Archive for 6月, 2015

tennoji_150610 304 tennoji_150610 306 tennoji_150610 308

ゾウの住む森「チャーン・ヤイ山国立公園」。実は都市型動物園・天王寺動物園の一角です。植栽を工夫し、園路をくねらせて行く方を隠すなどによって、あたかも本当の森に歩み入っていくような効果を挙げている「生態的展示・アジアの熱帯雨林」です(※)。ここに掲げた園路の写真2枚も、ほんのひと角曲がっただけの関係です。現在、下草対策で植栽に剪定が施された部位もありますが、夏に向けて「森」は再生していくことでしょう。

 

※詳しくは、この展示を企画立案から主導した若生謙二さん(大阪芸術大学教授)の論文を御覧ください(PDFファイルが開きます)。

 

tennoji_150610 316

ところどころに来園者の気分を高め、ゾウの生態等の知識を増してくれる装置や掲示も設けられています。

 

 

 

tennoji_150610 347

最初の開けたビュー。現在、飼育展示されているゾウが1個体のため、当座、こちらの展示場は使われていませんが、そこはかとなくゾウの気配が感じられるように思います。

 

tennoji_150610 348 tennoji_150610 358

時にはたくさんの人が夢中で透き見することもあるのが、この観察小屋です。

 

tennoji_150610 361r

見つけました。ラニー博子。1969年(推定)・インド生まれです。

 

tennoji_150610 374

時には飼育員との一コマも。アジアゾウとしては、それなりの年齢を迎えつつあるラニー博子ですが、恵まれた施設とさまざまな飼育的配慮の中で日々を重ねています。

tennoji_150610 397 tennoji_150610 405

そんな彼女にさらに近づいていく道のり。「森」のゾーンから「村」のゾーンへと移っていきます。「ゾウと隣り合って暮らす現地の村」という設定で、畑を荒らす野生ゾウに備えた見張り小屋なども建てられています。

 

tennoji_150610 415

そして、この水辺がゴールです。水面に映る「逆さゾウ」も目を惹きます。

tennoji_150610 286 tennoji_150610 283

ゾウは水浴びのみならず、長い鼻を活かしながら「半水生」ともいうべき姿を見せることもあります。ラニー博子の場合、足の故障のため、水に入っている方が楽だという事情もあるそうですが。それもまた、この施設がゾウの快適な暮らしへの配慮を備えている証だと言えるでしょう。

tennoji_150610 1485

もうひとつの生態的展示。アフリカサバンナです。こちらもンザビ国立公園と名づけられています。アフリカ現地の保護区という設定です。その道のりを辿りながら、イベントも含めての動物たちの姿を楽しんでみましょう。

tennoji_150610 1491

園内のあちこちにある、この看板。公開給餌の予定を示しています。

tennoji_150611 711

オスのカバのテツオです。少しの「おやつ」を与えながら歯の手入れをします。それを見学しながら、なかなか見ることのできない彼の全身、そして立派な犬歯などを観察できます。このようなことが可能なのも、普段からカバと飼育員の間に一定の「約束」(手入れの受診~おやつという科学的トレーニング)が成り立っているからにほかなりません。

tennoji_150611 834tennoji_150611 626

かたや水中の様子がよく見えるのは、メスのティーナのプール(普段はオスメスを分けています)。群れているのはナイルティラピアです。カバの老化した皮膚や水中で排泄される繊維質の糞などを食べてくれます。本来の生態系の一環の再現です。

tennoji_150611 829tennoji_150611 907

ぐわりと伸び上がれば、腹部の様子もよく分かります。御覧のように飼育員通路からの給餌が、このような動きを引き出しています。

tennoji_150611 929

ティーナの「おやつ」は、こんなメニュー(※)。

※右側のバケツに入っているのはオキアミで、ナイルティラピアの餌です。

tennoji_150610 1526tennoji_150611 1335

ゾウ・カバに続いて、これまた大型の陸生哺乳類を代表するクロサイのトミーです(国内のオスでは最高齢の32歳)。昨年(2014年)の1月にメスのサッちゃんが亡くなってから一年あまり、当園唯一のクロサイでしたが、今月(2015/6)、ドイツから今年2歳になる若メス・サミアが来園しました。順調ならばサミアはこの夏の間にも一般公開される予定で、トミーとの繁殖にも期待がかけられています。

tennoji_150611 1099

 

