Archive for 9月, 2015

※この記事は2015/8/29~30の取材を基にして構成されています。

※※園内で行なわれている、お食事ガイドやふれあいタイムのスケジュールについては、こちらを御覧ください。

 

 

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前足も含め、表情たっぷりのトラのマドラス(オス)。

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馴染みのスタッフが来れば、こんな姿も。

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こちらはおすましのジャム(メス)。

前回はナイトズーを中心にあれこれと話題を綴ってまいりましたが、いしかわ動物園の園内はまだまだ見どころがたっぷりです。

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「ツルたちの水辺」の給餌解説。

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今春(2015/3/20)オープンした新施設ですが、そもそもはいままで展示場所が定まらないままにバックヤードにいたマナヅルのための構想でした。そこにタンチョウ2羽が加わります。

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この餌箱はツルたちの長いくちばしなら普通に食事ができますが、招かれざる来訪者、たとえば野生のカラスなどには届きません。このような工夫はツルたちの特性の展示にもなっていると言えるでしょう。

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こちらも同居者ながらツルならずしてニホンコウノトリ。撒かれたドジョウを巧みに捕食。

ニホンコウノトリとタンチョウは国の特別天然記念物で、石川県での展示は初めてとなります(※)。また、マナヅルは野生では主に鹿児島県の出水平野に越冬のために渡ってくるので出水平野は「鹿児島県のツルおよびその渡来地」として国の天然記念物に指定されています。「ツルたちの水辺」は、日本にまつわる希少鳥類の混合展示ともなっているのです。

 

※ニホンコウノトリは明治までは日本各地に生息し繁殖していましたが、乱獲や営巣などに利用される木の伐採、農薬の影響などから個体数が減っていき、1971年には日本産個体が絶滅してしまいました。しかし、中国から導入した個体を基に1988年に東京都・多摩動物公園で初めて飼育下繁殖に成功して以来、各地の園館で飼育や繁殖の取り組みが行なわれるとともに、兵庫県豊岡市のコウノトリの郷公園を中心に野生復帰が進行中です。いしかわ動物園にいる2羽のうちの1羽はコウノトリの郷公園で生まれ野生復帰を果たしましたが、負傷のために保護され当園にやってきました。もう1羽は、よこはま動物園ズーラシアに由来しています。

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日本の水辺の希少鳥類といえば、こちらも忘れるわけにはいきません。前回御紹介した特別展「カエルのひみつ」の会場でもあった「動物学習センター」には、常設の「トキ展示・映像コーナー」があります。

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トキもコウノトリ同様に食物連鎖のピラミッドの最上層に属する肉食の動物です。それゆえに他の様々な動植物や環境全体が整っていなければ生きていけません。このジオラマは、かつては当たり前だったそんなありさまを示しています。

トキもまた日本の自然と社会の変化の中で個体数を減らしていきました。そんな中、1970年、能登半島・穴水町で「能里(ノリ)」と名づけられた野生トキが捕獲され、人工繁殖の試みのため、佐渡トキ保護センターに送られました。残念ながらノリは翌年に亡くなります。これによって本州産の野生トキはいなくなりました。石川県は「本州最後の野生トキの生息地」だったことになります(※)。

 

※日本産最後の個体は佐渡島に生き残っていた5羽で、国と新潟県により保護増殖のために1981年に一斉捕獲されました。しかし、2003年には、その最後の1羽も死亡し、日本産トキは絶滅しました。その後、中国に生き残っていた個体を基に1999年に佐渡トキ保護センターで飼育下繁殖に成功。過去の教訓を踏まえながら、現在、野生復帰が進められるに至っています。

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以上のような縁もあり、いしかわ動物園では2010年から、環境省の「トキ保護増殖事業」の一翼を担って、新たに佐渡のセンターからのトキを非公開の「トキ飼育繁殖ケージ」に受け入れています。学習センターでは、モニター越しに、そんなトキたちの様子を観察できます。いしかわ動物園では、これまでの6年間で45羽が巣立ちました。そのうち37羽を佐渡へ送り、15羽が野外に放鳥されています。

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こちらは貴重なトキの標本ですが、一羽の頭から背中にかけてが黒ずんでいます。これは頭部から出る分泌物を自分で塗り付けているからで、繁殖期のしるしです。このような習性はトキ以外の鳥類では知られていない珍しいものです。

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トキになってみよう!人形は抱くことが出来、本物のトキの重さを模しています。また、背中をそっとさわると、在りし日のトキの声が再生されます。

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これが園内にある非公開の「トキ飼育繁殖センター」です(※)。一般入園者のわたしたちはこの前までが限度ですが、動物園とは、人と動物をつなぐ場所。希少動物の飼育繁殖を確立することは動物園の基盤を固める営みでもあります。そんな想いで静かに見守っていきたいと思います。

 

※詳しくは、こちらを御覧ください。

 

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鳥たちが自由に飛び交う中にわたしたちが歩み入ることができる「水鳥たちの池」も、トキと深い縁のある施設です。いしかわ動物園はトキそのものの飼育に取り組む前に、多摩動物公園等の支援を受けつつ2004年度からトキに近縁の鳥たち(トキ科)の飼育繁殖に取り組んできました。ここでの経験の蓄積が当園でのトキの飼育繁殖の成功につながったのです。

