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モルモットは、アニマルランド・ふれあい広場の人気の的(夏季7~9月は暑さのため閉鎖します)。家族そろっての憩いの定番とも言えるでしょう。

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動物もまた、憩います。ひとときの陽だまりを楽しむ様子のトカラヤギのマレーは、推定17歳のメスです。前篇で御紹介したジャガーのハル同様、この動物種の寿命としてはまぎれもない高齢者ですが、メニューや与え方をカスタマイズされた食事や、運動不足で伸びすぎてしまう蹄の定期的な手入れなど、さまざまな飼育的ケアの中で、のんびりと暮らすことができています。

さわったりできることで、ぬくもりや手ざわりなどの実感を与えてくれる、ふれあい動物たちですが、マレーのような事例を知り、あらためて目を向けることで、わたしたちは、さらに深く、いのちを感じ、学べるように思います。

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園内に記念展示がなされている(※)グラントシマウマのランは、アニマルランドの前身・高知市立動物園の時代から、通算9回の出産を行なってきたベテランでした。昨年(2014/10/15)、32歳の生涯を閉じましたが、国内最高齢の個体でした。けれども、ランの場合には高齢化による蹄の伸びすぎは、あまり問題にならなかったと言います。なぜでしょうか?

※2015/3/17現在。

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その秘密は、シマウマの運動場に敷き詰められた玉砂利にあります。これによって、効率的に蹄をすり減らすことが出来ます。広々としたサバンナでの活動に適応したシマウマの蹄。アニマルランドの玉砂利は、限られた空間の中でも、動物たちの快適な暮らしのための必要条件を整えていこうという工夫なのです。

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動物福祉の観点から、飼育下の動物たちの心身ともに健康な暮らしを実現するために、さまざまな手立てをこうじることを「環境エンリッチメント」と言います。アニマルランドでも、あちこちで環境エンリッチメントの実例と出逢うことが出来ます。

わたしたちと同じヒト科のチンパンジーは、とりわけて豊かな感情や知性を持つ存在です。「人工アリ塚」は、そんなかれらが、与えられた枝から葉を食べ、棒として利用することで、中に仕込まれたジュースを飲めるようにした装置です。その名の通り、野生のチンパンジーが棒を使って、塚の中のシロアリなどを釣り、食べてしまう行動の再現を狙っています。熱心に取り組むのは、メスのローラ(手前)とオスのヤマト。

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さらに、飼育員用の扉に向かうローラ。

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ここにも、こんな装置があります。枝の先を噛み潰しブラシ状にすることで、ジュースを染み込みやすくしているのが分かりますね。チンパンジーは道具を使うだけでなく、自ら道具をつくることも出来るのです。

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群れのバランスの関係で、現在、別の展示場で暮らすコータ。ヤマトの父親に当たります。多摩動物公園で生まれたコータは、同園での子ども時代に、人工アリ塚の使い方を学んでいます。アニマルランドのチンパンジーたちは、コータの行動を見習うことで、その技術を獲得していきました。

ここで御紹介したような行動を見ると「チンパンジーは賢いな」と実感できるでしょう。しかし、それはかれらが人間の真似をしているというのにとどまらず、わたしたちが「似た存在=進化の隣人」であるということです。だからこそ、人工アリ塚のような装置は、興味深い展示であるとともに、チンパンジーたちのための優れた環境エンリッチメントともなっているのです。

 

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最長老のタロー。今年で推定52歳となります。国内最高齢のチンパンジーは、今年で推定65歳を迎える、神戸市立王子動物園のジョニーですが、タローは、オスとしてはジョニーに次いで国内第2位の個体です。かれは、人工アリ塚のような複雑な操作は、あまり好まないようです。しかし、福祉の観点からは、それぞれの個体が自由に振る舞えれば、それでよいのだと考えられます。悠然と過ごすかれに年輪を感じるとともに、かれらチンパンジーが、はりめぐらされたロープや鉄骨などを、どのように利用するかも観察してみてください。わたしたちヒトは森を離れ、サバンナで直立二足歩行をすることで、いまのありようへと歩み出しましたが、チンパンジーは森にとどまり、いまだ樹上性を保っています。「近さ・遠さ」の両方を具体的に知ることが、真に動物たちと「出逢う」ことだと言えるでしょう。

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シーマは、マントヒヒのオスです。ごらんのようにアルビノ個体ですが、かれの展示場でも、穴を開けたパイプに固形飼料などを入れて、取り出しに工夫させるとともに、採食時間を引き延ばして退屈を防ぐ仕掛けがあります。動物種ごとに考案されるフィーダー(給餌器)は、代表的な環境エンリッチメントのひとつです。ここでは、床にまかれた細かい餌にも注目です。マントヒヒは、細くて器用な指先で、これらの餌を拾います。この方面の能力では、チンパンジーも、わたしたちヒトもかなわないでしょう。そこに、マントヒヒという動物の進化の方向性があります(※)。

