Archive for 5月, 2015

※とべ動物園では、餌やり体験・ガイド、動物との記念撮影から紙芝居(!)まで、さまざまな催しが行なわれています。これらについての詳細は、同園サイトのイベント情報をご覧ください。

動物園には、さまざまな動物たちが飼育展示されています。その多くは「野生動物」であり、かれら本来の生活や習性を反映した飼育環境を整え、展示として来園者にも伝えようとすることは、動物園の役割の根幹とも言えるでしょう。

tobe_150412 306tobe_150414_1 946

とべ動物園では、現在、クロサイのメスのクーが、今年で4歳になる息子のライ(2011/2/18生まれ)と一緒に展示されています。時には、母子での力比べめいた一コマも。一方でオスのストームは一頭だけでの飼育展示です。クロサイは単独性が強く、野生でもしばしば一頭だけで生活します。そこで、組み合わせとしては現状のようになっています。

とべ091117 794

ストームはクーが大のお気に入りで、寝部屋(こちらも一般公開されています)でも柵越しに干し草を示して、クーの気を惹くようにする行動が見られたりしたのですが(2009/11/17撮影)。おそらく、こうして意識しつつも、常に同居しているわけではない、という状況も、クロサイとしてのかれらには、よい刺激になっているのではないかと思われます。前回ご紹介した、当園でのアフリカ・サバンナの「通景」といったものと比べれば、一見、ごくオーソドックスな飼育展示施設ですが、ここにも動物たちの「社会性」への配慮が込められているのです。

tobe_150411 164rtobe_150411 172tobe_150411 189

「本拠」となるメインの展示場から、タワーのある飛び地へと空中散歩を見せてくれるのは、今年19歳になるスマトラオランウータンのオス・ディディ。オランウータンはスマトラ島・ボルネオ島の熱帯林で単独で生活しますが、「最大の樹上生動物」としても知られています。この空中散歩の設備は、そんな出自のディディの飼育下生活に、高木の森の樹冠の構造と機能を付加しようというものです。ロープの高さは地上11m、移動距離は20m、タワー本体の天辺は15mに及びます。東南アジアの熱帯林は、日本の気候風土とは異質で、植栽等での再現は困難です。そこで、人工物による施設で、そんな熱帯林の構造の抽出が目指されています。ここには「オランウータンにとって必要な環境要素(ミニマムな生息環境)とは何か」という問いがあります。空中散歩は、2008年のタワー建設からの継続の中で、ディディにとっても、かなり習慣化した行動となっています。あくまでもディディの自由に任されているため、時にはどうしても渡らないこともありますが。
なお、以前には、空中散歩の誘因として高カロリーで嗜好性の高い餌をタワー側に着けるといったことも行なわれましたが、オランウータンは1日にわずかリンゴ2個程度の過剰給餌でも肥満してしまうような生理を持つため、現在は食事コントロールが行なわれています。たとえば、肥満につながりやすい炭水化物を控え、蛋白質等は高野豆腐(乾物のままで食べます)で補うといった、現場的な工夫も積み重ねられています(※)。動物園での食事は、野生そのままというわけにはいきませんが、代替品目の選定には、動物たちの本性への配慮が欠かせないのです。

※詳しくは、オランウータンの屋内展示場の壁面に研究成果をまとめたポスターが貼られています。

tobe_150414_1 1266tobe_150414_1 1272

お帰りは、こちら。

tobe_150411 222rtobe_150411 224

ケージ状の空中通路から来園者を観察する様子なのは、オスのチンパンジーのロイ。この通路は本来、写真左手に写る「チンパンジーの森」(2014/10/26新設)への移動のためのものです。

tobe_150411 287

このチンパンジーの森も、人工物を活用しつつ、床面積200㎡(20×10m)・高さは手前9m・奥13mの広がりの中に、さまざまな遊具や、石器を使ってナッツを割れる装置など、チンパンジーの生活を豊かにし、その知能や運動能力を引き出して展示効果につなげる設備が満ちています。チンパンジーたちが新施設に馴染み、来園者にさらなる魅力を披露してくれるまでには、もうしばらくの馴化期間が必要なようですが。