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7羽のカルガモのヒナ。かれらも2015/8/7に「水鳥たちの池」で孵化し、現在、バードストリートの一角で成長中です。

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園内ではあらたに「トキふれあいセンター」(仮称)も建設中です(※)。こちらでは「トキ公開ケージ」も設けられる予定です。開設時期は未定ですが、建物自体は来春の完成を目指して工事が進められています。

 

※「ツルたちの水辺」とは池の水面を挟んだ向かい側、一衣帯水です。

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一歩踏み入れば夏でも雪がちらつく「ライチョウの峰」(この人工雪は時間によって休止していることもあります)。トキと並んで、ニホンライチョウも石川県の歴史にゆかりのある鳥です(ニホンライチョウは、種としてのライチョウの日本産亜種と位置づけられます)。正治2(1200)年の文献に、現在の石川県・白山のライチョウを詠み込んだ和歌があり、これが日本最古のライチョウについての記述とされています。ライチョウは約2万年前の氷河期に大陸から日本に渡ってきましたが、その後の温暖化で日本列島に隔離され高山に退避することで生き残ってきました(ニホンライチョウは、この動物種の世界における南限分布です)。かれらは、地球の歴史という貴重な「時」の生き証人なのです。国の特別天然記念物に指定されながらも、開発(環境破壊)やキツネ・カラス・イノシシなどの分布の拡大などで生息域を狭められ、絶滅が危惧されています(先頃、ニホンザルによるひな鳥の捕食も確認され、危機感が高まっています)。地球温暖化の脅威も指摘されていますが、それはライチョウが温暖化の程度や影響の貴重な指標ともなり得ることを示しています。白山では他のいくつかの地域とともに既に絶滅したとされていましたが、2009年以降、メス1羽の生存が確認されています。

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「ライチョウの峰」の展示場は、高山を模し、本物の高山植物なども配されています。展示場内だけでなく、観覧通路も園内で一番涼しいので、残暑の日には高山気分のひとときを過ごすのもよいでしょう。

しかし、実は現在ここで飼育展示されているのはニホンライチョウではありません。ノルウェー原産のスバールバルライチョウです(ニホンライチョウとは互いに同種で別亜種)。

そもそも動物園でのニホンライチョウの飼育の試みは、長野県・大町市立大町山岳博物館が1963年に始めました。同館の取り組みは、ライチョウの低地飼育やその生態等の研究について多くの貴重な成果を挙げましたが2004年に中断されています。

その後、2008年、上野動物園がノルウェーからスバールバルライチョウを導入しました。それを振り出しに、富山市ファミリーパーク・いしかわ動物園ほかの園館がスバールバルライチョウの飼育繁殖に取り組んでいます。そこには、トキを守るために近縁のトキ科の鳥たちの飼育で経験を蓄積したのと重なる面もあります。やがては大町山岳博物館とも連携してニホンライチョウを守るための活動が広がっていくことが期待されます(※)。

 

※今年から環境省の事業として上野動物園・富山市ファミリーパークで野生から採取したニホンライチョウの卵の人工孵化と飼育繁殖の試みが始まり、来年度以降の進展が期待されています。また、大町山岳博物館でもスバールバルライチョウの飼育が開始され2015/7/4から展示公開も行われています。

 

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いしかわ動物園では、今年も7/2・10にスバールバルライチョウのヒナが誕生しました。この写真は7/2生まれのメスです。

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今回もひと息。園内のレストランサニーの「ハントンライス」。ケチャップ風味のバターライスに薄焼き卵・白身魚のフライにタルタルソース。金沢生まれの洋食メニューとして知られています。

 

さてリフレッシュしたところで、ここからはしばし園内の赤ちゃんたちを中心に巡ってみましょう。

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まずは「サルたちの森」。父親ルーク・母親サクラを中心に既に3頭の子どもを擁するシロテテナガザル・ファミリー。6/26に新たなオスの子が加わりました。父親のルークにちなみルルと命名されています。

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8/7、ブラッザモンキーにも赤ちゃんが誕生しました。 母親ユミ・父親ジープにとっては3頭目の子どもとなります。親とは異なる赤ちゃんの色合いも印象的です。

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群れの中の赤ちゃんには大概のことが許されるようです。

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「サルたちの森」では、ワオキツネザルとホウシャガメの同居展示も見られます。共にマダガスカル島原産です。ワオキツネザルは地上活動をすることも多く、時にはカメの甲羅に乗ったりすることもあるとか。カメの方は、もっぱら悠然としているようです。

 

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同じ霊長類でも、進化の系統上、わたしたちと近縁な大型類人猿(ヒト科)。「チンパンジーの丘」では、オスのハロー(2009/8/6生まれ)が母親メロン・父親イチローと暮らしています。わたしたちと同様にゆっくりと成長していくチンパンジー。母子の親密なやりとりにも出逢えます。

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イチロー(1966年・アフリカ生まれ)は、国内のオスでは第3位の長寿ですが(オスメス合わせると第8位)、頼りがいのある父親ぶりは健在です(※)。

