※本稿は2016/1/15~16の取材を中心に、それ以前の見聞を交えて構成されています。

※※登場するイベント等には有料のものもあります。こちらのサイトや現地で個別に御確認ください。

 

杜の都・仙台、広がる三陸の海。仙台うみの杜水族館はその名通りに自らの地盤を意識した水族館です。

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入館早々から見上げれば、そこは「マボヤのもり」。

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こんな豆知識の掲示も「海の幸」に親しんできた生活を映し出すものと言えるでしょう。

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タカアシガニとともに展示されているのは東日本大震災の年に放流され、2014年に帰ってきたシロザケです。川で生まれては海に下り、再び産卵のために回帰・遡上してくるサケ類の暮らしもまた、川や海とともに暮らしてきた人々にとっては、繰り返される季節と刻まれる時の証しなのでしょう。

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三陸の人々はカキの養殖にも取り組んできました。仙台うみの杜水族館では、それらの営みの実際を再現・展示するとともにカキ殻キャンドルづくりも楽しめます。

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「なりきり漁師体験」、気分だけでも「海に生きる暮らし」を体験してみました。

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「お絵かきアマモリウム」は自分で描いた絵の魚がスクリーンの中のアマモ場を泳ぐ姿を通して、さまざまな海の生きものたちの餌場・隠れ場・産卵場等となるアマモ場の豊かな生態系のありようを実感できる場となっています(※)。

 

※来館者の御了承を得て掲載しています。

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アマモ場とともに生きるいのち、たとえばギンポ。

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「うみの杜ラボ」は水族館が宮城県内の稀少な淡水魚類・両生類などの飼育・繁殖に取り組む姿を見せ、その意義を発信しています。

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たとえば、トウホクサンショウウオ。日本では北海道から九州まで各地に地域ごとの小型サンショウウオ類が生息しています。かれらはそれぞれの土地の気候風土を身をもって映し出していると言えるでしょう。

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「井土メダカ」はミナミメダカの地域個体群です。ミナミメダカは本州太平洋岸・四国・九州・南西諸島に分布しますが、地域による遺伝子の差が大きい動物です。仙台市井土地区のメダカは2011年の津波で姿を見られなくなってしまいましたが、宮城教育大学がその一部を飼育しており、現在、仙台うみの杜水族館・仙台市八木山動物公園を含む3施設が協働して、このメダカたちの「種の保存」に努めています。

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こちらはタガメ。魚や両生類まで襲って体液を吸う大型昆虫ですが、同時に農薬などに極端に弱いことも知られています。食物連鎖の上位に組み込まれたかれらは、その場の環境すべてが整っていなければ生き続けられないのです。

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「タガメの標本にさわってみませんか?ゲンジボタルの幼虫も観察できますよ」

「うみの杜ラボガイド」は、このコーナーの主旨に基づき、来館者と飼育員のコミュニケーションをはかるひとときです。

 

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こんな「秘密兵器」を御持参の来館者も。ライトが内蔵された携帯顕微鏡です(※)。

 

※来館者の御了承を得て掲載しています。

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飼育スタッフまでがこの顕微鏡を借りて、タガメの観察に夢中になっていました。

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これはまた別の日のガイドの様子。飼育員が手にしているのは二枚貝の標本です。

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タナゴのなかまは二枚貝の中に産卵します。かれらのライフサイクルは二枚貝なしでは回らないのです。このため、貝類が住みにくくなる環境変化はすぐさまタナゴ類の存続をも脅かすことになります。アカヒレタビラも宮城県産のタナゴ類のひとつです。

仙台うみの杜水族館では、ここで記したようなアカヒレタビラと二枚貝の関係全体の大切さを伝えるとともに、アカヒレタビラから卵を採取し、二枚貝の助けなしでの人工的な孵化・育成をすることも試みています。このような技術を磨くことで稀少種を飼育下でも、より確実に保全していき、その実践を通して、さらに詳しくアカヒレタビラの生活を探究していこうとしているのです。

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再び、海へ。冒頭でも御紹介したマボヤですが、こちらの展示では非常に珍しい白いマボヤも観察することが出来ます。

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白いのはホヤだけではありません。白いマナマコ。

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窮屈なんじゃないかと思うほどに群集する習性を持つマタナゴも白い個体が混じっています(他にまだら模様の個体もいます。実際の展示でじっくり観察してみてください)。

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海水・淡水にまたがる地元の水の世界を潜り抜けると、これもまた仙台の代名詞のひとつである広瀬川の上流から下流までをコンパクトにまとめた屋外展示です。

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屋外なので時にはこんな光景も。

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ニホンリスは観覧路の上を跨ぐ網状の通路を行き来し、食事の様子も披露してくれます。

 

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さて、こちらもリス同様に齧歯類の展示です。ただし、北アメリカ原産。

「海獣ひろば」の一角で飼育展示されているアメリカビーバーは、その寝姿も注目を集めています。なかよく身を寄せ合うのはナギとマルの兄妹2頭。

もっぱら夜行性のかれらですが、右の写真のようにプールに漂っていた枝木が朝には巣の中に取り込まれていることもあり、かれらのひそやかな活動が偲ばれます。

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夕刻。ビーバーにも食事の時間がやってきました。飼育員によるガイドトーク付です。

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受け取ってくれたのは兄のナギ。

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ナギの方がマルよりも積極的な性格のようです。野生では枝木を取り集めてダムや巣を組み上げるビーバーたち。器用にイモを持つナギの姿にも、そんな能力の片鱗が見て取れます。

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ひたすら眠るマルもキュートなのですが。

 

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ビーバー・プールの汚れの除去。限られた空間でも快適な生活を。飼育員は動物たちのためにさまざまな工夫や世話を続けています。

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観覧路の後半では「世界のうみ」のさまざまな姿も楽しめます。オセアニアの澄んだ海と色とりどりの魚たち。

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ウィーディーシードラゴンは海藻に擬態して捕食者から身を隠す大型のタツノオトシゴのなかまです。

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イエローヘッドジョーフィッシュはカリブ海原産です。奥の個体の行動に注目。

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水族館の飼育下でも、こうしてせっせと砂を掘って巣穴をつくる行動が見られます。

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クシイモリはヨーロッパだけに生息し、ヨーロッパにおける最大種です。

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同じ水槽にはマダライモリもいます。緑鮮やかな容姿ゆえに周囲に紛れるカムフラージュ。

 

宮城の水系・三陸の海から世界へ。わたしたちが日々親しむ風土は、そのまま世界とつながり開かれています。それらひとつひとつを大切にし、みんなが共に支え合うことでこそ、すべてが未来へと守られていくのではないか。仙台うみの杜水族館でのひとときは、そんな想いを育む学びと楽しみの旅なのです。

 

 

仙台うみの杜水族館

海と人、水と人との新しいつながりを「うみだす」いのちきらめく水族館。

公式サイト
〒983-0013 宮城県仙台市宮城野区中野4丁目6番地

電話 022(355)2222

飼育動物 約300種50000点

開館時間

通常期    9:00~18:30(入館は18:00まで)

冬期(1/4~3/18) 9:00~17:30(入館は17:00まで)

休館日 年中無休

詳しくはこちらを御覧ください。

アクセス

仙台駅から電車でJR仙石線中野栄駅下車(所要時間約18分)、徒歩約15分。

その他、こちらを御覧ください。

 

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