tobe_150411 237tobe_150411 256

とべ動物園のチンパンジーは、オス1・メス3で構成されています。新施設に馴れることと並行して、かれら自身による社会関係の調整も進んでいます。時には小競り合いが見られたりもしますが、飼育員はそんなかれらの「手のかかる」ところをも飼育の張り合いとして包み込みつつ、個体ごとの性格や互いの関係を見極め、新しい「チンパンジー一族の森」の実現に向けて、かれらの日々を見守っているところです。単独生活者のオランウータンにはオランウータンの、社会性の豊かなチンパンジーにはチンパンジーなりの環境がつくられていくのです。

tobe_150412 849tobe_150411 345

マントヒヒの群れ。かれらの社会では、おとなオスそれぞれが、お気に入りのメスたちを周囲に集めることが知られています。担当飼育員お手製の「相関図」を見ながら、個体の識別や互いの関係性の観察を試してみるのもよいでしょう。

tobe_150411 343

6歳のメス・イブナは、先天性の脳の障害で目が見えません。しかし、群れには受け入れられており、現在はオスのボンズと「頼り頼られ」の関係です。

tobe_150412 790

コンクリートの施設の中にも、かじり木など、かれらの欲求を満たす工夫がなされています。

tobe_150412 817r

動物たちの日々や種としての特性などをわかりやすく伝え、来園者の観察や理解のきっかけをつくるのも、飼育担当者の大切な役割です。わたしたちの側からも問いかけていくなら、コミュニケーションは益々深まっていくことでしょう。

tobe_150412 753tobe_150411 351

今年(2015年)の元旦、飼育担当者(Tさん)は「今日1/1は11(ヒヒ)の日」と思い定め、この一年間、さまざまなかたちで、とべ動物園のマントヒヒの魅力を伝える「ヒヒ祭り」を推進することを表明しています。

tobe_150412 860tobe_150412 861

Tさんは、独特の達者な描画の才にも恵まれています。彼は第5日曜日を定例として(※)、通算43回、園内各所に現われる「自転車紙芝居屋さん」も行なっています。その際も、紙芝居の後に、彼の特製のイラストなども活かしたZOOトークが聞けます。

※次回は、5/28・13:30~を予定しています。詳しくは園内に告知が出ます。

tobe_150412 1062tobe_150412 1070

睦み合う三頭のアフリカゾウ。一番の子ゾウは、鼻を使って水を呑む練習中のようです。そして、よく見れば、隣の運動場にも、ひときわ大きな、もう一頭。

tobe_150411 267

とべ動物園は現在、国内で唯一、アフリカゾウの「家族」に逢える動物園として知られています。
この写真の、おとなメスはリカ。彼女が当園開園の年(1988年)に、オスのアフとともに来園したのが、とべ動物園のアフリカゾウの歴史の始まりでした。現在、リカと一緒にいるのは、リカの最初の子どもの媛(ひめ、メス・2006/11/9生まれ)と、媛の妹・砥愛(とあ、2013/6/1生まれ)です。
ゾウの社会では、年かさのメスがリーダーとなって、複数のメスが群れを成しています。多くの場合、群れのメンバーのメスは、リーダーのメスの血縁です。群れのメスたちは、メンバーの出産には励ますように寄り添い、生まれてきた子どもたちは、母親のみならず「おばさん」・「お姉さん」といった存在にも育まれることになります。

tobe_150412 1140tobe_150411 279rtobe_150414_1 827

砥愛は、リカそして媛の様々な行動に倣いながら、ゾウとしての体の使い方や、ゾウ同士の付き合い方などを体得している最中です。媛もまた、砥愛に対して鼻で引き寄せるといった世話めいた行動をしたり、手加減しながら妹と遊んだりといった経験の積み重ねの中で、そしてまた、リカの実際の子育てを見知りながら、将来、母親として子育てに臨む際のシミュレーションをしているのだと言ってよいでしょう。

