Archive for 10月, 2015

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おびひろ動物園、開園しました。天気はいまひとつでしたが(※)、エゾリス(野生個体)もお出迎え。

※取材日程と天候は次の通りです。2015/9/24=晴れ・9/26=いささか雨模様。

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おびひろ動物園は帯広市の郊外、広々とした緑ヶ丘公園の一角にあります。公園内には帯広の自然や歴史を伝える帯広百年記念館、北海道立帯広美術館などのほか、いくつもの緑豊かな小径、そして野草園もあります。

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秋から冬への移ろいの中でも、野草園ではヒメザゼンソウが来春を期していました。

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動物園内の観覧車に乗れば市街地も望め、あらためて園の立地を実感できます。

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木の間越しにゾウ。

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アジアゾウのナナは北海道で飼育されている唯一のゾウです。1964年に推定3歳で来園しました。文字通り、おびひろ動物園(1963年開園)とともに歩んできた個体です。

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ナナがアジアを代表する古株なら、カバのダイはアフリカ代表と言えるかもしれません。ダイは1969年・韓国生まれで1972年に来園しました。

 

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そして、オオワシのヒロコ。1979年に帯広市も属する十勝地方の最南端の海辺・広尾町で保護されました。ヒロコは、おびひろ動物園にとってナナ・ダイに次ぐ古参メンバーとなっています。

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ヒロコのほかにも、おびひろ動物園では多くの猛禽類が保護されています。ケガをしている場合でも可能な限り早期に治療・リハビリして野生に返す試みが行なわれていますが、それがかなわない場合、園での飼育となることもあります(※)。オオタカのトヨミも十勝地方の東南端・豊頃町(とよころちょう)で保護されました(保護個体の命名は保護場所にちなんでいます)。

 

※時には傷病が重く回復の見込みのない個体の安楽殺が行なわれることもあります。それらすべてが人と動物の向かい合いのフロンティアとして動物園が引き受け、取り組んでいることなのです。詳しくは園内ワシ・タカ舎の掲示などを御覧ください。心ないハンターの違法行為で野生のワシ類が鉛中毒になっている現状なども解説されています。

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こちらはモモアカノスリ(ハリスホーク)のエブリー(メス)。2014年生まれで同年9月に来園(寄贈)したフレッシュ・メンバーです。モモアカノスリはアメリカ合衆国南西部~中南米の原産で、猛禽類としては特異な数羽の群れでの狩りをする生態が知られています。前掲の北海道産の仲間たちとも比べてみてください。

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エブリーはトレーニングを受けており、公開でのフリーフライトも行なわれます(※)。まさに目前に迫る勢い。

 

※エブリーのフリーフライトを含め、当日のイベントの日程等は園のサイトやゲートの掲示板を御覧ください。

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飼育員の指導の下、体験も出来ます。

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これはルアー(疑似餌)を使った狩りの様子。捕らえた獲物は翼で覆い隠します。

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鳥つながりでフラミンゴ。放し飼いのかれらの中に来園者が歩み入れるようになっています。大写しの個体はチリーフラミンゴ。淡い羽色や脚の色などで同居する他の種類と見分けてみてください。

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ここで少し屋内展示を訪れてみましょう。

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「どんぐりのいえ」と名づけられた施設の中、やはり鳥たちが放し飼いになっています。たとえばオカメインコ(実際にはオウム類です)。

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ブンチョウたちは4種類が同居しています。

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散歩中(?)のセキセイインコ。

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鳥以外にもこちら。冒頭でも野生個体を御紹介したエゾリスです。

 

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「どんぐりのいえ」のすぐ外にはエゾリスの繁殖施設があり、こちらでも活発な姿を観察できますが、今年(2015年)の初夏には「どんぐりのいえ」の屋内展示でも初めて繁殖が見られました。

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屋内に戻り、左右のひもを交互に引くとするする登っていくおもちゃ。そのモデルは?