 

※チンパンジーは現在2グループで屋内・屋外の展示スペースを使い分けています。

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ふと気がつくとメロンが見ていた……。

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扉越しに馴染みの飼育員からおやつを受け取り、マイペースに楽しむのはボルネオオランウータンのブロトス(オス・1995年マレーシア生まれ)。

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黙然としているようでありながら人間にも関心があるようです。

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お得意はブランコ。ギャラリーが盛り上がると張り切ります。

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こちらは2014/7/11の撮影。ブロトスの後ろにもう一個体いますね。

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メス「ドーネ」は1999年にブロトスとともに、いしかわ動物園開園とともに来園しました。ドーネとブロトスの繁殖が期待されてきましたが、小さな頃から一緒に育ったせいか兄妹のような関係が続いていました。国内のオランウータンは個体数を減らしている現状にあります。ドーネ・ブロトスそれぞれには繁殖能力が期待されるため、新たなペアの形成を目指して、まずはドーネを福岡市動物園に移動させることになりました。ブリーディングローン(繁殖を目的とした動物の貸借)です。ドーネは移動用箱に出入りする練習にもすぐに馴れ、本番も麻酔なしで行うことができました(7/7搬出~7/8朝に福岡市動物園に到着)。いしかわ動物園の担当飼育員が福岡市動物園まで付き添ったこともあってか、その日のうちにはハンモックで寝たり、少し食事もとり始め、9/5から一般公開も始まりました。福岡市動物園のオス・ミミとの今後が期待されます。

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ブロトスもまた、平穏な日々。

 

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ところ変わって「小動物プロムナード」。7/10にマーラの赤ちゃんが誕生しました。マーラはアルゼンチンのパダゴニア地方に生息する齧歯類です。今回の赤ちゃんはメス。乳を呑むかと思えば気ままに動き回りもし、限られた時期ならではのありさまが楽しめます。

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レッサーパンダのマリンとスミレは2014/7/11生まれのメスの双子です。プロレスめいたじゃれあいから毛繕いまで、さまざまなやりとりを見せてくれます。

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こちらは5歳になるオスのアクア。マリン・スミレの父親です。

そして、今年も8/23に2年連続で双子が誕生しました。 現在、母親のアヤメ(4歳)はバックヤードの巣箱で育児に専念しています(レッサーパンダは単独性でオスは子育てに関わりません)。9/3からモニターでのアヤメの育児の公開を行っています。静かに見守り、子どもたちの順調な成長を御祈念ください。

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正面ゲートを入ってすぐの「アシカ・アザラシたちのうみ」。カリフォルニアアシカのクーはよく訓練されていて、飼育員の指示に従い、様々なアクションを見せてくれます。

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ジャンプに倒立。なかなかの運動能力ですが、こうして日頃からトレーニングし、指示に反応するようにしているのは、健康管理や治療などが必要な場面で、動物もスタッフも安全でストレスの少ない対応を可能にするためです。

 

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こちらはメスのショコラ。ユーモラスな歯磨きも口の中のチェックとお手入れにつながります。

ショコラとクーの間には今年7月に2頭目の子ども(メス)が生まれました。ショコラによる授乳がうまくいかない等の理由で、現在、飼育員による人工哺育が行われていますが、体重も増え、泳ぎの練習なども進んでいるとのことです。

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アシカの屋外プールに隣接する屋内展示にはバイカルアザラシがいます。現在、ラム・クリの2頭のメスとオスのミハイルが同居しています。バイカルアザラシが住むバイカル湖は世界一深くて透き通っていることで知られています。バイカルアザラシは飛びぬけて大きな目玉を持っていますが、それはバイカル湖の環境に適応して視覚を活かした狩り(魚の捕食)をするためだと考えられています。かれらが水面に顔を出すと、そんな目のありさまを観察することが出来ます。しかし、クリはしばしば逆立ちして浮かんでいます。

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クリの逆立ちの原因はミハイルの行動にあります。オスメスの同居は繁殖を期待してのことです。ミハイルは期待通りに盛んにメスを追いかけますが、クリはそんなミハイルに後ろ足を突かれるのが嫌なようで、こんな姿勢を取るのです。これもまた恋の駆け引き?バイカルアザラシたちの日々の展開から目が離せません。

ちなみに写真に写っている大きくてじょうぶな爪も、凍てつくバイカル湖の氷上で暮らすのに適応していると考えられます。

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いしかわ動物園ではゴマフアザラシも飼育されています。時にはアシカとの巧まざるコラボレーションが見られたりもします。

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再び、日本在来の鳥の飼育展示施設。ニホンイヌワシは石川県の県鳥です。クマタカなどとともに日本の森林生態系の中では食物連鎖のトップに立っています。いしかわ動物園では2007年から飼育に取り組み、2010年に現在の「イヌワシの谷」、高々としてワシが暮らすのに適したケージへの改良が行なわれました。

 

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イヌワシの谷の傍らにはヒノキアスナロ。石川県の方言では「アテ」と呼ばれます。郷土の鳥ニホンイヌワシにふさわしい郷土の樹(県木)として植えられています。

