※本稿は、2015/3/13~14の取材をメインに、2012/2および2014/10の取材内容を加味して構成しています。時系列を明示した方がよいと思われる写真には、適宜、日付を記しました。

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動物たちそれぞれの本来の生息地での生き生きとした動きや暮らしの再現を目指した、のいち動物公園。起伏に富んだ園内は、行先を隠して期待を高める曲折や植栽が、「動物たちの生息地に入り込んでいく」という感覚を増してくれます。

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鳥インフルエンザ対策で昨年末(2014/12/19)からバックヤードに収容されていた水鳥たちも、オスが繁殖期の羽色の鮮やかさを示すオシドリをはじめ、3/9にすべて展示に復帰しました。

 

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園内の島池(水濠で囲まれた島タイプの展示場)で暮らすワオキツネザルたちも、日向ぼっこ・樹上活動・マーキング……さまざまな姿を見せてくれています。

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同じく、島池展示のシロテテナガザルの一家。ニコは2013/9/30生まれのメス。テナガザルは「核家族」というべき構成で暮らしますが、ニコは既に、父親のニタや母親のチャコから離れて、活発に動く姿を見せてくれます。チャコのおっぱいを完全に卒業するのは、まだしばらく先のようですが。

 

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広々とした、チンパンジーの運動場も、四季折々に魅力的なすがたを見せます。そんな眺めに馴染む櫓は、数年前に間伐材でつくられましたが、日本の自然そのものだけでは足りない「チンパンジーにふさわしい環境(アフリカ熱帯林的な高所の広がり)」を補う役割を担っています。

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じゃれあうふたり。オスのダイヤとメスのサクラは、2009/4/18生まれの二卵性の「ふたご」です。チンパンジーのふたごは珍しいようで、ましてや、ふたごを母親自身が育てた記録は、野生を含めて、きわめて稀です。日本では、ダイヤとサクラの事例が、唯一のものとなっています。

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母親と親しい、別のメス(いわば、近所のおばさん)をはじめ、チンパンジー・コミュニティ全体が、ダイヤやサクラを可愛がり、サンゴの負担軽減になったことが、ふたごの健やかな成長を支えました。幼児期には、おとなに対して、まさにやりたい放題。しかし、子どもたちが群れを活気づけ、おとなたちに、よい影響を与えていることも見逃せません。チンパンジーにとっての「社会」の大切さを、あらためて認識させられます。

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そんな子どもたちも着々と成長しています。中にジュースを仕込んだ「人工アリ塚」。野生のチンパンジーがアリ塚に枝を突っ込み、たかってくるシロアリを舐め取って食べる「道具使用」の再現です。サクラは尖端を噛みつぶしてジュースが浸み込みやすくした枝を使う技術も、かなり上達しています(※)。

※おしなべて、サクラの方がダイヤよりも根気強いようです。

 

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同じく枝を使って餌を取り出す「ヤムヤムキャッチャー」(※)。この写真のような「二刀流」は、群れの第一位オス・ロビンと、メスのジュディだけの特技とのことです。個体ごとの個性のちがいばかりでなく、誰が優先してアリ塚やヤムヤムキャッチャーを使うかなど、注意して観察すれば、チンパンジー同士の社会関係も見えてきます。

※園内で行われる、各動物の「お食事タイム」については、こちらを御覧ください。

 

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一方で、飼育員と一緒に、短時間の公開タイムを過ごすのは、メスのミルキー。2013/7/14生まれです。難産だったため、人が介助してとりあげ、母親のチェルシーとは離して、人の手で育てることになりました。詳しくは、こちらを御覧ください。

このような出産経過が影響したものと思われますが、ミルキーには発達の遅れが認められます(※)。運動能力等、少しでも「自分でできること」が増えるように、リハビリを続けています。からだだけでなく、心のケアも大切です。他のチンパンジーたちと、どんな関係を結べる可能性があるか、ケージ越しに「お見合い」させたりもしています。個体によっては、ミルキーをグルーミングする者もいます。