tobe_150412 890

まさに親しく絡む、リカと媛。しかし、このありさまは、ただ自然に生じてきたものではありません。過去2回の流産を経て、ようやく媛を出産したリカでしたが、はじめて接する赤ちゃんということもあってか、授乳もままならず、媛への攻撃的行動も見られたために、一時はリカと分離して飼育員による人工哺育が行なわれました(国内初の成功例となります)。そこから柵越しでの関係づくり等を経て、リカと媛が再度の同居の実現に漕ぎ着けたことが、当園でのその後の「家族づくり」と、その維持・発展の基盤となりました。

tobe_150414_1 773

さきほども写真に写っており、リカとの来園の経緯もご紹介した、オスのアフです。媛は、隣の運動場にいるアフとも、かなり頻繁に交わっている様子です。

tobe_150412 1164tobe_150412 1207

リカにはリカの、母親として、あるいは群れのリーダーとしての判断があるようで、時には媛とアフを引き離すこともあります。

tobe_150414_1 628

実際、こんな場面も見られたりはするのですが。
既に記したように、ゾウの群れのおとな個体はメスのみです。オスもまた、生まれ落ちた群れで育ちますが、やがて、母親のいる群れを離れ、一人前のオスとして成熟を迎えるとともに、別の然るべきメスの群れを見つけます。しかし、その群れに入ってしまうのではなく、群れの周囲で行動しながら、群れの中のメスに発情が見られると、ぐっと接近して交尾を試みる、という生き方を続けていきます(※)。それがゾウたちなりの、持って生まれた距離感ということになります。ひとまとまりの母子3頭と、お互いに存在を意識し、時には交わりつつも独立して生きるオスゾウ。とべ動物園は、まさに「ミニマムなゾウ社会」の再現に成功しているのです。

※生まれた群れを離れた若者のオスゾウは、一時的に年かさのオスなどと行動をともにすることもあるのが知られています。

tobe_150412 1230

リカ・アフの来園以来の飼育担当者・Sさん。ゾウたちにとっても、ある意味では「群れの一員」として認知されているのではないかと思われます。

tobe_150412 1701tobe_150412 1703

ゾウたちと同じ場に立つ「直接飼育」の形態を採っていますが、まもなく2歳の砥愛でもこれだけの体格です。Sさんの長年の経験や細心の注意に基づいた所作・間の取り方の精彩を感じます。

tobe_150412 1393tobe_150412 1425

同じ場に立てることで、さまざまなトレーニング(健康チェックや治療措置等の基盤になります)の可能性も広がります。砥愛がトレーニングを受けていると媛も参加してきます。彼女たちにとっては「遊び」の楽しさもあるのでしょう。

とべ110219 084r

これもまた、媛へのトレーニングのひとつです(2011/2/19撮影)。ゾウならぬ人であり飼育員である以上、すべての場面において、ゾウたちが気を許せる相手であるとともに、そのゾウたちの健やかさを守るという意味での「管理者」でなければなりません。そんな営みが、日々、わたしたちの目の前にあります。

tobe_150412 1182rtobe_150412 1178r

アフへのおやつ。時には、来園者と動物たちの間での、こんなやりとりも演出されます。

tobe_150412 1964rtobe_150412 1969

アフの寝室だけは収容後~閉園までのひとときに公開されているので、わたしたちは、おとなオスの迫力をさらに実感することができます。

とべ110219 303

以前には、こんな光景も(2011/2/19撮影)。アフが子どもたちに鼻を差し伸べています。左は当時の媛、中央が、媛の弟で砥愛の兄にあたる砥夢(とむ、2009/3/17生まれ)です。
媛と砥夢の誕生が比較的近接しているのは(ゾウの妊娠期間は約22ヶ月です)、リカに自分自身による育児(自然哺育)の機会を設けるとともに、その傍らに媛を立ち会わせることで、彼女にもゾウの出産や育児を学ばせる企図があってのことでした。結果としては、砥夢の誕生も、媛を含めての「ゾウの群れ」の創建の推進力になったと言えるでしょう。
砥夢は2012/11/26に東京の多摩動物公園に向けて搬出され、現在は同園で暮らしています(※)。既に述べてきたように、オスゾウの独立はゾウの社会の常です。いまはまだ成長途上ながら、いずれは彼も成熟したオスとして繁殖に関わることが祈念されています。

