、ウの捕獲が行われます。

 

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そんな伝統を記念するべく、かみね動物園でもウミウを飼育展示しています。給餌の時間など、水しぶきを上げてのにぎやかな姿も見られますが、その向こうに、鵜飼での活躍を思ってみるのもいいでしょう。

日本の野外では、他にカワウも見られますが、たとえば、くちばしの「口角」に当たる部分がウミウでは三角に尖るといった特徴で見分けられます。動物園なら、間近ではっきり確認できますね。

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こちらも「海の鳥」。フンボルトペンギンです。ペンギンは空を飛ぶ能力を失うことと引き換えに、海の中を飛ぶように泳げる翼を進化させました。「ペンギン村」では、水中をスマートに過ぎていく様子が観察できます。一方では、すぐ間近でぷかぷかと浮かぶ、のんびりした姿も見られる構造になっています。

 

 

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ペンギンのプールを満たす水。それは3kmほど離れた山の沢水を引いたものです。同じ水は、カバやカワウソなど、他の動物たちのプールにも使われています。

かみね動物園は、日立市の郊外の高台にありますが、さらに登っていくと、そこは「神峰山」と呼ばれる山になります。実は「神峰=かみね」なのです。神峰山頂に神峰神社(本殿)がありますが、動物園のすぐそばにも遙拝殿が設けられています。かみね動物園は、「鵜の海」を見晴らし、「神の峰」に見守られて、時が流れるところなのです。

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そして、こちらは動物園ならではの「森」です。

 

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「チンパンジーの森」のタワーの上。4頭のチンパンジーが寛いでいます。背中を向けているのはメスのヨウ。その手前が、ヨウの娘で2011/2/7生まれのゴウです。ゴウの毛づくろいをしているのが、異母弟に当たるリョウマ(2012/4/27生まれ)。そして、リョウマの母親のマツコです。

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「年子」のゴウとリョウマは、よく遊びます。いかにも無邪気で気ままな様子ですが、4歳となったゴウは、弟に対して手加減をすることもうまくなってきており、「お姉ちゃん」らしい成長を進めています。

 

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まだ、ヨウのおっぱいが恋しかったりもするのですが。

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ゴウとヨウ、リョウマとマツコ。いかにも自然な、二組の母子であり、また、同じ群れの仲間としての親密さを感じさせます。

けれども、このありさまは、自然にできあがったものではありません。

ゴウは誕生直後、ヨウがうまく抱けなかったこと、真冬だったことなどから人工保育となりました(※)。しばらくは飼育員の手で育てられましたが、無事に母親との再同居に成功し、1歳4ヶ月で、群れの中に入ることにも成功しました(この時点で、国内での歴代最速でした)。

※ヨウは過去にも、出産した子が人工保育になった履歴があります。

 

リョウマも同じような経過をたどっています。国内最高齢での初産(当時、推定34歳)だったマツコも、リョウマが標準を大きく下回る未熟状態だったこともあり、一時は息子を飼育員の手に委ねるしかありませんでした。しかし、ゴウを上回る速いスピードで母子の再同居に成功し、2013/4/23、マツコ母子も群れ入りを果たしました。

 

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チンパンジー飼育史を考えても異例な、かみね動物園の成果は、子どもたちを受け入れる群れの安定が大きく寄与したと考えられます。風格のある表情を浮かべるのは、ゴウ・リョウマの父親・ゴヒチ。かれの穏やかに群れをまとめる才覚と、父親としての愛情深さも忘れてはなりません。

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安心できる環境で、子どもたちはのびのびと育ちます。お尻に一房の白い毛(ベビーマーク)があるうちは、大概のことが許されると言われています。そして、子どもたちの活気が、群れを和ませ、元気づけているのもまちがいありません。かみね動物園の「チンパンジーの森」に行けば、誰もが納得することでしょう。

 

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最近、「一人前の男」の迫力を身に着けつつあるかと思われるユウ。この5/6で23歳となるゴヒチの息子です。ユウにとっても、弟妹あるいは幼い子どもがいる日常は、成長への刺激となっているようです。

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チンパンジー、そして、展示場に潜り込めるカプセルの中の来園者までが、何かを期待して見上げています。飼育員が、おやつを投げ与えているのです。地上だけでなく、タワーの上に陣取るなど、それぞれの個性や、お互い同士の関係などが垣間見えるひとときです。

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こんなものも登場。ジョウロの中にも餌が隠されています。手間をかけての採食は、野生でも同じことですし、遊び道具になるものを与えることは、動物園の限られた空間や環境条件の中でも、チンパンジーたちの生活に変化や彩りを与え、かれらの知能を発揮させる機会となります。