※脳性麻痺による障碍(軽度の右片麻痺)。詳しくは、こちらを御覧ください。ミルキーへの対応は、チンパンジーやヒトの乳幼児の発達に関する研究者、リハビリテーションの専門家などの協力の下に進められています。

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ミルキーの将来は、平均的なチンパンジーとはちがうものになるかもしれません。しかし、運動能力をはじめ、情緒的な面も含めて、ミルキーはミルキーなりに育っていこうとしています。障碍があっても「健やか」であること。わたしたちも、そんなミルキーの将来を見守っていければと思います。ミルキーに関する、貴重な実践や記録は、他のチンパンジーのためにも役立てられていくでしょう。

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こちらも、動物たちの健康な暮らしを目指しての飼育の取り組みです。バックヤードでの、ブチハイエナのトレーニング風景(※)。指示された行動や姿勢をちゃんと出来たら、ちょっとした「御褒美(肉片)」がもらえる。そんな約束事が、動物と飼育員の間で固まりつつあります。背中やお尻を預けるのも信頼の証と言えるでしょう。

※詳しくは、こちらを御覧ください。

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こうして、バックヤードを含めての細やかな飼育的配慮に支えられ、のいち動物公園のハイエナたちは、すこぶる健康です。オスのブッチーとメスのエナの間には二度の繁殖があり、2012/10/2生まれのオス「とーふ」、2013/8/25生まれの二人娘ダイズ・アズキの総計3頭の子どもが生まれました。ブチハイエナは母親を核とする群れをつくりますが、のいち動物公園では、そのようなブチハイエナの群れの形成を再現したと言ってよいでしょう(※)。娘たちは3/2に、大分県のアフリカンサファリに移動し、現在は親子3頭での暮らしですが、これからもかれらのペースを大切にしながら、のいち動物公園のブチハイエナ・ファミリーの歴史は積み重ねられていくでしょう。

※詳しくは、こちらから「飼育日記」を御覧ください。

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ハイエナロッジのカプセルは、ハイエナたちと同じ目線での観察が可能です。

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ふと気づけば、わたしたちも観察されている……

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この写真の対比で分かるように、サバンナの生活者ながら、登ったりくぐったりも好きなハイエナの性質を見極め、施設を改良するといった努力も続けられています。

 

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セネガルショウノガンは、ブチハイエナの展示施設のすぐ近くにいます。ノガンと名づけられていますが、むしろ、ツルの仲間と近縁と考えられています。のいち動物公園のセネガルショウノガンたちは、足環の色と個体識別プレートを見比べれば、それぞれの個体の性格のちがいなども知ることができます。かれらが時折放つ甲高い鳴き声は、存在感も十分です。

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のいち動物公園ではフンボルトペンギンとジェンツーペンギンの2種類のペンギンが飼育されています。南極周辺に分布するジェンツーペンギンは、温度管理された屋内展示場で暮らしています。2007年に飼育が開始され、2011年以降、毎年繁殖が見られて、合計4羽のヒナが育ちました。他の水族館等に移動した個体もいます。

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ハシビロコウのオス「ささ」。まだ若いかれの瞳は黄色ですが、年齢とともに青く変わっていくはずです。

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「ささ」は、タンザニアから来た野生個体ですが、体重測定などのトレーニングが行なわれています。それらの営みが、結果として「心身ともに健康な野生本来の姿」の展示につながることは、先に御紹介したブチハイエナの例などからも分かるでしょう。

 

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園の性格を象徴する場のひとつ、アフリカサバンナの大展示場。アミメキリンと接近遭遇。

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こちらでは、アミメキリンをはじめ、複数の動物たちが混合展示されています。キリンのメス・ジャネットが興味深げ(?)に覗き込むのは、2014/10/24生まれのグラントシマウマのメス・モミジです。マイペースに成長中。母親のベティーにとっては二度目の出産で、子育てにも余裕が見られます。

 

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こちらはジャネットが2014/12/24に生んだオスのイブキ。ジャネットに授乳行動が見られないため、飼育スタッフによる哺乳が行なわれていますが、母親をはじめとするキリンたち(※)やシマウマとの日々の中で、かれなりの社会性を身に着け、一人前のキリンとなっていくことが願われています。

 