※詳しくは、こちらをご覧ください。

とべ101217_18 768

こちらは、リカ・砥夢・アフでの場面です(2010/12/17撮影)。群れのメンバーとしての子どもたちを一番大切にしている様子のリカですが、こんな姿からは、アフを含めてのすべてがあっての「とべ動物園ゾウ・ファミリー」なのだということが納得されます。

tobe_150412 511

こうして積み重ねられてきた飼育の営みに対して、このたび、とべ動物園は、日本動物園水族館協会(JAZA)が、希少動物の繁殖に特に功績のあった動物園や水族館に贈る「古賀賞」を初めて受賞することが決まりました。とべ動物園自体が、この達成をひとつの「新たな出発」として、アフリカゾウの飼育へのさらなる貢献を期待されています。見極められたミニマムから、さまざまな可能性がふくらみます。そして、当園の功績は他園の発展をも促すことでしょう。専門性の高い賞ながら、わたしたち一般来園者も、「生きた野生動物を飼育展示する場」としての動物園の意義や役割について、認識を深めるきっかけにできたらと思います。

tobe_150411 270

とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーの歩みについては、園内にも細やかな掲示があるので、目の前のゾウたちと見比べながら、ご参照いただければと思います。

※この掲示は、とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーを応援する有志の会「かぐや媛」の皆さんによるものです。
なお、下掲の拙著もご一読いただければ光栄です。
森由民(2011)「ひめちゃんとふたりのおかあさん」フレーベル館。

tobe_150414_1 933

アフリカゾウの運動場に隣接する展望レストラン「東雲」です。ここからもゾウたちの姿を望むことが出来ます。腹ごしらえなり、一服なりにお勧めしたいところです。

tobe_150412 722tobe_140413 157

遠いアフリカからやってきて、わたしたちに生き生きとした姿を見せ、いのちのつながりをかたちにしてくれているゾウたち。一方、こちらはまさに地元というべき動物です。ノマウマ(野間馬)は、現在の今治市付近を中心に飼育されてきた、明治以降の品種改良を受けていない、数少ない「日本在来馬」のひとつです。小柄で頑健なため、山道も厭わぬ荷駄として重用されてきました。機械化の中、かれらの実用性は薄れましたが、日本人と伝統的な家畜の共同生活の歴史の証として、とべ動物園でも飼育展示されています。現在、繁殖制限のため、オスのアラシ(先の写真)だけはアジアスイギュウ横で別に飼育されていますが、メス3頭ともども、緩やかな時間を感じさせてくれます。

tobe_150414_1 1523tobe_150414_2 058

もう一ヶ所だけ。ヘビをはじめ、ワニ・カメ・トカゲなどを展示するスネークハウスです。大きなゾウガメになった気分も楽しめます。

※来園者のご了解を得て、掲載しています。

tobe_150414_2 034tobe_150414_2 042

ぷりぷりした印象のニホントカゲ。隣には、スリムなニホンカナヘビの幼体も展示されています。

tobe_150414_2 047

こちらが成体のニホンカナヘビ。トカゲとは一味違うクールな相貌です。

tobe_150414_2 065

シマヘビ・アオダイショウなど、よく馴らされて、ふれあいイベントなどに登場する個体もいます。

tobe_150414_2 075tobe_150414_2 071

そして、こんな掲示にも、ふと足を止めてみてはいかがでしょうか。動物園の動物たちは、わたしたちの目の前にいて、普段は得難い体験をさせてくれます。しかし、かれらから受け取るべき最大のメッセージは、かれら自身が生きていて、それぞれに大切な時間を刻んでいるということでしょう。動物たちには、いわば、それぞれの「時計」があり、本性に見合った環境の中で、健やかに暮らすことが望まれます。動物園は、限られた条件の中でも、動物たちから身体的・社会的に充実した行動を引き出し、願わくば、かれらの心をも満たしたいと工夫を積み重ねています。動物園を利用し、観覧するわたしたちにも、そんな営みを分かち合える可能性は開かれているのです。