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人工物であるタワーも、日本の気候風土では再現しにくい、熱帯林(チンパンジーのふるさと)の高さや、枝の広がり、頑丈な蔓植物などの構造・機能を補うことになります。

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さらに、チンパンジーたちに「本物の緑」をプレゼントする試みも続けられています。かみね動物園では、過去6回、毎年「チンパンジーの森植樹祭」が行われ、参加者の持ち寄ったものを中心に、たくさんの苗木が植えられました。

木の葉を食べるだけでなく、野生では毎日、枝葉を折り取っては簡単な寝床を編んで樹上で眠るチンパンジーたちなので、植えられた木も食べられたり、折られたりします。しかし、そういう行動が引き出されることこそ、動物園でのかれらの暮らしを、より豊かにすることにつながります。折られたら、また植えればいい。そういう催しの繰り返しが、来園者にもチンパンジーや、動物園の営みに対する理解を深めてくれるだろう。チンパンジーと、しあわせをわかちあおう。それが植樹祭の目的です。

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参加者には、感謝状も。

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このようなチンパンジーの群れづくりや、植樹祭をはじめとする環境整備を進めてきた、かみね動物園の飼育の営みに対し、動物園と市民を結ぶことを目指すNPO法人・市民ZOOネットワークは、2012年度のエンリッチメント大賞を授与しました。

エンリッチメント大賞は、飼育動物の幸福な暮らしを実現するための、動物園の優れた取り組みに与えられる賞です。詳しくは、こちらを御覧ください。

 

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大きなケージの三次元構造を活かして、わたしたちの目にはアクロバティックにも見える運動を見せるシロテテナガザル。立ち並ぶ各種の霊長類たちの展示の一角を占めるかれらは、注意してみれば、尾を持たず、チンパンジー同様、比較的わたしたちに近い類人猿です(※)。かれらのよく響く「歌」は、テリトリーを主張するもので、ペアのオス・メスでは「デュエット」が行なわれます。

※テナガザルはテナガザル科。チンパンジー・ゴリラ・ボノボ、そしてオランウータンはヒト科に分類されています。

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テナガザルと隣接するエリマキキツネザル。かれらや、同じ並びのワオキツネザルは、マダガスカル島のみに生息し、原始的な特徴を多く残しています。突き出た鼻づらも、かれらの臭覚と結びついており、霊長類は、かれらのような臭覚を重んじる生き方から、視覚中心のありようへと進化してきたと捉えることができます。

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この日(2015/3/28)は、実習生が実習活動の「まとめ」的な意味を込めて、キツネザル・ガイドを行ないました。

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少し離れた「チンパンジーの森」からも、高みの見物が出る大盛況。

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丁寧で楽しい手づくり解説は、せっかくなので掲示することにしました。

※写真は、参加者の御了承を得て掲載しています(以下同様)。

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さらに、2011年に新設された、何種類もの霊長類の複合展示施設「サルの楽園」です。

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水に囲まれた「リスザルの島」では、組まれた枝だけでなく、時には綱渡りのような動きも。ボリビアリスザルたちにしてみれば、南アメリカの森の蔓を伝っている感覚なのでしょう。

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昆虫などを食するのを好むかれらは、自前の「採集」を見せてくれることもあります。

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こちらはマンドリル。オスのケンシロウには手渡しで「おやつ」をあげられる時間もあります。「強面」な外見ですが、ひとつひとつ手で受け取ってくれます。

ケンシロウの派手な顔(お尻もカラフルです)は、成熟したオスの証です。4歳で東武動物公園からやってきたケンシロウも、この2/7で9歳を迎え(※)、「男らしい」姿となりました。

※チンパンジーのゴウと同じ誕生日です。

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そして、福岡県の大牟田市動物園から、パートナーとなるメス・リエルを迎えることも出来ました。ふたりについては、「サルの楽園」の掲示も御覧ください。

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楽園の空高く。ジェフロイクモザルは、リスザル同様、南アメリカの森に住み、中でも最も高層部で活動します。自由度の高い肩は「枝渡り」の動きを可能とし、筋肉の発達した尾は「第五の手足」として、あちこちに巻きついて体を支える役割を果たします。

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再び、地には平和を。さきほども御紹介した沢水のプールの恵みに浴しつつ、かみね動物園では二頭のメスのカバが暮らしています。母親のバシャンは、いつしか娘のチャポンに体格を追い越されていますが、国内最高齢(1963年生まれ)の個体として健在です。

 

 

