Archive for 8月, 2015

※定例(餌やりなど)・特別のイベント情報は、こちらを御覧ください。有料のものもあります。

ikeda_150813 014r

 

池田動物園のゲートを潜れば、すぐにゾウの運動場。人気者にふさわしい場所です。朝いち、当年50歳となるインドゾウ・メリーが姿を現します。

ikeda_150813 365rikeda_150813 366r

餌やり体験では、鼻息を感じながらの手渡しも楽しめます。ちょっと腰が引けていますが……

ikeda_150812 035r

餌やりが終わったら記念撮影。

ikeda_150812 1308

何回か訪ねたことのあるわたしを覚えていてくれたのでしょうか?鼻先を伸ばしてきます。

ikeda_150812 1330r

夕刻。メリーの餌を積んだトラックがゾウ舎前にやってきます。

ikeda_150812 1534

気慰みの軽食を取りながら、足を薬浴。メリーは右後足を除く足の裏に傷が見られ、そのケアです。当園では複数のスタッフ(ゾウ班)による集団直接飼育が行なわれています。指示に従って足を薬液に浸ける~そのかわりに少しの餌が出る。これらは飼育員とメリーの間で成り立っている「約束」です。それによって毎日の生活リズムが守られ、心身の健康も管理できます。ゾウらしい姿を保ち展示するためにも必要な関係づくりなのです。

ikeda_150812 1616

特別に撮影させていただいた収容後の寝室。後ろ足にチェーンをつなぎますが、これによって無人の夜間にメリーが不測の行動などをして傷ついたりしないようにしています。メリーはこのチェーン(繋留という約束事)にも馴れています。ゆっくりおやすみください……。

 

ikeda_150812 235

……時を急ぎすぎました。再び、昼の園内へ。池田動物園の動物舎の半ばは斜面に配置されています。

ikeda_150812 244 ikeda_150812 245

勢いよく駆け下りてくるのは、ヤギのハルマ。この手の地形はお得意です。

 

ikeda_150812 253

そんなハルマのすぐ上で暮らすのはアメリカバクのカップル。手前はスウェーデン生まれのオス・アレック、奥がドイツ生まれのメス・アンプです。ともに1987年生まれ。国内のアメリカバクでは最高齢で、いままで多くの子宝に恵まれてきました。

ikeda_150813 304

「餌やり体験はいかがですか?」

ikeda_150813 312

参加させていただきました。長く伸ばされる「鼻」。これは上唇が伸び、鼻の穴と一体化したもので、構造上はゾウの「鼻」と同じです。しかし、ゾウはアフリカ起源・バクはアメリカ大陸起源の動物です(※)。かれらの「鼻」はそれぞれの暮らしに合わせて、たまたま同じように進化したと考えられます。メリーとアンプ・アレックを比べてみてください。

その他、餌やり体験は、バクのディテールに迫る好機と言えるでしょう。

※※現在、バクは東南アジアに1種、中南米に4種が分布しており、アメリカバクの生息域はコロンビア~ブラジルなどの南アメリカです。

 

ikeda_150812 736

国内最高齢と言えば、こちらの個体にも注目です。オスのベンガルトラ・ヒロは1993/4/9に池田動物園で生まれました。いまもなお精悍な面立ちです。

ikeda_150812 299 ikeda_150812 302

南アメリカ~アジア(トラ)と来て、今度はアフリカ南部。カラハリ砂漠などに生息するミーアキャットです。こちらも斜面の一角を占める飼育展示施設です。群れをつくって交代で見張りに立つかれらの習性を利用して、上皿秤の上に立たせるという展示はよくありますが、ここでは背の高さも一目で分かります(※)。

 

※京都市動物園の飼育担当者の工夫に学んだとのことです。

ikeda_150813 261

群れならではの「ミーア団子」。

ところで、この施設は「まいにちプレミーア」と名づけられています。ミーアキャットに「プレ」?