一気にコンパクトに。コビトマングースのオス・サチオです。

tennoji_150611 1135 tennoji_150611 1144

サチオにも毎日14時頃に公開給餌が予定されています。落ち葉だまりやフィーダー(給餌器)に飼育員が餌を仕込みます。

tennoji_150611 1266 tennoji_150611 1195

器用さをフルに発揮。フィーダーの中にはミルワームが入っていますが、鼻先で巧みに突いて取り出し食べています。

tennoji_150610 1547

こんなフィーダーが使われることもあります。これらによる行動の活発化や多様化が、サチオの動物園暮らし(飼育環境)を豊かにしているのです。

tennoji_150610 1578

 

さて、いよいよメインともいうべき、広々とした緑のグラウンドでの混合展示です。まずはアミメキリンのペア。オスの幸弥(コウヤ、2012/3/15生)はひとつ年下のメス・ハルカス(2013/1/1生)にぞっこんの様子。アメリカから来園し、日本一高いビル「あべのハルカス」にちなんで名づけられたハルカスですが、彼女がその名にふさわしい成長を見せていくのとともに、このペアのロマンスも高まれば、と温かいまなざしが寄せられています。

tennoji_150611 282 tennoji_150611 283

大形のウシ科動物・エランドのルティー(オス)も存在感があります。前回の記事でも御紹介した幼いグラントシマウマ・ヒデミが暮らすのもここです。

tennoji_150611 289tennoji_150611 636

さらには隠れキャラ(?)のホロホロチョウ。放し飼いのかれらは、時には一般園路にまで出張してきます。

tennoji_130227 718

しかし、給餌を兼ねて集合をかけるトレーニングが行なわれているため、サバンナ周辺から逸脱することはないとのことです(2013/2/27撮影※)。

 

※夜間もこの方法で集め動物舎に収容し給餌しています。

 

 

さて、ここからは「肉食エリア」です。

tennoji_150610 1623 tennoji_150610 1609tennoji_150611 252

 

まずはブチハイエナ。よく見ればユーモラスな容姿ですが、太い骨をも噛み砕く顎を持ち、ある意味ではライオンにも負けず劣らずの名ハンターです。

天王寺120818 166

これからの夏、今年もこんな姿が見られたらいいですね(2012/8/18撮影)。

 

tennoji_150610 1687

ブチハイエナへのビューは、先程の写真のように実際のアフリカのサバンナでも特異な姿を見せる岩山・コピエを模しています。そして、その内壁にはこんな動物の姿も。ケープハイラックスです。樹上や岩肌でも俊敏に振る舞い、木の葉を食べるその様子は、発達した切歯(前歯)とともに齧歯類のイメージが色濃いのですが、実は進化の系統の上ではゾウや海牛類(ジュゴン・マナティーなど)に近縁であることが分かっています。いわば、ゾウや海牛類の道を歩まず、まったく異なる環境に適応していくことで、かれらはハイラックスになったのです。

tennoji_150610 1709

そして、アフリカのみならず地球を代表する肉食獣・ライオンの登場です。オス1頭・メス2頭の構成ですが、かれら同士でのあれこれの社会的な関わり、そして動物たちが飛び越えられないモート(濠)を活用することで「食う・食われる」の関係を視覚化してみせる「通景」の効果で、わたしたちはあらためてアフリカサバンナの生態系を実感することとなります。

 

tennoji_150611 214

ガラス越しの近接ビューも設けられています。

tennoji_150611 216 tennoji_150611 218 tennoji_150611 223

最早、百面相の域?