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ここには「郷土の花」として親しまれるクロユリも植えられており、花期に行き会えれば趣深いことと思われます。

 

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さらに石川県の在来生物として、前回も登場した「郷土の水辺」の一角を占めるアベサンショウウオ。兵庫県・京都府・福井県・石川県に分布する小型サンショウウオで、園の周辺の里山にも生息しますが繁殖等に適した環境は限られます。いしかわ動物園は、2011年に国内初の飼育下繁殖に成功し、日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞しました。今後、野生での保全を含め、積極的で弛まない努力が必要とされています。

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こちらはホクリクサンショウウオ。その名の通り1971年に石川県羽咋市で発見され、その後、新種として認定されました。本種も当園が2001年に繁殖賞を受賞しています。

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そして、ヒバカリ。カエルやメダカなどを捕食します。水辺や湿地を好み、園内でも野生個体に出逢うことがあります。おとなしい小型のヘビですが、かれらもまた身近な自然を構成する一員なのです。

 

誰もが気軽に訪れられる動物園は、動物たちと間近で向き合える、得難い施設です。そのバックボーンには、動物たちの健やかな生活を支え、かれらの姿を適切に伝えようとするスタッフの苦心があります。さらに動物園は「(稀少)種の保存」の活動拠点として、地元をはじめとする野生の生息地ともつながっています。楽しい動物園で過ごし、知らず知らずの学びの深まりを味わってください。

 

 

参考文献

日本鳥類保護連盟(2015)『私たちの自然 2015年9・10月号』

山本省三・喜多村武・遠藤秀紀(2008)『すごい目玉をもったアザラシがいる!』くもん出版

 

 

いしかわ動物園

人と動物と環境にやさしい、楽しく遊べ学べる動物園。

公式サイト

〒923-1222 石川県能美市徳山町600番地

電話 0761-51-8500

飼育動物 184種3831点(2014/1現在)

開園時間(閉園の30分前までに御入園ください)

4月~10月:9:00~17:00

11月~3月:9:00~16:30

休園日

火曜日(火曜日が祝日の場合はその翌日が休園日となります)

年末年始 12/29~1/1

※春休み期間の火曜日は開園します。夏休み期間は休園日はありません。

アクセス

お車で北陸自動車道利用、またはJR金沢駅・小松駅等からバス利用など。

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

 

 

※園内で行なわれている、お食事ガイドやふれあいタイムのスケジュールについては、こちらを御覧ください。

 

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いささか唐突ながら夕刻の、いしかわ動物園。本来の閉園時間(4~10月)は17時ですが、今日は屋台まで出てきました。

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毎年恒例のナイトズーです。カンガルーにも夜の顔。

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ネコ科猛獣たちの複合展示施設「ネコたちの谷」の一角、飼育担当者が実物を掲げてライオンの餌について解説中。夏休み最後の週末(2015/8/29)ということで、なかなかの賑わいでした(※)。ウィンドウ越しにもメスライオンのアンニンの目が光ります。

 

※いしかわ動物園の「ナイトズー2015」は、下記のようにまだまだ続きます。

「ナイトズー開催日」

9/12(土)13(日)、20(日)21(月祝)22(火祝) 、10/10(土)11(日)

ナイトズー開催日は、閉園時刻を21:00まで延長します(最終入園は20:00)。

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今回は、もっぱら夜昼の対照を御紹介していきましょう。日中は寛ぎきった姿を見せていることも多いアンニンですが……

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仰ぎ見て、何かを期する様子。

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解説を終えて運動場の上に移動した飼育員から、見事にスペアリブをゲット。

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野生の狩りの表情も斯くや?

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「ネコたちの谷」は裏側に回ることも出来ます。オスライオンのクリスも本領発揮と思いきや……

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今夜はあまり乗り気ではないようです。

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眼光鋭いヒョウのハッピー(メス)。今年で20歳とヒョウとしてはそれなりの年齢になりましたが、くっきりとした存在感です。

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いしかわ動物園では2頭のヒョウと1頭のユキヒョウを飼育しています。かれらは樹上や急峻な岩山などでも自在に活動出来ます。そんなかれらのための展示施設がこちら(「ネコたちの谷」の一部です)。

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今日の登板はアムールヒョウのコロン。昨年生まれ(2014/3/11)のメスです。ナイトズーのライトアップが別世界感覚を増し、野生を幻視させてくれます。

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ヒョウたちは頭上にいるとばかりは限りません。

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ユキヒョウのオス・スカイ(2012/5/25生まれ)。通路の下から、わたしたちの気配を窺っていたのでしょうか(2014/7/12撮影)。

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次は、こちらに寄ってみましょう。通り抜け型の施設「郷土の水辺・南米の森」。

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自然光を取り込むトップライトが十分な明るさを保ち続けている「郷土の水辺」エリアも、夜にはひと味違います。

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ここでも飼育員による給餌ガイドが行なわれます。スッポンはアジの切り身を御賞味。

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石川県の池・沼を模した展示で奥の方へと餌を投げてやれば、ニホンイシガメも這い上がって採食行動を披露します。