※野生では、植物の根を掘ったり、細かな種を摘まんだりして採食しています。

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広々としたケージに、オスのワカとメスのよねこが同居するニホンツキノワグマの展示場。ここでも、採食に関する環境エンリッチメントが行われています。

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いったん、動物を収容した展示場。飼育員が、あちこちに餌を隠します(※)。クマ類は鋭い嗅覚を持つとともに、高い運動能力や、思いがけないほどの器用さも持っています。隠された餌を嗅ぎ当て、ブイを転用したフィーダーの中の餌も、巧みに振るって取り出します。すぐ目の前での食事は、展示としても大迫力です。

※展示場の床に敷き詰められた杉皮も、餌を隠すのに役立っています。

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高みでくつろぐ姿もまた、クマたちの自然な日常です。和やかな気持ちとともに、かれらが木登りも得意とすること、その意味で、三次元的に活用できる大ケージが、クマの飼育施設として理に適っていることも御一考いただければ、さいわいです。

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前篇で触れたように、現在は観覧に供するを中止しているバードハウス。しかし、そこでも鳥たちの日々は続いています。色鮮やかなショウジョウトキは南アメリカ北部原産。当園での繁殖は、一時の10年あまりのブランク等を経て、2012年から本格化しましたが、その背景には、実際にかれらの巣を模して枝を組んでみて、巣材の必要量を割り出し、供給するといった飼育員の研究・実践がありました。今年も6月頃のバードハウスは、ペアになったショウジョウトキたちの繁殖活動で華やぐことでしょう。

※写真に写り込んでいるのは、ショウジョウトキたちが枝を組んで巣をつくる助けとするための巣台です。巣台なしの、まったくの自然巣を組み上げるペアもいます。

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これはバックヤードで飼育されているショウジョウトキの幼鳥です。親と羽色が違いますね。ショウジョウトキの羽色は、食べもの(当園ではオキアミ)に含まれる色素に由来しています。地味な色の幼鳥も、せっせと採食し、色鮮やかな成鳥となっていきます。

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こちらにも、同じような生理を持つ鳥たちがいます。立ち上がり、首を曲げているのは、ヨーロッパフラミンゴの幼鳥(昨年生まれの個体)です。写真左の成鳥と比べると、くちばしや足などが色づいていないのが分かります。フラミンゴも食べものの色素で体を染め上げていくのです。

しかし、幼鳥のすぐ手前の個体にも注目してください。同じようにくちばしが色づいていませんが、幼鳥よりもだいぶ大きく、足だけは色鮮やかです。これは幼鳥の親に当たると思われます。フラミンゴの子どもは、自分で食事ができるようになる前、両親から口移しで栄養をもらいます。それは、両親の消化管の一部(そのう)からの分泌物で、「フラミンゴミルク」と呼ばれます。フラミンゴミルクは豊富な蛋白質などのほかに、体を色づかせるのに必要な色素も含んでいます。つまり、熱心に子育てに励む親は、結果として自分の体のための色素に不足を来たし、足などを例外としつつも、すっかり色あせてしまうのです。この個体、父親でしょうか、母親でしょうかね。

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そして、フラミンゴたち(※)にも、飼育員による繁殖補助がなされています。土を盛り上げた巣の上の卵……これは石膏でつくった「擬卵」です。フラミンゴは繁殖期になるとペアを組みますが、いつの間にか出来ている(実は飼育員が仕立てている)、見知らぬ巣や卵を見ると、俄然、繁殖意欲を駆られるようで、時には偽卵を排除してまで、自前の産卵に臨みます。野生のフラミンゴも、大群を成しつつもペアごとで営巣・産卵・育雛を行なうので、このような「競争心理」を引き出すことは自然なことであり、やはり、環境エンリッチメントとしての価値も担っていると言えるでしょう。

※アニマルランドでは、ヨーロッパフラミンゴのほか、ベニイロフラミンゴ・コフラミンゴを混合展示しています。

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こちらはバックヤードのひとこま。リンゴジュースと豆乳にパウダーフードを加えた餌を与えられているのは、シロビタイムジオウムの雛です。アニマルランドは、既に国内の動物園・水族館では初めて、シロビタイムジオウムの自然繁殖に成功しており、前篇でも御紹介した「繁殖賞」を得ていますが、今回は2羽の雛で、これも国内初の人工保育を試みています。雛たちは相前後して孵化しており、この時点で18日目と19日目でした(2015/3/16撮影)。体重の増加も順調です。そして、足の指(※)を御覧ください。4本ある指(小指はありません)が2本ずつに分かれて向き合うように変化しつつあります。

※正確には、第一趾(親指に相当)・第二趾というように数えます。

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こちらが園内で展示されている成鳥のシロビタイムジオウムです。2:2の指の配置が、枝や餌などをしっかり掴むのに適していることが分かるでしょう。成長中の雛も、進化がつくりあげた、そのような形質を着々と獲得しつつあるのです。

