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動物園までの続く道に足跡。何種類かの動物たちのものが描かれています。ホッキョクグマの足跡は、いまは他園に移動したキロル(オス)がモデルになっています。キロルは2008/12/9、札幌市円山動物園生まれ。2010/2/21、ふたごのイコロ(オス)とともに、おびひろ動物園に移動。現在、イコロは上野動物園で、キロルは浜松市動物園で元気に暮らしています。

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そして、現在のおびひろ動物園のホッキョクグマアイドルはこちら。アイラ(メス)は2010/12/25に札幌市円山動物園で生まれ、2012/2/20に来園しました。イコロやキロルの妹ということになります。

 

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繰り広げられるアイラの遊びは、見ている側も心弾むありさまです。

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ところ変わって、こちらもオホーツク海・ベーリング海などの北の海で暮らすゴマフアザラシ。伸び上がったり、豪快に波を立てて泳いだりと忙しげなのはオスのカイ。

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一方のんびりとした風情はメスのモモ。しかし、彼女もまた何か待っている様子ではあります。

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ふたりのお待ちかねは夕方の食事でした。特別にモモへの給餌をやらせていただきました。手渡しでも投げてあげてもすぐにごくり。頭から尾へと丸呑み(逆は鱗がひっかかるので)というのがアザラシの作法です。

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はす向かいのプールにいるのはカリフォルニアアシカのオス・タケル、1990/6/22生まれ。アザラシは後ろ足で推進力を生み出しますが、アシカは前足を翼のように活かす「前輪駆動」。タケルもマイペースに遊泳していますが、そこそこの年齢になっているので体調によっては寝部屋との出入りが自由になっていることもあります。

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こちらは親子で食事のアミメキリン。ムサシ(オス)とリボン(メス)に次男メープル(オス)。メープルは2014/9/21生まれです。兄で現在、釧路市動物園にいるスカイ(2012/5/26生まれ~2013年移動)は父親ムサシに似て大胆でしたが、メープルはいささか臆病な気質のようだということです。

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枝葉を与えながらのスポットガイドも行なわれます(※)。この日はニワトコ、最後の一葉まで無駄にしません。ちなみにキリンたちの中で一番の食いしん坊はムサシだそうです(※)。

 

※集合写真は左がリボンとメープルで右がムサシ、アップの写真はメープルです。

 

まもなく冬がやってきます。12月には雪景色となりますが、帯広の冬は存外からりとしているのでキリンたちも大概は冬季の開園時間(11:00~14:00)めいっぱいを放飼場で過ごしています。このようにキリンをはじめ、動物たちはそれぞれに冬に適応しており、その意味では雪こそが当園の「セールスポイント」かもしれません。キリンたちの場合、湿った雪は苦手とのことですが。

 

※スポットガイドの予定は毎日10時ごろに告知されます。園内の掲示やこちらのブログなどで御確認ください。

 

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そんなキリンたちと同居しているのはチャップマンシマウマのシャンティ(メス)。昨年(2014年)、兄のロックが亡くなり、1頭きりとなりましたが、キリンとの共同生活は本来群れで暮らす動物であるシャンティにも良い効果があると思われます。

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大きな窓からこんにちは。ピグミーヤギの「ぴっくー」(オス)は2002年生まれでヤギとしては高齢ですが、今年から専用の寝小屋が建てられ寒冷期を含め通年で姿を見せてくれることになりました。

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ぴっくーの新居の隣、自分たちの小屋の前に立つのはヒツジの「わた」(メス)。ぴっくーの「御殿」が、ちょっとうらやましそう?

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もう一頭、ぴっくーと共に過ごすのは、こちらもメスのヒツジで「モカ」です。ヤギ1頭とヒツジ2頭の共同生活はそれぞれの種の特性や個体の性格なども見て取れることでしょう。個体識別のプレートもあるので参照してみてください。

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残り少ない未年を惜しみつつ、束の間、お仲間に入れていただきました。

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気がつけば、たたずむ「わた」をアイラが見下ろしていました。

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ぴっくーたちの住まいは別建てになっていますが、モルモットやヤギ、ヒツジなどとふれあうことができる「ちびっこふぁーむ」はこちら。

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「ちびっこふぁーむ」でもウサギ一羽々々まで愛称がつけられています。個体識別のプレートもあります。見わけることで親しみが増す、そんな体験もできるでしょう。

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あいにくの雨模様(2015/9/24撮影)のため屋内で過ごすコンゴウインコのパセリ(オス)。温暖な時期、好天時には屋外に展示されますが、寒さは苦手なので冬場には、前回御紹介した「どんぐりのいえ」で避暑ならぬ避寒生活となります。

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うららかな陽射しの中でもふと北極気分を誘うような「氷雪の家」。この施設は、1978/4に世界で初めて単独犬ぞりで北極点に立ち、グリーンランドを縦断踏破したことで知られる冒険家・植村直己さんゆかりの資料や写真を展示している記念館です。

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実際に植村さんと冒険したエスキモー犬の剥製を用いて、犬ぞりも再現されています。植村さんと帯広市は、1976年に植村さんが2頭のエスキモー犬をおびひろ動物園に寄贈したことから始まりました。

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その後、帯広・十勝を毎年のよう訪れていた植村さんは1984/2/12にアラスカのマッキンリーの冬期単独登頂に成功した後、下山中に行方を絶ってしまいます。

しかし、「日高山脈の見える十勝の地で若い世代に経験や知識を伝える野外学校を開きたい」という植村さんの夢を継承するかたちで1985/8、「植村直己・帯広野外学校」が開校されました。この模型は1988年に建てられた研修棟とシンボルタワーで、毎年夏・秋・冬に青少年向けに開かれる野外学校の拠点となっています。

そして、このたび「野外学校」のスタッフの協力を得て、「氷雪の家」の展示も再整理されました。

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今回の整理ポイントは植村さんの冒険の目的地ごとでの資料の分類でした。植村さんは五大陸すべての最高峰を極めていますが、その折々に持ち帰った石も展示されています(杯などに加工されているものもあります)。これらの石には、それぞれの冒険・山行を支えてくれた人々への感謝の念が込められています。

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この装備は、植村さんの最後の山行となった1984年冬のマッキンリーで後日、雪洞から回収されたものの一部です。

こんな「氷雪の家」で冬場など、しばし風など避けながら植村さんの歩みに想いを馳せることもできるでしょう。

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こちらは2010年に帯広畜産大学と当園が結んだ連携協定に基づく「帯広畜産大学サテライト」です。園と大学がそれぞれの教育資源を活用して研究や環境教育を推し進め、活性化を図るのが協定の主旨です。サテライト内にも骨格標本を中心に貴重な資料が展示され、期間限定の特別展示や折々の学生によるガイドなども行なわれています。

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ここでひと息入れて、腹ごしらえ。昨今、十勝名物として知られるようになっている豚丼ですが、園内の食事処「カンガルーポケット」でも楽しむことが出来ます。

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そして、こちらは本物のカンガルー。園内を流れるウツベツ川を渡った展示場です。「ウツ」は「あばら骨」を意味するアイヌ語に由来し、「ベツ」は同じく「川」に由来するとされます。つまり、「あばら骨の川」で、この川が大きな帯広川の流れにあばら骨のように連なる支流であることによるとされます(※)。写真に見えているのは「しかのはし(鹿の橋)」。

 

※北海道の方針として、ある程度、自然な川の流れを保ちながらの整備が行なわれています。こちらの資料も御覧ください(PDFファイルが開きます)。

 

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橋の名前にふさわしく、ゆったりとした飼育展示場で過ごすエゾシカたち。しかし、なぜかこの日(9/24)はオスメスが分けられていました。その理由は……

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毎年恒例のオスの角切りです。シカのオスは毎年春に落角した後、再び角が成長して秋を迎えます。秋は繁殖のシーズン。オスたちは立派な角でメスとの繁殖の権利を競い合うのですが、負傷などのリスクもあります。そこで園では状況を判断しつつ、角切りの処置を行なっているのです。

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落ち着いた様子で寛ぐオス。

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角の一部は、こんな遊具にも利用されます。よく見ると穴が開いていて給餌装置を兼ねていることが分かります(※)。シカたちの運動場で、こういった飼育的配慮の品々を探してみてはいかがでしょうか。

 

 

※中に固形飼料などを仕込み、シカたちが遊びと工夫の中で食事できるようにしています。

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静かにしかし確かに過ぎ行く秋の中、アムールトラのマオは、そのまなざしまでも好奇心旺盛。マオは2010年、多摩動物公園の生まれです。若々しいマオは折々にその活発さを発揮してくれます。来園者とも接近遭遇。アムールトラは最も北方に分布するトラ、これからの冬の寒さも、かれらにとっては進化の歴史の中で体を馴染ませてきたものにほかなりません。

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先代の住人、オスのタツオ、1997年に名古屋市東山動物園で生まれ、アムールトラの繁殖計画の一環として1999年に札幌市円山動物園に移動の後、2010年に当園にやってきました。この写真は円山動物園に戻る少し前ですが (2012/5/17撮影)悠然とした雰囲気で、若々しいマオとはちがった風格が感じられます。おびひろ動物園ではタツオをはじめ、年齢の行ったオスの飼育が続いていたため、現在のマオの姿は飼育スタッフにも新鮮だとのことです。

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こちらはアフリカ由来。ライオンのヤマトです。2013年に釧路市動物園で生まれましたが、既に立派なタテガミの持ち主となっています。

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既にホッキョクグマ・ゴマフアザラシと、北極をめぐる海にまつわる動物を御紹介しましたが、今度は北極圏の鳥を。シロフクロウのペアは繁殖に成功しました。1羽で写っているのが幼鳥です。いまだ両親と同居中(2015/9/26撮影)。メスや幼鳥では斑な模様が見られます。シロフクロウはユーラシア大陸や北アメリカ大陸の亜寒帯まで南下してくることもあり、稀ながら北海道でも観察されています。

 

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そのまま北アメリカ大陸を南下して南アメリカに至ります(※)。アンデスコンドルのジャックとジェーン。ケージの外に気を惹かれる様子のジャックは1957年生まれと推定され、ゆったりと辺りを鳥瞰するジェーンとともに1981年に来園しました。

 

※園内では隣接した展示です。

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最後にコモンリスザル。前回登場のチンパンジー・マンドリルの並びにいますが、南アメリカ産の霊長類です。野生同様、賑やかな群れ生活を見せてくれます。

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観察するのか、されるのか。

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生きた野生動物とまなざしを交わす。親しみつつも、かれらが世界中のそれぞれの気候に適応しながら生きてきた進化を思い、いまこの時に向き合っていることの意味を考える。そこに動物園体験の意味があります。動物園で逢いましょう。

 

 

おびひろ動物園

緑豊かな公園の一角、北海道で唯一ゾウを飼育する動物園

公式サイト

おびひろ動物園飼育係ブログも御覧ください。

〒080-0846 帯広市字緑ヶ丘2

電話 0155-24-2437

飼育動物 70種374点(2015/8末現在)  おびひろ動物園 探検隊 十勝毎日新聞電子版も御覧ください。

開園時間・休園日はこちらを御覧ください(冬季開園等での変動があります)。

アクセス

JR帯広駅バスターミナルからバスで約15分。

駐車場情報等を含め、詳しくはこちらを御覧ください。

 

 

 

※この記事は2015/8/29~30の取材を基にして構成されています。

※※園内で行なわれている、お食事ガイドやふれあいタイムのスケジュールについては、こちらを御覧ください。

 

 

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前足も含め、表情たっぷりのトラのマドラス(オス)。

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馴染みのスタッフが来れば、こんな姿も。

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こちらはおすましのジャム(メス)。

前回はナイトズーを中心にあれこれと話題を綴ってまいりましたが、いしかわ動物園の園内はまだまだ見どころがたっぷりです。

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「ツルたちの水辺」の給餌解説。

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今春(2015/3/20)オープンした新施設ですが、そもそもはいままで展示場所が定まらないままにバックヤードにいたマナヅルのための構想でした。そこにタンチョウ2羽が加わります。

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この餌箱はツルたちの長いくちばしなら普通に食事ができますが、招かれざる来訪者、たとえば野生のカラスなどには届きません。このような工夫はツルたちの特性の展示にもなっていると言えるでしょう。

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こちらも同居者ながらツルならずしてニホンコウノトリ。撒かれたドジョウを巧みに捕食。

ニホンコウノトリとタンチョウは国の特別天然記念物で、石川県での展示は初めてとなります(※)。また、マナヅルは野生では主に鹿児島県の出水平野に越冬のために渡ってくるので出水平野は「鹿児島県のツルおよびその渡来地」として国の天然記念物に指定されています。「ツルたちの水辺」は、日本にまつわる希少鳥類の混合展示ともなっているのです。

 

※ニホンコウノトリは明治までは日本各地に生息し繁殖していましたが、乱獲や営巣などに利用される木の伐採、農薬の影響などから個体数が減っていき、1971年には日本産個体が絶滅してしまいました。しかし、中国から導入した個体を基に1988年に東京都・多摩動物公園で初めて飼育下繁殖に成功して以来、各地の園館で飼育や繁殖の取り組みが行なわれるとともに、兵庫県豊岡市のコウノトリの郷公園を中心に野生復帰が進行中です。いしかわ動物園にいる2羽のうちの1羽はコウノトリの郷公園で生まれ野生復帰を果たしましたが、負傷のために保護され当園にやってきました。もう1羽は、よこはま動物園ズーラシアに由来しています。

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日本の水辺の希少鳥類といえば、こちらも忘れるわけにはいきません。前回御紹介した特別展「カエルのひみつ」の会場でもあった「動物学習センター」には、常設の「トキ展示・映像コーナー」があります。

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トキもコウノトリ同様に食物連鎖のピラミッドの最上層に属する肉食の動物です。それゆえに他の様々な動植物や環境全体が整っていなければ生きていけません。このジオラマは、かつては当たり前だったそんなありさまを示しています。

トキもまた日本の自然と社会の変化の中で個体数を減らしていきました。そんな中、1970年、能登半島・穴水町で「能里(ノリ)」と名づけられた野生トキが捕獲され、人工繁殖の試みのため、佐渡トキ保護センターに送られました。残念ながらノリは翌年に亡くなります。これによって本州産の野生トキはいなくなりました。石川県は「本州最後の野生トキの生息地」だったことになります(※)。

 

※日本産最後の個体は佐渡島に生き残っていた5羽で、国と新潟県により保護増殖のために1981年に一斉捕獲されました。しかし、2003年には、その最後の1羽も死亡し、日本産トキは絶滅しました。その後、中国に生き残っていた個体を基に1999年に佐渡トキ保護センターで飼育下繁殖に成功。過去の教訓を踏まえながら、現在、野生復帰が進められるに至っています。