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カバの隣は、クロサイ。かっちりした角のオス・メトロと、細身のすらりとした角のメス・マキ。ふたりの間には5頭の子どもが生まれており、5番目の娘・サニーは、2012/11/14に鹿児島市平川動物公園に旅立ちました。

動物たちそれぞれが、緩やかににぎやかに過ごす、かみね動物園。こうして、日々の積み重ねが明日へとつながっています。

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未来へ。

 

 

日立市かみね動物園

公式サイト

 

園内からのぞめる太平洋のように、豊かないのちに活気づく動物園

〒317-0055 茨城県日立市宮田町5-2-22

電話番号 0294-22-5586

飼育動物 約70種500点

 

開園時間:

3~10月(夏期) 9~17時(入園は16時15分まで)

11~2月(冬期) 9~16時15分(入園は15時30分まで)

休園日:年末年始(12/31~1/1)

  • アクセス

JR日立駅からバスで、約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

※かみね動物園では、ふれあい・餌やり・ガイドなど、定例・スペシャルのさまざまなイベントが行われています。これらの実施時間等については、同園のサイトや園内掲示などを御参照ください。

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ゲートをくぐる前から、向こうに見えるアジアゾウ。歓声をあげて駆け込む子どももいるそうです。

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日立市の郊外……といっても駅から歩いていくこともできるような身近さの、かみね動物園。アジアゾウのミネコとスズコは、園を代表する動物のひとつです。スズコは砂浴びが大好き。足の先で器用に土を掘り、鼻で砂を集めます。

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現在、ミネコとスズコは、隣り合わせながら別々に展示されています。いろいろの要素から、その方がお互いに気楽だろうと判断されています。しかし、時にはこうして、ゾウ同士だけに通じる「会話」(?)を楽しんでいるようにも見えます。

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「おやつタイム」には、ひととき肩を並べた二頭に、手渡しで給餌が出来ます。

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「餌やり」というだけでなく、ことばや理屈ではなかなか追いつかない生の迫力が、ゾウへの関心と親しみの両方を高めてくれることを狙ってのイベントです。

 

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管理棟の二階にある「エレファントカフェ」。オリジナルの「かみねバーガー」は、地元の名産・常陸牛と蓮根を使った逸品です。ゾウを臨みながら、美味しいひととき。

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昼下がりの園内。何かが道をやってくる……

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縄文人の扮装をしているのは、日立市郷土博物館のスタッフです。5/31まで行われている「ズ-ハク」は、かみね動物園と、すぐそばにある郷土博物館の連携イベントです。御近所ながら、はじめての試み。まずは、特製の解説プレートやお互いのスタッフが相手の園館に出向いての「解説トレード」を行なっています。

 

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動物園内(博物館員による)

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博物館内(動物園スタッフによる)

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さわってみよう!

 

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さわってみよう!!

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こちらは、クマ担当の飼育員が博物館で解説を行なっている様子。

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二つの頭骨。どちらがライオン、どちらがクマ?(※)

 

※参加者の御了承を得て掲載しています(以下同様)。

 

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そんなクマたちの展示場が、こちら。「クマのすみか」は、2012/4/7にオープンしました。

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従来、ニホンツキノワグマなどの暮らしていた中獣舎(1959年設立)の老朽化を受けてのリニューアルでした。これは、当時からの飼育個体のベベ(メス・2000年生まれ)です。ボールの中の餌を時間をかけて取り出すフィーダー(給餌器)など、退屈を減らし、飼育環境を豊かにする試みは積み重ねられていましたが、やはり、限界がありました。

 

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こちらが新設当時の「クマたちのすみか」です。広くなりましたが、その分、少しがらんとしていますね。

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それから一年半。ずいぶん、「すみか」らしくなったと思いませんか。

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「器」(施設)を整備することは大切です。しかし、それを運用する飼育的配慮があってこそ、そこは生きた動物たちが暮らすのにふさわしい場になっていきます。竹筒は、中に餌を仕込めるフィーダーです。伐採木などを組み立てるときも、クマでも壊せないがっちりした部分も、あえて、かれらが遊び道具に出来るように外しておく部分もつくるのです。

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施設の周りの斜面に植えられた、あれこれの果樹もまた、クマたちのごちそうになります。野生での、さまざまな食物を取る暮らしに、少しでも近づけようという努力なのです。

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新施設になってから、ベベのパートナーとして、やってきたオスのナオ(2009年生まれ)。年齢差からベベに押される感じでしたが、ようやくオスらしい迫力を身に着けてきました。野生でも単独生活を送るクマたち。かれらのペースを見極めながら、今年も5月以降にペアリングを試みる予定です。