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壁にいるのはニホンヤモリ。スイッチ式の照明がついていてケースの中は昼間も暗いのですが、ナイトズーではあちこちの隙間や闇に潜むかれらの暮らしが、さらに実感出来ます。

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こちらは「南米の森」。オニオオハシのペアのトコトン(オス)とマリリン(メス)、計3頭いるアカハナグマ(写真はオスのタンビ)。

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16歳のパカゴン(オス)と18歳のパカチン(メス)は長年のペアです(※)。

 

※パカはメキシコ南部から南アメリカ東部に分布する、比較的大型の齧歯類です。

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コビトカイマンのゴメス(オス)は昨年仲間入りしました(2014年来園)。待ち伏せ型のハンターであるかれも、夜には目が冴えるようです。

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ほとんどの霊長類は昼行性。それかあらぬか、ワタボウシタマリンの大あくびです。

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人工スコールのスイッチが入れられた樹上にも何やら動物が……

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フタユビナマケモノです。神戸どうぶつ王国から来たばかりの2歳のオスです(2015/8/13公開)。9/12に愛称募集の投票結果による命名式が行なわれます。

「スコールくらいでは動きませんね」

飼育員も苦笑い。

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代わりにパカのお食事です。

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しかし、ナマケモノとて動く時は動き、食べる時は食べます。一番の好物はキュウリ。幸運にして現場に立ち会えれば、意外と鋭い歯までゆっくりと観察することが出来るでしょう。

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さらに夜の園内を進めば「ふれあいひろば」。一番賑やかな一帯と言えるでしょう。

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昼間も、長蛇の列のウサギとのふれあいタイムや……

 

 

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こちらはカピバラたちの個体識別用に入れられているマイクロチップのチェックです。カピバラは1組のペアから二年続いての繁殖(2014/11=4頭・2015/6/13=3頭)が行なわれ、大中小とバラエティ豊かな家族構成になっています。

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そんな広場、夜のプールを泳ぐマゼランペンギンたち。

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巣穴で暮らすプレーリードッグたちも、送風機付きのトンネル展示で寝姿を公開しています。この仕掛けのほとんどは園のスタッフの手づくりとのことです。

 

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夜間照明の中でも威容を誇るアルダブラゾウガメ。

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ケヅメリクガメも負けじと(?)アクティヴです。

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ケヅメリクガメは昨年11月に孵化した子ガメも展示されています。活発に歩き回る姿は、今後の成長を期待させます。

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リクガメたちには、新たな飼育展示施設が建設中です。東屋を改造した動物舎の両側にたっぷりと屋外の運動場もつくられます。早ければシルバーウィーク頃からの公開もあるかもしれないとのこと。いましばらく楽しみに待つことにいたしましょう。

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新リクガメ舎の向かいにあるのは、ウォークイン形式の「水鳥たちの池」。夜に鳥なんて、ただ眠っているだけなんじゃないか。そんな先入観がありますが、垣間見れば、きりっと立つゴイサギ、そしてアオサギ。ハンターとしての待ち伏せの構えでしょうか。

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実際に狩りを髣髴とさせる採食を目撃出来たりするのもウォークインフライングケージならではの経験です。

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こちらは「バードストリート」のフクロウ。やはり夜の主役の風格です。

 

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動物展示のみならず、プロジェクション・マッピングなども楽しめます。

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広々とした眺望の「アフリカの草原」にも夜昼二つの顔があります。昼のかれらを思い起こしながら、夜のサバンナを観賞しましょう。

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共にアメリカ生まれで、たくさんの子どもたちを全国の園館に送り出しているアミメキリンのペア、ジェブ(オス)とイザベル(メス)。こんな姿にもふたりの仲のよさが窺えます。

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グレビーシマウマのランディア(メス)は右耳の切れ込みが特徴です。

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ホオジロカンムリヅルの群れ(オス2・メス1)。その手前の草陰には……隠れキャラ(?)のケヅメリクガメです。これはさすがにナイトズーでは見つけられないかもしれませんね。

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混合展示の「アフリカの草原」の隣では、アジアゾウのサニー(メス・1979年生まれ)が暮らしています。

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放水に反応して水を呑むこともあります。

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こちらは屋内展示。ゾウを象ったプレートも洒落ていますが……

 

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実は裏側は、隣接する寝室のキリン・ペアに相応しい「表札」となっています。

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勿論、サニーもナイトズー。

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夜を湛えたプールで、思いがけないほどの軽快な泳ぎを見せるのはコビトカバ。

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カバとの共通祖先の特徴をよく遺しているとされるコビトカバですが(※)、カバ同様に夜行性で夜になると活動的になって木の葉などを採食します。ナイトズーでもそんな習性が垣間見えているのだと言えるでしょう。

 

※カバが開けた土地で暮らし、より半水生に適応して目・鼻・耳が一直線に並ぶのに対して、コビトカバは森で暮らし鼻・目・耳と位置が上がっていく、など。

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いしかわ動物園ではコビトカバをペアで飼育しています(メスのノゾミとオスのヒカル)。単独性が強いかれらですが、現在屋外では行き来を自由にして様子を見ています。