 

 

tennoji_150610 1766

アフリカハゲコウのペアにも注目です。枝を組んで営巣していく過程で見られる、あれこれのしぐさなどは、かれらなりの社会的儀礼と言えるのかもしれません。写真は、前回にシュバシコウの例を御紹介したクラッタリングです。

tennoji_150611 147 tennoji_150611 148

アフリカの空気に満たされたサバンナを抜けたら、こんな場所に足を止めてみてもいいでしょう。旧シマウマ舎は、いまや来園者用の広場となっています。よりリアルで生き生きとした動物展示を目指してきた天王寺動物園の歴史が、静かに垣間見えてきます。

 

tennoji_150610 719 tennoji_150610 722

動物園の歴史。前回登場した「鳥の楽園」の外には、いささかの庭園が設えられています。その庭の一角にあるのが、チンパンジーのリタとロイドのペアの像です。メスのリタは1932年に(推定6歳)、オスのロイドは1934年 (推定3歳) に来園しました。ことにリタは園内のショーで多彩な芸を披露し、「天才」と称されました。ロイドとの間に繁殖行動も見られ1940年に出産しましたが、残念ながら死産に終わり、リタ自身もほどなく亡くなりました。ロイドも1942年に亡くなっています。いまのまなざしから見れば、文字通りの「過去」ですが、これらの歴史も踏まえながら、現在の天王寺動物園ひいてはすべての日本の動物園がつくりあげられてきました。そのことを思い返すという意味ではリタやロイドは単なる過ぎ去った存在ではなく、何度も噛みしめて動物園の未来を拓くべき「よすが」と言えるでしょう。

tennoji_150610 289tennoji_150611 1406

現在、天王寺動物園のチンパンジーたちは、樹上生の特質を発揮できる施設で、かれら本来の群れ生活を送っています。

tennoji_150611 383

ここはアイファー。爬虫類生態館です。

tennoji_150611 1536 tennoji_150611 1540

足を踏み入れて最初のサイプレス・スワンプは、時にミストに包まれます。アメリカ南東部の温帯湿地を再現した、この展示が一段とリアルさを増すひとときです。水中から伸びて呼吸効率を高める気根を発達させた木々の姿も見て取れます(※)。

 

※気根の機能の解釈としては、この呼吸作用と並んで、湿地の土壌で当の樹木を安定させる意義があるのではないかとも言われており、実はいまだに探究の途上です。

tennoji_150611 1543

サイプレス・スワンプの主ともいうべきなのは、このミシシッピーワニです。ワニの中でもアリゲーターと称されるグループに属します。

tennoji_150611 455

ミシシッピーワニが北アメリカ東部のアリゲーターなら、こちらは中国南東部に分布するヨウスコウワニです。その名の通り、大阪市と友好関係にある上海市から贈られてきました。北アメリカと東アジア、太平洋を隔てた2種のアリゲーターをつぶさに比較できるのも動物園ならではの醍醐味です。

tennoji_150611 445

こちらはワニガメです。北アメリカ産動物ということでサイプレス・スワンプでミシシッピーワニと同居していますが、こちらのヨウスコウワニの展示スペースでも異彩を放っています。

 

※来園者の御了解を得て掲載しています。

 

tennoji_150611 486

御馳走の赤虫に喰らいつくスペインイモリ。敵に襲われると脇腹を破って肋骨が飛び出し捕食を免れるというユニークな生態を持っています。

「爬虫類生態館」と銘打たれたアイファー(IFAR)ですが、その名は、無脊椎動物(Invertebrates)・魚類(Fishes)・両生類(Amphibians)、そして爬虫類(Reptiles)の頭文字を進化の順に綴り合せたものです。そして、それらの複合展示は生息環境を全体として捉えるというコンセプトに貫かれています。

tennoji_150611 577 tennoji_150611 575

このヤシガニも亜熱帯の海岸のマングローブ林の展示の中で、しっかりと自分のポジションを占めています。

 

tennoji_150611 523

インドネシアの熱帯雨林の樹上で暮らすクロホソオオトカゲの振る舞いは、時にダンスを思わせます。

tennoji_150611 465

2014年10月中旬に生まれたグリーンイグアナです。全部で6頭。繁殖という出来事は、動物園が紡ぐ、いのちの営みを目の当たりにさせてくれます。

tennoji_150611 566

こちらが成体のグリーンイグアナ。幼体たちの健やかな成長が祈念されます。

 

 

tennoji_150611 1610

アイファーにはカルタ仕立ての愉快なひとこと解説も掲示されていて、動物散策に楽しみを添えています。

tennoji_150611 1636 tennoji_150611 1624

わたしたちの多くには、最も身近なはずの日本の暖温帯の干潟。チュウシャクシギほかの姿が見られます(※)。

大概の動物園は、多くの外国産動物の飼育展示で特徴づけられていますが、それらを知ることは、わたしたちの足元の自然に目が開かれるきっかけともなり得るでしょう。

 

