10月
14
2015
十勝の森の動物園 おびひろ動物園・後篇
Author: 森由民動物園までの続く道に足跡。何種類かの動物たちのものが描かれています。ホッキョクグマの足跡は、いまは他園に移動したキロル(オス)がモデルになっています。キロルは2008/12/9、札幌市円山動物園生まれ。2010/2/21、ふたごのイコロ(オス)とともに、おびひろ動物園に移動。現在、イコロは上野動物園で、キロルは浜松市動物園で元気に暮らしています。
そして、現在のおびひろ動物園のホッキョクグマアイドルはこちら。アイラ(メス)は2010/12/25に札幌市円山動物園で生まれ、2012/2/20に来園しました。イコロやキロルの妹ということになります。
繰り広げられるアイラの遊びは、見ている側も心弾むありさまです。
ところ変わって、こちらもオホーツク海・ベーリング海などの北の海で暮らすゴマフアザラシ。伸び上がったり、豪快に波を立てて泳いだりと忙しげなのはオスのカイ。
一方のんびりとした風情はメスのモモ。しかし、彼女もまた何か待っている様子ではあります。
ふたりのお待ちかねは夕方の食事でした。特別にモモへの給餌をやらせていただきました。手渡しでも投げてあげてもすぐにごくり。頭から尾へと丸呑み(逆は鱗がひっかかるので)というのがアザラシの作法です。
はす向かいのプールにいるのはカリフォルニアアシカのオス・タケル、1990/6/22生まれ。アザラシは後ろ足で推進力を生み出しますが、アシカは前足を翼のように活かす「前輪駆動」。タケルもマイペースに遊泳していますが、そこそこの年齢になっているので体調によっては寝部屋との出入りが自由になっていることもあります。
こちらは親子で食事のアミメキリン。ムサシ(オス)とリボン(メス)に次男メープル(オス)。メープルは2014/9/21生まれです。兄で現在、釧路市動物園にいるスカイ(2012/5/26生まれ~2013年移動)は父親ムサシに似て大胆でしたが、メープルはいささか臆病な気質のようだということです。
枝葉を与えながらのスポットガイドも行なわれます(※)。この日はニワトコ、最後の一葉まで無駄にしません。ちなみにキリンたちの中で一番の食いしん坊はムサシだそうです(※)。
※集合写真は左がリボンとメープルで右がムサシ、アップの写真はメープルです。
まもなく冬がやってきます。12月には雪景色となりますが、帯広の冬は存外からりとしているのでキリンたちも大概は冬季の開園時間(11:00~14:00)めいっぱいを放飼場で過ごしています。このようにキリンをはじめ、動物たちはそれぞれに冬に適応しており、その意味では雪こそが当園の「セールスポイント」かもしれません。キリンたちの場合、湿った雪は苦手とのことですが。
※スポットガイドの予定は毎日10時ごろに告知されます。園内の掲示やこちらのブログなどで御確認ください。
そんなキリンたちと同居しているのはチャップマンシマウマのシャンティ(メス)。昨年(2014年)、兄のロックが亡くなり、1頭きりとなりましたが、キリンとの共同生活は本来群れで暮らす動物であるシャンティにも良い効果があると思われます。
大きな窓からこんにちは。ピグミーヤギの「ぴっくー」(オス)は2002年生まれでヤギとしては高齢ですが、今年から専用の寝小屋が建てられ寒冷期を含め通年で姿を見せてくれることになりました。
ぴっくーの新居の隣、自分たちの小屋の前に立つのはヒツジの「わた」(メス)。ぴっくーの「御殿」が、ちょっとうらやましそう?
もう一頭、ぴっくーと共に過ごすのは、こちらもメスのヒツジで「モカ」です。ヤギ1頭とヒツジ2頭の共同生活はそれぞれの種の特性や個体の性格なども見て取れることでしょう。個体識別のプレートもあるので参照してみてください。
残り少ない未年を惜しみつつ、束の間、お仲間に入れていただきました。
気がつけば、たたずむ「わた」をアイラが見下ろしていました。
ぴっくーたちの住まいは別建てになっていますが、モルモットやヤギ、ヒツジなどとふれあうことができる「ちびっこふぁーむ」はこちら。
「ちびっこふぁーむ」でもウサギ一羽々々まで愛称がつけられています。個体識別のプレートもあります。見わけることで親しみが増す、そんな体験もできるでしょう。
あいにくの雨模様(2015/9/24撮影)のため屋内で過ごすコンゴウインコのパセリ(オス)。温暖な時期、好天時には屋外に展示されますが、寒さは苦手なので冬場には、前回御紹介した「どんぐりのいえ」で避暑ならぬ避寒生活となります。
うららかな陽射しの中でもふと北極気分を誘うような「氷雪の家」。この施設は、1978/4に世界で初めて単独犬ぞりで北極点に立ち、グリーンランドを縦断踏破したことで知られる冒険家・植村直己さんゆかりの資料や写真を展示している記念館です。
実際に植村さんと冒険したエスキモー犬の剥製を用いて、犬ぞりも再現されています。植村さんと帯広市は、1976年に植村さんが2頭のエスキモー犬をおびひろ動物園に寄贈したことから始まりました。
その後、帯広・十勝を毎年のよう訪れていた植村さんは1984/2/12にアラスカのマッキンリーの冬期単独登頂に成功した後、下山中に行方を絶ってしまいます。
しかし、「日高山脈の見える十勝の地で若い世代に経験や知識を伝える野外学校を開きたい」という植村さんの夢を継承するかたちで1985/8、「植村直己・帯広野外学校」が開校されました。この模型は1988年に建てられた研修棟とシンボルタワーで、毎年夏・秋・冬に青少年向けに開かれる野外学校の拠点となっています。