愛媛県立とべ動物園
大人も子どもも楽しみながら学べる、自然生態を意識した動物園。
公式サイト
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
電話 089-962-6000
飼育動物 約170種823点(平成27年3月31日現在)
開園時間
9時から17時(入園は16時30分まで)
15:30分からは餌を与えるため、ご覧になれない動物がございます。
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開園)
年末年始:12月29日から1月1日
詳しくはこちらをご覧ください。
アクセス
伊予鉄バス・砥部線(千舟町経由・えひめこどもの城行き)
松山市駅(3番のりば)~とべ動物園前
その他、こちらをご覧ください。

※とべ動物園では、餌やり体験・ガイド、動物との記念撮影から紙芝居(!)まで、さまざまな催しが行なわれています。これらについての詳細は、同園サイトのイベント情報をご覧ください。

tobe_150412 008r

さまざまな動物たちの足跡の連係がゲートへと導く、とべ動物園。中でもひときわ大きな足跡に導かれたケージが展示されています。
とべ動物園は、松山市内の城跡に1948年に創設された道後動物園を母体としています。このケージは、1987年、現在の、とべ動物園に移転するに際し、2頭のアジアゾウの引っ越しに使われたものです。

とべ091117 364r

これが、道後動物園から引っ越してきたオスゾウの太郎です。太郎は2013年に亡くなりましたが、それまでの25年間、担当飼育員の工夫したタイヤで遊んだりしつつ、悠々とした日々を送っていました。

とべ091117 316r

こちらはアジアゾウ舎の屋内に設けられた、ハナ子の記念展示です。ハナ子は太郎のパートナーでしたが、2006年に亡くなりました。
現在、アジアゾウ舎は空の状態になっていますが、やがては新しい動物を迎えることになるでしょう。このように、去っていった動物たちを偲びつつ、次の夢をかなえるため、前へ進むことが、動物園らしい「いのちのリレー」と言えるでしょう。

tobe_150411 456

こちらは、1999年に生まれ、当園で人工哺育により育ったメスのホッキョクグマ・ピースです(※)。ぬいぐるみのような赤ん坊時代から、その愛くるしさで人気を集めてきましたが、御覧のようにおとなになった現在も、ホッキョクグマ舎前には、ピース・ファンの姿が数多く見受けられます。ここにも、穏やかに続く、いのちへのまなざしがあるのです。

※ピースの誕生・生い立ちについては、こちらを御覧ください。

tobe_150412 2009r

“隔てを忘れて、もっと身近に”。道後動物園から、広い敷地のとべ動物園へ移ることで可能となったひとつが、本格的な「無柵放養」式の展示法です。来園者と動物たちの間にモート(堀)を設けることで柵なし(無柵)の放し飼い(放養)を行ない、より自然な情景で観察できます。たとえ、それがライオンでも。

tobe_150411 479r
tobe_150411 483

さらに、技術の進歩は、頑丈なアクリルガラスによりさらなる「近さ」をもつくり出しました。

tobe_150411 489

岩山を模した観察舎の二階からは、すぐ足もとにライオンを見ることもできます。

tobe_150412 154

もうひとつの無柵放養式展示方法。捕食者(ライオン)と被食者(草食動物)の間にモートを挟むことで、両者が共存するアフリカのサバンナの景観を再現しています(パノラマ展示)。