※動物展示側を観覧路より明るくすることで、ガラス等の隔てなしでも暗い方へ飛び出したりしないという、鳥の習性を利用した展示となっています。

tennoji_150611 1430

アイファーから屋外に出てキジ舎の一角。コジュケイです。本州以南ではそれほど珍しくもない鳥ですが、実は中国中南部の原産です。1920年頃に東京や神奈川で放鳥されたのを皮切りに、狩猟鳥として各地に導入された外来種なのです。

tennoji_150610 003 tennoji_150610 007

天王寺動物園では、南アメリカ原産の齧歯類ヌートリアがミシシッピーアカミミガメとともに展示されています。かれらもまた、毛皮のためや愛玩動物として日本に持ち込まれ、不用意なかたちで野外に放たれてきました。

本来の生息域を逸脱した外来種はしばしば移入先の在来種と競合し、さまざまな環境問題を生み出しています。しかし、かれらはやってきたのではなく人の手で運び込まれたのです。愛らしいといってよいヌートリアたちが害獣となっている現状、動物園の楽しさの中でも、時には胸に手を当ててみたいことがあります。

 

tennoji_150610 2012 tennoji_150610 2014

ヌートリアたちに隣接するのはトウブハイイロリス。北アメリカ原産のかれらの場合、イギリスなどに持ち込まれ定着してしまっていることが知られています。

tennoji_150610 533

日本とは、世界とは、地球とは?さまざまな問いと魅力を孕んで、動物園は皆様を待っています(※)。

 

※バフィンとモモのホッキョクグマ母子の詳細は、前回の記事を御参照ください。

 

 

大阪市天王寺動物園

全国で3番目に歴史が長く(1915年開園)、動物たちの「野生」を体感できる生態的展示の試みなど、いまも未来へ歩み続ける動物園。
公式サイト

〒543-0063

大阪市天王寺区茶臼山町1-108 大阪市天王寺動植物公園事務所

電話番号 06-6771-8401

飼育動物 約200種900点

アクセス

地下鉄「動物園前」①番出口より約5分。その他詳しくはこちらを御覧ください。

 

 

 

tennoji_150610 018

天王寺動物園の朝、いきなりながら真打登場。2014/11/25生まれのメスのホッキョクグマ・モモと、母親のバフィンです。天王寺動物園は2015/1/1で100周年を迎えました。当園としては16年ぶりのホッキョクグマの繁殖成功となったモモ(百々)は、この100周年にちなんで命名されました。母親のバフィンは他園で過去3回出産を経験していますが、いずれも育児放棄となっており、今回はじめて安定した育児に至っています。

tennoji_150610 042

放飼(出場)早々、格子越しに向き合う母子と担当飼育員。飼育員がホイッスルをくわえているのが分かります。次第に夏めいた暑い日が増える中(2015/6/10取材)、バフィンは表に出たがらない傾向があります。そこで、「表に出る」「シャッターが閉まる」という節目ごとにホイッスルを鳴らして、少しのおやつを与えています。科学的トレーニング技術の応用であり、こうしてバフィンに無理強いすることなく、落ち着いた「動物園暮らし」のリズムを定着させようとしているのです。モモはひとまず「お相伴」です。

tennoji_150610 072tennoji_150610 469

モモはすくすくと成長し、すこぶる元気です。バフィンから離れての行動も目立ってきました。

tennoji_150331_1 450 (2) tennoji_150331_2 205 (2)

この写真の頃(2015/3/31撮影)からおよそ70日。ホッキョクグマの赤ちゃんは、見る見る変わっていくのです。

tennoji_150610 092

おもちゃ発見。枝をくわえている姿も、よく観察されます。



tennoji_150610 267tennoji_150610 153

もっといいもの、見つけた!飼育員が投げ込む、さまざまな遊具にもすっかり馴染んでいます。これらの遊びは、泳ぎのきっかけとなり、ホッキョクグマらしい体をつくるのに大いに役立っています(※)。