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以上のような縁もあり、いしかわ動物園では2010年から、環境省の「トキ保護増殖事業」の一翼を担って、新たに佐渡のセンターからのトキを非公開の「トキ飼育繁殖ケージ」に受け入れています。学習センターでは、モニター越しに、そんなトキたちの様子を観察できます。いしかわ動物園では、これまでの6年間で45羽が巣立ちました。そのうち37羽を佐渡へ送り、15羽が野外に放鳥されています。

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こちらは貴重なトキの標本ですが、一羽の頭から背中にかけてが黒ずんでいます。これは頭部から出る分泌物を自分で塗り付けているからで、繁殖期のしるしです。このような習性はトキ以外の鳥類では知られていない珍しいものです。

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トキになってみよう!人形は抱くことが出来、本物のトキの重さを模しています。また、背中をそっとさわると、在りし日のトキの声が再生されます。

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これが園内にある非公開の「トキ飼育繁殖センター」です(※)。一般入園者のわたしたちはこの前までが限度ですが、動物園とは、人と動物をつなぐ場所。希少動物の飼育繁殖を確立することは動物園の基盤を固める営みでもあります。そんな想いで静かに見守っていきたいと思います。

 

※詳しくは、こちらを御覧ください。

 

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鳥たちが自由に飛び交う中にわたしたちが歩み入ることができる「水鳥たちの池」も、トキと深い縁のある施設です。いしかわ動物園はトキそのものの飼育に取り組む前に、多摩動物公園等の支援を受けつつ2004年度からトキに近縁の鳥たち(トキ科)の飼育繁殖に取り組んできました。ここでの経験の蓄積が当園でのトキの飼育繁殖の成功につながったのです。

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7羽のカルガモのヒナ。かれらも2015/8/7に「水鳥たちの池」で孵化し、現在、バードストリートの一角で成長中です。

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園内ではあらたに「トキふれあいセンター」(仮称)も建設中です(※)。こちらでは「トキ公開ケージ」も設けられる予定です。開設時期は未定ですが、建物自体は来春の完成を目指して工事が進められています。

 

※「ツルたちの水辺」とは池の水面を挟んだ向かい側、一衣帯水です。

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一歩踏み入れば夏でも雪がちらつく「ライチョウの峰」(この人工雪は時間によって休止していることもあります)。トキと並んで、ニホンライチョウも石川県の歴史にゆかりのある鳥です(ニホンライチョウは、種としてのライチョウの日本産亜種と位置づけられます)。正治2(1200)年の文献に、現在の石川県・白山のライチョウを詠み込んだ和歌があり、これが日本最古のライチョウについての記述とされています。ライチョウは約2万年前の氷河期に大陸から日本に渡ってきましたが、その後の温暖化で日本列島に隔離され高山に退避することで生き残ってきました(ニホンライチョウは、この動物種の世界における南限分布です)。かれらは、地球の歴史という貴重な「時」の生き証人なのです。国の特別天然記念物に指定されながらも、開発(環境破壊)やキツネ・カラス・イノシシなどの分布の拡大などで生息域を狭められ、絶滅が危惧されています(先頃、ニホンザルによるひな鳥の捕食も確認され、危機感が高まっています)。地球温暖化の脅威も指摘されていますが、それはライチョウが温暖化の程度や影響の貴重な指標ともなり得ることを示しています。白山では他のいくつかの地域とともに既に絶滅したとされていましたが、2009年以降、メス1羽の生存が確認されています。

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「ライチョウの峰」の展示場は、高山を模し、本物の高山植物なども配されています。展示場内だけでなく、観覧通路も園内で一番涼しいので、残暑の日には高山気分のひとときを過ごすのもよいでしょう。

しかし、実は現在ここで飼育展示されているのはニホンライチョウではありません。ノルウェー原産のスバールバルライチョウです(ニホンライチョウとは互いに同種で別亜種)。

そもそも動物園でのニホンライチョウの飼育の試みは、長野県・大町市立大町山岳博物館が1963年に始めました。同館の取り組みは、ライチョウの低地飼育やその生態等の研究について多くの貴重な成果を挙げましたが2004年に中断されています。

その後、2008年、上野動物園がノルウェーからスバールバルライチョウを導入しました。それを振り出しに、富山市ファミリーパーク・いしかわ動物園ほかの園館がスバールバルライチョウの飼育繁殖に取り組んでいます。そこには、トキを守るために近縁のトキ科の鳥たちの飼育で経験を蓄積したのと重なる面もあります。やがては大町山岳博物館とも連携してニホンライチョウを守るための活動が広がっていくことが期待されます(※)。

 

※今年から環境省の事業として上野動物園・富山市ファミリーパークで野生から採取したニホンライチョウの卵の人工孵化と飼育繁殖の試みが始まり、来年度以降の進展が期待されています。また、大町山岳博物館でもスバールバルライチョウの飼育が開始され2015/7/4から展示公開も行われています。

 

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いしかわ動物園では、今年も7/2・10にスバールバルライチョウのヒナが誕生しました。この写真は7/2生まれのメスです。

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今回もひと息。園内のレストランサニーの「ハントンライス」。ケチャップ風味のバターライスに薄焼き卵・白身魚のフライにタルタルソース。金沢生まれの洋食メニューとして知られています。

 

さてリフレッシュしたところで、ここからはしばし園内の赤ちゃんたちを中心に巡ってみましょう。

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まずは「サルたちの森」。父親ルーク・母親サクラを中心に既に3頭の子どもを擁するシロテテナガザル・ファミリー。6/26に新たなオスの子が加わりました。父親のルークにちなみルルと命名されています。

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8/7、ブラッザモンキーにも赤ちゃんが誕生しました。 母親ユミ・父親ジープにとっては3頭目の子どもとなります。親とは異なる赤ちゃんの色合いも印象的です。

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群れの中の赤ちゃんには大概のことが許されるようです。

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「サルたちの森」では、ワオキツネザルとホウシャガメの同居展示も見られます。共にマダガスカル島原産です。ワオキツネザルは地上活動をすることも多く、時にはカメの甲羅に乗ったりすることもあるとか。カメの方は、もっぱら悠然としているようです。

 

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同じ霊長類でも、進化の系統上、わたしたちと近縁な大型類人猿(ヒト科)。「チンパンジーの丘」では、オスのハロー(2009/8/6生まれ)が母親メロン・父親イチローと暮らしています。わたしたちと同様にゆっくりと成長していくチンパンジー。母子の親密なやりとりにも出逢えます。

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イチロー(1966年・アフリカ生まれ)は、国内のオスでは第3位の長寿ですが(オスメス合わせると第8位)、頼りがいのある父親ぶりは健在です(※)。

 

※チンパンジーは現在2グループで屋内・屋外の展示スペースを使い分けています。

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ふと気がつくとメロンが見ていた……。

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扉越しに馴染みの飼育員からおやつを受け取り、マイペースに楽しむのはボルネオオランウータンのブロトス(オス・1995年マレーシア生まれ)。

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黙然としているようでありながら人間にも関心があるようです。

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お得意はブランコ。ギャラリーが盛り上がると張り切ります。

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こちらは2014/7/11の撮影。ブロトスの後ろにもう一個体いますね。

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メス「ドーネ」は1999年にブロトスとともに、いしかわ動物園開園とともに来園しました。ドーネとブロトスの繁殖が期待されてきましたが、小さな頃から一緒に育ったせいか兄妹のような関係が続いていました。国内のオランウータンは個体数を減らしている現状にあります。ドーネ・ブロトスそれぞれには繁殖能力が期待されるため、新たなペアの形成を目指して、まずはドーネを福岡市動物園に移動させることになりました。ブリーディングローン(繁殖を目的とした動物の貸借)です。ドーネは移動用箱に出入りする練習にもすぐに馴れ、本番も麻酔なしで行うことができました(7/7搬出~7/8朝に福岡市動物園に到着)。いしかわ動物園の担当飼育員が福岡市動物園まで付き添ったこともあってか、その日のうちにはハンモックで寝たり、少し食事もとり始め、9/5から一般公開も始まりました。福岡市動物園のオス・ミミとの今後が期待されます。

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ブロトスもまた、平穏な日々。

 

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ところ変わって「小動物プロムナード」。7/10にマーラの赤ちゃんが誕生しました。マーラはアルゼンチンのパダゴニア地方に生息する齧歯類です。今回の赤ちゃんはメス。乳を呑むかと思えば気ままに動き回りもし、限られた時期ならではのありさまが楽しめます。

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レッサーパンダのマリンとスミレは2014/7/11生まれのメスの双子です。プロレスめいたじゃれあいから毛繕いまで、さまざまなやりとりを見せてくれます。

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こちらは5歳になるオスのアクア。マリン・スミレの父親です。

そして、今年も8/23に2年連続で双子が誕生しました。 現在、母親のアヤメ(4歳)はバックヤードの巣箱で育児に専念しています(レッサーパンダは単独性でオスは子育てに関わりません)。9/3からモニターでのアヤメの育児の公開を行っています。静かに見守り、子どもたちの順調な成長を御祈念ください。

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正面ゲートを入ってすぐの「アシカ・アザラシたちのうみ」。カリフォルニアアシカのクーはよく訓練されていて、飼育員の指示に従い、様々なアクションを見せてくれます。

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ジャンプに倒立。なかなかの運動能力ですが、こうして日頃からトレーニングし、指示に反応するようにしているのは、健康管理や治療などが必要な場面で、動物もスタッフも安全でストレスの少ない対応を可能にするためです。

 

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こちらはメスのショコラ。ユーモラスな歯磨きも口の中のチェックとお手入れにつながります。

ショコラとクーの間には今年7月に2頭目の子ども(メス)が生まれました。ショコラによる授乳がうまくいかない等の理由で、現在、飼育員による人工哺育が行われていますが、体重も増え、泳ぎの練習なども進んでいるとのことです。

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アシカの屋外プールに隣接する屋内展示にはバイカルアザラシがいます。現在、ラム・クリの2頭のメスとオスのミハイルが同居しています。バイカルアザラシが住むバイカル湖は世界一深くて透き通っていることで知られています。バイカルアザラシは飛びぬけて大きな目玉を持っていますが、それはバイカル湖の環境に適応して視覚を活かした狩り(魚の捕食)をするためだと考えられています。かれらが水面に顔を出すと、そんな目のありさまを観察することが出来ます。しかし、クリはしばしば逆立ちして浮かんでいます。

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クリの逆立ちの原因はミハイルの行動にあります。オスメスの同居は繁殖を期待してのことです。ミハイルは期待通りに盛んにメスを追いかけますが、クリはそんなミハイルに後ろ足を突かれるのが嫌なようで、こんな姿勢を取るのです。これもまた恋の駆け引き?バイカルアザラシたちの日々の展開から目が離せません。

ちなみに写真に写っている大きくてじょうぶな爪も、凍てつくバイカル湖の氷上で暮らすのに適応していると考えられます。

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いしかわ動物園ではゴマフアザラシも飼育されています。時にはアシカとの巧まざるコラボレーションが見られたりもします。

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再び、日本在来の鳥の飼育展示施設。ニホンイヌワシは石川県の県鳥です。クマタカなどとともに日本の森林生態系の中では食物連鎖のトップに立っています。いしかわ動物園では2007年から飼育に取り組み、2010年に現在の「イヌワシの谷」、高々としてワシが暮らすのに適したケージへの改良が行なわれました。

 

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イヌワシの谷の傍らにはヒノキアスナロ。石川県の方言では「アテ」と呼ばれます。郷土の鳥ニホンイヌワシにふさわしい郷土の樹(県木)として植えられています。

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ここには「郷土の花」として親しまれるクロユリも植えられており、花期に行き会えれば趣深いことと思われます。

 

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さらに石川県の在来生物として、前回も登場した「郷土の水辺」の一角を占めるアベサンショウウオ。兵庫県・京都府・福井県・石川県に分布する小型サンショウウオで、園の周辺の里山にも生息しますが繁殖等に適した環境は限られます。いしかわ動物園は、2011年に国内初の飼育下繁殖に成功し、日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞しました。今後、野生での保全を含め、積極的で弛まない努力が必要とされています。

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こちらはホクリクサンショウウオ。その名の通り1971年に石川県羽咋市で発見され、その後、新種として認定されました。本種も当園が2001年に繁殖賞を受賞しています。

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そして、ヒバカリ。カエルやメダカなどを捕食します。水辺や湿地を好み、園内でも野生個体に出逢うことがあります。おとなしい小型のヘビですが、かれらもまた身近な自然を構成する一員なのです。

 

誰もが気軽に訪れられる動物園は、動物たちと間近で向き合える、得難い施設です。そのバックボーンには、動物たちの健やかな生活を支え、かれらの姿を適切に伝えようとするスタッフの苦心があります。さらに動物園は「(稀少)種の保存」の活動拠点として、地元をはじめとする野生の生息地ともつながっています。楽しい動物園で過ごし、知らず知らずの学びの深まりを味わってください。

 

 

参考文献

日本鳥類保護連盟(2015)『私たちの自然 2015年9・10月号』

山本省三・喜多村武・遠藤秀紀(2008)『すごい目玉をもったアザラシがいる!』くもん出版

 

 

いしかわ動物園

人と動物と環境にやさしい、楽しく遊べ学べる動物園。

公式サイト

〒923-1222 石川県能美市徳山町600番地

電話 0761-51-8500

飼育動物 184種3831点(2014/1現在)

開園時間(閉園の30分前までに御入園ください)

4月~10月:9:00~17:00

11月~3月:9:00~16:30

休園日

火曜日(火曜日が祝日の場合はその翌日が休園日となります)

年末年始 12/29~1/1

※春休み期間の火曜日は開園します。夏休み期間は休園日はありません。

アクセス

お車で北陸自動車道利用、またはJR金沢駅・小松駅等からバス利用など。

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

 

 

※園内で行なわれている、お食事ガイドやふれあいタイムのスケジュールについては、こちらを御覧ください。

 

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いささか唐突ながら夕刻の、いしかわ動物園。本来の閉園時間(4~10月)は17時ですが、今日は屋台まで出てきました。

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毎年恒例のナイトズーです。カンガルーにも夜の顔。

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ネコ科猛獣たちの複合展示施設「ネコたちの谷」の一角、飼育担当者が実物を掲げてライオンの餌について解説中。夏休み最後の週末(2015/8/29)ということで、なかなかの賑わいでした(※)。ウィンドウ越しにもメスライオンのアンニンの目が光ります。

 

※いしかわ動物園の「ナイトズー2015」は、下記のようにまだまだ続きます。

「ナイトズー開催日」

9/12(土)13(日)、20(日)21(月祝)22(火祝) 、10/10(土)11(日)

ナイトズー開催日は、閉園時刻を21:00まで延長します(最終入園は20:00)。

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今回は、もっぱら夜昼の対照を御紹介していきましょう。日中は寛ぎきった姿を見せていることも多いアンニンですが……

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仰ぎ見て、何かを期する様子。

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解説を終えて運動場の上に移動した飼育員から、見事にスペアリブをゲット。

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野生の狩りの表情も斯くや?