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こちらも、「クマのすみか」が出来てからの新顔。エゾヒグマのメス・アイとエリコです。彼女たちがなにか待ち受ける様子なのは、こうして「おやつ」が与えられる時間だからです。

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プールに落ちた分も、抜群のバランス感覚で、この通り。

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二頭いれば、個性も分かれます。水遊びが好きなエリコとは、ウィンドウ越しの接近遭遇のチャンスも多くなります。一方、アイは土を掘るのが大好き。これもまた、冬ごもりの穴を掘ったり、植物の根などをあさったりするクマにふさわしい行動です。アイの「力作」は、毎日、飼育員が埋め戻し、翌日の「再開発」に備えるのですが。

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クマたちと並ぶかたちで展示されているネコ科の猛獣たち。ライオンは現在、オス1・メス4ですが、交代制で展示場に出ています。

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かたや、クマと同様、単独を基本とするトラ。さわは、時にはブイを使った豪快な遊びも見せてくれます。

 

猛獣たちの「遊び」は、かれらの野生での狩りや餌探しの行動が、かたちを変えて現れているのだと考えられます。展示としても心躍るものですが、動物たち自身の暮らしにリズムを作り、豊かにする効果が期待されます。

そんなわけで、かみね動物園では、昨夏、ひとつのユニークな試みが実行されました。ジーンズの素材となる布をタイヤなどに巻き、猛獣たちに遊ばせます。その後、回収した布をジーンズに仕立てます。動物たちの爪痕・咬み痕によるダメージ・ジーンズ。名づけて、「ズージーンズ」。

ネット・オークションによる収益は、世界自然保護基金(WWF)とかみね動物園に寄付されました(オークションは既に終了しています)。

展示の向こうにある「動物たち自身のしあわせ」を、目に見えるかたちで実感させてくれるイベントでした。

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頭上のネット・パイプをアメリカアカリスが利用するのは、小獣たちの複合展示施設「カピ!バラエティハウス」(※)の入り口。このゾーンでも、動物たち本来の習性を活かした飼育・展示の工夫に出逢うことが出来ます。
※同施設は、老朽化と、2011年の東日本大震災で寿命が尽きた、旧・小獣舎の敷地に、飼育員たちが中心となって、知恵を凝らしてつくりあげられました。リニューアルに当たっては、国内の150施設を超える動物園や水族館の集まり・日本動物園水族館協会に寄せられた義援金が役立てられました。同協会のサイトで、いくつかの呼びかけや報告の文書(PDF)を閲覧することが出来ます(※)。カピ!バラエティハウスには、動物園・水族館同士の連帯や、これら施設への一般利用者の想いの力も込められているのです。
※ホームページ内の「JAZAからのお知らせ」の一覧を御覧ください。

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カピ!バラエティハウスの一角。見上げれは、アライグマたちと対面。かれらの器用さを支える、繊細な指先や柔軟な足裏も観察できます。

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足元には、アフリカタテガミヤマアラシ。巣穴を掘るかれらの生活が、ぐっと身近に感じられます。

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そして、コツメカワウソの給餌解説です。竹の先に魚を着けて、かれらに「狩り」をしてもらいます。

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穴を開けた竹筒に魚を仕込んでも、手先の器用なかれらには、この通り。手先を活かした捕食も、コツメカワウソの特徴です。にぎやかな動きを見ながら、しっかりとかれらを知ることが出来ます。

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フェンス越しの、カピバラへの餌やりも人気です。齧歯類独特の発達した切歯(前歯)も観察できます。

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ホンドタヌキのムギ(オス)も、カピ!バラエティハウスの住人。狸寝入りではないようです。

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再び、園外での連携イベント。日立駅前にある日立シビックセンター内の科学館に出張し、同館の春のイベント「きて、みて、体験!空飛ぶチカラ」の一環として「出張 ハネハネ教室」を行ないました。

顕微鏡で拡大した羽毛の仕組みを、身近なダウンジャケットを使いながら説明します。

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楽しいお話や、与えられた羽の持ち主クイズなど、参加者の気持ちがひとつになる時間です。

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最後は記念に、本物の羽毛で、しおりづくり。

 

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そして、記念撮影。教室終了後にも、持ち込まれた生きたニワトリとの、ひとときのふれあいがありました。

動物園ならではの魅力、そして、外とつながることで広がる可能性。かみね動物園は、さまざまな施設や、その時々の参加者の皆様とともに成長中です。

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さて、さきほど、顕微鏡で拡大されていた羽毛の主は、こちら。アフリカゾーンで気ままに暮らすホロホロチョウです。アミメキリンやハートマンヤマシマウマの展示場でも歩き回っています。