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屋内も互いの存在を意識できる隣接した展示となっていますが、行き来はさせていません。ヒカルは下あごから喉にかけてがピンク色なのが見分けポイントのひとつです。

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最後に、これまた期間限定の特別展を御紹介します。夏の特別展「カエルのひみつ」です(9/14・月まで)。担当者が得意げに横たわっているのは、その名も「ゴロンとカエル」。休憩しながら数種類のカエルを観察できるという仕掛けです。

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親子で夢中。よくよく観察しないと見つけられない、とても小柄な個体もいます。カエルの住む水辺や落ち葉溜まりを再現しているのですが、一番苦心したのは湿気で中から曇りが生じないようにすることでした。ボックスの中はファンで通気が確保されているとのことです。

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他にもアルビノのツチガエルといった貴重な展示が設けられています。

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このなかみは……実際に訪れてのお楽しみということで。

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いしかわ動物園では、既に御紹介した「郷土の水辺」でも在来の両生類を展示しています。写真はニホンアカガエルとアカテガニです。次回は、これら常設の両生類の展示も含めて、いしかわ動物園の土地に根差したありように注目してみたいと思います。

 

 

いしかわ動物園

人と動物と環境にやさしい、楽しく遊べ学べる動物園。

公式サイト

〒923-1222 石川県能美市徳山町600番地

電話 0761-51-8500

飼育動物 184種3831点(2014/1現在)

開園時間(閉園の30分前までに御入園ください)

4月~10月:9:00~17:00

11月~3月:9:00~16:30

休園日

火曜日(火曜日が祝日の場合はその翌日が休園日となります)

年末年始 12/29~1/1

※春休み期間の火曜日は開園します。夏休み期間は休園日はありません。

アクセス

お車で北陸自動車道利用、またはJR金沢駅・小松駅等からバス利用など。

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

※定例(餌やりなど)・特別のイベント情報は、こちらを御覧ください。有料のものもあります。

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キリンならではの長い舌を活かして木の葉を巻き取るのは、メスのももか(1995/8/6生まれ)。身長4.5mに及ぶももかですが、野生のキリンも長い首と大きな体を活かし、アフリカのサバンナを歩きまわりながら、このような採食して暮らしています。

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キリンの顔を間近で観察すると、まずは長いまつげに気がつきます。アフリカの強い日差しなどから目を守る機能が考えられます。そして、くっきりとした眉。実はこれはイヌやネコの目の上にヒゲのように生えているのと同じ感覚毛です。木の葉を食べるには枝々の中に顔を突き入れなければなりませんが、キリンが好むサバンナアカシアには鋭いとげがあります。キリンの眉は、そんなとげなどで目を突かないように回避させるセンサーと考えられています。

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池田動物園では、このようにニセアカシアを中心とした枝葉を運動場のフェンスにぐるりと差してやります。こうして、動物園の限られた空間でも少しでも運動量を増やそうと試みているのです。

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今夏の「ナイトズー」でのキリンのバックヤードツアー。木の葉以外にもどんな餌を与えているか、飼育下では捕食者(肉食獣)からの安全が確保されているので座り込んで眠るのだなど、こういう時でないと見聞しがたい内容が盛りだくさんです。

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コーティングされたキリンの糞を手にする機会もありました。

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さて既に飼育下のキリンの運動量が問題となることは記しましたが、運動させることを心掛けていても、やはり蹄は伸びがちになります。伸びすぎた蹄は歪んでしまい、結果として歩行不良から命に関わることもあります。そこで定期的に蹄を手入れできるようにトレーニングを施しています。

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現在二人組でトレーニングを進めていますが、足に鋸をあてがう役の飼育員も最後に餌を与えます(※)。トレーニングの目的は個人になつかせることではないので、キリンから飼育員に対して個人や役割での好き嫌いをつくらないようにし、受診動作(※※)~報酬(餌)というトレーニングそのものを「約束」として受け入れられるように努めています。

まつげ・眉毛など、キリンは本来の体の仕組みや行動の上でも自分の身を守れるようになっています。しかし、かれらを飼育下に置きつつ、自然な「野生」を引き出して展示するためには、動物園ならではの健康管理や保護の工夫が必要なのです。

 

※前掲の写真では、トレーニング中にもう一人の飼育員がタイミングを見ながら餌を与えています。

※※ここでは足を出して鋸を当てられるのを受け入れる行動。

 

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トレーニングが終わってからの方が妙に積極的に接近してくるももか。そんな気まぐれさも持っています。

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しかし、強制や過剰な誘導はトレーニングの主旨に反します。ももかが接近をためらっている時には、あえて飼育員同士でのんびりと雑談するなど、ももかのストレスを増やさず、自ら進んで行動をつくりあげていけるように、気長で穏やかなトレーニングが続けられています。それは飼育全般にも関わる心がけなのでしょう。

トレーニングが飼育下での日常のちょっとした「特別な時間」として、動物たちへのよい刺激となる可能性も評価できます。

 

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グラントシマウマのリヨ(メス・奥)とソラ(オス)。かれらにもトレーニングが施されています。