※イブキ母子が、別のメス・フーピー(チンパンジー同様、いわば「近所のおばさん」?)と一緒に展示されている姿も観察できます。

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のいち動物公園ならではの、緑豊かな展示場で過ごす、メスのレッサーパンダ・カイ。もう一枚の写真の飼育員は一見、餌の竹を切っているように見えますが、この竹は当園のレッサーパンダには、あまり好まれていないそうです。むしろ、運動場の周囲から竹が覆いかぶさったりして、動物が外に出てしまわないように、という処置です。動物たちの気ままな暮らしは、こうした細やかな配慮に支えられています。

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屋内展示場でも、別の一頭が食事中。この個体も名前はカイですが、オスです。ここでも、木登りなどが得意なレッサーパンダの活動を引き出す設備が組み上げられていますね。メスのカイは当園生まれ。市川市動植物園から「婿入り」したカイとの間に「のいち三世誕生」が期待されています。

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ジャングル・ミュージアムは、屋内展示の強みを、フルに活かした施設です。たとえば、豊かな水量のアマゾンの浸水林の再現展示。

 

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この施設にも、期待のカップルがいます。筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支えながら、東南アジアの樹上で活動する大型のジャコウネコ・ビントロングです。黒いのは、メスのケチャップ。白っぽいのが、オスのソルト。それぞれ気ままにまどろんだりしていることも多いのですが、交尾行動も確認されています。

 

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人工スコールの時間に行けば、煙るような雨の中の、黒いもこもこと白っぽいもこもこも見られます。

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ビントロングの展示エリア付近では、高みで繁殖する文鳥の姿も見られます(デジタルカメラのズーム機能などが威力を発揮する場面でしょう)。幼鳥たちは、親と同じくっきりした容姿を目指して成長中です。

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雲のような柄が特徴的なウンピョウ(雲豹)のオス・リュウ。日本一の子だくさんペアとして知られ、日本各地の園館に子どもたちが旅立っている、マレーグマのタオチイ(メス)・ワンピイ(オス)。かれらも熱帯アジアの森で暮らす動物たちです(※)。

※ウンピョウの分布域は、標高2500mに及ぶ山地にまで広がっています。

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こちらも、霧立ちこめるジャングルタイム。カピバラのビビ(メス)とグー(オス)。かれらは、南米アマゾンを代表する、世界最大のげっ歯類です。

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さらには、このふたり……いえ、実は「ふたり」ではありません。フタユビナマケモノのペア、アミーゴ(オス・手前)とキュウ(メス)。そして、キュウのふところには……

 

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2014/7/27に生まれた赤ちゃんは、コマちゃんと名づけられています。親たちの食事の時間が観察の狙い目でしょう(園内掲示等で御確認願います)。

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終日(ひねもす)のたり……というわけでもなく、動き出せば、飛ぶように泳ぎ、時には華やかなジャンプなども披露するカリフォルニアアシカですが、うち揃っての日向ぼっこも、見る者を和ませます。

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エイトは2014/6/28生まれのオスです。泳ぐのが大好きな活発な子として成長中。体の大きさだけでも、他の個体と見分けられますが、最近は、バックヤードでの人工哺育から群れ入りを果たした、1歳年上の兄・タイチ(2013/6/24)と戯れる場面も多いとのこと。

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のいち動物公園を代表する「水もの」といえば、かれらを忘れることは出来ません。水槽内を軽快によぎっていくのはツメナシカワウソ。単独生活を送る種なので、オス・メス・その仔のそれぞれが、交代に展示されています。

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ソラは2012年生まれのオス。ちょうど、この日(2015/3/14)で、3歳となりました。ツメナシカワウソ独特の、大きな鼻鏡がユーモラスです。

※カワウソ類の分類には、鼻鏡の形態も大きな要素として用いられます。

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ワカサギを与える給餌解説「お食事タイム」。

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当園では、3種類のカワウソを並列に展示しています。見た目だけでなく、習性などもそれぞれです。食事の様子は、そんなちがいを観察する好機。小型種のコツメカワウソは、カワウソ類の中でも特に手先(前足)が器用であるとされています。