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ペアの、キリナとシゲル。昨年(2014年)に新設成ったキリン舎で暮らしています。かれらの後ろに見えるバルコニー……

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こんな餌やりイベントも行われています。

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そして、キリナとシゲルの仲のよさの証。オスのシゲキは2014/8/22に生まれました。かみね動物園にとって、35年ぶり・2度目の快挙でしたが(※)、当のシゲキの現在は、父母と同居しつつ、のんびりマイペースの暮らしです。

 

※今年行われた「KMN(かみね)動物園第2回どうぶつ総選挙」でも、キリンは堂々の一位で、次回の園内パンフレットの表紙を飾ることが決まっています。

 

 

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まもなく完成予定のホンシュウジカの新施設。2007年に開園50周年を迎え、さらに歴史を重ねつつある、かみね動物園。そこには、さまざまな出来事や記憶が詰まっています。それを掘り起こし、見つめ直すのは、意義深いことと思われます。

しかし、動物園ひいては動物たちの暮らしは、和やかなものでこそあるべきでしょう。かみね動物園のこれまでの歩みも、そんな穏やかな「動物時間」を築き、守り育てる営みであったのではないでしょうか。春から初夏への移ろいの中で、わたしたちも先を急がぬ徒歩の安らかさで、動物園の「温故知新」を楽しみましょう。

 

 

参考資料

生江信孝・かみね動物園長の連載エッセイに多くを学ばせていただきました。記して、感謝の意を表します。

 

 

日立市かみね動物園

公式サイト

園内からのぞめる太平洋のように、豊かないのちに活気づく動物園

〒317-0055 茨城県日立市宮田町5-2-22

電話番号 0294-22-5586

飼育動物 約70種500点

開園時間:

3~10月(夏期) 9~17時(入園は16時15分まで)

11~2月(冬期) 9~16時15分(入園は15時30分まで)

休園日:年末年始(12/31~1/1)

  • アクセス

JR日立駅からバスで、約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

※本稿は、2015/3/13~14の取材をメインに、2012/2および2014/10の取材内容を加味して構成しています。時系列を明示した方がよいと思われる写真には、適宜、日付を記しました。

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動物たちそれぞれの本来の生息地での生き生きとした動きや暮らしの再現を目指した、のいち動物公園。起伏に富んだ園内は、行先を隠して期待を高める曲折や植栽が、「動物たちの生息地に入り込んでいく」という感覚を増してくれます。

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鳥インフルエンザ対策で昨年末(2014/12/19)からバックヤードに収容されていた水鳥たちも、オスが繁殖期の羽色の鮮やかさを示すオシドリをはじめ、3/9にすべて展示に復帰しました。

 

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園内の島池(水濠で囲まれた島タイプの展示場)で暮らすワオキツネザルたちも、日向ぼっこ・樹上活動・マーキング……さまざまな姿を見せてくれています。

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同じく、島池展示のシロテテナガザルの一家。ニコは2013/9/30生まれのメス。テナガザルは「核家族」というべき構成で暮らしますが、ニコは既に、父親のニタや母親のチャコから離れて、活発に動く姿を見せてくれます。チャコのおっぱいを完全に卒業するのは、まだしばらく先のようですが。

 

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広々とした、チンパンジーの運動場も、四季折々に魅力的なすがたを見せます。そんな眺めに馴染む櫓は、数年前に間伐材でつくられましたが、日本の自然そのものだけでは足りない「チンパンジーにふさわしい環境(アフリカ熱帯林的な高所の広がり)」を補う役割を担っています。

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じゃれあうふたり。オスのダイヤとメスのサクラは、2009/4/18生まれの二卵性の「ふたご」です。チンパンジーのふたごは珍しいようで、ましてや、ふたごを母親自身が育てた記録は、野生を含めて、きわめて稀です。日本では、ダイヤとサクラの事例が、唯一のものとなっています。

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母親と親しい、別のメス(いわば、近所のおばさん)をはじめ、チンパンジー・コミュニティ全体が、ダイヤやサクラを可愛がり、サンゴの負担軽減になったことが、ふたごの健やかな成長を支えました。幼児期には、おとなに対して、まさにやりたい放題。しかし、子どもたちが群れを活気づけ、おとなたちに、よい影響を与えていることも見逃せません。チンパンジーにとっての「社会」の大切さを、あらためて認識させられます。

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そんな子どもたちも着々と成長しています。中にジュースを仕込んだ「人工アリ塚」。野生のチンパンジーがアリ塚に枝を突っ込み、たかってくるシロアリを舐め取って食べる「道具使用」の再現です。サクラは尖端を噛みつぶしてジュースが浸み込みやすくした枝を使う技術も、かなり上達しています(※)。