ikeda_150812 355r

こちらが「プレ」の含意、北アメリカの草原で暮らす「プレーリードッグ」です。ミーアキャットと同様に群れをつくり巣穴を張り巡らせて暮らしますが、ミーアキャットは肉食のマングース科。対するプレーリードッグはリス科です(地上性の強いジリス類)。「まいにちプレミーア」は進化の系統も生息域も異なる2種の動物それぞれの群れとしての巣穴生活を比較できる、動物園ならではの施設なのです。

ikeda_150813 341rikeda_150813 343

池田動物園の坂の上、散策はゆっくりと続きます。木組みが目につくレッサーパンダ舎。矢印のところにレッサーパンダがいます。この姿勢なら、毛が密生した足の裏もよく分かります。レッサーパンダは中国四川省の冷涼な高地に生息します。木登りが得意で、雪の上でも滑らないような足裏をしています。池田動物園では、そんなかれらにふさわしい場所、「樹上性」を満たす仕組みをつくっているのです。

この写真の観覧路の設備は人工ミストが出るスペースです。涼みながらの動物観察が出来るとともに、暑さが苦手なレッサーパンダのためでもあります(※)。池田動物園ではあちこちに、手づくり感覚の中で動物への配慮や、来園者と動物がひとときを共有できる工夫が施されています。

 

※この日は雨模様のため、行なわれませんでしたが、当園サイトのイベント情報で「レッサーパンダのひんやりミスト」をチェックしてみてください。

ikeda_150813 1379

こちらは今夏のナイトズー(夜間延長開園、今年は既に終了)。のんびりと過ごすのは、しずく(メス)と今年(2015/1/30)、山口県の徳山動物園からしずくの元に婿入りした「のんた」です。かれらのペアとしての将来も楽しみですね。

ikeda_150813 1319rikeda_150813 532

レッサーパンダの高みに憧れたなら、みなさんもひとときの「高み」を楽しんではいかがでしょう。園内を周遊できる「ウォッチングサイクル」はキリン舎奥の斜面中腹からお乗りになれます。

ikeda_150812 585 ikeda_150812 583

ちなみに、レッサーパンダは、これらのアライグマ科の動物と近縁と考えられています(北アメリカ中心に分布するアライグマ・南アメリカに広く分布するアカハナグマ)。

ikeda_150812 591

話の赴くままに、こちらはオスのブチハイエナの蓮(れん)。さて、ブチハイエナはネコとイヌどちらに近いでしょう?見た目はイヌと思われるでしょうが、さまざまな肉食動物を含む系統グループ・食肉目をイヌ亜目(イヌ類のほか、イタチ・クマ、そしてアザラシなどを含む)とネコ亜目(ネコ類のほか、ジャコウネコ・マングースなどを含む)に大別すると、ハイエナはネコ亜目とされています。見た目の直感では決められないというのもポイントですが、ハイエナ類のイヌめいた外観は草原や砂漠での暮らしへの適応と考えられます。さきほどのミーアキャットとプレーリードッグの関係とも比較できるでしょう。

ikeda_150813 115ikeda_150812 592

そんな蓮が熱いまなざしを送るのは……メスのブッチです。二頭には繁殖も期待されています。温かく見守っていきましょう。

ikeda_150812 492r

坂の上の散歩もここまで。十分な高さを取ったケージ。向かいには、ケージの上層部を観察するためのテラスも設けられています。

ikeda_150812 517 ikeda_150812 522

ここの住人は、こちら。中央アメリカの熱帯雨林に住むジェフロイクモザルです。「クモ」という見なしの元ともなっている柔軟な姿勢は、細長い手足(わたしたちヒトと同様、肩が自由に回ります)と巻きついて体を支える尾によっています。御覧のように手には親指がありません。すばやく枝から枝へ渡っていく時には、しっかり掴むより親指のない手を巧みにひっかける方が滑らかに動けます。池田動物園の個体は恵まれた空間の広がりの中で活発に動くとともに、しばしば、わたしたちの様子を見るように近づいてきたりします。かれらの体の特徴やその使い方をじっくり観察してみましょう。

