※定例(餌やりなど)・特別のイベント情報は、こちらを御覧ください。有料のものもあります。

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キリンならではの長い舌を活かして木の葉を巻き取るのは、メスのももか(1995/8/6生まれ)。身長4.5mに及ぶももかですが、野生のキリンも長い首と大きな体を活かし、アフリカのサバンナを歩きまわりながら、このような採食して暮らしています。

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キリンの顔を間近で観察すると、まずは長いまつげに気がつきます。アフリカの強い日差しなどから目を守る機能が考えられます。そして、くっきりとした眉。実はこれはイヌやネコの目の上にヒゲのように生えているのと同じ感覚毛です。木の葉を食べるには枝々の中に顔を突き入れなければなりませんが、キリンが好むサバンナアカシアには鋭いとげがあります。キリンの眉は、そんなとげなどで目を突かないように回避させるセンサーと考えられています。

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池田動物園では、このようにニセアカシアを中心とした枝葉を運動場のフェンスにぐるりと差してやります。こうして、動物園の限られた空間でも少しでも運動量を増やそうと試みているのです。

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今夏の「ナイトズー」でのキリンのバックヤードツアー。木の葉以外にもどんな餌を与えているか、飼育下では捕食者(肉食獣)からの安全が確保されているので座り込んで眠るのだなど、こういう時でないと見聞しがたい内容が盛りだくさんです。

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コーティングされたキリンの糞を手にする機会もありました。

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さて既に飼育下のキリンの運動量が問題となることは記しましたが、運動させることを心掛けていても、やはり蹄は伸びがちになります。伸びすぎた蹄は歪んでしまい、結果として歩行不良から命に関わることもあります。そこで定期的に蹄を手入れできるようにトレーニングを施しています。

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現在二人組でトレーニングを進めていますが、足に鋸をあてがう役の飼育員も最後に餌を与えます(※)。トレーニングの目的は個人になつかせることではないので、キリンから飼育員に対して個人や役割での好き嫌いをつくらないようにし、受診動作(※※)~報酬(餌)というトレーニングそのものを「約束」として受け入れられるように努めています。

まつげ・眉毛など、キリンは本来の体の仕組みや行動の上でも自分の身を守れるようになっています。しかし、かれらを飼育下に置きつつ、自然な「野生」を引き出して展示するためには、動物園ならではの健康管理や保護の工夫が必要なのです。

 

※前掲の写真では、トレーニング中にもう一人の飼育員がタイミングを見ながら餌を与えています。

※※ここでは足を出して鋸を当てられるのを受け入れる行動。

 

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トレーニングが終わってからの方が妙に積極的に接近してくるももか。そんな気まぐれさも持っています。

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しかし、強制や過剰な誘導はトレーニングの主旨に反します。ももかが接近をためらっている時には、あえて飼育員同士でのんびりと雑談するなど、ももかのストレスを増やさず、自ら進んで行動をつくりあげていけるように、気長で穏やかなトレーニングが続けられています。それは飼育全般にも関わる心がけなのでしょう。

トレーニングが飼育下での日常のちょっとした「特別な時間」として、動物たちへのよい刺激となる可能性も評価できます。

 

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グラントシマウマのリヨ(メス・奥)とソラ(オス)。かれらにもトレーニングが施されています。

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横を向いて静止する。何でもない行動と映りますが、野生の感覚を保っているかれらが無防備に横腹や背後を人に預けるには、飼育員との安定した関係性が必要です。しかも非番や担当の交代などもあるのが動物園ですから、動物たちの信頼は個々の飼育員にとどまっていてはならないのです(※)。ひとつひとつのサインに馴染ませる地道な営みが続けられています。

 

※不適切な「人づけ」は野生を麻痺させることにもなり、動物園展示の根本にも関わります。

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トレーニンググッズも手づくりだったりします。ペットボトルを利用したターゲット棒。既に掲げた写真のように動きを指示する役割のほか、まずは、これで蹄に触れたりすることでいずれ手入れのためのやすりがけ等にも適応させていこうとしています。

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飼育下の動物たちが健やかに快適に暮らせるよう、飼育環境を豊かにする。そんな試みを「環境エンリッチメント」と呼びます。おおがかりなものばかりでなく、動物園には飼育員たちの手仕事によるさまざまな環境エンリッチメントの実践(飼育的配慮)も見出せます。噴水や彫像がムードを醸し出すマゼランペンギンのプール。

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この輪は、避けて泳いだり、時にはくぐったりすることでペンギンたちの行動にヴァリエーションが出るようにする工夫です。