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「ネコたちの谷」は裏側に回ることも出来ます。オスライオンのクリスも本領発揮と思いきや……

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今夜はあまり乗り気ではないようです。

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眼光鋭いヒョウのハッピー(メス)。今年で20歳とヒョウとしてはそれなりの年齢になりましたが、くっきりとした存在感です。

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いしかわ動物園では2頭のヒョウと1頭のユキヒョウを飼育しています。かれらは樹上や急峻な岩山などでも自在に活動出来ます。そんなかれらのための展示施設がこちら(「ネコたちの谷」の一部です)。

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今日の登板はアムールヒョウのコロン。昨年生まれ(2014/3/11)のメスです。ナイトズーのライトアップが別世界感覚を増し、野生を幻視させてくれます。

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ヒョウたちは頭上にいるとばかりは限りません。

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ユキヒョウのオス・スカイ(2012/5/25生まれ)。通路の下から、わたしたちの気配を窺っていたのでしょうか(2014/7/12撮影)。

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次は、こちらに寄ってみましょう。通り抜け型の施設「郷土の水辺・南米の森」。

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自然光を取り込むトップライトが十分な明るさを保ち続けている「郷土の水辺」エリアも、夜にはひと味違います。

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ここでも飼育員による給餌ガイドが行なわれます。スッポンはアジの切り身を御賞味。

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石川県の池・沼を模した展示で奥の方へと餌を投げてやれば、ニホンイシガメも這い上がって採食行動を披露します。

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壁にいるのはニホンヤモリ。スイッチ式の照明がついていてケースの中は昼間も暗いのですが、ナイトズーではあちこちの隙間や闇に潜むかれらの暮らしが、さらに実感出来ます。

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こちらは「南米の森」。オニオオハシのペアのトコトン(オス)とマリリン(メス)、計3頭いるアカハナグマ(写真はオスのタンビ)。

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16歳のパカゴン(オス)と18歳のパカチン(メス)は長年のペアです(※)。

 

※パカはメキシコ南部から南アメリカ東部に分布する、比較的大型の齧歯類です。

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コビトカイマンのゴメス(オス)は昨年仲間入りしました(2014年来園)。待ち伏せ型のハンターであるかれも、夜には目が冴えるようです。

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ほとんどの霊長類は昼行性。それかあらぬか、ワタボウシタマリンの大あくびです。

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人工スコールのスイッチが入れられた樹上にも何やら動物が……

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フタユビナマケモノです。神戸どうぶつ王国から来たばかりの2歳のオスです(2015/8/13公開)。9/12に愛称募集の投票結果による命名式が行なわれます。

「スコールくらいでは動きませんね」

飼育員も苦笑い。

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代わりにパカのお食事です。

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しかし、ナマケモノとて動く時は動き、食べる時は食べます。一番の好物はキュウリ。幸運にして現場に立ち会えれば、意外と鋭い歯までゆっくりと観察することが出来るでしょう。

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さらに夜の園内を進めば「ふれあいひろば」。一番賑やかな一帯と言えるでしょう。

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昼間も、長蛇の列のウサギとのふれあいタイムや……

 

 

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こちらはカピバラたちの個体識別用に入れられているマイクロチップのチェックです。カピバラは1組のペアから二年続いての繁殖(2014/11=4頭・2015/6/13=3頭)が行なわれ、大中小とバラエティ豊かな家族構成になっています。

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そんな広場、夜のプールを泳ぐマゼランペンギンたち。

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巣穴で暮らすプレーリードッグたちも、送風機付きのトンネル展示で寝姿を公開しています。この仕掛けのほとんどは園のスタッフの手づくりとのことです。

 

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夜間照明の中でも威容を誇るアルダブラゾウガメ。

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ケヅメリクガメも負けじと(?)アクティヴです。

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ケヅメリクガメは昨年11月に孵化した子ガメも展示されています。活発に歩き回る姿は、今後の成長を期待させます。

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リクガメたちには、新たな飼育展示施設が建設中です。東屋を改造した動物舎の両側にたっぷりと屋外の運動場もつくられます。早ければシルバーウィーク頃からの公開もあるかもしれないとのこと。いましばらく楽しみに待つことにいたしましょう。

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新リクガメ舎の向かいにあるのは、ウォークイン形式の「水鳥たちの池」。夜に鳥なんて、ただ眠っているだけなんじゃないか。そんな先入観がありますが、垣間見れば、きりっと立つゴイサギ、そしてアオサギ。ハンターとしての待ち伏せの構えでしょうか。

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実際に狩りを髣髴とさせる採食を目撃出来たりするのもウォークインフライングケージならではの経験です。

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こちらは「バードストリート」のフクロウ。やはり夜の主役の風格です。

 

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動物展示のみならず、プロジェクション・マッピングなども楽しめます。

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広々とした眺望の「アフリカの草原」にも夜昼二つの顔があります。昼のかれらを思い起こしながら、夜のサバンナを観賞しましょう。

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共にアメリカ生まれで、たくさんの子どもたちを全国の園館に送り出しているアミメキリンのペア、ジェブ(オス)とイザベル(メス)。こんな姿にもふたりの仲のよさが窺えます。

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グレビーシマウマのランディア(メス)は右耳の切れ込みが特徴です。

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ホオジロカンムリヅルの群れ(オス2・メス1)。その手前の草陰には……隠れキャラ(?)のケヅメリクガメです。これはさすがにナイトズーでは見つけられないかもしれませんね。

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混合展示の「アフリカの草原」の隣では、アジアゾウのサニー(メス・1979年生まれ)が暮らしています。

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放水に反応して水を呑むこともあります。

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こちらは屋内展示。ゾウを象ったプレートも洒落ていますが……

 

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実は裏側は、隣接する寝室のキリン・ペアに相応しい「表札」となっています。

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勿論、サニーもナイトズー。

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夜を湛えたプールで、思いがけないほどの軽快な泳ぎを見せるのはコビトカバ。

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カバとの共通祖先の特徴をよく遺しているとされるコビトカバですが(※)、カバ同様に夜行性で夜になると活動的になって木の葉などを採食します。ナイトズーでもそんな習性が垣間見えているのだと言えるでしょう。

 

※カバが開けた土地で暮らし、より半水生に適応して目・鼻・耳が一直線に並ぶのに対して、コビトカバは森で暮らし鼻・目・耳と位置が上がっていく、など。

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いしかわ動物園ではコビトカバをペアで飼育しています(メスのノゾミとオスのヒカル)。単独性が強いかれらですが、現在屋外では行き来を自由にして様子を見ています。

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屋内も互いの存在を意識できる隣接した展示となっていますが、行き来はさせていません。ヒカルは下あごから喉にかけてがピンク色なのが見分けポイントのひとつです。

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最後に、これまた期間限定の特別展を御紹介します。夏の特別展「カエルのひみつ」です(9/14・月まで)。担当者が得意げに横たわっているのは、その名も「ゴロンとカエル」。休憩しながら数種類のカエルを観察できるという仕掛けです。

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親子で夢中。よくよく観察しないと見つけられない、とても小柄な個体もいます。カエルの住む水辺や落ち葉溜まりを再現しているのですが、一番苦心したのは湿気で中から曇りが生じないようにすることでした。ボックスの中はファンで通気が確保されているとのことです。

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他にもアルビノのツチガエルといった貴重な展示が設けられています。

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このなかみは……実際に訪れてのお楽しみということで。

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いしかわ動物園では、既に御紹介した「郷土の水辺」でも在来の両生類を展示しています。写真はニホンアカガエルとアカテガニです。次回は、これら常設の両生類の展示も含めて、いしかわ動物園の土地に根差したありように注目してみたいと思います。

 

 

いしかわ動物園

人と動物と環境にやさしい、楽しく遊べ学べる動物園。

公式サイト

〒923-1222 石川県能美市徳山町600番地

電話 0761-51-8500

飼育動物 184種3831点(2014/1現在)

開園時間(閉園の30分前までに御入園ください)

4月~10月:9:00~17:00

11月~3月:9:00~16:30

休園日

火曜日(火曜日が祝日の場合はその翌日が休園日となります)

年末年始 12/29~1/1

※春休み期間の火曜日は開園します。夏休み期間は休園日はありません。

アクセス

お車で北陸自動車道利用、またはJR金沢駅・小松駅等からバス利用など。

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

※定例(餌やりなど)・特別のイベント情報は、こちらを御覧ください。有料のものもあります。

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キリンならではの長い舌を活かして木の葉を巻き取るのは、メスのももか(1995/8/6生まれ)。身長4.5mに及ぶももかですが、野生のキリンも長い首と大きな体を活かし、アフリカのサバンナを歩きまわりながら、このような採食して暮らしています。

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キリンの顔を間近で観察すると、まずは長いまつげに気がつきます。アフリカの強い日差しなどから目を守る機能が考えられます。そして、くっきりとした眉。実はこれはイヌやネコの目の上にヒゲのように生えているのと同じ感覚毛です。木の葉を食べるには枝々の中に顔を突き入れなければなりませんが、キリンが好むサバンナアカシアには鋭いとげがあります。キリンの眉は、そんなとげなどで目を突かないように回避させるセンサーと考えられています。

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池田動物園では、このようにニセアカシアを中心とした枝葉を運動場のフェンスにぐるりと差してやります。こうして、動物園の限られた空間でも少しでも運動量を増やそうと試みているのです。

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今夏の「ナイトズー」でのキリンのバックヤードツアー。木の葉以外にもどんな餌を与えているか、飼育下では捕食者(肉食獣)からの安全が確保されているので座り込んで眠るのだなど、こういう時でないと見聞しがたい内容が盛りだくさんです。

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コーティングされたキリンの糞を手にする機会もありました。

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さて既に飼育下のキリンの運動量が問題となることは記しましたが、運動させることを心掛けていても、やはり蹄は伸びがちになります。伸びすぎた蹄は歪んでしまい、結果として歩行不良から命に関わることもあります。そこで定期的に蹄を手入れできるようにトレーニングを施しています。

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現在二人組でトレーニングを進めていますが、足に鋸をあてがう役の飼育員も最後に餌を与えます(※)。トレーニングの目的は個人になつかせることではないので、キリンから飼育員に対して個人や役割での好き嫌いをつくらないようにし、受診動作(※※)~報酬(餌)というトレーニングそのものを「約束」として受け入れられるように努めています。

まつげ・眉毛など、キリンは本来の体の仕組みや行動の上でも自分の身を守れるようになっています。しかし、かれらを飼育下に置きつつ、自然な「野生」を引き出して展示するためには、動物園ならではの健康管理や保護の工夫が必要なのです。

 

※前掲の写真では、トレーニング中にもう一人の飼育員がタイミングを見ながら餌を与えています。

※※ここでは足を出して鋸を当てられるのを受け入れる行動。

 

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トレーニングが終わってからの方が妙に積極的に接近してくるももか。そんな気まぐれさも持っています。

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しかし、強制や過剰な誘導はトレーニングの主旨に反します。ももかが接近をためらっている時には、あえて飼育員同士でのんびりと雑談するなど、ももかのストレスを増やさず、自ら進んで行動をつくりあげていけるように、気長で穏やかなトレーニングが続けられています。それは飼育全般にも関わる心がけなのでしょう。

トレーニングが飼育下での日常のちょっとした「特別な時間」として、動物たちへのよい刺激となる可能性も評価できます。

 

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グラントシマウマのリヨ(メス・奥)とソラ(オス)。かれらにもトレーニングが施されています。

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横を向いて静止する。何でもない行動と映りますが、野生の感覚を保っているかれらが無防備に横腹や背後を人に預けるには、飼育員との安定した関係性が必要です。しかも非番や担当の交代などもあるのが動物園ですから、動物たちの信頼は個々の飼育員にとどまっていてはならないのです(※)。ひとつひとつのサインに馴染ませる地道な営みが続けられています。

 

※不適切な「人づけ」は野生を麻痺させることにもなり、動物園展示の根本にも関わります。

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トレーニンググッズも手づくりだったりします。ペットボトルを利用したターゲット棒。既に掲げた写真のように動きを指示する役割のほか、まずは、これで蹄に触れたりすることでいずれ手入れのためのやすりがけ等にも適応させていこうとしています。

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飼育下の動物たちが健やかに快適に暮らせるよう、飼育環境を豊かにする。そんな試みを「環境エンリッチメント」と呼びます。おおがかりなものばかりでなく、動物園には飼育員たちの手仕事によるさまざまな環境エンリッチメントの実践(飼育的配慮)も見出せます。噴水や彫像がムードを醸し出すマゼランペンギンのプール。

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この輪は、避けて泳いだり、時にはくぐったりすることでペンギンたちの行動にヴァリエーションが出るようにする工夫です。

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ペンギンたちの間近な通過やユーモラスな坂下りが観察できる「ペンギン・ランウェイ」。これもペンギンの気分次第の行動ですが、だからこそ日常の飼育環境の自然な豊かさにつながっていると言えるでしょう。

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プールから上がってきたばかりのリョウマ(オス)。そのすぐ後ろでスロープに辿り着いているのはリョウマとメスのペタロウの間に今年(2015/5/10)生まれたハルです。まだしっかりとした紋様にはなっていませんが、外見も行動も段々におとなに近づき、両親の見守りから離れつつあります。

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ハルがつついているのは個体識別用の翼帯です。リョウマの場合は右側に緑と黄色を着けています。すべての個体に紹介プレートがありますので、是非実地での見分けに挑戦してみてください。

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こちらは、アカとサンのペア。巣箱の中に敷かれているのは人工芝です(この時点で繁殖期は既に過ぎています=2015/08/12撮影)。