tobe_150412 164r
tobe_150412 243

こちらは、草食動物たちのゾーンからの眺めです。

tobe_150412 193
tobe_150412 173

大型のウシ科動物・エランドを、我がもの顔で先導する(?)モモイロペリカン。独特の風貌のサバンナの掃除屋・アフリカハゲコウもラインナップに加わっています。

tobe_150411 334

とべ動物園では、今年(2015年)2/12、8年ぶりにライオンが繁殖しました。生まれたのはオス1・メス2の計3頭。オスの子は、出産直後にうまく母親の腹の下に潜り込めず、人工哺育となりました。詳しい経緯は、こちらを御覧ください。
来園者投票により、オスは柑太郎(かんたろう)、メスは、さくらとリリ花と名づけられました。柑太郎については園内散歩や来園者との記念撮影なども行なわれました(ともに終了しています)。

tobe_150412 512r

こちらは、ヒョウ舎。来園者の頭上にケージが張り出したオーバーハングは、獲物を樹上に引き上げて食べたり、その場でくつろいだりする野生のヒョウの習性を引き出す仕掛けです。

tobe_150412 514
tobe_150412 515

一見、漆黒のクロヒョウですが、明るい日ざしの中では、ヒョウ柄の存在が見て取れます。

tobe_150412 525
tobe_150412 545

こちらも美しい斑点模様と、耳の後ろの白い虎耳斑が印象的なサーバルキャット。野生でも、草原や川辺の繁みなどを好んで生息しています。

tobe_140413 143

かたや、アジアを中心に熱帯から寒帯まで、広く分布するトラ。こちらも無柵放養式の展示方法です。ダイ(手前)とオウガ(奥)は2009年に生まれたオス2頭です。

tobe_150414_1 1289
tobe_150414_1 1304

屋内展示場。眼前に迫るトラたちからは、独特の体臭までも嗅ぐことができます。ケージにはケージの迫力があるのです。

tobe_150414_1 1305

アイスブルーの瞳が印象的なホワイトタイガーは、ベンガルトラの白色個体で別種ではありません)。

tobe_150414_1 018

こちらは、カナダ南部から中南米に生息するピューマです。「アメリカライオン」とも呼ばれますが、ライオンがヒョウの仲間(ヒョウ属)であるのに対し、ピューマは比較的小型のネコ属です(ネコ属の最大種)。

tobe_150411 532

そして、南北アメリカ大陸を通じて、最大のネコ科動物であるジャガー。体格の上でもヒョウに勝りますが、模様もちがいます。よく見比べてみてください。ヒョウ(アフリカストリート)とジャガー・ピューマ(アメリカストリート)は、アフリカサバンナを挟んで、両側に位置しています。

tobe_140413 001

こちらもアメリカストリート。南アメリカ産のアメリカバクです。

tobe_140413 327

丸太かじりに余念がないオスのムーンはやや小柄。バクたちの日常に変化をつけようと、園内の伐採木などを積極的に利用して「遊具」としています。ムーンは、一度気に入るとずっとその遊具に取り組む傾向があるそうです。

tobe_150412 2019

顔が白く、なにやら迫力があるのは、メスのユメ。気ままで、飼育員が枝葉を与えると、まずはユメが食べ、ムーンはお相伴にあずかるという構図だとか。それでも、ムーンはユメの姿が見えないと落ち着かないそうです。
こんな2頭の間にも子どもが出来て欲しいと担当飼育員は彼らの様子を見ながら、あれこれ研究し、環境改善に努めています。

tobe_150412 593

バクは、サイやウマと同様に「奇蹄類」と呼ばれ、体の重心が足の中指にかかっています(ウマの蹄は中指1本です)。しかし、原始的な特徴を遺すとされるバクでは、前足は4本指です(重心の位置は変わりません)。サイは前後肢とも3本指なので、見比べてみるとよいでしょう。

tobe_150412 070

こちらも南アメリカの動物たち。カピバラのワカメ(メス)は、とくしま動物園から来園し、この春に公開を開始したばかりです。

tobe_150412 574

ヤブイヌは、南アメリカのジャングルで暮らしています。名前の通り、ヤブなどをすりぬけやすく進化した、胴長・短足のユーモラスな体型をしています。

tobe_150414_1 1259
tobe_150414_1 1264

霊長類の集合展示「モンキータウン」のクロクモザルも、アマゾン川流域の熱帯雨林に住みます。筋肉の発達した尾は、第五の手のように機能し、ものをつかんだり、巻きつけて体を支えたりできます。