※ダイビングは、野生のホッキョクグマがアザラシなどを狩るときにもみられる行動です。

tennoji_150610 101

時には、おかあさんとのとりあいも……この黄色いパイプ、元々はガス管です。

tennoji_150610 475

6/16、モモはまたひとつ、「おとなの階段」を昇りました。取材時には御覧の通りだった運動場右寄りのステップを、ついに自力でクリアしたのです。詳しくはこちらを御覧ください。

tennoji_150610 631 tennoji_150610 615

天王寺動物園では、ホッキョクグマのほか3種のクマ類(メガネグマ・ニホンツキノワグマ・マレーグマ)がひと並びに展示されています。モモやバフィンからの流れで、各地の環境に適応したかれらを比較する「世界のクマ・プチツアー」を試みてもよいでしょう。写真はマレーグマのマーズ(オス)。しばしば、バックヤードの飼育員の様子を窺う独特のしぐさで知られています。

tennoji_150610 1890 tennoji_150610 1909

次は2014/8/9生まれのジャガーの双子です。8月(葉月)生まれなので、オスは葉月旭(あさひ)・メスは葉月ココと名づけられました(※)。母親のルースと同居しています。ルースは大阪市と上海市の親善動物として2011年に上海動物園から来園しました。隣の運動場には父親のジャガオもいます。おとなのジャガーは単独生活者なのでオスもメスも一頭で暮らします。旭やココにとっても母親やきょうだいと一緒に暮らせる時間は短く、その間に必要な社会性や基本的な行動などを身に着けます。なにげなく映る旭とココのじゃれあいも、貴重な学びのひとときなのです。

※旭は「九日」、ココも「九」で、ともに「9日生まれ」を意味します。

tennoji_150610 725 tennoji_150610 742 tennoji_150610 743

何種類もの霊長類たちの比較展示であるサル・ヒヒ舎。ここでもフクロテナガザルの赤ちゃんが生まれています(2014/9/22生まれ)。テナガザルは「一夫一婦」のペアをつくります。父親や、年かさの兄姉なども子育てに参加します(現在はペアと赤ちゃんの「三人家族」です)。

tennoji_150610 723tennoji_150610 655tennoji_150610 691

新しいいのちの誕生は哺乳類ばかりではありません。
「鳥の楽園」は、大きなドームの中にわたしたちが歩み入り、自由に飛び交う鳥たちの姿を観察することが出来ます。写真はウミネコの飛翔です。

tennoji_150610 684

首をもたげ、くちばしをカタカタと鳴らすシュバシコウ(ヨーロッパコウノトリ)。クラッタリングと呼ばれる、この行動は、なわばりの主張やペア同士のコミュニケーションのために行なわれます。

tennoji_150610 692 tennoji_150610 696

別のペアの巣。ヒナの姿がありました。シュバシコウは人家の屋根で巣づくりをすることも多く、東ヨーロッパでは、それを吉兆と見なすと言います(※)。コウノトリを「赤子を運ぶ使い」とする発想も、そんなところから出てきたのでしょう。

※「鳥の楽園」の中に向かう通路にはシュバシコウの生態に関する図解が掲示されています。

tennoji_150610 703tennoji_150610 676

コサギ、アオサギ……シュバシコウの他にも見られる数々の巣。

tennoji_150610 670

こちらはよく見ると、ドームのネットの外側にあります。野生のアオサギも、こんな場所を選んで営巣しているのです。

tennoji_150611 1478tennoji_150611 1454

カリフォルニアアシカの池の柵にとまる、この鳥。見覚えがあるような、ないような……。

tennoji_150611 1455

ゴイサギの幼鳥です。写真奥の成鳥と比べてみてください。


tennoji_150611 1437tennoji_150611 1441

ここでも母鳥の下で守られるヒナの姿。

tennoji_150611 1440

キジ舎の一角、ヒオドシジュケイの母子です。

tennoji_150611 1442

こちらが父親。地上にいることも多いかれらの育児行動をじゃましないように、目隠しのシートが張られています。

tennoji_150610 1043r

楽しい園内散策で過ごすうちに、もう昼過ぎ。ホッキョクグマ舎では母子が収容され、職場体験生を率いた飼育員がリンゴなどをセッティングしています。

tennoji_150610 1070

入れ替わりに放飼され、さっそくリンゴを賞味するのはメスのイッちゃん。2013/12/11、ロシアのノボシビルスク動物園生まれですが、豚まんなどで有名な株式会社蓬莱が天王寺動物園に寄贈し、今年(2015年)3/28に当園に到着しました。