さきほどのリョウマは姫路市動物園から婿入りしてきてペタロウとペアになりましたが、昨年かれらが産卵した2個の卵は共に割れてしまいました。そこで飼育担当者は、動物園や水族館のペンギン飼育担当者を中心に一般のペンギンファンも参加できる全国ネットワークのNGO「ペンギン会議」で他園の知恵を借りました。それが、この巣箱です。すのこに人工芝を張り付け、巣材も細かく刻んだ人工芝にすると破卵が起きにくいのです。また、このような営巣セットを2つつくってうまく入れ替えてやると、さらに衛生的となり、それらをきっちりと試すことで、今年はハルの孵化に成功したのでした(※)。

前回に御紹介したミーアキャットの運動場やこのマゼランペンギンの事例、それにキリンのトレーニングなども、すべて動物園・水族館が互いに快く教え合い、導きあうことで着実に成果を挙げています。また、リョウマのように園館の間での個体の移動も、血統問題の解消など、全体として飼育個体群のあり方を健全化することにつながっています。

動物園・水族館は、決して孤立したかたちでは存続できない。そういう認識はさまざまな面での真理を孕んでいると言えるでしょう。わたしたち来園者がそれを知ることにも深い意義があると思われます。

 

※マゼランペンギンは毎年の繁殖期に2個の卵を産みます。しかし、まだ未熟なところがあるリョウマは1個の卵を温めるのが精一杯です。今年ペタロウが産んだ卵のひとつはアカ・サンのペアに託されました。残念ながら発生が進まず破卵してしまいましたが、リョウマの成長や園・担当者の飼育的配慮の中で、池田動物園のペンギンたちはさらに充実した群れとなっていくことでしょう。

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繁殖と言えば、こちらも。コツメカワウソのペアのチョコ丸・テラちゃんは、この春(2015/4/15)繁殖に成功し、ただいま赤ちゃん四姉妹の子育ての真っ最中です(2015/8/12撮影)。そんな事情で展示されていないこともありますが、こんな場面に行きあえば、かれらの家族の円満さと賑やかさを満喫することができます。

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カワウソは半水生の暮らしに適応したイタチ類ですが、登攀能力もなかなかです。

そんなかれらの習性・行動を活かしているのがカワウソラグーン。通路側にせり出したアクリル水槽内でのカワウソの動きをたっぷりと観察することが出来ます。残念ながら今回の取材ではそういう機会には恵まれませんでしたが、展示効果だけでなく、登る・泳ぐといった行動の増加で、カワウソたちへの環境エンリッチメント効果も期待されます。

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ちょっとだけよ?

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少し寄り道。「上にいる」といえば……多角形の展示舎、オスのメガネカイマン・サブレの視線の先には……

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ルーセットオオコウモリの群れです。オオコウモリの仲間は果実食で、多くの日本人に馴染み深い小型コウモリ類(もっぱら昆虫食)とは生態が異なります(※)。

 

※日本国内でも、南西諸島にはクビワオオコウモリが生息し、いくつかの亜種に分かれています。また、オガサワラオオコウモリは小笠原諸島の固有種です。

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同じ展示舎内の別の一角にはインドオオコウモリも暮らしています。

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ほんの一個のボールで動物の日常が活気づくこともあります。オスのホワイトライオンのハタリ。以前にはタテガミが抜けてしまっていた時期があり心配されていましたが、いまは御覧の悠然ぶり。このボールをはじめとした飼育的配慮の積み重ねの成果でしょう。

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こちらはアフリカライオンのモジロー、園内斜面上方で暮らしています。見比べるとハタリの体色が白っぽいのが確認できると思います(※)。

 

※ホワイトライオンは幼少時には真っ白ですが、成熟するとやや色づくのが普通です。

 

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親密な群れをつくり「ラブバード」とも呼ばれるボタンインコ。

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群れでの行動ならではの「止まり木のシーソー化」です。ここにも展示効果と飼育的効用(環境エンリッチメント)の兼ね合いが見られます。

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「こんにちは」

以前には個人のペットだったキエリボウシインコのオーちゃんは、なかなかの器用さと多弁を発揮します。飼育下ならではの個体と言えますが、それゆえに、かれらの発音の器用さや知能の高さ、そして人とのやり取りが出来る社会性といったものを親しみ深く感じさせてくれます。

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そんなオーちゃんも食事中は無口。

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池田動物園では3種類のフラミンゴを比較展示しています。

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ピンクの羽と灰色がかった足のチリーフラミンゴ。

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鮮やかな羽色のベニイロフラミンゴ。フラミンゴの曲がったくちばしは、このようなかたちで採食に役立てられます(※)。

 

※野生では水中の藻類をこしとって食べます。

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そして、白っぽい体と赤い足、ピンクのくちばしが際立つヨーロッパフラミンゴです。

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かれらフラミンゴについても、継続的にこんなイベントが組まれています。園内を散歩する個体たちの総称は「ピーちゃん」。孵卵器で生まれ、飼育員に育てられました。人馴れを活かすことで、フラミンゴ舎での展示とはちがったかたちでフラミンゴの大きさ・体の特徴などを感じ、観察してもらおうというわけです(2010/6/10撮影)。

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ヤギの餌やり。動物園が定めたルールを守るなら、他の場所では得難い楽しい体験ともなるでしょう。

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ふれあいも然り。場内の掲示や、スタッフ・ボランティアなどの声に注意を向けることは、結果として「人と動物が向き合うことの意味」を考える格好の機会ともなるはずです。

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前回御紹介した「ものしり食堂」内の掲示より。

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今年のスター(干支)、ヒツジのまゆりちゃん。そして、ヤギの斗真。

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ミニヤギの名は「一心(いっしん)」です。

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ロバのマロン君。時には怪獣のような大音量で鳴きます。

ペットを含む家畜たちは、人間が野生動物を飼い馴らし自分たちの生活に深く取り込むことで生まれました。「飼う」ことを前提とした動物たちです。ここまでに記してきたような「飼育下の野生動物への飼育的配慮」と比べ合わせることで、わたしたちは動物たちとの、より豊かで多様な関わりへと目を開くことが出来るでしょう。

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アメリカバイソンのオス・アトランタ。かれの運動場にも遊び道具や水場などが見つけられます。バイソンは家畜ウシとは異なりますが、アメリカでは先住民族と永らく関係を結び、ヨーロッパ人の移入以降の乱獲での激減~保護政策による個体数の上向きといった歴史を持ちます。マイペースなアトランタを前に、そんなあれこれに想いを広げてみてもよいでしょう。

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池田動物園観覧もそろそろ終わりが近づいてきました。ケヅメリクガメのケーヅー。寒さや雨天は苦手なので「家」に引き籠もっている時もありますが、なんとかお目にかかれました。かれを見ていると、暑かった夏もいささか名残惜しく思えてきます。

そんなケーヅーの「表札」に書かれた野生のアオサギの巣のこと。「引っ越しました」と注意書きがあります。前回からお読みの皆様は、かれらの新居を見ているのです。

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ここです。インドゾウ・メリーの動物舎の裏手です。池田動物園に足を運ばれたら、ちょっと探してみてください。

(飼育下の)野生動物、家畜ひいては野生の鳥や魚など(前回のメダカほか)。巧まざるものまで含め、動物園は生きものの多様さをぎゅっと詰め込んだ「いのちの宝箱」なのです。心ときめかせながら蓋を開け、あなたも宝物を見つけてみませんか?

 

 

池田動物園

緑に囲まれ、動物たちを体感できる動物園

公式サイト

〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5番1号

電話 086-252-2131

飼育動物 122種590点

開園時間(閉園の1時間前までにご入園ください)

4月~10月:9:30~17:00

11月~3月:9:30~16:30

休園日

11/21~2/20、5/21~7/20の毎週水曜日

(祝祭日や夏休み・冬休み期間中は休まず開園いたします。)

アクセス

JR岡山駅西口から

バス…岡山中央病院行き 京山入口 下車徒歩12分

タクシー…約8分

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

 

※定例(餌やりなど)・特別のイベント情報は、こちらを御覧ください。有料のものもあります。

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池田動物園のゲートを潜れば、すぐにゾウの運動場。人気者にふさわしい場所です。朝いち、当年50歳となるインドゾウ・メリーが姿を現します。

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餌やり体験では、鼻息を感じながらの手渡しも楽しめます。ちょっと腰が引けていますが……

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餌やりが終わったら記念撮影。

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何回か訪ねたことのあるわたしを覚えていてくれたのでしょうか?鼻先を伸ばしてきます。

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夕刻。メリーの餌を積んだトラックがゾウ舎前にやってきます。

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気慰みの軽食を取りながら、足を薬浴。メリーは右後足を除く足の裏に傷が見られ、そのケアです。当園では複数のスタッフ(ゾウ班)による集団直接飼育が行なわれています。指示に従って足を薬液に浸ける~そのかわりに少しの餌が出る。これらは飼育員とメリーの間で成り立っている「約束」です。それによって毎日の生活リズムが守られ、心身の健康も管理できます。ゾウらしい姿を保ち展示するためにも必要な関係づくりなのです。

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特別に撮影させていただいた収容後の寝室。後ろ足にチェーンをつなぎますが、これによって無人の夜間にメリーが不測の行動などをして傷ついたりしないようにしています。メリーはこのチェーン(繋留という約束事)にも馴れています。ゆっくりおやすみください……。

 

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……時を急ぎすぎました。再び、昼の園内へ。池田動物園の動物舎の半ばは斜面に配置されています。

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勢いよく駆け下りてくるのは、ヤギのハルマ。この手の地形はお得意です。

 

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そんなハルマのすぐ上で暮らすのはアメリカバクのカップル。手前はスウェーデン生まれのオス・アレック、奥がドイツ生まれのメス・アンプです。ともに1987年生まれ。国内のアメリカバクでは最高齢で、いままで多くの子宝に恵まれてきました。

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「餌やり体験はいかがですか?」

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参加させていただきました。長く伸ばされる「鼻」。これは上唇が伸び、鼻の穴と一体化したもので、構造上はゾウの「鼻」と同じです。しかし、ゾウはアフリカ起源・バクはアメリカ大陸起源の動物です(※)。かれらの「鼻」はそれぞれの暮らしに合わせて、たまたま同じように進化したと考えられます。メリーとアンプ・アレックを比べてみてください。

その他、餌やり体験は、バクのディテールに迫る好機と言えるでしょう。

※※現在、バクは東南アジアに1種、中南米に4種が分布しており、アメリカバクの生息域はコロンビア~ブラジルなどの南アメリカです。

 

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国内最高齢と言えば、こちらの個体にも注目です。オスのベンガルトラ・ヒロは1993/4/9に池田動物園で生まれました。いまもなお精悍な面立ちです。

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南アメリカ~アジア(トラ)と来て、今度はアフリカ南部。カラハリ砂漠などに生息するミーアキャットです。こちらも斜面の一角を占める飼育展示施設です。群れをつくって交代で見張りに立つかれらの習性を利用して、上皿秤の上に立たせるという展示はよくありますが、ここでは背の高さも一目で分かります(※)。

 

※京都市動物園の飼育担当者の工夫に学んだとのことです。

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群れならではの「ミーア団子」。

ところで、この施設は「まいにちプレミーア」と名づけられています。ミーアキャットに「プレ」?

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こちらが「プレ」の含意、北アメリカの草原で暮らす「プレーリードッグ」です。ミーアキャットと同様に群れをつくり巣穴を張り巡らせて暮らしますが、ミーアキャットは肉食のマングース科。対するプレーリードッグはリス科です(地上性の強いジリス類)。「まいにちプレミーア」は進化の系統も生息域も異なる2種の動物それぞれの群れとしての巣穴生活を比較できる、動物園ならではの施設なのです。

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池田動物園の坂の上、散策はゆっくりと続きます。木組みが目につくレッサーパンダ舎。矢印のところにレッサーパンダがいます。この姿勢なら、毛が密生した足の裏もよく分かります。レッサーパンダは中国四川省の冷涼な高地に生息します。木登りが得意で、雪の上でも滑らないような足裏をしています。池田動物園では、そんなかれらにふさわしい場所、「樹上性」を満たす仕組みをつくっているのです。

この写真の観覧路の設備は人工ミストが出るスペースです。涼みながらの動物観察が出来るとともに、暑さが苦手なレッサーパンダのためでもあります(※)。池田動物園ではあちこちに、手づくり感覚の中で動物への配慮や、来園者と動物がひとときを共有できる工夫が施されています。

 

※この日は雨模様のため、行なわれませんでしたが、当園サイトのイベント情報で「レッサーパンダのひんやりミスト」をチェックしてみてください。

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こちらは今夏のナイトズー(夜間延長開園、今年は既に終了)。のんびりと過ごすのは、しずく(メス)と今年(2015/1/30)、山口県の徳山動物園からしずくの元に婿入りした「のんた」です。かれらのペアとしての将来も楽しみですね。

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レッサーパンダの高みに憧れたなら、みなさんもひとときの「高み」を楽しんではいかがでしょう。園内を周遊できる「ウォッチングサイクル」はキリン舎奥の斜面中腹からお乗りになれます。

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ちなみに、レッサーパンダは、これらのアライグマ科の動物と近縁と考えられています(北アメリカ中心に分布するアライグマ・南アメリカに広く分布するアカハナグマ)。

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話の赴くままに、こちらはオスのブチハイエナの蓮(れん)。さて、ブチハイエナはネコとイヌどちらに近いでしょう?見た目はイヌと思われるでしょうが、さまざまな肉食動物を含む系統グループ・食肉目をイヌ亜目(イヌ類のほか、イタチ・クマ、そしてアザラシなどを含む)とネコ亜目(ネコ類のほか、ジャコウネコ・マングースなどを含む)に大別すると、ハイエナはネコ亜目とされています。見た目の直感では決められないというのもポイントですが、ハイエナ類のイヌめいた外観は草原や砂漠での暮らしへの適応と考えられます。さきほどのミーアキャットとプレーリードッグの関係とも比較できるでしょう。

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そんな蓮が熱いまなざしを送るのは……メスのブッチです。二頭には繁殖も期待されています。温かく見守っていきましょう。

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坂の上の散歩もここまで。十分な高さを取ったケージ。向かいには、ケージの上層部を観察するためのテラスも設けられています。

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ここの住人は、こちら。中央アメリカの熱帯雨林に住むジェフロイクモザルです。「クモ」という見なしの元ともなっている柔軟な姿勢は、細長い手足(わたしたちヒトと同様、肩が自由に回ります)と巻きついて体を支える尾によっています。御覧のように手には親指がありません。すばやく枝から枝へ渡っていく時には、しっかり掴むより親指のない手を巧みにひっかける方が滑らかに動けます。池田動物園の個体は恵まれた空間の広がりの中で活発に動くとともに、しばしば、わたしたちの様子を見るように近づいてきたりします。かれらの体の特徴やその使い方をじっくり観察してみましょう。