※おしなべて、サクラの方がダイヤよりも根気強いようです。

 

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同じく枝を使って餌を取り出す「ヤムヤムキャッチャー」(※)。この写真のような「二刀流」は、群れの第一位オス・ロビンと、メスのジュディだけの特技とのことです。個体ごとの個性のちがいばかりでなく、誰が優先してアリ塚やヤムヤムキャッチャーを使うかなど、注意して観察すれば、チンパンジー同士の社会関係も見えてきます。

※園内で行われる、各動物の「お食事タイム」については、こちらを御覧ください。

 

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一方で、飼育員と一緒に、短時間の公開タイムを過ごすのは、メスのミルキー。2013/7/14生まれです。難産だったため、人が介助してとりあげ、母親のチェルシーとは離して、人の手で育てることになりました。詳しくは、こちらを御覧ください。

このような出産経過が影響したものと思われますが、ミルキーには発達の遅れが認められます(※)。運動能力等、少しでも「自分でできること」が増えるように、リハビリを続けています。からだだけでなく、心のケアも大切です。他のチンパンジーたちと、どんな関係を結べる可能性があるか、ケージ越しに「お見合い」させたりもしています。個体によっては、ミルキーをグルーミングする者もいます。

※脳性麻痺による障碍(軽度の右片麻痺)。詳しくは、こちらを御覧ください。ミルキーへの対応は、チンパンジーやヒトの乳幼児の発達に関する研究者、リハビリテーションの専門家などの協力の下に進められています。

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ミルキーの将来は、平均的なチンパンジーとはちがうものになるかもしれません。しかし、運動能力をはじめ、情緒的な面も含めて、ミルキーはミルキーなりに育っていこうとしています。障碍があっても「健やか」であること。わたしたちも、そんなミルキーの将来を見守っていければと思います。ミルキーに関する、貴重な実践や記録は、他のチンパンジーのためにも役立てられていくでしょう。

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こちらも、動物たちの健康な暮らしを目指しての飼育の取り組みです。バックヤードでの、ブチハイエナのトレーニング風景(※)。指示された行動や姿勢をちゃんと出来たら、ちょっとした「御褒美(肉片)」がもらえる。そんな約束事が、動物と飼育員の間で固まりつつあります。背中やお尻を預けるのも信頼の証と言えるでしょう。

※詳しくは、こちらを御覧ください。

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こうして、バックヤードを含めての細やかな飼育的配慮に支えられ、のいち動物公園のハイエナたちは、すこぶる健康です。オスのブッチーとメスのエナの間には二度の繁殖があり、2012/10/2生まれのオス「とーふ」、2013/8/25生まれの二人娘ダイズ・アズキの総計3頭の子どもが生まれました。ブチハイエナは母親を核とする群れをつくりますが、のいち動物公園では、そのようなブチハイエナの群れの形成を再現したと言ってよいでしょう(※)。娘たちは3/2に、大分県のアフリカンサファリに移動し、現在は親子3頭での暮らしですが、これからもかれらのペースを大切にしながら、のいち動物公園のブチハイエナ・ファミリーの歴史は積み重ねられていくでしょう。

※詳しくは、こちらから「飼育日記」を御覧ください。

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ハイエナロッジのカプセルは、ハイエナたちと同じ目線での観察が可能です。

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ふと気づけば、わたしたちも観察されている……

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この写真の対比で分かるように、サバンナの生活者ながら、登ったりくぐったりも好きなハイエナの性質を見極め、施設を改良するといった努力も続けられています。

 

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セネガルショウノガンは、ブチハイエナの展示施設のすぐ近くにいます。ノガンと名づけられていますが、むしろ、ツルの仲間と近縁と考えられています。のいち動物公園のセネガルショウノガンたちは、足環の色と個体識別プレートを見比べれば、それぞれの個体の性格のちがいなども知ることができます。かれらが時折放つ甲高い鳴き声は、存在感も十分です。

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のいち動物公園ではフンボルトペンギンとジェンツーペンギンの2種類のペンギンが飼育されています。南極周辺に分布するジェンツーペンギンは、温度管理された屋内展示場で暮らしています。2007年に飼育が開始され、2011年以降、毎年繁殖が見られて、合計4羽のヒナが育ちました。他の水族館等に移動した個体もいます。

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ハシビロコウのオス「ささ」。まだ若いかれの瞳は黄色ですが、年齢とともに青く変わっていくはずです。