天王寺100224 490

株式会社蓬莱と天王寺動物園のホッキョクグマには深い関わりがあります。モモの父親であるゴーゴも2006年に蓬莱が当園に寄贈しています(写真は2010/2/24撮影)。ホッキョクグマも前記のジャガー同様に単独生活者であるため、子づくりの任を果たしたゴーゴは、現在、和歌山県のアドベンチャーワールドで、別のメスとのペアリング(繁殖)を試みています。そのゴーゴが帰ってきたとき、さらに別の繁殖の可能性を、ということで、今回のイッちゃんの寄贈が行なわれました。

tennoji_150610 1289 tennoji_150610 1309

ロックオン……それ!

tennoji_150610 1107 tennoji_150610 1109

巧まざるシャワーで御満悦の様子。

tennoji_150611 950r

ホッキョクグマのプールで活用されていた黄色いガス管。園内では他にも応用例が発見できます。骨を砕いたまるごとの鶏を手にガイドを始めている飼育員……

tennoji_150611 963r

昨年(2014年)にリニューアルされた運動場に入ります。鶏は、くだんのガス管の中へ。

tennoji_150611 975 tennoji_150611 985

登場したのはアムールトラの虎二郎(こじろう)です。虎二郎もジャガーのルース同様、上海動物園から2014/3/28に来園しました。

tennoji_150611 990 tennoji_150611 1027

器用に肉を取り出して、ぺろり。

tennoji_150611 1057tennoji_150611 1072

おやつが片付いても、しばらくは遊びが続きます。これも狩りの感覚につながっているのでしょうか。飼育動物たちの日常にめりはりを与え、かれらの退屈を減らす、このような試みは一見人工的な観もありますが、かれら本来の能力や習性とのつながりも感じ取れます。動物学的な観察と動物福祉の両面から見ていくことが出来るでしょう。

tennoji_150611 1065

張り切る虎二郎の隣(以前からの運動場)では、ゆったりと堀を泳ぐ、別のオスのセンイチ。2003年に東京の多摩動物公園で生まれたセンイチは、その年のうちに当園に移動し、いまではすっかり住み慣れた様子です。

tennoji_150610 1849

ヒツジの祖先にあたる野生種と考えられているムフロン。かれらが展示されている岩山にも、こんなひと工夫が見られます。

tennoji_150610 1864tennoji_150611 137

穴を開けたポリ容器や植木鉢、ブイなどに固形飼料を入れておくことで、ムフロンは自分たちの角などを活かし、時間をかけて食事をして一日を過ごすことになります。

tennoji_150611 1709

ここで暮らすのはツウ・テン・カク(通天閣)のオス3頭です。

tennoji_150611 1378 tennoji_150611 1384

フタコブラクダのジャックも食事中。美味ですか?

tennoji_150611 1400 tennoji_150611 1399

ラクダのジャックなどの暮らす一角は、高い観覧通路からの見晴らしで動物たちの姿を楽しむことが出来ます。ハイイロカンガルーのユイ(メス)もそんなひとつ。ちょっと恥ずかしがり屋だとのことです。そっと見つめてあげましょう。

tennoji_150611 283

新しいいのちをめぐり、飼育的配慮に支えられた動物たちの日常のありさまを見つけてきた天王寺動物園散策。しかし、まだまだ御紹介するべきものは溢れています。次回は、このグラントシマウマのヒデミ(メス・2014/11/1生)も暮らす「アフリカのサバンナ」ほか、さらに個性的な展示施設を楽しんでみたいと思います。

 

大阪市天王寺動物園
全国で3番目に歴史が長く(1915年開園)、動物たちの「野生」を体感できる生態的展示の試みなど、いまも未来へ歩み続ける動物園。

公式サイト

〒543-0063
大阪市天王寺区茶臼山町1-108 大阪市天王寺動植物公園事務所
電話番号 06-6771-8401
飼育動物 約200種900点

アクセス

地下鉄「動物園前」①番出口より約5分。その他詳しくはこちらを御覧ください。