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ペンギンたちの間近な通過やユーモラスな坂下りが観察できる「ペンギン・ランウェイ」。これもペンギンの気分次第の行動ですが、だからこそ日常の飼育環境の自然な豊かさにつながっていると言えるでしょう。

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プールから上がってきたばかりのリョウマ(オス)。そのすぐ後ろでスロープに辿り着いているのはリョウマとメスのペタロウの間に今年(2015/5/10)生まれたハルです。まだしっかりとした紋様にはなっていませんが、外見も行動も段々におとなに近づき、両親の見守りから離れつつあります。

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ハルがつついているのは個体識別用の翼帯です。リョウマの場合は右側に緑と黄色を着けています。すべての個体に紹介プレートがありますので、是非実地での見分けに挑戦してみてください。

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こちらは、アカとサンのペア。巣箱の中に敷かれているのは人工芝です(この時点で繁殖期は既に過ぎています=2015/08/12撮影)。

さきほどのリョウマは姫路市動物園から婿入りしてきてペタロウとペアになりましたが、昨年かれらが産卵した2個の卵は共に割れてしまいました。そこで飼育担当者は、動物園や水族館のペンギン飼育担当者を中心に一般のペンギンファンも参加できる全国ネットワークのNGO「ペンギン会議」で他園の知恵を借りました。それが、この巣箱です。すのこに人工芝を張り付け、巣材も細かく刻んだ人工芝にすると破卵が起きにくいのです。また、このような営巣セットを2つつくってうまく入れ替えてやると、さらに衛生的となり、それらをきっちりと試すことで、今年はハルの孵化に成功したのでした(※)。

前回に御紹介したミーアキャットの運動場やこのマゼランペンギンの事例、それにキリンのトレーニングなども、すべて動物園・水族館が互いに快く教え合い、導きあうことで着実に成果を挙げています。また、リョウマのように園館の間での個体の移動も、血統問題の解消など、全体として飼育個体群のあり方を健全化することにつながっています。

動物園・水族館は、決して孤立したかたちでは存続できない。そういう認識はさまざまな面での真理を孕んでいると言えるでしょう。わたしたち来園者がそれを知ることにも深い意義があると思われます。

 

※マゼランペンギンは毎年の繁殖期に2個の卵を産みます。しかし、まだ未熟なところがあるリョウマは1個の卵を温めるのが精一杯です。今年ペタロウが産んだ卵のひとつはアカ・サンのペアに託されました。残念ながら発生が進まず破卵してしまいましたが、リョウマの成長や園・担当者の飼育的配慮の中で、池田動物園のペンギンたちはさらに充実した群れとなっていくことでしょう。

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繁殖と言えば、こちらも。コツメカワウソのペアのチョコ丸・テラちゃんは、この春(2015/4/15)繁殖に成功し、ただいま赤ちゃん四姉妹の子育ての真っ最中です(2015/8/12撮影)。そんな事情で展示されていないこともありますが、こんな場面に行きあえば、かれらの家族の円満さと賑やかさを満喫することができます。

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カワウソは半水生の暮らしに適応したイタチ類ですが、登攀能力もなかなかです。

そんなかれらの習性・行動を活かしているのがカワウソラグーン。通路側にせり出したアクリル水槽内でのカワウソの動きをたっぷりと観察することが出来ます。残念ながら今回の取材ではそういう機会には恵まれませんでしたが、展示効果だけでなく、登る・泳ぐといった行動の増加で、カワウソたちへの環境エンリッチメント効果も期待されます。

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ちょっとだけよ?

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少し寄り道。「上にいる」といえば……多角形の展示舎、オスのメガネカイマン・サブレの視線の先には……

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ルーセットオオコウモリの群れです。オオコウモリの仲間は果実食で、多くの日本人に馴染み深い小型コウモリ類(もっぱら昆虫食)とは生態が異なります(※)。

 

※日本国内でも、南西諸島にはクビワオオコウモリが生息し、いくつかの亜種に分かれています。また、オガサワラオオコウモリは小笠原諸島の固有種です。

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同じ展示舎内の別の一角にはインドオオコウモリも暮らしています。

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ほんの一個のボールで動物の日常が活気づくこともあります。オスのホワイトライオンのハタリ。以前にはタテガミが抜けてしまっていた時期があり心配されていましたが、いまは御覧の悠然ぶり。このボールをはじめとした飼育的配慮の積み重ねの成果でしょう。

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こちらはアフリカライオンのモジロー、園内斜面上方で暮らしています。見比べるとハタリの体色が白っぽいのが確認できると思います(※)。