 

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昼夜逆転のコーナーのエゾモモンガです。屋内飼育ではありますが、これから冬にかけてが活発に姿を見せる傾向にあるとのことです。

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このコーナーに入るときには少しだけ床面に注意してください。先ほども地上を歩くセキセイインコがいましたが、エゾモモンガのコーナーにも鳥たちが巣材を運び込んで潜んでいることがあります(毎日清掃しているので実際に営巣することはありません)。

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「どんぐりのいえ」に隣接する小獣舎には、キタキツネ・アライグマ・エゾタヌキがいます。

キタキツネの北斗は2009年生まれ(野生)で同年に兄弟3頭で保護されましたが、その後、兄弟2頭は旭山動物園に移動しています。

アライグマのマル(オス)も北海道内での保護個体です(※)。アライグマは北アメリカ原産の動物ですが、人間が持ち込み、不用意に野に放ったことで「外来生物」となってしまいました。在来のキツネやタヌキと競合するとともに、高い身体能力と幅広い食性から動植物・農産物の食害も広がっています。つぶらな瞳のマルですが、かれと向かい合いながら、しばし人間の責任についても考えてみるべきでしょう。

 

※エゾタヌキ2頭は札幌市円山動物園の生まれです。

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小獣舎は積雪時には通行止めとなります(※)。いまがかれらを観察する好機です。

 

※通行止めの間もタヌキたちはかろうじて遠望できるとのことです。

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こちらも北アメリカ原産のカナダガン。元々、園内の池(写真)で飼育展示されていましたが、かれらもまた外来生物に指定されたため(※)、現在はケージでの展示に切り替えられています。写真の個体はメスのナツです。右の水かきが割れていて、うまく歩けませんが、他の3羽とともにのんびりと暮らしています。

 

※日本にはカナダガンの別亜種シジュウカラガンが渡ってきます。人間活動による生息地の減少・破壊を主因として一時はほとんど絶滅状態でしたが、日本・ロシア・アメリカによる取り組み(仙台市八木山動物公園も重要な役割を果たしています)によって回復の流れにあります。そんなシジュウカラガンと競合したり交雑したりしてしまうこともあって、アライグマ同様に人間の手で日本に持ち込まれてしまった北アメリカ系のカナダガンは「外来生物」と見なされざるを得ないのです。

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ここで園内にいる北アメリカ系の動物たちをいささか御紹介。

ドルトンは4頭いるアメリカバイソンの「黒一点」。整った角がハンサムです。

 

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ビービー(オス)とダブのアメリカビーバー・ペア。飼育員の心尽くしの枝を齧る姿も観察できます。

バイソンもビーバーも人間による乱獲で絶滅寸前となった歴史を持ちます。動物たちそれぞれの本来の生息地での姿やそれがかき乱された時に生じる危機、世界の動物を集める動物園はそのような問題を考える手がかりも与えてくれます。

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チンパンジーのヤワラ。23歳の彼女のお気に入りは麻袋のショール(?)です。

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こちらは麻袋の切れ端をマフラー風にダンディに極めるコウタ。

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ヤワラがコウタを毛づくろいしています。コウタのマフラーもヤワラが掛けてやっているのです

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そして、今年の7月に旭山動物園から来たばかりのプヨ。彼女は麻袋で「ベッド」をつくっています(※)。

 

※野生のチンパンジーは毎晩枝葉を組んだ寝床を作って樹上で過ごします。

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若いプヨ(今年で8歳)の参入で、おびひろ動物園のチンパンジー社会にも新たな展開が期待されます。

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先ほどから映像を掲げているチンパンジー舎。せり出したオーバーハングはチンパンジーたちにとっては落ち着いて過ごせる樹上の環境の再現となっています。

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時には好みの草などを自主的に収穫。そんな草むらに落ちているのは「ワッジ」と呼ばれるチンパンジーの食べかすです。彼らは草や果実の肉質やエキスなどを吸い取った残りを、このようにして吐き出します。皆さんの目の前にチンパンジーならではの「秘密」がさりげなく披露されたりしているのです。

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このナシの木はオーバーハングからチンパンジーが手を伸ばして果実をもぐ日が来ればという飼育員の手植えです。

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ケージのそばにはスグリの木も。ヒト科に属し、わたしたちと知的にも近いチンパンジーなので、いずれはこの実も収穫してくれるかもしれません。

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チンパンジー舎のお隣。おとなオス独特の歌舞伎めいた顔でポーズを決めるのはマンドリルのキーボー。かれは2004年に生まれ、飼育員の手で育てられました。2007年に当園に来園。大好物はサツマイモです。

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屋内展示側から、キーボーと来園した子どもさんのひとこま。

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そんなキーボーを屋内から見つめる小柄な影。

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メスのサラサは今年の6月に日本モンキーセンターから来園しました。年齢は8歳。キーボーとは現在「お見合い中」ですが今後が楽しみです。

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さて、そんな屋内展示通路。マンドリルからチンパンジーの方へと歩むと、わたしたちはこのパネルに出逢います。