tobe_150411 154

さて、わたしたちにとってはバクと言えば、白黒の色分けの体、アジア産のマレーバクの方が親しみがあると言えるでしょう。

tobe_150411 064

オスのダン(手前)とメスのロコのペアです。二頭の体調管理のため血中ホルモンの状態などを見極めながら、同居を繰り返しています。これからの季節、飼育員としては、さらに積極的なペアリングを試みたいと願っています。

tobe_150411 404

マレーバクの展示場近くにあるベンチ。バクはアメリカ産もアジア産も生後数ヶ月は「ウリ坊」です。こんな模様がちょこちょこと走り回る様子を夢見てみましょう。

tobe_150414_1 1492
tobe_150414_1 1488

オオサイチョウも繁殖の可能性を考えて、ケージの周りへの立ち入りを制限しています(2015/4/14取材)。

tobe_150414_1 1489

繁殖の際、サイチョウのメスは樹洞に閉じこもり、巣の入口を土や糞で塗り固めて、そのすきまからくちばしでオスの給餌を受け、ヒナを育てます。これからの展開を見守りましょう。

tobe_150412 080r
tobe_150412 098r

空を飛ばずとも、ペンギンは鳥です。ウォーターストリートでは、まさに頭上の水中を「飛ぶ」フンボルトペンギンたちの姿を観察できます。

tobe_150412 125

2015/1/1に孵化し、元旦にちなんで元(ガン)ちゃんと名づけられた人工育雛個体です。ペンギンプールの裏手で、オウサマペンギンのメス・ピーチと暮らしています。ピーチは四国でただ一羽しかいないオウサマペンギンです。

tobe_150411 364

とべ動物園の鳥類と言えば、2種類のヒクイドリの比較観察も可能です。

tobe_150411 368
tobe_150412 740

パプアヒクイドリは「ヒトニクダレヒクイドリ」とも呼ばれます。これに対して、単にヒクイドリと呼ばれる種は、別名がオオヒクイドリまたはフタニクダレヒクイドリと言います。どちらがどちらか、もうわかりますね。他のちがいもいろいろ見つけてみましょう。詳しい解説は、こちらから読むことができます。

tobe_150412 015
tobe_150412 024r
tobe_150412 042r

tobe_150412 037
tobe_150412 036

鳥の展示が続きますが、こちらは「バードパーク」。水鳥たちの目線に立ったショウウィンドウのほか、鳥たちが気ままに飛んだり歩いたりする中に歩み入ることもできるフライングケージです。

tobe_150412 062
tobe_150412 054

付属している資料室でクイズに挑戦したり、アマガエルなどの身近な小動物を観察することもできます。

tobe_150412 646
tobe_150412 651

ふれあい広場などのあるリトルワールドの一角にも、鳥たちの暮らす大きなケージが。保護鳥獣舎です。とべ動物園は愛媛県からの委託で傷ついた野生個体を受け入れ、治療・給餌の後にリリースしています。しかし、怪我の程度が重い場合は、そのまま動物園で暮らす個体もいます。たとえば、治療の過程で翼を切断しなければならなかったウミネコなどです。かれらの姿から、わたしたちが野生動物たちと、思いがけないほど身近に暮らしていることを思い起こしてみてはいかがでしょうか。