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さらに、バックヤードで進行中の鳥類保育。手前にいるのは、当園初の人工保育で成熟しつつあるカラスバトです。この個体は高知県産ではありませんが、カラスバトは高知県の離島にもわずかに生息しています。そこでアニマルランドでは、カラスバトの「域外保全(※)」に貢献することも視野に入れて、飼育技術の向上に努めています。奥にいるのは、去年生まれのアオバト。ハト同士で採食行動などを見習わせるための、いわば「先生役」です。

※生息地の外で、種の保存に努めること。前篇の小型サンショウウオの事例も御参照ください。

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キュウシュウムササビのモマ(※)は、普段はバックヤードにいますが、ふれあいイベントなどに出ることもあります。3歳のオスで、幼い頃に保護され、人の手で育てられました。人馴れしたかれならではのかたちで、わたしたちに「ムササビという動物」を教える役割を担っています。

※土佐弁では、ムササビとモモンガを一括りに「モマ」と呼ぶそうです(キュウシュウムササビは、九州・四国に分布します)。

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屋内展示施設・アニマルギャラリーにも、キュウシュウムササビがいます。姿を見せるのは稀ですが、時には根気よく「レア体験」を狙ってみてもよいかもしれません。

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ムササビの傍ら。囲い込まれたホンシュウモモンガの住みかです。図鑑では実感しにくい、ムササビとの大きさのちがいなども、一目で分かります(根気よく、が鍵ですね)。

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こちらも、アニマルギャラリー内の地元産動物。八色(やいろ)にとどまらない羽色の豊かさのヤイロチョウは、高知県や四万十町の鳥に指定されています。毎年五月ごろに南方から西日本に飛来しますが、はじめて営巣が確認されたのは四万十川流域でした。「森の妖精」という呼び名にふさわしく、しばしば声はすれども姿は見えず……動物園展示は当園のみです。この個体はピッタと呼ばれており、8歳以上であるのは確かです。それがヤイロチョウにとっては、どのくらいの年配に当たるのか、そんなことも含め、ピッタがわたしたちに教えてくれる貴重な情報は尽きないものと思われます。

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再び、動物園ならではの異国の動物たち。マダガスカル原産のワオキツネザル。メスのワッキーの赤ちゃんは、3/14に生まれたばかりです。しっかりと母親のおなかにつかまり、この時点(2015/3/16)では性別も不詳でした。それでも、モール細工のような尾を含め、ひと通りは親のミニチュアになっていますね。近在の皆様は、折々の成長を楽しみに通われればと思います。

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2012/8/11に当園で生まれ、母親個体の母乳不足を飼育員による哺乳サポートで乗り越えながら育ってきたメスのナルコ(鳴子)も、いまや、オスのシンと仲睦まじい姿を見せてくれています。

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そんなアリクイたちの食事はこちら。長く粘り気のある舌でアリを舐めとって食べることに特化し、口を大きく開けることが出来ないかれらのために、動物園では特製の流動食を与えています。その配合も、動物たちの様子を観察しながら、弛みない飼育の営みの中で改良され続けています。

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最後は、アフリカタテガミヤマアラシの一家です。マサキ(オス)は2014/7/6生まれ。時には親孝行の(?)毛づくろいも見せてくれます。まだ両親とは見分けがつきますが、齧歯類の成長は早いものです。是非、マサキの「少年時代」をお見逃しなく。
そんなマサキに心惹かれたなら、開催中(4/5・日曜まで)のイベント「わんぱーくこうちまつり」がお勧めです。チューリップの展示等が行われていますが、4/5には、イベント広場で「アニマルランドクイズ大会」も開かれます(※)。実際の動物園で動物たちとの時間を堪能し、「クイズ王」を目指してみてはいかがですか。

※雨天の場合、クイズ・ラリーに変更。その他、まつりの詳細は、こちらを御覧ください。

 

 

参考資料

中村滝男(2001)『ヤイロチョウ』ポプラ社

久川智恵美、岡本宏昭、吉澤未来、山崎由希、吉川貴臣、山本將充 (2015)「わんぱーくこうちアニマルランドの環境エンリッチメント」動物園大学5 in 高知・ポスター発表。

わんぱーくこうちアニマルランド/吉川飼育係のコアリクイ子育て奮闘記「いつか脱走するのかな?

 

 

わんぱーくこうちアニマルランド

動物たちを身近に感じる都市型動物園

公式サイト

〒780-8010 高知市桟橋通6-9-1

Tel:088-832-0189

飼育動物 97種511点(平成26年3月末)

開園時間

9:00~17:00

休園日

水曜日(祝日の場合翌日)・12/28~1/1

アクセス

とさでん交通(路面電車)・はりまや橋経由桟橋方面行き 桟橋通5丁目下車、徒歩で約10分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

 

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