「今、チンパンジーの森で起きていること」写真とメッセージを提供しているのは西原智昭さん。WCSコンゴ共和国支部・自然環境保全技術顧問で(※)、アフリカの熱帯林で現地の先住民の方々と深くかかわりながら環境保全活動や研究活動を続けています。

わたしたちが日本産動物とともに暮らし、また外来生物の問題と向き合わざるを得ないように、チンパンジーやマンドリルのふるさとアフリカでも、日々、人と動物の関係が生じています。

あるいはまた、同じ地球のつながりの中で日本とアフリカにも多くの関係が生じており、西原さんが保全に関わる地域に住む森林性のマルミミゾウの牙は三味線の撥の格好の素材として珍重されるがゆえに密猟による絶滅の危機にあります。野生のチンパンジーの生息地を脅かすのは資源としての森林の伐採にほかなりません。そして、それらの動きは遠い昔から現地で暮らす先住民の人々の生活にも大きな影響を与えています。

動物園の野生動物たちをわたしたちがかれらの向こうにある自然や世界を知るきっかけと捉えるなら、そこからさらに見識を深め、動物たちや現地の人々が暮らす環境とわたしたちの暮らしとの関係にまでも理解を及ぼす必要があるでしょう。

 

※WCS= WildlifeConservationSociety.

ニューヨーク・ブロンクス動物園に本部を置く国際野生生物保全NGO。

 

そんな関心に沿いつつ、西原さんの協力も得ながら、まもなく二つの催しが行なわれます。どちらも参加者募集中です。

 

シンポジウム「北と南の先住民の自然観」

北海道とアフリカ熱帯林の先住民が持つ自然観にはどのような違いがあるのか、そして私たちはそこから何を学ぶべきなのか、それぞれの人々と深く関わる専門家を招き(アフリカは西原さん)、一緒に考えてみようという企画です。おびひろ動物園はシンポジウムを主催する帯広市教育委員会に属しており、このシンポジウムの運営の中心的役割を果たしています。

2015/10/17(土)13:30~15:30

帯広市図書館視聴覚室(先着80名)

 

おびZooトークカフェ「アフリカの野生動物のお話」

ゲスト講師・西原智昭さん。

毎月第3日曜日に飲み物片手に飼育員の話を聞く催しとして続けられている「おびZooトークカフェ」でも西原さんを招いての特別編が行なわれます。「動物好きから地球環境保全家に変身!」という副題で西原さん自身の経験に根差した貴重なお話が伺えます。

2015/10/18(日)13:30~15:00

おびひろ動物園内・動物園センター(先着30名)

 

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「おびZooトークカフェ」の会場となる動物園センターはこちらです(正門を入ってすぐ)。外壁には、楽しい動物クイズ。

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センター内にはオオサンショウウオの標本が展示されています。1965年に寄贈されてから2010年に亡くなるまで動物園での飼育歴45年は国内最長記録となっています。オオサンショウウオは西南日本に生息しますが、世界最大級の両生類として知られており、日本を代表する両生類のひとつと言えるでしょう。

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こちらは北海道でも南西部には生息が確認されている爬虫類、クサガメです(※)。アメリカビーバーと隣接したヘビ・カメ舎にいますが、動物園センターのオオサンショウウオは1980~1993年には、このカメ・プールで暮らしていました。

 

※本来は東アジアの比較的温かな地域の動物であり、北海道の野外ではペットが捨てられるなどして入り込んだのではないかと考えられています。詳しくはこちらを御覧ください。

 

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そして、アオダイショウ。こちらは北海道にも自然分布しています。クサガメもアオダイショウも冬期は冬眠のために展示が中止されますが、それまでのひととき、かれらの元も尋ねてみていただければと思います。

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おびひろ動物園では既に御紹介した猛禽類のほかにも鳥類の保護を行なっており、鳥類舎にはそんな個体の一部が集められています。

まずはアカゲラ。黒一色の頭でメスと判別できる「一号」はアカゲラ3羽の紅一点です。

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頭に紅をさしたオス2羽。黄色い足環が「三号」、緑が「八号」です(一号の足環は赤です)。個体番号が飛び飛びですが、実は園に保護されたアカゲラは全部で10羽いました。このうち5羽は残念ながら死亡しましたが2羽は野生復帰に成功しました。鳥類舎の3羽の向こうに、それらの個体すべてのいのちの記憶があります。

 