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のんびり寛ぐユーラシアカワウソは、アカネとアザミの姉妹。2013/6/3に、福島県の「アクアマリンふくしま」で生まれた四姉妹のうちの2頭です。そして、ユーラシアカワウソと言えば……

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こちらは「どうぶつ科学館」内のニホンカワウソの解説展示です。高知県は、かつては、多くのニホンカワウソが生息する土地でした。ニホンカワウソは、2012/8に環境省から絶滅種に指定されましたが、現存の種ではユーラシアカワウソに一番近縁だと考えられています。当園では、カワウソが暮らしていた、かつての環境や、それを自らの手で損ねてしまった現在のわたしたちのありようへの認識を深めるべく、各種のカワウソたちを飼育展示しているのです。動物園は「いのちの記憶」を保つ場所でもあります。

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高知県と動物園の魅力を伝える人。動物ものまね芸の江戸家小猫さんは、このたび、高知県観光特使に就任し、3/14には動物公園内で委嘱状交付式が行われました。小猫さんと高知県の御縁は、いろいろありますが、過去にもライヴを行なう等してきた、のいち動物公園こそが一番のゆかりの場所という小猫さん自身の御意向での式典でした(※)。高知県の鳥・ヤイロチョウの、文字通りレアな鳴きまねの披露などもあり、楽しく希望に満ちたひとときとなりました。ゴールデンウィークの5/5にも、園内で小猫さんのイベントが行われるということです。

※来園者の御了承を得て、掲載しています。

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さらにはまた、「四国を伝える」とも言えるのが、こども動物園の野間馬たち。明治以降、品種改良を目的に欧米系の品種との交配が進められ、日本在来の品種(在来馬)のほとんどは、その血統を絶やしてしまいました。愛媛県今治市 (野間地区)で農耕などに使われてきた野間馬は、現在残っているとされる日本在来馬8品種のひとつで、最も小型です。その体格と頑健さから、ミカン畑でも活躍していたとのことです。近代化の意義とともに、それに先立って積み重ねられてきた人と動物の歴史もまた、目を向ける価値があると思います。野間馬たちとの出逢い・ふれあいは、そんな機会となってくれるでしょう。

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最後に、こちらです。夜行性動物たちを集めた屋内施設。昼夜を逆転した闇にもまた、いきづくいのちがあります。

 

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エジプトルーセットオオコウモリのつぶらな瞳。当園では、総数300頭に及ぶという群れと出逢うことが出来ます。普段は、こうして、もっぱらひっそりと過ごしていますが、給餌時間に立ち会えれば、床に置かれた餌のトレイを巡って、まさに乱舞というべきさまも観察できます。

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キンカジューは、中南米の森に住む、アライグマ科の動物です。眠っているかと思えば、わたしたちが観察されていることも。かれらは、ジャングルミュージアムのビントロング同様、筋肉の発達した尾を木に巻きつけて体を支え、樹上活動を行ないます。かれらの「時計」に合わせて、しばし待てば、そんな姿も披露してくれるかもしれません。

 

広々とした園内と、それぞれの動物たち本来の生息環境を意識した展示づくり。初夏へと向かうこれからは、緑といのちに満ちた、のいち動物公園での散策に最適の季節なのです。

 

 

参考資料

黒田弘行(1988)『群れで生きるブチハイエナ』農文協。

また、2015/3/15に、のいち動物公園で行われた「動物園大学5 in 高知 ずーぜよ」における、同園スタッフやボランティアの皆様のポスター発表、多々良成紀・園長およびチンパンジー飼育担当者・山田信宏さんの講演に、多くを学ばせていただきました。記して、心よりの感謝の意を表します。

 

 

高知県立のいち動物公園

人も動物もいきいきと、動物たちの自然の姿を可能な限り再現した動物園

公式サイト

〒781-5233 高知県香南市野市町大谷738

Tel:0887-56-3500

飼育動物 106種1047点(H.26/9末現在)

開園時間

9:30~17:00(入園は16:00まで)

休園日

毎週月曜(祝日の場合はその翌日)

年末年始(12/27~1/1)

アクセス

高知自動車道 南国ICより車で20分。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

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