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「ささ」は、タンザニアから来た野生個体ですが、体重測定などのトレーニングが行なわれています。それらの営みが、結果として「心身ともに健康な野生本来の姿」の展示につながることは、先に御紹介したブチハイエナの例などからも分かるでしょう。

 

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園の性格を象徴する場のひとつ、アフリカサバンナの大展示場。アミメキリンと接近遭遇。

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こちらでは、アミメキリンをはじめ、複数の動物たちが混合展示されています。キリンのメス・ジャネットが興味深げ(?)に覗き込むのは、2014/10/24生まれのグラントシマウマのメス・モミジです。マイペースに成長中。母親のベティーにとっては二度目の出産で、子育てにも余裕が見られます。

 

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こちらはジャネットが2014/12/24に生んだオスのイブキ。ジャネットに授乳行動が見られないため、飼育スタッフによる哺乳が行なわれていますが、母親をはじめとするキリンたち(※)やシマウマとの日々の中で、かれなりの社会性を身に着け、一人前のキリンとなっていくことが願われています。

 

※イブキ母子が、別のメス・フーピー(チンパンジー同様、いわば「近所のおばさん」?)と一緒に展示されている姿も観察できます。

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のいち動物公園ならではの、緑豊かな展示場で過ごす、メスのレッサーパンダ・カイ。もう一枚の写真の飼育員は一見、餌の竹を切っているように見えますが、この竹は当園のレッサーパンダには、あまり好まれていないそうです。むしろ、運動場の周囲から竹が覆いかぶさったりして、動物が外に出てしまわないように、という処置です。動物たちの気ままな暮らしは、こうした細やかな配慮に支えられています。

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屋内展示場でも、別の一頭が食事中。この個体も名前はカイですが、オスです。ここでも、木登りなどが得意なレッサーパンダの活動を引き出す設備が組み上げられていますね。メスのカイは当園生まれ。市川市動植物園から「婿入り」したカイとの間に「のいち三世誕生」が期待されています。

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ジャングル・ミュージアムは、屋内展示の強みを、フルに活かした施設です。たとえば、豊かな水量のアマゾンの浸水林の再現展示。

 

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この施設にも、期待のカップルがいます。筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支えながら、東南アジアの樹上で活動する大型のジャコウネコ・ビントロングです。黒いのは、メスのケチャップ。白っぽいのが、オスのソルト。それぞれ気ままにまどろんだりしていることも多いのですが、交尾行動も確認されています。

 

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人工スコールの時間に行けば、煙るような雨の中の、黒いもこもこと白っぽいもこもこも見られます。

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ビントロングの展示エリア付近では、高みで繁殖する文鳥の姿も見られます(デジタルカメラのズーム機能などが威力を発揮する場面でしょう)。幼鳥たちは、親と同じくっきりした容姿を目指して成長中です。

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雲のような柄が特徴的なウンピョウ(雲豹)のオス・リュウ。日本一の子だくさんペアとして知られ、日本各地の園館に子どもたちが旅立っている、マレーグマのタオチイ(メス)・ワンピイ(オス)。かれらも熱帯アジアの森で暮らす動物たちです(※)。

※ウンピョウの分布域は、標高2500mに及ぶ山地にまで広がっています。

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こちらも、霧立ちこめるジャングルタイム。カピバラのビビ(メス)とグー(オス)。かれらは、南米アマゾンを代表する、世界最大のげっ歯類です。

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さらには、このふたり……いえ、実は「ふたり」ではありません。フタユビナマケモノのペア、アミーゴ(オス・手前)とキュウ(メス)。そして、キュウのふところには……

 

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2014/7/27に生まれた赤ちゃんは、コマちゃんと名づけられています。親たちの食事の時間が観察の狙い目でしょう(園内掲示等で御確認願います)。

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終日(ひねもす)のたり……というわけでもなく、動き出せば、飛ぶように泳ぎ、時には華やかなジャンプなども披露するカリフォルニアアシカですが、うち揃っての日向ぼっこも、見る者を和ませます。

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エイトは2014/6/28生まれのオスです。泳ぐのが大好きな活発な子として成長中。体の大きさだけでも、他の個体と見分けられますが、最近は、バックヤードでの人工哺育から群れ入りを果たした、1歳年上の兄・タイチ(2013/6/24)と戯れる場面も多いとのこと。

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のいち動物公園を代表する「水もの」といえば、かれらを忘れることは出来ません。水槽内を軽快によぎっていくのはツメナシカワウソ。単独生活を送る種なので、オス・メス・その仔のそれぞれが、交代に展示されています。

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ソラは2012年生まれのオス。ちょうど、この日(2015/3/14)で、3歳となりました。ツメナシカワウソ独特の、大きな鼻鏡がユーモラスです。