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キジバトもオス2・メス1の構成と思われます(外見では性別は分かりません)。1枚目、左がオスで右がメス。この組み合わせでオスからメスへの求愛行動が観察されていますが、最近2枚目の写真の別の個体もメス個体にアプローチをはじめ、これがオスだとするとキジバトたちの恋のさや当てとなるかもしれません。

 

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さらにはシメ、カワラヒワ……カワラヒワは2011年からいますが、動物園暮らしが気に入ったのか、自ら居着いている様子です。

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このムクドリはまだ目も空いていないヒナの時に保護され、飼育員の手で育てられました。まだ幼い容姿ですが、健やかに育っています。わたしたちにとって、ごく身近といってよいムクドリですが、それだけにあらためて、じっくりと個体と向き合う機会は貴重なものと思われます。

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今回の最後はクジャクバト。立食パーティー(?)の真っ最中です。

動物種としては開園当時の1963年以来、継続して飼育されています。開園中は、外に出ており、園内で販売しているエサを与えるもできますが、天候やカラスに襲われる心配があるときは外に出ていない場合があります。かれらの姿もまた、冬を控えて秋の日を惜しむものと言えるかもしれません。

 

後篇は、そんな来たるべき冬の見どころなども含めて、お送りします。

 

 

おびひろ動物園

緑豊かな公園の一角、北海道で唯一ゾウを飼育する動物園

公式サイト

おびひろ動物園飼育係ブログも御覧ください。

〒080-0846 帯広市字緑ヶ丘2

電話 0155-24-2437

飼育動物 70種374点(2015/8末現在) 「おびひろ動物園 探検隊 十勝毎日新聞電子版」も御覧ください。

開園時間・休園日はこちらを御覧ください(冬季開園等での変動があります)。

アクセス

JR帯広駅バスターミナルからバスで約15分。

駐車場情報等を含め、詳しくはこちらを御覧ください。

 

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動物園までの続く道に足跡。何種類かの動物たちのものが描かれています。ホッキョクグマの足跡は、いまは他園に移動したキロル(オス)がモデルになっています。キロルは2008/12/9、札幌市円山動物園生まれ。2010/2/21、ふたごのイコロ(オス)とともに、おびひろ動物園に移動。現在、イコロは上野動物園で、キロルは浜松市動物園で元気に暮らしています。

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そして、現在のおびひろ動物園のホッキョクグマアイドルはこちら。アイラ(メス)は2010/12/25に札幌市円山動物園で生まれ、2012/2/20に来園しました。イコロやキロルの妹ということになります。

 

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繰り広げられるアイラの遊びは、見ている側も心弾むありさまです。

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ところ変わって、こちらもオホーツク海・ベーリング海などの北の海で暮らすゴマフアザラシ。伸び上がったり、豪快に波を立てて泳いだりと忙しげなのはオスのカイ。

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一方のんびりとした風情はメスのモモ。しかし、彼女もまた何か待っている様子ではあります。

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ふたりのお待ちかねは夕方の食事でした。特別にモモへの給餌をやらせていただきました。手渡しでも投げてあげてもすぐにごくり。頭から尾へと丸呑み(逆は鱗がひっかかるので)というのがアザラシの作法です。

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はす向かいのプールにいるのはカリフォルニアアシカのオス・タケル、1990/6/22生まれ。アザラシは後ろ足で推進力を生み出しますが、アシカは前足を翼のように活かす「前輪駆動」。タケルもマイペースに遊泳していますが、そこそこの年齢になっているので体調によっては寝部屋との出入りが自由になっていることもあります。

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こちらは親子で食事のアミメキリン。ムサシ(オス)とリボン(メス)に次男メープル(オス)。メープルは2014/9/21生まれです。兄で現在、釧路市動物園にいるスカイ(2012/5/26生まれ~2013年移動)は父親ムサシに似て大胆でしたが、メープルはいささか臆病な気質のようだということです。

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枝葉を与えながらのスポットガイドも行なわれます(※)。この日はニワトコ、最後の一葉まで無駄にしません。ちなみにキリンたちの中で一番の食いしん坊はムサシだそうです(※)。

 

※集合写真は左がリボンとメープルで右がムサシ、アップの写真はメープルです。

 

まもなく冬がやってきます。12月には雪景色となりますが、帯広の冬は存外からりとしているのでキリンたちも大概は冬季の開園時間(11:00~14:00)めいっぱいを放飼場で過ごしています。このようにキリンをはじめ、動物たちはそれぞれに冬に適応しており、その意味では雪こそが当園の「セールスポイント」かもしれません。キリンたちの場合、湿った雪は苦手とのことですが。

