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ゾウの住む森「チャーン・ヤイ山国立公園」。実は都市型動物園・天王寺動物園の一角です。植栽を工夫し、園路をくねらせて行く方を隠すなどによって、あたかも本当の森に歩み入っていくような効果を挙げている「生態的展示・アジアの熱帯雨林」です(※)。ここに掲げた園路の写真2枚も、ほんのひと角曲がっただけの関係です。現在、下草対策で植栽に剪定が施された部位もありますが、夏に向けて「森」は再生していくことでしょう。

 

※詳しくは、この展示を企画立案から主導した若生謙二さん(大阪芸術大学教授)の論文を御覧ください(PDFファイルが開きます)。

 

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ところどころに来園者の気分を高め、ゾウの生態等の知識を増してくれる装置や掲示も設けられています。

 

 

 

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最初の開けたビュー。現在、飼育展示されているゾウが1個体のため、当座、こちらの展示場は使われていませんが、そこはかとなくゾウの気配が感じられるように思います。

 

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時にはたくさんの人が夢中で透き見することもあるのが、この観察小屋です。

 

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見つけました。ラニー博子。1969年(推定)・インド生まれです。

 

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時には飼育員との一コマも。アジアゾウとしては、それなりの年齢を迎えつつあるラニー博子ですが、恵まれた施設とさまざまな飼育的配慮の中で日々を重ねています。

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そんな彼女にさらに近づいていく道のり。「森」のゾーンから「村」のゾーンへと移っていきます。「ゾウと隣り合って暮らす現地の村」という設定で、畑を荒らす野生ゾウに備えた見張り小屋なども建てられています。

 

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そして、この水辺がゴールです。水面に映る「逆さゾウ」も目を惹きます。

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ゾウは水浴びのみならず、長い鼻を活かしながら「半水生」ともいうべき姿を見せることもあります。ラニー博子の場合、足の故障のため、水に入っている方が楽だという事情もあるそうですが。それもまた、この施設がゾウの快適な暮らしへの配慮を備えている証だと言えるでしょう。

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もうひとつの生態的展示。アフリカサバンナです。こちらもンザビ国立公園と名づけられています。アフリカ現地の保護区という設定です。その道のりを辿りながら、イベントも含めての動物たちの姿を楽しんでみましょう。

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園内のあちこちにある、この看板。公開給餌の予定を示しています。

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オスのカバのテツオです。少しの「おやつ」を与えながら歯の手入れをします。それを見学しながら、なかなか見ることのできない彼の全身、そして立派な犬歯などを観察できます。このようなことが可能なのも、普段からカバと飼育員の間に一定の「約束」(手入れの受診~おやつという科学的トレーニング)が成り立っているからにほかなりません。

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かたや水中の様子がよく見えるのは、メスのティーナのプール(普段はオスメスを分けています)。群れているのはナイルティラピアです。カバの老化した皮膚や水中で排泄される繊維質の糞などを食べてくれます。本来の生態系の一環の再現です。

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ぐわりと伸び上がれば、腹部の様子もよく分かります。御覧のように飼育員通路からの給餌が、このような動きを引き出しています。

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ティーナの「おやつ」は、こんなメニュー(※)。

※右側のバケツに入っているのはオキアミで、ナイルティラピアの餌です。

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ゾウ・カバに続いて、これまた大型の陸生哺乳類を代表するクロサイのトミーです(国内のオスでは最高齢の32歳)。昨年(2014年)の1月にメスのサッちゃんが亡くなってから一年あまり、当園唯一のクロサイでしたが、今月(2015/6)、ドイツから今年2歳になる若メス・サミアが来園しました。順調ならばサミアはこの夏の間にも一般公開される予定で、トミーとの繁殖にも期待がかけられています。

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一気にコンパクトに。コビトマングースのオス・サチオです。

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サチオにも毎日14時頃に公開給餌が予定されています。落ち葉だまりやフィーダー(給餌器)に飼育員が餌を仕込みます。

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器用さをフルに発揮。フィーダーの中にはミルワームが入っていますが、鼻先で巧みに突いて取り出し食べています。

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こんなフィーダーが使われることもあります。これらによる行動の活発化や多様化が、サチオの動物園暮らし(飼育環境)を豊かにしているのです。