 

※ホワイトライオンは幼少時には真っ白ですが、成熟するとやや色づくのが普通です。

 

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親密な群れをつくり「ラブバード」とも呼ばれるボタンインコ。

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群れでの行動ならではの「止まり木のシーソー化」です。ここにも展示効果と飼育的効用(環境エンリッチメント)の兼ね合いが見られます。

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「こんにちは」

以前には個人のペットだったキエリボウシインコのオーちゃんは、なかなかの器用さと多弁を発揮します。飼育下ならではの個体と言えますが、それゆえに、かれらの発音の器用さや知能の高さ、そして人とのやり取りが出来る社会性といったものを親しみ深く感じさせてくれます。

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そんなオーちゃんも食事中は無口。

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池田動物園では3種類のフラミンゴを比較展示しています。

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ピンクの羽と灰色がかった足のチリーフラミンゴ。

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鮮やかな羽色のベニイロフラミンゴ。フラミンゴの曲がったくちばしは、このようなかたちで採食に役立てられます(※)。

 

※野生では水中の藻類をこしとって食べます。

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そして、白っぽい体と赤い足、ピンクのくちばしが際立つヨーロッパフラミンゴです。

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かれらフラミンゴについても、継続的にこんなイベントが組まれています。園内を散歩する個体たちの総称は「ピーちゃん」。孵卵器で生まれ、飼育員に育てられました。人馴れを活かすことで、フラミンゴ舎での展示とはちがったかたちでフラミンゴの大きさ・体の特徴などを感じ、観察してもらおうというわけです(2010/6/10撮影)。

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ヤギの餌やり。動物園が定めたルールを守るなら、他の場所では得難い楽しい体験ともなるでしょう。

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ふれあいも然り。場内の掲示や、スタッフ・ボランティアなどの声に注意を向けることは、結果として「人と動物が向き合うことの意味」を考える格好の機会ともなるはずです。

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前回御紹介した「ものしり食堂」内の掲示より。

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今年のスター(干支)、ヒツジのまゆりちゃん。そして、ヤギの斗真。

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ミニヤギの名は「一心(いっしん)」です。

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ロバのマロン君。時には怪獣のような大音量で鳴きます。

ペットを含む家畜たちは、人間が野生動物を飼い馴らし自分たちの生活に深く取り込むことで生まれました。「飼う」ことを前提とした動物たちです。ここまでに記してきたような「飼育下の野生動物への飼育的配慮」と比べ合わせることで、わたしたちは動物たちとの、より豊かで多様な関わりへと目を開くことが出来るでしょう。

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アメリカバイソンのオス・アトランタ。かれの運動場にも遊び道具や水場などが見つけられます。バイソンは家畜ウシとは異なりますが、アメリカでは先住民族と永らく関係を結び、ヨーロッパ人の移入以降の乱獲での激減~保護政策による個体数の上向きといった歴史を持ちます。マイペースなアトランタを前に、そんなあれこれに想いを広げてみてもよいでしょう。

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池田動物園観覧もそろそろ終わりが近づいてきました。ケヅメリクガメのケーヅー。寒さや雨天は苦手なので「家」に引き籠もっている時もありますが、なんとかお目にかかれました。かれを見ていると、暑かった夏もいささか名残惜しく思えてきます。

そんなケーヅーの「表札」に書かれた野生のアオサギの巣のこと。「引っ越しました」と注意書きがあります。前回からお読みの皆様は、かれらの新居を見ているのです。

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ここです。インドゾウ・メリーの動物舎の裏手です。池田動物園に足を運ばれたら、ちょっと探してみてください。

(飼育下の)野生動物、家畜ひいては野生の鳥や魚など(前回のメダカほか)。巧まざるものまで含め、動物園は生きものの多様さをぎゅっと詰め込んだ「いのちの宝箱」なのです。心ときめかせながら蓋を開け、あなたも宝物を見つけてみませんか?

 

 

池田動物園

緑に囲まれ、動物たちを体感できる動物園

公式サイト

〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5番1号

電話 086-252-2131

飼育動物 122種590点

開園時間(閉園の1時間前までにご入園ください)

4月~10月:9:30~17:00

11月~3月:9:30~16:30

休園日

11/21~2/20、5/21~7/20の毎週水曜日

(祝祭日や夏休み・冬休み期間中は休まず開園いたします。)

アクセス

JR岡山駅西口から

バス…岡山中央病院行き 京山入口 下車徒歩12分

タクシー…約8分

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

 

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