1月
27
2015
季節の中で、いまを生きる 伊豆シャボテン公園・その2
Author: 森由民
屋内大講堂での、活気あふれる、どうぶつ学習発表会のステージ。「ドッグパーティDEアミーゴ」です。さまざまな動物たちが訪れるパーティーを、準備風景から点描するという趣向です(※)。雑巾がけに奮闘する「お手伝い犬」はアル。
※複数回のステージの写真を使っています。
ひとっ跳び、おもてなし用のバナナをゲット(レプリカです)!はい、お待たせ。
わたしたちが映画やお芝居を楽しむ時、意識は二重になっているように思います。一方ではストーリーを楽しみつつ、それを演じる俳優や演出する監督の腕前も鑑賞しているということです。どうぶつ学習発表会でも、同じことが言えそうです。軽快なMCとともに展開する、コメディ仕立てのあれこれは、素直に笑うことができるものですが、同時に、練習(トレーニング)の積み重ねでつくられた、トレーナーと動物の息の合った連係にも目を向ければ、楽しみは二倍三倍でしょう。
ひょいと手を出す、ブタのアリエル。どんな合図やタイミングで動物たちの行動が引き出されているのか、そんな点に注目するなら、トレーナーと動物たちの「約束」の世界も見えてくるかもしれません。
ベニコンゴウインコのティモンがくわえる手紙の正体は……実際のステージで御確認ください。
フサオマキザルのもんじろうからはキュウリのプレゼント。
ちなみに、こちらは、メスのルビー。園内散歩に出逢えたらラッキーですね。
オウムのパールから、次にバラを捧げられるのは、あなたかもしれません。
来園者の積極的な参加を求め、動物たちとの能力比べを展開するのは「どうぶつとあそぼうDX」です。子どもの腕とインコのくちばし、持久力があるのはどっち?
しっかりとトレーニングされた鳥たちにとっては、来園者の持つ輪をくぐるくらいはたやすいことです。
今回はアングルの関係でクリアな写真が撮れませんでしたが、こんな趣向もあります(2009/4/23撮影)。夜の森を飛び回って、小動物を狩るメンフクロウ。静かで敏速な動きは必須です。この男性は「目の前を過ぎる羽音がしたら札を挙げてください」と言われていたのですが……
現在、休止していますが、伊豆シャボテン公園では、チンパンジーの学習発表会も行なわれていました(2012/2/12撮影)。わたしたちが森からサバンナへと適応する進化を遂げた一方で、同じヒト科のチンパンジーは森にとどまりました。学習発表会では、そんな森林生活者としてのすぐれた身体能力が、楽しく披露されていました。
ステージで活動していたチンパンジーたちが、のんびりと過ごすチンパンジアム(屋内大講堂に隣接)。オスのアクセルと来園者の、ほどよい距離での向かいあいとコミュニケーション。男の子が覗き込んでいるのは壁を貫くパイプです。アクセルからも覗いてくることがあります。
チンパンジーたちは、意外と雪や氷が好きです。
さらに、少し離れた高台にも「チンパンジーの島」があります。こちらも、ステージを引退したチンパンジーたちが、本来のかたちでの群れで暮らしています。それぞれ気ままにひなたぼっこをしているのは、オスのビリーとメスのココです(現在、もう一個体のメス・ジョアンを群れ入りさせる試みが進行中です)。
さて、ひと休み。サボテンステーキは開園55周年(2014年)を記念したメニューです。メキシカン・ファイヤーも、味わってみたい逸品です。
おいしい燃料補給を終えたら、再び園内散策。島池を利用しての開放感のある霊長類展示も、伊豆シャボテン公園の特徴のひとつです。マダガスカル原産のワオキツネザルの身軽な島渡り。
同じ島には、ブラウンキツネザルもいます。二種類のキツネザル、その行動のちがい・種間の関わり合いなどを観察したいところです。
ジェフロイクモザルは南アメリカ原産。メスのホイは2013/5/19生まれ。