※カワウソ類の分類には、鼻鏡の形態も大きな要素として用いられます。

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ワカサギを与える給餌解説「お食事タイム」。

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当園では、3種類のカワウソを並列に展示しています。見た目だけでなく、習性などもそれぞれです。食事の様子は、そんなちがいを観察する好機。小型種のコツメカワウソは、カワウソ類の中でも特に手先(前足)が器用であるとされています。

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のんびり寛ぐユーラシアカワウソは、アカネとアザミの姉妹。2013/6/3に、福島県の「アクアマリンふくしま」で生まれた四姉妹のうちの2頭です。そして、ユーラシアカワウソと言えば……

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こちらは「どうぶつ科学館」内のニホンカワウソの解説展示です。高知県は、かつては、多くのニホンカワウソが生息する土地でした。ニホンカワウソは、2012/8に環境省から絶滅種に指定されましたが、現存の種ではユーラシアカワウソに一番近縁だと考えられています。当園では、カワウソが暮らしていた、かつての環境や、それを自らの手で損ねてしまった現在のわたしたちのありようへの認識を深めるべく、各種のカワウソたちを飼育展示しているのです。動物園は「いのちの記憶」を保つ場所でもあります。

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高知県と動物園の魅力を伝える人。動物ものまね芸の江戸家小猫さんは、このたび、高知県観光特使に就任し、3/14には動物公園内で委嘱状交付式が行われました。小猫さんと高知県の御縁は、いろいろありますが、過去にもライヴを行なう等してきた、のいち動物公園こそが一番のゆかりの場所という小猫さん自身の御意向での式典でした(※)。高知県の鳥・ヤイロチョウの、文字通りレアな鳴きまねの披露などもあり、楽しく希望に満ちたひとときとなりました。ゴールデンウィークの5/5にも、園内で小猫さんのイベントが行われるということです。

※来園者の御了承を得て、掲載しています。

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さらにはまた、「四国を伝える」とも言えるのが、こども動物園の野間馬たち。明治以降、品種改良を目的に欧米系の品種との交配が進められ、日本在来の品種(在来馬)のほとんどは、その血統を絶やしてしまいました。愛媛県今治市 (野間地区)で農耕などに使われてきた野間馬は、現在残っているとされる日本在来馬8品種のひとつで、最も小型です。その体格と頑健さから、ミカン畑でも活躍していたとのことです。近代化の意義とともに、それに先立って積み重ねられてきた人と動物の歴史もまた、目を向ける価値があると思います。野間馬たちとの出逢い・ふれあいは、そんな機会となってくれるでしょう。

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最後に、こちらです。夜行性動物たちを集めた屋内施設。昼夜を逆転した闇にもまた、いきづくいのちがあります。

 

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エジプトルーセットオオコウモリのつぶらな瞳。当園では、総数300頭に及ぶという群れと出逢うことが出来ます。普段は、こうして、もっぱらひっそりと過ごしていますが、給餌時間に立ち会えれば、床に置かれた餌のトレイを巡って、まさに乱舞というべきさまも観察できます。

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キンカジューは、中南米の森に住む、アライグマ科の動物です。眠っているかと思えば、わたしたちが観察されていることも。かれらは、ジャングルミュージアムのビントロング同様、筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支え、樹上活動を行ないます。かれらの「時計」に合わせて、しばし待てば、そんな姿も披露してくれるかもしれません。

 

広々とした園内と、それぞれの動物たち本来の生息環境を意識した展示づくり。初夏へと向かうこれからは、緑といのちに満ちた、のいち動物公園での散策に最適の季節なのです。

 

 

参考資料

黒田弘行(1988)『群れで生きるブチハイエナ』農文協。

また、2015/3/15に、のいち動物公園で行われた「動物園大学5 in 高知 ずーぜよ」における、同園スタッフやボランティアの皆様のポスター発表、多々良成紀・園長およびチンパンジー飼育担当者・山田信宏さんの講演に、多くを学ばせていただきました。記して、心よりの感謝の意を表します。

 

 

高知県立のいち動物公園

人も動物もいきいきと、動物たちの自然の姿を可能な限り再現した動物園

公式サイト

〒781-5233 高知県香南市野市町大谷738

Tel:0887-56-3500

飼育動物 106種1047点(H.26/9末現在)

開園時間

9:30~17:00(入園は16:00まで)

休園日

毎週月曜(祝日の場合はその翌日)

年末年始(12/27~1/1)

アクセス

高知自動車道 南国ICより車で20分。

その他、こちらを御覧ください。