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さて、いよいよメインともいうべき、広々とした緑のグラウンドでの混合展示です。まずはアミメキリンのペア。オスの幸弥(コウヤ、2012/3/15生)はひとつ年下のメス・ハルカス(2013/1/1生)にぞっこんの様子。アメリカから来園し、日本一高いビル「あべのハルカス」にちなんで名づけられたハルカスですが、彼女がその名にふさわしい成長を見せていくのとともに、このペアのロマンスも高まれば、と温かいまなざしが寄せられています。

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大形のウシ科動物・エランドのルティー(オス)も存在感があります。前回の記事でも御紹介した幼いグラントシマウマ・ヒデミが暮らすのもここです。

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さらには隠れキャラ(?)のホロホロチョウ。放し飼いのかれらは、時には一般園路にまで出張してきます。

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しかし、給餌を兼ねて集合をかけるトレーニングが行なわれているため、サバンナ周辺から逸脱することはないとのことです(2013/2/27撮影※)。

 

※夜間もこの方法で集め動物舎に収容し給餌しています。

 

 

さて、ここからは「肉食エリア」です。

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まずはブチハイエナ。よく見ればユーモラスな容姿ですが、太い骨をも噛み砕く顎を持ち、ある意味ではライオンにも負けず劣らずの名ハンターです。

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これからの夏、今年もこんな姿が見られたらいいですね(2012/8/18撮影)。

 

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ブチハイエナへのビューは、先程の写真のように実際のアフリカのサバンナでも特異な姿を見せる岩山・コピエを模しています。そして、その内壁にはこんな動物の姿も。ケープハイラックスです。樹上や岩肌でも俊敏に振る舞い、木の葉を食べるその様子は、発達した切歯(前歯)とともに齧歯類のイメージが色濃いのですが、実は進化の系統の上ではゾウや海牛類(ジュゴン・マナティーなど)に近縁であることが分かっています。いわば、ゾウや海牛類の道を歩まず、まったく異なる環境に適応していくことで、かれらはハイラックスになったのです。

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そして、アフリカのみならず地球を代表する肉食獣・ライオンの登場です。オス1頭・メス2頭の構成ですが、かれら同士でのあれこれの社会的な関わり、そして動物たちが飛び越えられないモート(濠)を活用することで「食う・食われる」の関係を視覚化してみせる「通景」の効果で、わたしたちはあらためてアフリカサバンナの生態系を実感することとなります。

 

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ガラス越しの近接ビューも設けられています。

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最早、百面相の域?

 

 

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アフリカハゲコウのペアにも注目です。枝を組んで営巣していく過程で見られる、あれこれのしぐさなどは、かれらなりの社会的儀礼と言えるのかもしれません。写真は、前回にシュバシコウの例を御紹介したクラッタリングです。

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アフリカの空気に満たされたサバンナを抜けたら、こんな場所に足を止めてみてもいいでしょう。旧シマウマ舎は、いまや来園者用の広場となっています。よりリアルで生き生きとした動物展示を目指してきた天王寺動物園の歴史が、静かに垣間見えてきます。

 

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動物園の歴史。前回登場した「鳥の楽園」の外には、いささかの庭園が設えられています。その庭の一角にあるのが、チンパンジーのリタとロイドのペアの像です。メスのリタは1932年に(推定6歳)、オスのロイドは1934年 (推定3歳) に来園しました。ことにリタは園内のショーで多彩な芸を披露し、「天才」と称されました。ロイドとの間に繁殖行動も見られ1940年に出産しましたが、残念ながら死産に終わり、リタ自身もほどなく亡くなりました。ロイドも1942年に亡くなっています。いまのまなざしから見れば、文字通りの「過去」ですが、これらの歴史も踏まえながら、現在の天王寺動物園ひいてはすべての日本の動物園がつくりあげられてきました。そのことを思い返すという意味ではリタやロイドは単なる過ぎ去った存在ではなく、何度も噛みしめて動物園の未来を拓くべき「よすが」と言えるでしょう。

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現在、天王寺動物園のチンパンジーたちは、樹上生の特質を発揮できる施設で、かれら本来の群れ生活を送っています。

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ここはアイファー。爬虫類生態館です。

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足を踏み入れて最初のサイプレス・スワンプは、時にミストに包まれます。アメリカ南東部の温帯湿地を再現した、この展示が一段とリアルさを増すひとときです。水中から伸びて呼吸効率を高める気根を発達させた木々の姿も見て取れます(※)。

 