ikeda_150812 795 ikeda_150812 805

こちらはアフリカに住むアビシニアコロブスです。オスのアトムはメスのトレスとふたり暮らしですが、御覧のようにかれらの手も親指が退化しています。かれらも枝から枝へと軽快に跳び移るので、この手は移動にも適応していると考えられますが、勿論、クモザルとはそれぞれ別の進化の中での、結果としての一致です。コロブスはクモザルほどに自由に肩が回ることもなく、尾もバランスを取るだけで巻きついたりはしません。そんなちがいも含めて比較観察の楽しみが広がるでしょう。

なお、コロブスの主食は木の葉です。この点でも、木の葉も食べるが果実を好み、昆虫などもメニューとなるクモザルとはちがいます。アトムやトレスが新鮮な枝葉を楽しむ場面に行きあえたらラッキーですね。

ikeda_150812 749 ikeda_150812 750

尾と言えば、こちらも。ブタオザルの名は尾のかたちに由来します。手づくり看板も楽しいですね。

ikeda_150813 1085

そして、フクロテナガザルには尾がありません。ヒトにつながる類人猿(ape)とまとめられるグループの共通特徴のひとつです。フクロテナガザルは喉の共鳴袋で大きな鳴き声を発します。縄張りを主張したり、互いに鳴き交わしたりするこの声は池田動物園でも朝夕などにしばしば聴かれます。その迫力は未知の方にはおそらく想定外でしょう。

ikeda_150812 128

そして、現生の類人猿(※)の中でもボノボと並んでヒトの「進化のいとこ」と言われるチンパンジー。オスのトムが枝を使って手に入れようとしているのは固形飼料です。

 

※小型=テナガザル類、大型=チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータン。

ikeda_150812 090 ikeda_150812 112r

こちらが装置の全容。チンパンジーの高い知性に基づく道具利用の能力を引き出す「チンパンジーなかよしToyッチャー」です。固形飼料はわたしたちの操作で投入されるので「餌やり体験」とも結びついています(使われる固形飼料の一日量は、きちんと計算されています)。

そして、二枚目の写真。トム(右)のほかにも、もう一個体いますね。

ikeda_150812 896

メスのレーナです。先ほどの場面では、トムが枝を使って手に入れた固形飼料をすかさずレーナが分け前としてねだっているのです。野生のチンパンジーはオス・メスともに複数の群れをつくります。そんな生活の中で、かれらはお互いに複雑なやり取り(コミュニケーション)をする社会的知性を発達させています。飼育下チンパンジーの生活を考えるうえでも、道具利用等のほかに、ここでのような社会性を発揮できるようにすることは、とても大切です。観覧するわたしたちも、かれらのそんな面に注意を向けてみたいところです。

 

ikeda_150813 1116

群れで暮らす霊長類はこちらにも。ボリビアリスザルです。人の目で見ても楽しいデザインの遊具を使う姿にも注目です。

ikeda_150813 1111

2015/6/18生まれの赤ちゃん。いまはどのくらい成長しているでしょうか(2015/8/13撮影)。

ikeda_150813 094 ikeda_150813 104

「おサル」の最後はこちら。何種類かの霊長類が並ぶ「おサルの小部屋」にいるのは、国内では当園1個体のみのシロカンムリマンガベイ。メスのリリスは高齢で歯が抜けているもののマイペースに元気です。

ikeda_150812 609

お尻を向けるのは「好意」のしるしだそうです。

ikeda_150813 530ikeda_150813 527

このあたりで腹ごしらえと行きましょう。園内の「ものしり食堂」。その名にたがわずテーブルの上にも動物豆知識が。栄養を摂りながら、この後の園内観察に向けての知恵も吸収できるというわけです。