 

※スポットガイドの予定は毎日10時ごろに告知されます。園内の掲示やこちらのブログなどで御確認ください。

 

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そんなキリンたちと同居しているのはチャップマンシマウマのシャンティ(メス)。昨年(2014年)、兄のロックが亡くなり、1頭きりとなりましたが、キリンとの共同生活は本来群れで暮らす動物であるシャンティにも良い効果があると思われます。

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大きな窓からこんにちは。ピグミーヤギの「ぴっくー」(オス)は2002年生まれでヤギとしては高齢ですが、今年から専用の寝小屋が建てられ寒冷期を含め通年で姿を見せてくれることになりました。

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ぴっくーの新居の隣、自分たちの小屋の前に立つのはヒツジの「わた」(メス)。ぴっくーの「御殿」が、ちょっとうらやましそう?

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もう一頭、ぴっくーと共に過ごすのは、こちらもメスのヒツジで「モカ」です。ヤギ1頭とヒツジ2頭の共同生活はそれぞれの種の特性や個体の性格なども見て取れることでしょう。個体識別のプレートもあるので参照してみてください。

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残り少ない未年を惜しみつつ、束の間、お仲間に入れていただきました。

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気がつけば、たたずむ「わた」をアイラが見下ろしていました。

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ぴっくーたちの住まいは別建てになっていますが、モルモットやヤギ、ヒツジなどとふれあうことができる「ちびっこふぁーむ」はこちら。

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「ちびっこふぁーむ」でもウサギ一羽々々まで愛称がつけられています。個体識別のプレートもあります。見わけることで親しみが増す、そんな体験もできるでしょう。

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あいにくの雨模様(2015/9/24撮影)のため屋内で過ごすコンゴウインコのパセリ(オス)。温暖な時期、好天時には屋外に展示されますが、寒さは苦手なので冬場には、前回御紹介した「どんぐりのいえ」で避暑ならぬ避寒生活となります。

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うららかな陽射しの中でもふと北極気分を誘うような「氷雪の家」。この施設は、1978/4に世界で初めて単独犬ぞりで北極点に立ち、グリーンランドを縦断踏破したことで知られる冒険家・植村直己さんゆかりの資料や写真を展示している記念館です。

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実際に植村さんと冒険したエスキモー犬の剥製を用いて、犬ぞりも再現されています。植村さんと帯広市は、1976年に植村さんが2頭のエスキモー犬をおびひろ動物園に寄贈したことから始まりました。

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その後、帯広・十勝を毎年のよう訪れていた植村さんは1984/2/12にアラスカのマッキンリーの冬期単独登頂に成功した後、下山中に行方を絶ってしまいます。

しかし、「日高山脈の見える十勝の地で若い世代に経験や知識を伝える野外学校を開きたい」という植村さんの夢を継承するかたちで1985/8、「植村直己・帯広野外学校」が開校されました。この模型は1988年に建てられた研修棟とシンボルタワーで、毎年夏・秋・冬に青少年向けに開かれる野外学校の拠点となっています。

そして、このたび「野外学校」のスタッフの協力を得て、「氷雪の家」の展示も再整理されました。

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今回の整理ポイントは植村さんの冒険の目的地ごとでの資料の分類でした。植村さんは五大陸すべての最高峰を極めていますが、その折々に持ち帰った石も展示されています(杯などに加工されているものもあります)。これらの石には、それぞれの冒険・山行を支えてくれた人々への感謝の念が込められています。

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この装備は、植村さんの最後の山行となった1984年冬のマッキンリーで後日、雪洞から回収されたものの一部です。

こんな「氷雪の家」で冬場など、しばし風など避けながら植村さんの歩みに想いを馳せることもできるでしょう。

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こちらは2010年に帯広畜産大学と当園が結んだ連携協定に基づく「帯広畜産大学サテライト」です。園と大学がそれぞれの教育資源を活用して研究や環境教育を推し進め、活性化を図るのが協定の主旨です。サテライト内にも骨格標本を中心に貴重な資料が展示され、期間限定の特別展示や折々の学生によるガイドなども行なわれています。

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ここでひと息入れて、腹ごしらえ。昨今、十勝名物として知られるようになっている豚丼ですが、園内の食事処「カンガルーポケット」でも楽しむことが出来ます。