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こちらはアフリカに住むアビシニアコロブスです。オスのアトムはメスのトレスとふたり暮らしですが、御覧のようにかれらの手も親指が退化しています。かれらも枝から枝へと軽快に跳び移るので、この手は移動にも適応していると考えられますが、勿論、クモザルとはそれぞれ別の進化の中での、結果としての一致です。コロブスはクモザルほどに自由に肩が回ることもなく、尾もバランスを取るだけで巻きついたりはしません。そんなちがいも含めて比較観察の楽しみが広がるでしょう。

なお、コロブスの主食は木の葉です。この点でも、木の葉も食べるが果実を好み、昆虫などもメニューとなるクモザルとはちがいます。アトムやトレスが新鮮な枝葉を楽しむ場面に行きあえたらラッキーですね。

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尾と言えば、こちらも。ブタオザルの名は尾のかたちに由来します。手づくり看板も楽しいですね。

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そして、フクロテナガザルには尾がありません。ヒトにつながる類人猿(ape)とまとめられるグループの共通特徴のひとつです。フクロテナガザルは喉の共鳴袋で大きな鳴き声を発します。縄張りを主張したり、互いに鳴き交わしたりするこの声は池田動物園でも朝夕などにしばしば聴かれます。その迫力は未知の方にはおそらく想定外でしょう。

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そして、現生の類人猿(※)の中でもボノボと並んでヒトの「進化のいとこ」と言われるチンパンジー。オスのトムが枝を使って手に入れようとしているのは固形飼料です。

 

※小型=テナガザル類、大型=チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータン。

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こちらが装置の全容。チンパンジーの高い知性に基づく道具利用の能力を引き出す「チンパンジーなかよしToyッチャー」です。固形飼料はわたしたちの操作で投入されるので「餌やり体験」とも結びついています(使われる固形飼料の一日量は、きちんと計算されています)。

そして、二枚目の写真。トム(右)のほかにも、もう一個体いますね。

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メスのレーナです。先ほどの場面では、トムが枝を使って手に入れた固形飼料をすかさずレーナが分け前としてねだっているのです。野生のチンパンジーはオス・メスともに複数の群れをつくります。そんな生活の中で、かれらはお互いに複雑なやり取り(コミュニケーション)をする社会的知性を発達させています。飼育下チンパンジーの生活を考えるうえでも、道具利用等のほかに、ここでのような社会性を発揮できるようにすることは、とても大切です。観覧するわたしたちも、かれらのそんな面に注意を向けてみたいところです。

 

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群れで暮らす霊長類はこちらにも。ボリビアリスザルです。人の目で見ても楽しいデザインの遊具を使う姿にも注目です。

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2015/6/18生まれの赤ちゃん。いまはどのくらい成長しているでしょうか(2015/8/13撮影)。

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「おサル」の最後はこちら。何種類かの霊長類が並ぶ「おサルの小部屋」にいるのは、国内では当園1個体のみのシロカンムリマンガベイ。メスのリリスは高齢で歯が抜けているもののマイペースに元気です。

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お尻を向けるのは「好意」のしるしだそうです。

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このあたりで腹ごしらえと行きましょう。園内の「ものしり食堂」。その名にたがわずテーブルの上にも動物豆知識が。栄養を摂りながら、この後の園内観察に向けての知恵も吸収できるというわけです。

 

 

 

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こちらのカツ丼の素材は地元産の豚肉です(※)。とてもおいしくいただきました。

 

※岡山県岡山JA畜産(株)吉備農場産。

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地元つながりでこちら。このメダカは岡山県中央部の吉備中央町由来の野生個体です。メダカは日本の河川の在来種ですが、現在は絶滅危惧種となっています。人間活動の変化(近代化・工業化)による水質汚濁や住みかに適する小川の減少も大きな原因ですが、やはり人の手で持ち込まれた外来種カダヤシ(北アメリカ原産)との競合にしばしば負けてしまうという現状もあります。

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さらにはこちらの魚たち。観賞用に美しい色に品種改良されたヒメダカやシロメダカです。同じメダカと言っても、これらを川などに放せば在来のメダカの血統をかき乱し本来のあり方を取り返しようもなく壊すことになります(※)。

 

※メダカには野生でも北日本と南日本さらには水系によって遺伝的な差異があり、たとえ野生個体同士でも他地域のものを持ち込めば、やはり遺伝的な攪乱となってしまいます。

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池田動物園では園内の一角にこのようなメダカ等の展示コーナーを設けたり、米・芋の農作体験を催すなどして、身近な自然やそれに根差した暮らしに目を向ける営みも続けています。

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さらにこちら。「ぬーちゃん」とは?

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ヌートリアは同じく園内にいるカピバラと同様、南アメリカ原産の齧歯類です。戦時中には世界中で毛皮用に飼育され日本にも導入されましたが、いまは「外来動物」として野生化してしまっています。農作物への食害や日本在来の動物たちの生態系を壊す「侵略的外来種」です。元より責任はヌートリアではなく人間にあるのですが。岡山県南部は全国でもとりわけ野生化したヌートリアが多いことが確認されています。

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念入りな毛づくろい。ヌートリアのユーモラスとも言える姿を楽しみつつも、そういうかれらを「悪役」にしてしまっている現状を反省し、これからの人間の生き方を考える。動物園でのヌートリア展示には、他に比類のない体験的な価値があると言えるでしょう。

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生息地に絡んで今回最後の話題。オスのワライカワセミ・ペッパーの部屋には壁にコアラが描かれています。かれのふるさとがオーストラリアだからです。

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パルマワラビーもオーストラリア・ニューギニアに分布する小型のカンガルー類です。

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大接近。生息地・進化の系統・暮らしに合わせた適応形態、さまざまな視点から動物たちを比べ、実際に観察する……ここに、動物園ならではの広がりを持った楽しみのひとつがあります。

 

気まぐれにあちこちつまみ食いしてしまった観もある池田動物園観覧記。次回は御紹介しそびれた動物たちにも登場してもらいつつ、かれらの健康な暮らしを支える動物園の営みに踏み入ってみたいと思います。

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こちらはナイトズーでのメリーさん。またお逢いしましょうね。

 

 

池田動物園

緑に囲まれ、動物たちを体感できる動物園

公式サイト

〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5番1号

電話 086-252-2131

飼育動物 122種590点

開園時間(閉園の1時間前までにご入園ください)

4月~10月:9:30~17:00

11月~3月:9:30~16:30

休園日

11/21~2/20、5/21~7/20の毎週水曜日

(祝祭日や夏休み・冬休み期間中は休まず開園いたします。)

アクセス

JR岡山駅西口から

バス…岡山中央病院行き 京山入口 下車徒歩12分

タクシー…約8分

その他、駐車場情報等を含め、こちらを御覧ください。

 

 

 

※以下、動物パフォーマンスの内容を含め、2015/6/28・29両日の取材から再構成してお伝えします。なお、アトラクション等には入園料と別途に有料のものもあります。園内や公式サイトで御確認ください。

また、イベントのタイム・スケジュールは、こちらを御覧ください。

 

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神戸どうぶつ王国のテーマは「花と動物と人とのふれあい共生」。イヌやネコとふれあえる「ワンタッチ・ニャンタッチ」や、ウサギ・モルモットなどの「ピョンタッチ広場」も人気エリアです。これらの動物たちは、人が永い歴史の中で自分たちの暮らしに取り込んできた存在です(広い意味での「家畜=domestic animals」)。そこには野生動物とはまたちがった関係性があります。しかし、かれらもわたしたちとは独立の「いのち」。コミュニケーションのための「やくそく」を守ることが大切です。

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今年(2015/4/25)オープンした、約1万平方メートルの屋外エリア「アウトサイドパーク」。こちらもでイヌやヒツジと人の関わりを目の当たりにすることが出来ます。本場ニュージーランド出身のトレーナーによるシープドッグ・ショー。ニュージーランド・ハンタウェイと呼ばれる犬種のジミーは1歳半。勢いよく吠えながらヒツジたちを動かします。

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一方で、まったく声を出さずに適正な距離からの圧力でヒツジの群れをコントロールするのはボーダーコリーのダイチ。

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こうやってトンネル状の箱を潜らせたりすることも出来ます。

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人が直接、ヒツジを扱う技術も。プレッシャー・ポイントと呼ばれる場所に圧力を加えることでヒツジたちの脚を伸ばし、むらなく毛刈りをしたりすることが出来ます。

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ダイチに負けじと(?)、柵への追い込みと乗駕をしてみせるジミー。

まるでちがった流儀を披露する2種の牧羊犬たちに、牧畜の歴史の厚みも感じられます。

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引き続き、息の合ったフリスビー・ショーは豪快にして爽快。この日の出演はボーダーコリーのスバルです。

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「出番」以外の時間、ヒツジたちはヤギとともに「羊ヶ丘」でのんびりと過ごしています(決められたスポットから餌やりが出来ます)。

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2頭の仔ヤギは生後3ヶ月と4ヶ月。顎髭の有無で見分けることができました(2015/6/29撮影)。

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こちらもまだまだ「赤ちゃん」。アカカンガルーの「幸豆(こまめ)」です(生後7ヶ月・メス)。母親が出産後に亡くなったため、生後3ヶ月頃から人工哺育となっていますが、そろそろ本来なら母親の袋(育児嚢)から出入りしはじめる時期。少しずつ体をつくりながら、いずれは一人前のカンガルーとして群れに戻ることを目指しています。

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こちらがアカカンガルーたちの「カンガルーファーム」。こんな寛ぎに幸豆が加わる日が楽しみです。

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アウトサイドパークの、もうひとつの野生動物。ケープペンギンの「おやつタイム」は、順番待ちや満員御礼も出る人気イベントです。

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文字通り華やかなお花畑。取り巻きを引き連れて(?)散歩するのはアルパカのリク(オス)です。

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同じくメスの神那(かんな)。もこもこの姿は思わず手を伸ばしたくなるものでしたが……

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一夜明けた(6/28~29)、神那とリク。すっきり爽やか、頭だけまだもこもこ。アルパカは南アメリカ大陸原産のラクダ科の家畜ですが、もっぱら冷涼な高地で飼育されています。日本の夏には思いきったクールビズが必要です(※)。

 

※元々、毛を利用するために品種改良されているのでヒツジと同様、体毛が伸び続けます。人の手で毛刈りしてやる必要があるのです。

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こちらはもこもこを保っている、ましろ・ゆきみの母娘(6/29現在)。ゆきみの目に神那はどう映っているのでしょうね。

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こちらはアジア系、フタコブラクダのジェシーです。ちょっと腰の引けている餌やり体験。

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時間制でホースライドも体験できます。

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再び、屋内へ。「アクアバレー」の主役とも言うべきカピバラですが、餌の販売スタンド前で飄々と待機中です。

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元より、ふれあい体験もできます(※)。

 

※一緒にいるのは、カピバラ同様、齧歯類のマーラ。アルゼンチン固有種で、その容姿や習性は草原への適応の賜物です。

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半水生の面目躍如(2014/8/18撮影)。水面に映る「逆さカピバラ」とのツーショットなど、いかがですか?(2015/1/3撮影)

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夜行性で、もっぱらしどけない寝姿のビーバーも食事となれば、この通り。

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フタユビナマケモノでさえも。見守る飼育員も、思わず笑顔。

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次は、このエリア。「ゾウガメ広場」です。大型種のアルダブラゾウガメなどが目を惹きますが、最大体長50cm程度の種・アカアシガメの「はちべえ」も、その活発さで訪れる人の人気を集めています。停めてあるベビーカーの下などが、お好みの場所だとか。かれは唯一のオスで、他に3頭のメスのアカアシガメがいます。

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さて、同じエリアで、こちらはオウギバトの親子。今年2月に孵化したヒナもすっかり大きくなりました。

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各個体の見分けポイントは足環。幼鳥は足環なしですが、父親個体は右足に黄色、母親個体は左足に白の環を着けています。

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「もっともっと鳥とふれあいたい」。そう望まれる方は「コンタクトパロッツ」にどうぞ。小型のインコやオウムが放し飼いになっていて、餌を与えることも出来ます。このエリアへのゲートには、鳥たちの「腹具合(給餌量)」などを基に飼育員が判断する「いまの鳥達の気持ち」が掲示されています。

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足を踏み入れれば、こんなひととき。折角ですから、かれらのくちばしの使い方などもじっくりと観察させてもらいましょう。

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楽しい一日もいつしか夕刻。本日は、お見送りも鳥で。ルリコンゴウインコのラズちゃんです。「バンザイ」を披露。

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そして、バイバイ、またね。

きっと誰もが再び訪れたくなる神戸どうぶつ王国。夏に向けての施設やイベントの新展開も楽しみに、ひとまずは家路を辿りましょう。

神戸どうぶつ王国は2015/7/19、一周年を迎えました。

 

神戸どうぶつ王国

「花と動物と人とのふれあい共生」をテーマとした全天候対応の動物園。

公式サイト

〒650-0047 神戸市中央区港島南町7-1-9

電話 078-302-8899

飼育動物 90種600頭羽

開園時間(入園は閉園の30分前まで)

平 日    10:00〜17:00

土日祝    10:00〜17:30

※GW等については当園サイトを御覧ください。

休園日

毎週木曜日

アクセス

三宮駅よりポートライナー空港方面に乗車し、14分、「京コンピュータ前(神戸どうぶつ王国)」駅下車すぐ。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

※以下、動物パフォーマンスの内容を含め、2015/6/28・29両日の取材から再構成してお伝えします。なお、アトラクション等には入園料と別途に有料のものもあります。園内や公式サイトで御確認ください。

 

神戸市・三宮駅からポートライナーに乗車。最寄駅の「京コンピュータ前(神戸どうぶつ王国)」に着けば、階段を下りたすぐ目の前はもう、神戸どうぶつ王国です。

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この日のお出迎えはハリスホークのハリー。神戸どうぶつ王国は、まずもってさまざまな鳥たちの姿で特徴づけられています。

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「ウォーターリリーズ」は端正な佇まいの睡蓮池。

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しかし、時至れば、この賑わい。バードパフォーマンスショーです。

 

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颯爽と飛ぶエジプトハゲワシのロック。神戸どうぶつ王国は、2014/7に前身の神戸花鳥園から運営母体も一新されて生まれ変わった後、それまでは飼育展示のみだった鳥たちの中から新たにトレーニングを施して、バードショーの内容も目覚ましく拡充されました。エジプトハゲワシも、そんなメンバーのひとつです。鳥にとって飛ぶことは本性です。その能力を的確に引き出すことはすぐれた展示効果になり得るとともに、鳥たち自身の健康増進にもつながります。このロックもショーに参加するようになってから羽も艶を増し、筋肉の発達した姿となってきました。