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横を向いて静止する。何でもない行動と映りますが、野生の感覚を保っているかれらが無防備に横腹や背後を人に預けるには、飼育員との安定した関係性が必要です。しかも非番や担当の交代などもあるのが動物園ですから、動物たちの信頼は個々の飼育員にとどまっていてはならないのです(※)。ひとつひとつのサインに馴染ませる地道な営みが続けられています。

 

※不適切な「人づけ」は野生を麻痺させることにもなり、動物園展示の根本にも関わります。

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トレーニンググッズも手づくりだったりします。ペットボトルを利用したターゲット棒。既に掲げた写真のように動きを指示する役割のほか、まずは、これで蹄に触れたりすることでいずれ手入れのためのやすりがけ等にも適応させていこうとしています。

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飼育下の動物たちが健やかに快適に暮らせるよう、飼育環境を豊かにする。そんな試みを「環境エンリッチメント」と呼びます。おおがかりなものばかりでなく、動物園には飼育員たちの手仕事によるさまざまな環境エンリッチメントの実践(飼育的配慮)も見出せます。噴水や彫像がムードを醸し出すマゼランペンギンのプール。

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この輪は、避けて泳いだり、時にはくぐったりすることでペンギンたちの行動にヴァリエーションが出るようにする工夫です。

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ペンギンたちの間近な通過やユーモラスな坂下りが観察できる「ペンギン・ランウェイ」。これもペンギンの気分次第の行動ですが、だからこそ日常の飼育環境の自然な豊かさにつながっていると言えるでしょう。

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プールから上がってきたばかりのリョウマ(オス)。そのすぐ後ろでスロープに辿り着いているのはリョウマとメスのペタロウの間に今年(2015/5/10)生まれたハルです。まだしっかりとした紋様にはなっていませんが、外見も行動も段々におとなに近づき、両親の見守りから離れつつあります。

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ハルがつついているのは個体識別用の翼帯です。リョウマの場合は右側に緑と黄色を着けています。すべての個体に紹介プレートがありますので、是非実地での見分けに挑戦してみてください。

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こちらは、アカとサンのペア。巣箱の中に敷かれているのは人工芝です(この時点で繁殖期は既に過ぎています=2015/08/12撮影)。

さきほどのリョウマは姫路市動物園から婿入りしてきてペタロウとペアになりましたが、昨年かれらが産卵した2個の卵は共に割れてしまいました。そこで飼育担当者は、動物園や水族館のペンギン飼育担当者を中心に一般のペンギンファンも参加できる全国ネットワークのNGO「ペンギン会議」で他園の知恵を借りました。それが、この巣箱です。すのこに人工芝を張り付け、巣材も細かく刻んだ人工芝にすると破卵が起きにくいのです。また、このような営巣セットを2つつくってうまく入れ替えてやると、さらに衛生的となり、それらをきっちりと試すことで、今年はハルの孵化に成功したのでした(※)。

前回に御紹介したミーアキャットの運動場やこのマゼランペンギンの事例、それにキリンのトレーニングなども、すべて動物園・水族館が互いに快く教え合い、導きあうことで着実に成果を挙げています。また、リョウマのように園館の間での個体の移動も、血統問題の解消など、全体として飼育個体群のあり方を健全化することにつながっています。

動物園・水族館は、決して孤立したかたちでは存続できない。そういう認識はさまざまな面での真理を孕んでいると言えるでしょう。わたしたち来園者がそれを知ることにも深い意義があると思われます。

 

※マゼランペンギンは毎年の繁殖期に2個の卵を産みます。しかし、まだ未熟なところがあるリョウマは1個の卵を温めるのが精一杯です。今年ペタロウが産んだ卵のひとつはアカ・サンのペアに託されました。残念ながら発生が進まず破卵してしまいましたが、リョウマの成長や園・担当者の飼育的配慮の中で、池田動物園のペンギンたちはさらに充実した群れとなっていくことでしょう。

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繁殖と言えば、こちらも。コツメカワウソのペアのチョコ丸・テラちゃんは、この春(2015/4/15)繁殖に成功し、ただいま赤ちゃん四姉妹の子育ての真っ最中です(2015/8/12撮影)。そんな事情で展示されていないこともありますが、こんな場面に行きあえば、かれらの家族の円満さと賑やかさを満喫することができます。

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カワウソは半水生の暮らしに適応したイタチ類ですが、登攀能力もなかなかです。

そんなかれらの習性・行動を活かしているのがカワウソラグーン。通路側にせり出したアクリル水槽内でのカワウソの動きをたっぷりと観察することが出来ます。残念ながら今回の取材ではそういう機会には恵まれませんでしたが、展示効果だけでなく、登る・泳ぐといった行動の増加で、カワウソたちへの環境エンリッチメント効果も期待されます。

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ちょっとだけよ?