 

 

 

ikeda_150813 529

こちらのカツ丼の素材は地元産の豚肉です(※)。とてもおいしくいただきました。

 

※岡山県岡山JA畜産(株)吉備農場産。

ikeda_150812 629 ikeda_150812 635

地元つながりでこちら。このメダカは岡山県中央部の吉備中央町由来の野生個体です。メダカは日本の河川の在来種ですが、現在は絶滅危惧種となっています。人間活動の変化(近代化・工業化)による水質汚濁や住みかに適する小川の減少も大きな原因ですが、やはり人の手で持ち込まれた外来種カダヤシ(北アメリカ原産)との競合にしばしば負けてしまうという現状もあります。

ikeda_150812 640

さらにはこちらの魚たち。観賞用に美しい色に品種改良されたヒメダカやシロメダカです。同じメダカと言っても、これらを川などに放せば在来のメダカの血統をかき乱し本来のあり方を取り返しようもなく壊すことになります(※)。

 

※メダカには野生でも北日本と南日本さらには水系によって遺伝的な差異があり、たとえ野生個体同士でも他地域のものを持ち込めば、やはり遺伝的な攪乱となってしまいます。

ikeda_150813 542

池田動物園では園内の一角にこのようなメダカ等の展示コーナーを設けたり、米・芋の農作体験を催すなどして、身近な自然やそれに根差した暮らしに目を向ける営みも続けています。

ikeda_150812 453

さらにこちら。「ぬーちゃん」とは?

ikeda_150813 352ikeda_150812 928

ヌートリアは同じく園内にいるカピバラと同様、南アメリカ原産の齧歯類です。戦時中には世界中で毛皮用に飼育され日本にも導入されましたが、いまは「外来動物」として野生化してしまっています。農作物への食害や日本在来の動物たちの生態系を壊す「侵略的外来種」です。元より責任はヌートリアではなく人間にあるのですが。岡山県南部は全国でもとりわけ野生化したヌートリアが多いことが確認されています。

ikeda_150813 172 ikeda_150813 180 ikeda_150813 210

念入りな毛づくろい。ヌートリアのユーモラスとも言える姿を楽しみつつも、そういうかれらを「悪役」にしてしまっている現状を反省し、これからの人間の生き方を考える。動物園でのヌートリア展示には、他に比類のない体験的な価値があると言えるでしょう。

ikeda_150812 872 ikeda_150812 873

生息地に絡んで今回最後の話題。オスのワライカワセミ・ペッパーの部屋には壁にコアラが描かれています。かれのふるさとがオーストラリアだからです。

ikeda_150812 932

パルマワラビーもオーストラリア・ニューギニアに分布する小型のカンガルー類です。

ikeda_150812 937

大接近。生息地・進化の系統・暮らしに合わせた適応形態、さまざまな視点から動物たちを比べ、実際に観察する……ここに、動物園ならではの広がりを持った楽しみのひとつがあります。

 

気まぐれにあちこちつまみ食いしてしまった観もある池田動物園観覧記。次回は御紹介しそびれた動物たちにも登場してもらいつつ、かれらの健康な暮らしを支える動物園の営みに踏み入ってみたいと思います。

ikeda_150813 1406r

こちらはナイトズーでのメリーさん。またお逢いしましょうね。

 

 

池田動物園

緑に囲まれ、動物たちを体感できる動物園

公式サイト

〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5番1号

電話 086-252-2131

飼育動物 122種590点

開園時間(閉園の1時間前までにご入園ください)

4月~10月:9:30~17:00

11月~3月:9:30~16:30

休園日

11/21~2/20、5/21~7/20の毎週水曜日

(祝祭日や夏休み・冬休み期間中は休まず開園いたします。)

アクセス

JR岡山駅西口から

バス…岡山中央病院行き 京山入口 下車徒歩12分

タクシー…約8分

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。