 

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オオフクロウの福豆、ベンガルワシミミズクのシオン。夜の森を音もなく飛んで狩りをするかれらの羽は、とても柔らかく羽音が立ちにくい構造となっています。こうして間近でかれらのフライトを見聞することで、わたしたちもそれを体感することが出来ます(まったく羽音が聴こえません)。

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シロオオタカの白雪。オオタカのショーは、どうぶつ王国だけの珍しいものだとのことです。

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「カイト!」

呼び声に応えて飛来するハリスホーク。この子どもさんは思わず目をつぶってしまいましたが、カイトの見事な制動や腕に感じる重みなど、忘れられない体験となったことでしょう。

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オオバタンのオオちゃんは御挨拶の声も披露してくれます。

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これも経営一新後のあらたな試み。ルリコンゴウインコのルリとベニコンゴウインコのモリーのタンデム飛行です。野生のコンゴウインコ類は高い知能を持つとともに、つがいの絆が強いことでも知られています。飼育下のかれらにとっても、こうして仲間とともに行動することは、飼育的効用(社会性の面での動物福祉)を持つと考えられます。

 

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ひとしきりのショーが終わるとフクロウたちとのツーショット写真も楽しめます。

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神戸どうぶつ王国では平日も含め、多様なイベントが行なわれています。入国したら、まずはその日の予定を確かめておきましょう。

 

 

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こちらもまた、別なかたちでさまざまな鳥たちの姿を観察できる「ペリカンラグーン」。その名にし負うペリカンたちが寛いでいます。

 

 

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ニジキジのニッキーも探してみましょう。島の木立ちに紛れていることもあります。

 

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6/15と5/24生まれのクロエリセイタカシギ。ひと月に満たない開きでも、成長は目覚ましいものがあります。今年は繁殖も順調なので、いわば空間的に並べられたかれらの生活史を御覧ください。

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これが成鳥です。

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マガモも6/14に孵化しました。生きた動物たちである以上、可能な限り安定した繁殖を保証していることも動物園の健やかさの証となります。

 

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ペリカンラグーンで暮らすのは鳥類だけではありません。一見シカにも見えるシタツンガはアフリカ産のウシ科動物で湿地に適応しています。しばしば排泄も水中へ。緑豊かな水辺でのかれらの穏やかな姿を、こんなに近くで観察できる施設は数少ないと思われます。

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シタツンガを背景に枝の上に集うのはワオキツネザル。左側の小さい個体は2015/2/1生まれのオスでキースです。

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こちらがキースの母親のレース。日本モンキーセンターから来園した際、既にキースを妊娠していました。

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給餌解説「ワオワオトーク」。わたしたちといささか構造はちがいますが、しっかりと片手でものが掴めるのは霊長類の証です(※)。

 

※キツネザル類は原始的な特徴を遺す原猿類の一グループで、早い時期からマダガスカルに地理的隔離をされることで独自の姿を保っています。

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ぬいぐるみの展示?

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いえいえ、2015/5/10生まれのミナミコアリクイのメスです。飼育員による人工哺育ながらすくすくと育っています(※)。

 

※公開でのミルクタイムのスケジュールは展示場の掲示で御確認ください。

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木のぼりの能力も着実に発達中。

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さて、このあたりで少し休憩しましょうか。神戸どうぶつ王国には喫茶軽食からバイキングまで楽しめるいくつかの施設が内蔵されています。こちらはバイキングレストラン「フラワーフォレスト」の夏季限定の新メニュー。冷製フラワーパスタ(仮)です。特別に試食させていただきましたが、トマトとモモ、そしてエディブルフラワーがあしらわれて、さっぱりとした涼しい味わいでした。

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さて、次のゾーンです。その名も「ビッグビルラグーン」。ここの主の「大嘴(ビッグビル)」とは……?

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ハシビロコウのオス・アサラトです。触れたり不用意に近づきすぎたりしてはいけませんが(立会スタッフの注意に従いましょう)、それでもこんなに近くで向き合うことが出来ます。アフリカの湿地帯の再現を試みて沼を設け、岩や繁みを配した景観は、わたしたちに野生のハシビロコウの生息環境をイメージさせるだけではなく、ハシビロコウ自身にもリラックスして、その本性を発揮してもらうことを目指しています。

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この行動はアサラトの中で巣づくりの衝動が目覚めていることを示しています。ビッグビルラグーンはハシビロコウをペアで展示することで、世界でもわずかしか成功していないかれらの繁殖につなげようとしています。

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これが相方のメス・カシシです。さきほど御紹介した巣づくり行動のほか、お互いの間で挨拶行動も見られ、ペアとしての成熟が期待されています。アサラトもカシシもアフリカの民族楽器から名を取っていますが、かれらの間ではようやくペアリングに向けての序奏が始まったというところでしょう。

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これらの写真はどちらもカシシですが、一枚目は今回(2015/6/28)、二枚目はお正月(2015/1/3)に撮影したものです。瞳の色が黄色から青へと移ろっているのがわかりますか。これはハシビロコウが若鳥から成熟した個体になりつつある徴です。アサラトも同様の変化を示しています。二羽とも、まだ角度によっては黄色みが見て取れるのですが、何度か訪れる機会があれば、是非かれらの成長過程をその時々の記憶にとどめてください。

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ビッグビルラグーンの立会スタッフに抱かれているのはミーアキャットのナックとアザー。どちらもオスですが、人工哺育個体ということで、来園者と親しくふれあい、細かな様子まで感じとっていただくはたらきをしています。

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ビックビルラグーンの向かい側では7月中旬頃の開設を目指して、新たな施設が建造中でした。こちらもアフリカの湿地帯をイメージしていますが、滝などを設けて、また別の趣向凝らしたものになるとのことです。順調ならば、この記事の前後にその全貌を現わしてくれることでしょう。

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本日のお見送りはパンジーちゃん。

しかし、神戸どうぶつ王国の魅力はまだ半分もお伝えできていないように思います。次回は、さらに別の施設、そして動物たちの姿をお伝えいたしましょう。

 

 

神戸どうぶつ王国

「花と動物と人とのふれあい共生」をテーマとした全天候対応の動物園。

公式サイト

〒650-0047 神戸市中央区港島南町7-1-9

電話 078-302-8899

飼育動物 90種600頭羽

開園時間(入園は閉園の30分前まで)

平 日    10:00〜17:00

土日祝    10:00〜17:30

※GW等については当園サイトを御覧ください。
休園日

毎週木曜日

アクセス

三宮駅よりポートライナー空港方面に乗車し、14分、「京コンピュータ前(神戸どうぶつ王国)」駅下車すぐ。

その他、こちらを御覧ください。

 

 

 

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ゾウの住む森「チャーン・ヤイ山国立公園」。実は都市型動物園・天王寺動物園の一角です。植栽を工夫し、園路をくねらせて行く方を隠すなどによって、あたかも本当の森に歩み入っていくような効果を挙げている「生態的展示・アジアの熱帯雨林」です(※)。ここに掲げた園路の写真2枚も、ほんのひと角曲がっただけの関係です。現在、下草対策で植栽に剪定が施された部位もありますが、夏に向けて「森」は再生していくことでしょう。

 

※詳しくは、この展示を企画立案から主導した若生謙二さん(大阪芸術大学教授)の論文を御覧ください(PDFファイルが開きます)。

 

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ところどころに来園者の気分を高め、ゾウの生態等の知識を増してくれる装置や掲示も設けられています。

 

 

 

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最初の開けたビュー。現在、飼育展示されているゾウが1個体のため、当座、こちらの展示場は使われていませんが、そこはかとなくゾウの気配が感じられるように思います。

 

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時にはたくさんの人が夢中で透き見することもあるのが、この観察小屋です。

 

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見つけました。ラニー博子。1969年(推定)・インド生まれです。

 

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時には飼育員との一コマも。アジアゾウとしては、それなりの年齢を迎えつつあるラニー博子ですが、恵まれた施設とさまざまな飼育的配慮の中で日々を重ねています。

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そんな彼女にさらに近づいていく道のり。「森」のゾーンから「村」のゾーンへと移っていきます。「ゾウと隣り合って暮らす現地の村」という設定で、畑を荒らす野生ゾウに備えた見張り小屋なども建てられています。

 

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そして、この水辺がゴールです。水面に映る「逆さゾウ」も目を惹きます。

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ゾウは水浴びのみならず、長い鼻を活かしながら「半水生」ともいうべき姿を見せることもあります。ラニー博子の場合、足の故障のため、水に入っている方が楽だという事情もあるそうですが。それもまた、この施設がゾウの快適な暮らしへの配慮を備えている証だと言えるでしょう。

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もうひとつの生態的展示。アフリカサバンナです。こちらもンザビ国立公園と名づけられています。アフリカ現地の保護区という設定です。その道のりを辿りながら、イベントも含めての動物たちの姿を楽しんでみましょう。

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園内のあちこちにある、この看板。公開給餌の予定を示しています。

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オスのカバのテツオです。少しの「おやつ」を与えながら歯の手入れをします。それを見学しながら、なかなか見ることのできない彼の全身、そして立派な犬歯などを観察できます。このようなことが可能なのも、普段からカバと飼育員の間に一定の「約束」(手入れの受診~おやつという科学的トレーニング)が成り立っているからにほかなりません。

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かたや水中の様子がよく見えるのは、メスのティーナのプール(普段はオスメスを分けています)。群れているのはナイルティラピアです。カバの老化した皮膚や水中で排泄される繊維質の糞などを食べてくれます。本来の生態系の一環の再現です。

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ぐわりと伸び上がれば、腹部の様子もよく分かります。御覧のように飼育員通路からの給餌が、このような動きを引き出しています。

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ティーナの「おやつ」は、こんなメニュー(※)。

※右側のバケツに入っているのはオキアミで、ナイルティラピアの餌です。

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ゾウ・カバに続いて、これまた大型の陸生哺乳類を代表するクロサイのトミーです(国内のオスでは最高齢の32歳)。昨年(2014年)の1月にメスのサッちゃんが亡くなってから一年あまり、当園唯一のクロサイでしたが、今月(2015/6)、ドイツから今年2歳になる若メス・サミアが来園しました。順調ならばサミアはこの夏の間にも一般公開される予定で、トミーとの繁殖にも期待がかけられています。

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一気にコンパクトに。コビトマングースのオス・サチオです。

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サチオにも毎日14時頃に公開給餌が予定されています。落ち葉だまりやフィーダー(給餌器)に飼育員が餌を仕込みます。

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器用さをフルに発揮。フィーダーの中にはミルワームが入っていますが、鼻先で巧みに突いて取り出し食べています。

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こんなフィーダーが使われることもあります。これらによる行動の活発化や多様化が、サチオの動物園暮らし(飼育環境)を豊かにしているのです。

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さて、いよいよメインともいうべき、広々とした緑のグラウンドでの混合展示です。まずはアミメキリンのペア。オスの幸弥(コウヤ、2012/3/15生)はひとつ年下のメス・ハルカス(2013/1/1生)にぞっこんの様子。アメリカから来園し、日本一高いビル「あべのハルカス」にちなんで名づけられたハルカスですが、彼女がその名にふさわしい成長を見せていくのとともに、このペアのロマンスも高まれば、と温かいまなざしが寄せられています。

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大形のウシ科動物・エランドのルティー(オス)も存在感があります。前回の記事でも御紹介した幼いグラントシマウマ・ヒデミが暮らすのもここです。

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さらには隠れキャラ(?)のホロホロチョウ。放し飼いのかれらは、時には一般園路にまで出張してきます。

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しかし、給餌を兼ねて集合をかけるトレーニングが行なわれているため、サバンナ周辺から逸脱することはないとのことです(2013/2/27撮影※)。

 

※夜間もこの方法で集め動物舎に収容し給餌しています。

 

 

さて、ここからは「肉食エリア」です。

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まずはブチハイエナ。よく見ればユーモラスな容姿ですが、太い骨をも噛み砕く顎を持ち、ある意味ではライオンにも負けず劣らずの名ハンターです。

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これからの夏、今年もこんな姿が見られたらいいですね(2012/8/18撮影)。

 

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ブチハイエナへのビューは、先程の写真のように実際のアフリカのサバンナでも特異な姿を見せる岩山・コピエを模しています。そして、その内壁にはこんな動物の姿も。ケープハイラックスです。樹上や岩肌でも俊敏に振る舞い、木の葉を食べるその様子は、発達した切歯(前歯)とともに齧歯類のイメージが色濃いのですが、実は進化の系統の上ではゾウや海牛類(ジュゴン・マナティーなど)に近縁であることが分かっています。いわば、ゾウや海牛類の道を歩まず、まったく異なる環境に適応していくことで、かれらはハイラックスになったのです。

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そして、アフリカのみならず地球を代表する肉食獣・ライオンの登場です。オス1頭・メス2頭の構成ですが、かれら同士でのあれこれの社会的な関わり、そして動物たちが飛び越えられないモート(濠)を活用することで「食う・食われる」の関係を視覚化してみせる「通景」の効果で、わたしたちはあらためてアフリカサバンナの生態系を実感することとなります。

 

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ガラス越しの近接ビューも設けられています。

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最早、百面相の域?