※気根の機能の解釈としては、この呼吸作用と並んで、湿地の土壌で当の樹木を安定させる意義があるのではないかとも言われており、実はいまだに探究の途上です。

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サイプレス・スワンプの主ともいうべきなのは、このミシシッピーワニです。ワニの中でもアリゲーターと称されるグループに属します。

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ミシシッピーワニが北アメリカ東部のアリゲーターなら、こちらは中国南東部に分布するヨウスコウワニです。その名の通り、大阪市と友好関係にある上海市から贈られてきました。北アメリカと東アジア、太平洋を隔てた2種のアリゲーターをつぶさに比較できるのも動物園ならではの醍醐味です。

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こちらはワニガメです。北アメリカ産動物ということでサイプレス・スワンプでミシシッピーワニと同居していますが、こちらのヨウスコウワニの展示スペースでも異彩を放っています。

 

※来園者の御了解を得て掲載しています。

 

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御馳走の赤虫に喰らいつくスペインイモリ。敵に襲われると脇腹を破って肋骨が飛び出し捕食を免れるというユニークな生態を持っています。

「爬虫類生態館」と銘打たれたアイファー(IFAR)ですが、その名は、無脊椎動物(Invertebrates)・魚類(Fishes)・両生類(Amphibians)、そして爬虫類(Reptiles)の頭文字を進化の順に綴り合せたものです。そして、それらの複合展示は生息環境を全体として捉えるというコンセプトに貫かれています。

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このヤシガニも亜熱帯の海岸のマングローブ林の展示の中で、しっかりと自分のポジションを占めています。

 

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インドネシアの熱帯雨林の樹上で暮らすクロホソオオトカゲの振る舞いは、時にダンスを思わせます。

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2014年10月中旬に生まれたグリーンイグアナです。全部で6頭。繁殖という出来事は、動物園が紡ぐ、いのちの営みを目の当たりにさせてくれます。

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こちらが成体のグリーンイグアナ。幼体たちの健やかな成長が祈念されます。

 

 

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アイファーにはカルタ仕立ての愉快なひとこと解説も掲示されていて、動物散策に楽しみを添えています。

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わたしたちの多くには、最も身近なはずの日本の暖温帯の干潟。チュウシャクシギほかの姿が見られます(※)。

大概の動物園は、多くの外国産動物の飼育展示で特徴づけられていますが、それらを知ることは、わたしたちの足元の自然に目が開かれるきっかけともなり得るでしょう。

 

※動物展示側を観覧路より明るくすることで、ガラス等の隔てなしでも暗い方へ飛び出したりしないという、鳥の習性を利用した展示となっています。

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アイファーから屋外に出てキジ舎の一角。コジュケイです。本州以南ではそれほど珍しくもない鳥ですが、実は中国中南部の原産です。1920年頃に東京や神奈川で放鳥されたのを皮切りに、狩猟鳥として各地に導入された外来種なのです。

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天王寺動物園では、南アメリカ原産の齧歯類ヌートリアがミシシッピーアカミミガメとともに展示されています。かれらもまた、毛皮のためや愛玩動物として日本に持ち込まれ、不用意なかたちで野外に放たれてきました。

本来の生息域を逸脱した外来種はしばしば移入先の在来種と競合し、さまざまな環境問題を生み出しています。しかし、かれらはやってきたのではなく人の手で運び込まれたのです。愛らしいといってよいヌートリアたちが害獣となっている現状、動物園の楽しさの中でも、時には胸に手を当ててみたいことがあります。

 

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ヌートリアたちに隣接するのはトウブハイイロリス。北アメリカ原産のかれらの場合、イギリスなどに持ち込まれ定着してしまっていることが知られています。

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日本とは、世界とは、地球とは?さまざまな問いと魅力を孕んで、動物園は皆様を待っています(※)。

 

※バフィンとモモのホッキョクグマ母子の詳細は、前回の記事を御参照ください。

 

 

大阪市天王寺動物園

全国で3番目に歴史が長く(1915年開園)、動物たちの「野生」を体感できる生態的展示の試みなど、いまも未来へ歩み続ける動物園。
公式サイト

〒543-0063

大阪市天王寺区茶臼山町1-108 大阪市天王寺動植物公園事務所

電話番号 06-6771-8401

飼育動物 約200種900点

アクセス

地下鉄「動物園前」①番出口より約5分。その他詳しくはこちらを御覧ください。

 

 

 

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