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そして、こちらは本物のカンガルー。園内を流れるウツベツ川を渡った展示場です。「ウツ」は「あばら骨」を意味するアイヌ語に由来し、「ベツ」は同じく「川」に由来するとされます。つまり、「あばら骨の川」で、この川が大きな帯広川の流れにあばら骨のように連なる支流であることによるとされます(※)。写真に見えているのは「しかのはし(鹿の橋)」。

 

※北海道の方針として、ある程度、自然な川の流れを保ちながらの整備が行なわれています。こちらの資料も御覧ください(PDFファイルが開きます)。

 

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橋の名前にふさわしく、ゆったりとした飼育展示場で過ごすエゾシカたち。しかし、なぜかこの日(9/24)はオスメスが分けられていました。その理由は……

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毎年恒例のオスの角切りです。シカのオスは毎年春に落角した後、再び角が成長して秋を迎えます。秋は繁殖のシーズン。オスたちは立派な角でメスとの繁殖の権利を競い合うのですが、負傷などのリスクもあります。そこで園では状況を判断しつつ、角切りの処置を行なっているのです。

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落ち着いた様子で寛ぐオス。

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角の一部は、こんな遊具にも利用されます。よく見ると穴が開いていて給餌装置を兼ねていることが分かります(※)。シカたちの運動場で、こういった飼育的配慮の品々を探してみてはいかがでしょうか。

 

 

※中に固形飼料などを仕込み、シカたちが遊びと工夫の中で食事できるようにしています。

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静かにしかし確かに過ぎ行く秋の中、アムールトラのマオは、そのまなざしまでも好奇心旺盛。マオは2010年、多摩動物公園の生まれです。若々しいマオは折々にその活発さを発揮してくれます。来園者とも接近遭遇。アムールトラは最も北方に分布するトラ、これからの冬の寒さも、かれらにとっては進化の歴史の中で体を馴染ませてきたものにほかなりません。

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先代の住人、オスのタツオ、1997年に名古屋市東山動物園で生まれ、アムールトラの繁殖計画の一環として1999年に札幌市円山動物園に移動の後、2010年に当園にやってきました。この写真は円山動物園に戻る少し前ですが (2012/5/17撮影)悠然とした雰囲気で、若々しいマオとはちがった風格が感じられます。おびひろ動物園ではタツオをはじめ、年齢の行ったオスの飼育が続いていたため、現在のマオの姿は飼育スタッフにも新鮮だとのことです。

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こちらはアフリカ由来。ライオンのヤマトです。2013年に釧路市動物園で生まれましたが、既に立派なタテガミの持ち主となっています。

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既にホッキョクグマ・ゴマフアザラシと、北極をめぐる海にまつわる動物を御紹介しましたが、今度は北極圏の鳥を。シロフクロウのペアは繁殖に成功しました。1羽で写っているのが幼鳥です。いまだ両親と同居中(2015/9/26撮影)。メスや幼鳥では斑な模様が見られます。シロフクロウはユーラシア大陸や北アメリカ大陸の亜寒帯まで南下してくることもあり、稀ながら北海道でも観察されています。

 

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そのまま北アメリカ大陸を南下して南アメリカに至ります(※)。アンデスコンドルのジャックとジェーン。ケージの外に気を惹かれる様子のジャックは1957年生まれと推定され、ゆったりと辺りを鳥瞰するジェーンとともに1981年に来園しました。

 

※園内では隣接した展示です。

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最後にコモンリスザル。前回登場のチンパンジー・マンドリルの並びにいますが、南アメリカ産の霊長類です。野生同様、賑やかな群れ生活を見せてくれます。

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観察するのか、されるのか。

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生きた野生動物とまなざしを交わす。親しみつつも、かれらが世界中のそれぞれの気候に適応しながら生きてきた進化を思い、いまこの時に向き合っていることの意味を考える。そこに動物園体験の意味があります。動物園で逢いましょう。

 

 

おびひろ動物園

緑豊かな公園の一角、北海道で唯一ゾウを飼育する動物園

公式サイト

おびひろ動物園飼育係ブログも御覧ください。

〒080-0846 帯広市字緑ヶ丘2

電話 0155-24-2437

飼育動物 70種374点(2015/8末現在)  おびひろ動物園 探検隊 十勝毎日新聞電子版も御覧ください。

開園時間・休園日はこちらを御覧ください(冬季開園等での変動があります)。

アクセス

JR帯広駅バスターミナルからバスで約15分。

駐車場情報等を含め、詳しくはこちらを御覧ください。