tobe_150412 663r

リトルワールド内の「こども動物センター」。

tobe_150412 665
tobe_150412 668
tobe_150412 681

見るのが楽しい解説や貴重な標本のほか、オオコノハズクなどの若干の生体展示も見られます。

tobe_150412 695
tobe_150412 682

タヌキの毛皮の手ざわりを実感したりウサギの頭骨や歯の構造を学習できます。

tobe_150412 708r

そんな知識があれば、目の前の動物たちに対するまなざしや想いも、一層深まることでしょう。小さなお子さんたちには、大人がわかりやすく語っていただいたらと思います。

tobe_150411 405r
tobe_150412 637

大人気の人だかり。コツメカワウソは東南アジアを中心に分布する小型種で、家族で群れを構成し、動きも活発なことから、各地の園館で飼育され親しまれています。

tobe_150411 437

カワウソは、水中生活に適応したイタチ類です。

tobe_150411 439r
tobe_140413 299

tobe_140413 266
tobe_140413 254

このような展示装置で、かれらの水中活動もじっくりと観察することができます。

tobe_150412 003

とべ動物園とカワウソには、歴史的に大きな関わりがあります。「こども動物センター」にも、大きなカワウソの像が設置されています。とべ動物園の紋章もカワウソです。これらのカワウソ、実はニホンカワウソです。とべ動物園の前身・道後動物園では、1956~1969年の間、6頭のニホンカワウソが飼育されていました。しかし残念ながら、この日本唯一の試みは、この時点で途絶え、その後2012年には、環境省からニホンカワウソの絶滅宣言が出されました。しかし、愛媛県は1964年からニホンカワウソを「豊かな自然の象徴」として県獣に指定しています。現在、とべ動物園で、生きたニホンカワウソと出逢うことはできませんが、コツメカワウソをはじめ、さまざまな動物たちの生き生きとした姿の向こうに、わたしたちがなくしてしまったものや大切にしなければならないものを、さまざまに考えてみることは出来るはずなのです。

tobe_140413 360

水中派のカワウソに対して、ニッポンアナグマは、地中性を強めたイタチ類です。

tobe_140413 246
tobe_140413 251

「同じ穴の貉(むじな)」として、アナグマと混同されるタヌキ(イヌ科)ですが、実は穴掘りはさほど得意ではなく、木のぼりもそれほどうまくありません。アナグマやキツネの巣穴を借りることも多いのです。

tobe_140413 169
tobe_140413 172

ロバやヒトコブラクダは、人が飼い馴らし、生活の中に取り込んできた家畜です。ロバのオス・ショウくん(手前)はメスのコボちゃんが大好きですが、コボちゃんはショウくんを嫌っているとか……ままなりませんね。

tobe_150411 401

楽しい解説パネルで、ヒトコブラクダ・ブービー(オス)のいろいろな「秘密」を学ぶことができます。

tobe_150414_1 1387
tobe_150414_1 1390

ブービーのハズバンダリー・トレーニングの様子です。こうして一定の動作と報酬(ちょっとしたおやつなど)を結びつけ、動物と飼育員の間で「約束」を成立させることで、健診・治療・採血などが可能になっていきます。

tobe_150414_1 1403

ターゲット棒のほか、掌に条件づけることもしています。

tobe_150414_1 1322
tobe_150414_1 1327
tobe_150414_1 1333

アジアスイギュウの未来(みく)のトレーニングも順調です。体重計に乗ったり採血などもできるようになれば、とのことです。
ラクダやスイギュウは家畜ですが、動物園でのトレーニングは、単に「飼い馴らす」ということではありません。

tobe_150412 917

動物園は、動物たちをより自然に近い状態で見ていただけるように展示していますが、約束事をつくり、展示動物の心身の健康を守ることで、本来の姿をより生き生きと引き出すこと、それも動物園の使命です。次回は、そんなことを考えながら、とべ動物園のさらなる魅力を探究してみたいと思います。

愛媛県立とべ動物園
大人も子どもも楽しみながら学べる、自然生態を意識した動物園。
公式サイト
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
電話 089-962-6000
飼育動物 約170種823点(平成27年3月31日現在)
開園時間
9時から17時(入園は16時30分まで)
15:30分からは餌を与えるため、ご覧になれない動物がございます。
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開園)
年末年始:12月29日から1月1日
詳しくはこちらをご覧ください。
アクセス
伊予鉄バス・砥部線(千舟町経由・えひめこどもの城行き)
松山市駅(3番のりば)~とべ動物園前
その他、こちらを御覧ください。