そして、このたび「野外学校」のスタッフの協力を得て、「氷雪の家」の展示も再整理されました。
今回の整理ポイントは植村さんの冒険の目的地ごとでの資料の分類でした。植村さんは五大陸すべての最高峰を極めていますが、その折々に持ち帰った石も展示されています(杯などに加工されているものもあります)。これらの石には、それぞれの冒険・山行を支えてくれた人々への感謝の念が込められています。
この装備は、植村さんの最後の山行となった1984年冬のマッキンリーで後日、雪洞から回収されたものの一部です。
こんな「氷雪の家」で冬場など、しばし風など避けながら植村さんの歩みに想いを馳せることもできるでしょう。
こちらは2010年に帯広畜産大学と当園が結んだ連携協定に基づく「帯広畜産大学サテライト」です。園と大学がそれぞれの教育資源を活用して研究や環境教育を推し進め、活性化を図るのが協定の主旨です。サテライト内にも骨格標本を中心に貴重な資料が展示され、期間限定の特別展示や折々の学生によるガイドなども行なわれています。
ここでひと息入れて、腹ごしらえ。昨今、十勝名物として知られるようになっている豚丼ですが、園内の食事処「カンガルーポケット」でも楽しむことが出来ます。
そして、こちらは本物のカンガルー。園内を流れるウツベツ川を渡った展示場です。「ウツ」は「あばら骨」を意味するアイヌ語に由来し、「ベツ」は同じく「川」に由来するとされます。つまり、「あばら骨の川」で、この川が大きな帯広川の流れにあばら骨のように連なる支流であることによるとされます(※)。写真に見えているのは「しかのはし(鹿の橋)」。
※北海道の方針として、ある程度、自然な川の流れを保ちながらの整備が行なわれています。こちらの資料も御覧ください(PDFファイルが開きます)。
橋の名前にふさわしく、ゆったりとした飼育展示場で過ごすエゾシカたち。しかし、なぜかこの日(9/24)はオスメスが分けられていました。その理由は……
毎年恒例のオスの角切りです。シカのオスは毎年春に落角した後、再び角が成長して秋を迎えます。秋は繁殖のシーズン。オスたちは立派な角でメスとの繁殖の権利を競い合うのですが、負傷などのリスクもあります。そこで園では状況を判断しつつ、角切りの処置を行なっているのです。
落ち着いた様子で寛ぐオス。
角の一部は、こんな遊具にも利用されます。よく見ると穴が開いていて給餌装置を兼ねていることが分かります(※)。シカたちの運動場で、こういった飼育的配慮の品々を探してみてはいかがでしょうか。
※中に固形飼料などを仕込み、シカたちが遊びと工夫の中で食事できるようにしています。
静かにしかし確かに過ぎ行く秋の中、アムールトラのマオは、そのまなざしまでも好奇心旺盛。マオは2010年、多摩動物公園の生まれです。若々しいマオは折々にその活発さを発揮してくれます。来園者とも接近遭遇。アムールトラは最も北方に分布するトラ、これからの冬の寒さも、かれらにとっては進化の歴史の中で体を馴染ませてきたものにほかなりません。
先代の住人、オスのタツオ、1997年に名古屋市東山動物園で生まれ、アムールトラの繁殖計画の一環として1999年に札幌市円山動物園に移動の後、2010年に当園にやってきました。この写真は円山動物園に戻る少し前ですが (2012/5/17撮影)悠然とした雰囲気で、若々しいマオとはちがった風格が感じられます。おびひろ動物園ではタツオをはじめ、年齢の行ったオスの飼育が続いていたため、現在のマオの姿は飼育スタッフにも新鮮だとのことです。
こちらはアフリカ由来。ライオンのヤマトです。2013年に釧路市動物園で生まれましたが、既に立派なタテガミの持ち主となっています。
既にホッキョクグマ・ゴマフアザラシと、北極をめぐる海にまつわる動物を御紹介しましたが、今度は北極圏の鳥を。シロフクロウのペアは繁殖に成功しました。1羽で写っているのが幼鳥です。いまだ両親と同居中(2015/9/26撮影)。メスや幼鳥では斑な模様が見られます。シロフクロウはユーラシア大陸や北アメリカ大陸の亜寒帯まで南下してくることもあり、稀ながら北海道でも観察されています。
そのまま北アメリカ大陸を南下して南アメリカに至ります(※)。アンデスコンドルのジャックとジェーン。ケージの外に気を惹かれる様子のジャックは1957年生まれと推定され、ゆったりと辺りを鳥瞰するジェーンとともに1981年に来園しました。
※園内では隣接した展示です。
最後にコモンリスザル。前回登場のチンパンジー・マンドリルの並びにいますが、南アメリカ産の霊長類です。野生同様、賑やかな群れ生活を見せてくれます。
観察するのか、されるのか。
生きた野生動物とまなざしを交わす。親しみつつも、かれらが世界中のそれぞれの気候に適応しながら生きてきた進化を思い、いまこの時に向き合っていることの意味を考える。そこに動物園体験の意味があります。動物園で逢いましょう。
おびひろ動物園
緑豊かな公園の一角、北海道で唯一ゾウを飼育する動物園
おびひろ動物園飼育係ブログも御覧ください。
〒080-0846 帯広市字緑ヶ丘2
電話 0155-24-2437
飼育動物 70種374点(2015/8末現在) おびひろ動物園 探検隊 十勝毎日新聞電子版も御覧ください。
開園時間・休園日はこちらを御覧ください(冬季開園等での変動があります)。
アクセス
JR帯広駅バスターミナルからバスで約15分。
駐車場情報等を含め、詳しくはこちらを御覧ください。