母親の「1号」と一緒に水分補給。水に入ることを好まない習性を利用しての島池展示ですが、クモザルは水を飲んだり、少し手などで遊んでみたりするのは好きなようです。自在に巻きつき、からだを支える尾の力にも注目です。
シロテテナガザルのモモ。チンパンジー同様、尾を持たない類人猿です。樹上で寛いだり、名前通りのリーチを活かして枝渡りをしたり。時折高らかに鳴くテリトリーソングも聴きものです。
さすがにそろそろ冷えてきました。少し、からだを温めましょう。園内に威容を示す高原竜は、中に入ることができます。
前半はサボテンをはじめとする世界の多肉植物の中を歩ける大温室群。中南米・アフリカ・マダガスカル、それぞれの環境に適応した植物たちを実感できます。
植物たちの姿に、生きものたちの世界の共通性と多様性を見て取った後は、あらためて、動物たちの展示へと進んでいけます。パカは中南米原産。カピバラをはじめ、かの地は齧歯類の多様な進化でも知られています。午後の給餌の時間は、かれらを観察するにはもってこいのひととき。まさに食事を始めようとしているのは、メスのスミレ。そして、オスのプカ。パカたちの好物はバナナや蒸し芋で、薬を飲ませたい時なども、これらの食材に仕込めば、うまく行くとのことです。
早く早くと急かす様子なのは、ムツオビアルマジロのジロ。とても活発な個体です。
こちらは誰の食事?
シロムネオオハシのペア、ズー(オス)とルゾー(メス)。くわえた餌を巧みに呑み込むのは、かれらの得意技です。
究極のエコロジカル・スローライフというべきフタユビナマケモノも、食事となれば、おもむろに活動開始。メスのセイです。オスのカイと同居中。
高原竜の体内で温まり、再び、屋外に出てみます。放し飼いのカンガルーたちの中に歩み入ることができる「カンガルーの丘」では、小型のパルマワラビー(こう見えても、お母さんなのですね)ほか、三種のカンガルー類を混合展示してます。
スタッフ手づくりの資料を見ながら、知的な憩いもよいものです。
ちょうど、オスのナニワを毛づくろいしようとしているのはメスのコハル。仲睦まじいブラジルバクのペアは、2013/8/6にオスの赤ちゃんを授かっています。かれらの息子は既に園から旅立ちましたが、次の繁殖にも期待したいところです。
最後は、インドタテガミヤマアラシ。それぞれマイペースな群れの個体たち。
そして、さらにもう一頭が群れ入りを目指しています。2012/7/7に東京・羽村市動物公園で生まれたオスのハム。閉園近くの夕方、他の個体を収容した後に一時的に運動場に出ていることがあります。見かけたら、そっと、かれの今後の幸を祈ってくださればと思います。落ち着くまでには、もうしばらくかかるでしょうが、新入りの若者は繁殖を含めて、新たな展開を生み出してくれるでしょう。
ステージで、温室で、屋外展示で、動物たちにも緩やかな季節と時の移ろいがあります。たまたま訪れたわたしたちも、そんなかれらと動物園のスタッフたちが刻み続ける日々に、ささやかながら出逢うことができるでしょう。
伊豆シャボテン公園
ほんわかカピバラ!あったかサボテン!伊豆高原のふれあい動物園
公式サイト
〒413-0231 静岡県伊東市富戸1317-13
Tel:0557-51-1111(代)
飼育動物 100種631点
開園時間
3/1~10月末
9:00~17:00
トワイライト営業(※) 15:30~(最終入園受付16:30)2015年3月まで。
11/1~2月末
9:00~16:00
トワイライト営業 15:00~(最終入園受付15:30)2015年3月まで。
※時間帯限定の入園料半額システム。詳しくは、こちらを御覧ください。
休園日
年中無休
アクセス
JR伊東線・伊東駅から東海バスで約35分。
その他、こちらを御覧ください。