 

 

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アフリカハゲコウのペアにも注目です。枝を組んで営巣していく過程で見られる、あれこれのしぐさなどは、かれらなりの社会的儀礼と言えるのかもしれません。写真は、前回にシュバシコウの例を御紹介したクラッタリングです。

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アフリカの空気に満たされたサバンナを抜けたら、こんな場所に足を止めてみてもいいでしょう。旧シマウマ舎は、いまや来園者用の広場となっています。よりリアルで生き生きとした動物展示を目指してきた天王寺動物園の歴史が、静かに垣間見えてきます。

 

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動物園の歴史。前回登場した「鳥の楽園」の外には、いささかの庭園が設えられています。その庭の一角にあるのが、チンパンジーのリタとロイドのペアの像です。メスのリタは1932年に(推定6歳)、オスのロイドは1934年 (推定3歳) に来園しました。ことにリタは園内のショーで多彩な芸を披露し、「天才」と称されました。ロイドとの間に繁殖行動も見られ1940年に出産しましたが、残念ながら死産に終わり、リタ自身もほどなく亡くなりました。ロイドも1942年に亡くなっています。いまのまなざしから見れば、文字通りの「過去」ですが、これらの歴史も踏まえながら、現在の天王寺動物園ひいてはすべての日本の動物園がつくりあげられてきました。そのことを思い返すという意味ではリタやロイドは単なる過ぎ去った存在ではなく、何度も噛みしめて動物園の未来を拓くべき「よすが」と言えるでしょう。

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現在、天王寺動物園のチンパンジーたちは、樹上生の特質を発揮できる施設で、かれら本来の群れ生活を送っています。

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ここはアイファー。爬虫類生態館です。

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足を踏み入れて最初のサイプレス・スワンプは、時にミストに包まれます。アメリカ南東部の温帯湿地を再現した、この展示が一段とリアルさを増すひとときです。水中から伸びて呼吸効率を高める気根を発達させた木々の姿も見て取れます(※)。

 

※気根の機能の解釈としては、この呼吸作用と並んで、湿地の土壌で当の樹木を安定させる意義があるのではないかとも言われており、実はいまだに探究の途上です。

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サイプレス・スワンプの主ともいうべきなのは、このミシシッピーワニです。ワニの中でもアリゲーターと称されるグループに属します。

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ミシシッピーワニが北アメリカ東部のアリゲーターなら、こちらは中国南東部に分布するヨウスコウワニです。その名の通り、大阪市と友好関係にある上海市から贈られてきました。北アメリカと東アジア、太平洋を隔てた2種のアリゲーターをつぶさに比較できるのも動物園ならではの醍醐味です。

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こちらはワニガメです。北アメリカ産動物ということでサイプレス・スワンプでミシシッピーワニと同居していますが、こちらのヨウスコウワニの展示スペースでも異彩を放っています。

 

※来園者の御了解を得て掲載しています。

 

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御馳走の赤虫に喰らいつくスペインイモリ。敵に襲われると脇腹を破って肋骨が飛び出し捕食を免れるというユニークな生態を持っています。

「爬虫類生態館」と銘打たれたアイファー(IFAR)ですが、その名は、無脊椎動物(Invertebrates)・魚類(Fishes)・両生類(Amphibians)、そして爬虫類(Reptiles)の頭文字を進化の順に綴り合せたものです。そして、それらの複合展示は生息環境を全体として捉えるというコンセプトに貫かれています。

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このヤシガニも亜熱帯の海岸のマングローブ林の展示の中で、しっかりと自分のポジションを占めています。

 

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インドネシアの熱帯雨林の樹上で暮らすクロホソオオトカゲの振る舞いは、時にダンスを思わせます。

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2014年10月中旬に生まれたグリーンイグアナです。全部で6頭。繁殖という出来事は、動物園が紡ぐ、いのちの営みを目の当たりにさせてくれます。

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こちらが成体のグリーンイグアナ。幼体たちの健やかな成長が祈念されます。

 

 

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アイファーにはカルタ仕立ての愉快なひとこと解説も掲示されていて、動物散策に楽しみを添えています。

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わたしたちの多くには、最も身近なはずの日本の暖温帯の干潟。チュウシャクシギほかの姿が見られます(※)。

大概の動物園は、多くの外国産動物の飼育展示で特徴づけられていますが、それらを知ることは、わたしたちの足元の自然に目が開かれるきっかけともなり得るでしょう。

 

※動物展示側を観覧路より明るくすることで、ガラス等の隔てなしでも暗い方へ飛び出したりしないという、鳥の習性を利用した展示となっています。

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アイファーから屋外に出てキジ舎の一角。コジュケイです。本州以南ではそれほど珍しくもない鳥ですが、実は中国中南部の原産です。1920年頃に東京や神奈川で放鳥されたのを皮切りに、狩猟鳥として各地に導入された外来種なのです。

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天王寺動物園では、南アメリカ原産の齧歯類ヌートリアがミシシッピーアカミミガメとともに展示されています。かれらもまた、毛皮のためや愛玩動物として日本に持ち込まれ、不用意なかたちで野外に放たれてきました。

本来の生息域を逸脱した外来種はしばしば移入先の在来種と競合し、さまざまな環境問題を生み出しています。しかし、かれらはやってきたのではなく人の手で運び込まれたのです。愛らしいといってよいヌートリアたちが害獣となっている現状、動物園の楽しさの中でも、時には胸に手を当ててみたいことがあります。

 

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ヌートリアたちに隣接するのはトウブハイイロリス。北アメリカ原産のかれらの場合、イギリスなどに持ち込まれ定着してしまっていることが知られています。

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日本とは、世界とは、地球とは?さまざまな問いと魅力を孕んで、動物園は皆様を待っています(※)。

 

※バフィンとモモのホッキョクグマ母子の詳細は、前回の記事を御参照ください。

 

 

大阪市天王寺動物園

全国で3番目に歴史が長く(1915年開園)、動物たちの「野生」を体感できる生態的展示の試みなど、いまも未来へ歩み続ける動物園。
公式サイト

〒543-0063

大阪市天王寺区茶臼山町1-108 大阪市天王寺動植物公園事務所

電話番号 06-6771-8401

飼育動物 約200種900点

アクセス

地下鉄「動物園前」①番出口より約5分。その他詳しくはこちらを御覧ください。

 

 

 

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天王寺動物園の朝、いきなりながら真打登場。2014/11/25生まれのメスのホッキョクグマ・モモと、母親のバフィンです。天王寺動物園は2015/1/1で100周年を迎えました。当園としては16年ぶりのホッキョクグマの繁殖成功となったモモ(百々)は、この100周年にちなんで命名されました。母親のバフィンは他園で過去3回出産を経験していますが、いずれも育児放棄となっており、今回はじめて安定した育児に至っています。

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放飼(出場)早々、格子越しに向き合う母子と担当飼育員。飼育員がホイッスルをくわえているのが分かります。次第に夏めいた暑い日が増える中(2015/6/10取材)、バフィンは表に出たがらない傾向があります。そこで、「表に出る」「シャッターが閉まる」という節目ごとにホイッスルを鳴らして、少しのおやつを与えています。科学的トレーニング技術の応用であり、こうしてバフィンに無理強いすることなく、落ち着いた「動物園暮らし」のリズムを定着させようとしているのです。モモはひとまず「お相伴」です。

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モモはすくすくと成長し、すこぶる元気です。バフィンから離れての行動も目立ってきました。

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この写真の頃(2015/3/31撮影)からおよそ70日。ホッキョクグマの赤ちゃんは、見る見る変わっていくのです。

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おもちゃ発見。枝をくわえている姿も、よく観察されます。



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もっといいもの、見つけた!飼育員が投げ込む、さまざまな遊具にもすっかり馴染んでいます。これらの遊びは、泳ぎのきっかけとなり、ホッキョクグマらしい体をつくるのに大いに役立っています(※)。

※ダイビングは、野生のホッキョクグマがアザラシなどを狩るときにもみられる行動です。

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時には、おかあさんとのとりあいも……この黄色いパイプ、元々はガス管です。

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6/16、モモはまたひとつ、「おとなの階段」を昇りました。取材時には御覧の通りだった運動場右寄りのステップを、ついに自力でクリアしたのです。詳しくはこちらを御覧ください。

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天王寺動物園では、ホッキョクグマのほか3種のクマ類(メガネグマ・ニホンツキノワグマ・マレーグマ)がひと並びに展示されています。モモやバフィンからの流れで、各地の環境に適応したかれらを比較する「世界のクマ・プチツアー」を試みてもよいでしょう。写真はマレーグマのマーズ(オス)。しばしば、バックヤードの飼育員の様子を窺う独特のしぐさで知られています。

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次は2014/8/9生まれのジャガーの双子です。8月(葉月)生まれなので、オスは葉月旭(あさひ)・メスは葉月ココと名づけられました(※)。母親のルースと同居しています。ルースは大阪市と上海市の親善動物として2011年に上海動物園から来園しました。隣の運動場には父親のジャガオもいます。おとなのジャガーは単独生活者なのでオスもメスも一頭で暮らします。旭やココにとっても母親やきょうだいと一緒に暮らせる時間は短く、その間に必要な社会性や基本的な行動などを身に着けます。なにげなく映る旭とココのじゃれあいも、貴重な学びのひとときなのです。

※旭は「九日」、ココも「九」で、ともに「9日生まれ」を意味します。

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何種類もの霊長類たちの比較展示であるサル・ヒヒ舎。ここでもフクロテナガザルの赤ちゃんが生まれています(2014/9/22生まれ)。テナガザルは「一夫一婦」のペアをつくります。父親や、年かさの兄姉なども子育てに参加します(現在はペアと赤ちゃんの「三人家族」です)。

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新しいいのちの誕生は哺乳類ばかりではありません。
「鳥の楽園」は、大きなドームの中にわたしたちが歩み入り、自由に飛び交う鳥たちの姿を観察することが出来ます。写真はウミネコの飛翔です。

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首をもたげ、くちばしをカタカタと鳴らすシュバシコウ(ヨーロッパコウノトリ)。クラッタリングと呼ばれる、この行動は、なわばりの主張やペア同士のコミュニケーションのために行なわれます。

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別のペアの巣。ヒナの姿がありました。シュバシコウは人家の屋根で巣づくりをすることも多く、東ヨーロッパでは、それを吉兆と見なすと言います(※)。コウノトリを「赤子を運ぶ使い」とする発想も、そんなところから出てきたのでしょう。

※「鳥の楽園」の中に向かう通路にはシュバシコウの生態に関する図解が掲示されています。

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コサギ、アオサギ……シュバシコウの他にも見られる数々の巣。

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こちらはよく見ると、ドームのネットの外側にあります。野生のアオサギも、こんな場所を選んで営巣しているのです。

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カリフォルニアアシカの池の柵にとまる、この鳥。見覚えがあるような、ないような……。

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ゴイサギの幼鳥です。写真奥の成鳥と比べてみてください。


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ここでも母鳥の下で守られるヒナの姿。

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キジ舎の一角、ヒオドシジュケイの母子です。

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こちらが父親。地上にいることも多いかれらの育児行動をじゃましないように、目隠しのシートが張られています。

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楽しい園内散策で過ごすうちに、もう昼過ぎ。ホッキョクグマ舎では母子が収容され、職場体験生を率いた飼育員がリンゴなどをセッティングしています。

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入れ替わりに放飼され、さっそくリンゴを賞味するのはメスのイッちゃん。2013/12/11、ロシアのノボシビルスク動物園生まれですが、豚まんなどで有名な株式会社蓬莱が天王寺動物園に寄贈し、今年(2015年)3/28に当園に到着しました。

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株式会社蓬莱と天王寺動物園のホッキョクグマには深い関わりがあります。モモの父親であるゴーゴも2006年に蓬莱が当園に寄贈しています(写真は2010/2/24撮影)。ホッキョクグマも前記のジャガー同様に単独生活者であるため、子づくりの任を果たしたゴーゴは、現在、和歌山県のアドベンチャーワールドで、別のメスとのペアリング(繁殖)を試みています。そのゴーゴが帰ってきたとき、さらに別の繁殖の可能性を、ということで、今回のイッちゃんの寄贈が行なわれました。

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ロックオン……それ!

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巧まざるシャワーで御満悦の様子。

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ホッキョクグマのプールで活用されていた黄色いガス管。園内では他にも応用例が発見できます。骨を砕いたまるごとの鶏を手にガイドを始めている飼育員……

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昨年(2014年)にリニューアルされた運動場に入ります。鶏は、くだんのガス管の中へ。

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登場したのはアムールトラの虎二郎(こじろう)です。虎二郎もジャガーのルース同様、上海動物園から2014/3/28に来園しました。

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器用に肉を取り出して、ぺろり。

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おやつが片付いても、しばらくは遊びが続きます。これも狩りの感覚につながっているのでしょうか。飼育動物たちの日常にめりはりを与え、かれらの退屈を減らす、このような試みは一見人工的な観もありますが、かれら本来の能力や習性とのつながりも感じ取れます。動物学的な観察と動物福祉の両面から見ていくことが出来るでしょう。

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張り切る虎二郎の隣(以前からの運動場)では、ゆったりと堀を泳ぐ、別のオスのセンイチ。2003年に東京の多摩動物公園で生まれたセンイチは、その年のうちに当園に移動し、いまではすっかり住み慣れた様子です。

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ヒツジの祖先にあたる野生種と考えられているムフロン。かれらが展示されている岩山にも、こんなひと工夫が見られます。

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穴を開けたポリ容器や植木鉢、ブイなどに固形飼料を入れておくことで、ムフロンは自分たちの角などを活かし、時間をかけて食事をして一日を過ごすことになります。

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ここで暮らすのはツウ・テン・カク(通天閣)のオス3頭です。

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フタコブラクダのジャックも食事中。美味ですか?