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少し寄り道。「上にいる」といえば……多角形の展示舎、オスのメガネカイマン・サブレの視線の先には……

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ルーセットオオコウモリの群れです。オオコウモリの仲間は果実食で、多くの日本人に馴染み深い小型コウモリ類(もっぱら昆虫食)とは生態が異なります(※)。

 

※日本国内でも、南西諸島にはクビワオオコウモリが生息し、いくつかの亜種に分かれています。また、オガサワラオオコウモリは小笠原諸島の固有種です。

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同じ展示舎内の別の一角にはインドオオコウモリも暮らしています。

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ほんの一個のボールで動物の日常が活気づくこともあります。オスのホワイトライオンのハタリ。以前にはタテガミが抜けてしまっていた時期があり心配されていましたが、いまは御覧の悠然ぶり。このボールをはじめとした飼育的配慮の積み重ねの成果でしょう。

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こちらはアフリカライオンのモジロー、園内斜面上方で暮らしています。見比べるとハタリの体色が白っぽいのが確認できると思います(※)。

 

※ホワイトライオンは幼少時には真っ白ですが、成熟するとやや色づくのが普通です。

 

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親密な群れをつくり「ラブバード」とも呼ばれるボタンインコ。

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群れでの行動ならではの「止まり木のシーソー化」です。ここにも展示効果と飼育的効用(環境エンリッチメント)の兼ね合いが見られます。

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「こんにちは」

以前には個人のペットだったキエリボウシインコのオーちゃんは、なかなかの器用さと多弁を発揮します。飼育下ならではの個体と言えますが、それゆえに、かれらの発音の器用さや知能の高さ、そして人とのやり取りが出来る社会性といったものを親しみ深く感じさせてくれます。

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そんなオーちゃんも食事中は無口。

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池田動物園では3種類のフラミンゴを比較展示しています。

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ピンクの羽と灰色がかった足のチリーフラミンゴ。

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鮮やかな羽色のベニイロフラミンゴ。フラミンゴの曲がったくちばしは、このようなかたちで採食に役立てられます(※)。

 

※野生では水中の藻類をこしとって食べます。

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そして、白っぽい体と赤い足、ピンクのくちばしが際立つヨーロッパフラミンゴです。

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かれらフラミンゴについても、継続的にこんなイベントが組まれています。園内を散歩する個体たちの総称は「ピーちゃん」。孵卵器で生まれ、飼育員に育てられました。人馴れを活かすことで、フラミンゴ舎での展示とはちがったかたちでフラミンゴの大きさ・体の特徴などを感じ、観察してもらおうというわけです(2010/6/10撮影)。

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ヤギの餌やり。動物園が定めたルールを守るなら、他の場所では得難い楽しい体験ともなるでしょう。

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ふれあいも然り。場内の掲示や、スタッフ・ボランティアなどの声に注意を向けることは、結果として「人と動物が向き合うことの意味」を考える格好の機会ともなるはずです。

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前回御紹介した「ものしり食堂」内の掲示より。

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今年のスター(干支)、ヒツジのまゆりちゃん。そして、ヤギの斗真。

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ミニヤギの名は「一心(いっしん)」です。

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ロバのマロン君。時には怪獣のような大音量で鳴きます。

ペットを含む家畜たちは、人間が野生動物を飼い馴らし自分たちの生活に深く取り込むことで生まれました。「飼う」ことを前提とした動物たちです。ここまでに記してきたような「飼育下の野生動物への飼育的配慮」と比べ合わせることで、わたしたちは動物たちとの、より豊かで多様な関わりへと目を開くことが出来るでしょう。

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アメリカバイソンのオス・アトランタ。かれの運動場にも遊び道具や水場などが見つけられます。バイソンは家畜ウシとは異なりますが、アメリカでは先住民族と永らく関係を結び、ヨーロッパ人の移入以降の乱獲での激減~保護政策による個体数の上向きといった歴史を持ちます。マイペースなアトランタを前に、そんなあれこれに想いを広げてみてもよいでしょう。

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池田動物園観覧もそろそろ終わりが近づいてきました。ケヅメリクガメのケーヅー。寒さや雨天は苦手なので「家」に引き籠もっている時もありますが、なんとかお目にかかれました。かれを見ていると、暑かった夏もいささか名残惜しく思えてきます。

そんなケーヅーの「表札」に書かれた野生のアオサギの巣のこと。「引っ越しました」と注意書きがあります。前回からお読みの皆様は、かれらの新居を見ているのです。

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ここです。インドゾウ・メリーの動物舎の裏手です。池田動物園に足を運ばれたら、ちょっと探してみてください。

(飼育下の)野生動物、家畜ひいては野生の鳥や魚など(前回のメダカほか)。巧まざるものまで含め、動物園は生きものの多様さをぎゅっと詰め込んだ「いのちの宝箱」なのです。心ときめかせながら蓋を開け、あなたも宝物を見つけてみませんか?

 

 

池田動物園

緑に囲まれ、動物たちを体感できる動物園

公式サイト

〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5番1号

電話 086-252-2131

飼育動物 122種590点

開園時間(閉園の1時間前までにご入園ください)

4月~10月:9:30~17:00

11月~3月:9:30~16:30

休園日

11/21~2/20、5/21~7/20の毎週水曜日

(祝祭日や夏休み・冬休み期間中は休まず開園いたします。)

アクセス

JR岡山駅西口から

バス…岡山中央病院行き 京山入口 下車徒歩12分

タクシー…約8分

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。