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ラクダのジャックなどの暮らす一角は、高い観覧通路からの見晴らしで動物たちの姿を楽しむことが出来ます。ハイイロカンガルーのユイ(メス)もそんなひとつ。ちょっと恥ずかしがり屋だとのことです。そっと見つめてあげましょう。

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新しいいのちをめぐり、飼育的配慮に支えられた動物たちの日常のありさまを見つけてきた天王寺動物園散策。しかし、まだまだ御紹介するべきものは溢れています。次回は、このグラントシマウマのヒデミ(メス・2014/11/1生)も暮らす「アフリカのサバンナ」ほか、さらに個性的な展示施設を楽しんでみたいと思います。

 

大阪市天王寺動物園
全国で3番目に歴史が長く(1915年開園)、動物たちの「野生」を体感できる生態的展示の試みなど、いまも未来へ歩み続ける動物園。

公式サイト

〒543-0063
大阪市天王寺区茶臼山町1-108 大阪市天王寺動植物公園事務所
電話番号 06-6771-8401
飼育動物 約200種900点

アクセス

地下鉄「動物園前」①番出口より約5分。その他詳しくはこちらを御覧ください。

※とべ動物園では、餌やり体験・ガイド、動物との記念撮影から紙芝居(!)まで、さまざまな催しが行なわれています。これらについての詳細は、同園サイトのイベント情報をご覧ください。

動物園には、さまざまな動物たちが飼育展示されています。その多くは「野生動物」であり、かれら本来の生活や習性を反映した飼育環境を整え、展示として来園者にも伝えようとすることは、動物園の役割の根幹とも言えるでしょう。

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とべ動物園では、現在、クロサイのメスのクーが、今年で4歳になる息子のライ(2011/2/18生まれ)と一緒に展示されています。時には、母子での力比べめいた一コマも。一方でオスのストームは一頭だけでの飼育展示です。クロサイは単独性が強く、野生でもしばしば一頭だけで生活します。そこで、組み合わせとしては現状のようになっています。

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ストームはクーが大のお気に入りで、寝部屋(こちらも一般公開されています)でも柵越しに干し草を示して、クーの気を惹くようにする行動が見られたりしたのですが(2009/11/17撮影)。おそらく、こうして意識しつつも、常に同居しているわけではない、という状況も、クロサイとしてのかれらには、よい刺激になっているのではないかと思われます。前回ご紹介した、当園でのアフリカ・サバンナの「通景」といったものと比べれば、一見、ごくオーソドックスな飼育展示施設ですが、ここにも動物たちの「社会性」への配慮が込められているのです。

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「本拠」となるメインの展示場から、タワーのある飛び地へと空中散歩を見せてくれるのは、今年19歳になるスマトラオランウータンのオス・ディディ。オランウータンはスマトラ島・ボルネオ島の熱帯林で単独で生活しますが、「最大の樹上生動物」としても知られています。この空中散歩の設備は、そんな出自のディディの飼育下生活に、高木の森の樹冠の構造と機能を付加しようというものです。ロープの高さは地上11m、移動距離は20m、タワー本体の天辺は15mに及びます。東南アジアの熱帯林は、日本の気候風土とは異質で、植栽等での再現は困難です。そこで、人工物による施設で、そんな熱帯林の構造の抽出が目指されています。ここには「オランウータンにとって必要な環境要素(ミニマムな生息環境)とは何か」という問いがあります。空中散歩は、2008年のタワー建設からの継続の中で、ディディにとっても、かなり習慣化した行動となっています。あくまでもディディの自由に任されているため、時にはどうしても渡らないこともありますが。
なお、以前には、空中散歩の誘因として高カロリーで嗜好性の高い餌をタワー側に着けるといったことも行なわれましたが、オランウータンは1日にわずかリンゴ2個程度の過剰給餌でも肥満してしまうような生理を持つため、現在は食事コントロールが行なわれています。たとえば、肥満につながりやすい炭水化物を控え、蛋白質等は高野豆腐(乾物のままで食べます)で補うといった、現場的な工夫も積み重ねられています(※)。動物園での食事は、野生そのままというわけにはいきませんが、代替品目の選定には、動物たちの本性への配慮が欠かせないのです。

※詳しくは、オランウータンの屋内展示場の壁面に研究成果をまとめたポスターが貼られています。

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お帰りは、こちら。

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ケージ状の空中通路から来園者を観察する様子なのは、オスのチンパンジーのロイ。この通路は本来、写真左手に写る「チンパンジーの森」(2014/10/26新設)への移動のためのものです。

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このチンパンジーの森も、人工物を活用しつつ、床面積200㎡(20×10m)・高さは手前9m・奥13mの広がりの中に、さまざまな遊具や、石器を使ってナッツを割れる装置など、チンパンジーの生活を豊かにし、その知能や運動能力を引き出して展示効果につなげる設備が満ちています。チンパンジーたちが新施設に馴染み、来園者にさらなる魅力を披露してくれるまでには、もうしばらくの馴化期間が必要なようですが。

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とべ動物園のチンパンジーは、オス1・メス3で構成されています。新施設に馴れることと並行して、かれら自身による社会関係の調整も進んでいます。時には小競り合いが見られたりもしますが、飼育員はそんなかれらの「手のかかる」ところをも飼育の張り合いとして包み込みつつ、個体ごとの性格や互いの関係を見極め、新しい「チンパンジー一族の森」の実現に向けて、かれらの日々を見守っているところです。単独生活者のオランウータンにはオランウータンの、社会性の豊かなチンパンジーにはチンパンジーなりの環境がつくられていくのです。

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マントヒヒの群れ。かれらの社会では、おとなオスそれぞれが、お気に入りのメスたちを周囲に集めることが知られています。担当飼育員お手製の「相関図」を見ながら、個体の識別や互いの関係性の観察を試してみるのもよいでしょう。

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6歳のメス・イブナは、先天性の脳の障害で目が見えません。しかし、群れには受け入れられており、現在はオスのボンズと「頼り頼られ」の関係です。

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コンクリートの施設の中にも、かじり木など、かれらの欲求を満たす工夫がなされています。

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動物たちの日々や種としての特性などをわかりやすく伝え、来園者の観察や理解のきっかけをつくるのも、飼育担当者の大切な役割です。わたしたちの側からも問いかけていくなら、コミュニケーションは益々深まっていくことでしょう。

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今年(2015年)の元旦、飼育担当者(Tさん)は「今日1/1は11(ヒヒ)の日」と思い定め、この一年間、さまざまなかたちで、とべ動物園のマントヒヒの魅力を伝える「ヒヒ祭り」を推進することを表明しています。

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Tさんは、独特の達者な描画の才にも恵まれています。彼は第5日曜日を定例として(※)、通算43回、園内各所に現われる「自転車紙芝居屋さん」も行なっています。その際も、紙芝居の後に、彼の特製のイラストなども活かしたZOOトークが聞けます。

※次回は、5/28・13:30~を予定しています。詳しくは園内に告知が出ます。

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睦み合う三頭のアフリカゾウ。一番の子ゾウは、鼻を使って水を呑む練習中のようです。そして、よく見れば、隣の運動場にも、ひときわ大きな、もう一頭。

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とべ動物園は現在、国内で唯一、アフリカゾウの「家族」に逢える動物園として知られています。
この写真の、おとなメスはリカ。彼女が当園開園の年(1988年)に、オスのアフとともに来園したのが、とべ動物園のアフリカゾウの歴史の始まりでした。現在、リカと一緒にいるのは、リカの最初の子どもの媛(ひめ、メス・2006/11/9生まれ)と、媛の妹・砥愛(とあ、2013/6/1生まれ)です。
ゾウの社会では、年かさのメスがリーダーとなって、複数のメスが群れを成しています。多くの場合、群れのメンバーのメスは、リーダーのメスの血縁です。群れのメスたちは、メンバーの出産には励ますように寄り添い、生まれてきた子どもたちは、母親のみならず「おばさん」・「お姉さん」といった存在にも育まれることになります。

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砥愛は、リカそして媛の様々な行動に倣いながら、ゾウとしての体の使い方や、ゾウ同士の付き合い方などを体得している最中です。媛もまた、砥愛に対して鼻で引き寄せるといった世話めいた行動をしたり、手加減しながら妹と遊んだりといった経験の積み重ねの中で、そしてまた、リカの実際の子育てを見知りながら、将来、母親として子育てに臨む際のシミュレーションをしているのだと言ってよいでしょう。

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まさに親しく絡む、リカと媛。しかし、このありさまは、ただ自然に生じてきたものではありません。過去2回の流産を経て、ようやく媛を出産したリカでしたが、はじめて接する赤ちゃんということもあってか、授乳もままならず、媛への攻撃的行動も見られたために、一時はリカと分離して飼育員による人工哺育が行なわれました(国内初の成功例となります)。そこから柵越しでの関係づくり等を経て、リカと媛が再度の同居の実現に漕ぎ着けたことが、当園でのその後の「家族づくり」と、その維持・発展の基盤となりました。

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さきほども写真に写っており、リカとの来園の経緯もご紹介した、オスのアフです。媛は、隣の運動場にいるアフとも、かなり頻繁に交わっている様子です。

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リカにはリカの、母親として、あるいは群れのリーダーとしての判断があるようで、時には媛とアフを引き離すこともあります。

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実際、こんな場面も見られたりはするのですが。
既に記したように、ゾウの群れのおとな個体はメスのみです。オスもまた、生まれ落ちた群れで育ちますが、やがて、母親のいる群れを離れ、一人前のオスとして成熟を迎えるとともに、別の然るべきメスの群れを見つけます。しかし、その群れに入ってしまうのではなく、群れの周囲で行動しながら、群れの中のメスに発情が見られると、ぐっと接近して交尾を試みる、という生き方を続けていきます(※)。それがゾウたちなりの、持って生まれた距離感ということになります。ひとまとまりの母子3頭と、お互いに存在を意識し、時には交わりつつも独立して生きるオスゾウ。とべ動物園は、まさに「ミニマムなゾウ社会」の再現に成功しているのです。

※生まれた群れを離れた若者のオスゾウは、一時的に年かさのオスなどと行動をともにすることもあるのが知られています。

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リカ・アフの来園以来の飼育担当者・Sさん。ゾウたちにとっても、ある意味では「群れの一員」として認知されているのではないかと思われます。

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ゾウたちと同じ場に立つ「直接飼育」の形態を採っていますが、まもなく2歳の砥愛でもこれだけの体格です。Sさんの長年の経験や細心の注意に基づいた所作・間の取り方の精彩を感じます。

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同じ場に立てることで、さまざまなトレーニング(健康チェックや治療措置等の基盤になります)の可能性も広がります。砥愛がトレーニングを受けていると媛も参加してきます。彼女たちにとっては「遊び」の楽しさもあるのでしょう。

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これもまた、媛へのトレーニングのひとつです(2011/2/19撮影)。ゾウならぬ人であり飼育員である以上、すべての場面において、ゾウたちが気を許せる相手であるとともに、そのゾウたちの健やかさを守るという意味での「管理者」でなければなりません。そんな営みが、日々、わたしたちの目の前にあります。

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アフへのおやつ。時には、来園者と動物たちの間での、こんなやりとりも演出されます。

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アフの寝室だけは収容後~閉園までのひとときに公開されているので、わたしたちは、おとなオスの迫力をさらに実感することができます。

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以前には、こんな光景も(2011/2/19撮影)。アフが子どもたちに鼻を差し伸べています。左は当時の媛、中央が、媛の弟で砥愛の兄にあたる砥夢(とむ、2009/3/17生まれ)です。
媛と砥夢の誕生が比較的近接しているのは(ゾウの妊娠期間は約22ヶ月です)、リカに自分自身による育児(自然哺育)の機会を設けるとともに、その傍らに媛を立ち会わせることで、彼女にもゾウの出産や育児を学ばせる企図があってのことでした。結果としては、砥夢の誕生も、媛を含めての「ゾウの群れ」の創建の推進力になったと言えるでしょう。
砥夢は2012/11/26に東京の多摩動物公園に向けて搬出され、現在は同園で暮らしています(※)。既に述べてきたように、オスゾウの独立はゾウの社会の常です。いまはまだ成長途上ながら、いずれは彼も成熟したオスとして繁殖に関わることが祈念されています。

※詳しくは、こちらをご覧ください。

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こちらは、リカ・砥夢・アフでの場面です(2010/12/17撮影)。群れのメンバーとしての子どもたちを一番大切にしている様子のリカですが、こんな姿からは、アフを含めてのすべてがあっての「とべ動物園ゾウ・ファミリー」なのだということが納得されます。

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こうして積み重ねられてきた飼育の営みに対して、このたび、とべ動物園は、日本動物園水族館協会(JAZA)が、希少動物の繁殖に特に功績のあった動物園や水族館に贈る「古賀賞」を初めて受賞することが決まりました。とべ動物園自体が、この達成をひとつの「新たな出発」として、アフリカゾウの飼育へのさらなる貢献を期待されています。見極められたミニマムから、さまざまな可能性がふくらみます。そして、当園の功績は他園の発展をも促すことでしょう。専門性の高い賞ながら、わたしたち一般来園者も、「生きた野生動物を飼育展示する場」としての動物園の意義や役割について、認識を深めるきっかけにできたらと思います。

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とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーの歩みについては、園内にも細やかな掲示があるので、目の前のゾウたちと見比べながら、ご参照いただければと思います。

※この掲示は、とべ動物園のアフリカゾウ・ファミリーを応援する有志の会「かぐや媛」の皆さんによるものです。
なお、下掲の拙著もご一読いただければ光栄です。
森由民(2011)「ひめちゃんとふたりのおかあさん」フレーベル館。

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アフリカゾウの運動場に隣接する展望レストラン「東雲」です。ここからもゾウたちの姿を望むことが出来ます。腹ごしらえなり、一服なりにお勧めしたいところです。

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遠いアフリカからやってきて、わたしたちに生き生きとした姿を見せ、いのちのつながりをかたちにしてくれているゾウたち。一方、こちらはまさに地元というべき動物です。ノマウマ(野間馬)は、現在の今治市付近を中心に飼育されてきた、明治以降の品種改良を受けていない、数少ない「日本在来馬」のひとつです。小柄で頑健なため、山道も厭わぬ荷駄として重用されてきました。機械化の中、かれらの実用性は薄れましたが、日本人と伝統的な家畜の共同生活の歴史の証として、とべ動物園でも飼育展示されています。現在、繁殖制限のため、オスのアラシ(先の写真)だけはアジアスイギュウ横で別に飼育されていますが、メス3頭ともども、緩やかな時間を感じさせてくれます。

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もう一ヶ所だけ。ヘビをはじめ、ワニ・カメ・トカゲなどを展示するスネークハウスです。大きなゾウガメになった気分も楽しめます。

※来園者のご了解を得て、掲載しています。

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ぷりぷりした印象のニホントカゲ。隣には、スリムなニホンカナヘビの幼体も展示されています。

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こちらが成体のニホンカナヘビ。トカゲとは一味違うクールな相貌です。

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シマヘビ・アオダイショウなど、よく馴らされて、ふれあいイベントなどに登場する個体もいます。

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そして、こんな掲示にも、ふと足を止めてみてはいかがでしょうか。動物園の動物たちは、わたしたちの目の前にいて、普段は得難い体験をさせてくれます。しかし、かれらから受け取るべき最大のメッセージは、かれら自身が生きていて、それぞれに大切な時間を刻んでいるということでしょう。動物たちには、いわば、それぞれの「時計」があり、本性に見合った環境の中で、健やかに暮らすことが望まれます。動物園は、限られた条件の中でも、動物たちから身体的・社会的に充実した行動を引き出し、願わくば、かれらの心をも満たしたいと工夫を積み重ねています。動物園を利用し、観覧するわたしたちにも、そんな営みを分かち合える可能性は開かれているのです。

愛媛県立とべ動物園
大人も子どもも楽しみながら学べる、自然生態を意識した動物園。
公式サイト
〒791-2191 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
電話 089-962-6000
飼育動物 約170種823点(平成27年3月31日現在)
開園時間
9時から17時(入園は16時30分まで)
15:30分からは餌を与えるため、ご覧になれない動物がございます。
休園日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開園)
年末年始:12月29日から1月1日
詳しくはこちらをご覧ください。
アクセス
伊予鉄バス・砥部線(千舟町経由・えひめこどもの城行き)
松山市駅(3番のりば)~とべ動物園前
その他、こちらをご覧ください。